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100の物語[伝統・文化] アイヌ語

口から口へ、伝えられてきた言葉
 アイヌ語は、アイヌ民族の言語です。アイヌ語はかつて北海道だけでなく、樺太(カラフト。現・サハリン)南部、千島列島、本州の東北地方の一部でも使われていました。しかし今では、流暢なアイヌ語が話せる人はごくわずかであるといわれています。
 そのような状況を憂えて、萱野茂(かやの・しげる)さんが子どもを対象としたアイヌ語教室を開設し、それをモデルとして1987(昭和62)年から北海道ウタリ協会が主催するアイヌ語教室が北海道各地に設けられました。また、『アコイタ』というアイヌ語の教科書も刊行されています。
 こうした活動の影響で、現在ではアイヌ語に関心をもち、学習する人びとの数が増えつつあります。いくつかの大学でも、アイヌ語やアイヌ文化に関するカリキュラムが組まれています。
松浦武四郎の「久摺(くすり)日誌」(1861年)に描かれたユカラ(口承文芸)を語る様子。(*1)
松浦武四郎の「久摺(くすり)日誌」(1861年)に描かれたユカを語る様子。(*1)
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つながりがはっきりしていない/アイヌ語と日本語
 アイヌ語と日本語の関係については、多くの研究者によってさまざまな角度から研究が行われていますが、今のところはっきりとしたことは分かっていません。アイヌ語と日本語には、「カムイ」と「神」、「オンカミ」と「拝み」など、いくつもの似た単語があります。日本語とアイヌ語が共通の母系をもつからだとする説がありますが、それではなぜ現在のように違う言葉になってしまったのか説明できません。したがって、一般的な見解としては、アイヌ語と日本語は別の言語だとされています。
 しかし、わたしたちが日常で使用している言葉の中には、アイヌ語がもとになっている単語がいくつかあります。たとえば、「ラッコ」「トナカイ」「シシャモ」などは、アイヌ語が語源となっています。
アイヌ語辞書「蝦夷方言藻汐(もしほ)草」
■アイヌ語辞書「蝦夷方言藻汐(もしほ)草」
1792(寛政4)年、蝦夷地の案内役や通訳をつとめた上原熊次郎(うえはら・くまじろう)によってまとめられた、最初のアイヌ語辞書。(写真提供:北海道立アイヌ民族文化研究センター)
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ローマ字を使う「簡易音素表記」/アイヌ語の表し方
 現在、アイヌ語を表記するときは、ローマ字またはカタカナを使用するのが一般的です。カタカナ表記では、「オト(髪の毛)」の「」、「ユ(シカ)」の「」、「キサ(耳)」の「」、「アト゜イ(海)」の「ト゜」など、アイヌ語独特の発音を表す文字が、カナをもとに作り出されました。
 また、ここ最近、使用されるようになってきたものとして、ローマ字を使う「簡易音素表記」があります。この表記方法は、1990年後半に出版されたいくつかの辞書をはじめ、専門家以外の間でも使用されています。アイヌ語教科書『アコ イタ』でも、採用されました。
『アイヌ神謡集』(1922年刊)のローマ字表記
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■『アイヌ神謡集』(1922年刊)のローマ字表記
ローマ字で表現されたアイヌ語と、日本語での訳文が併記されている。
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方言は大きく四つに分けられる/北海道・樺太・千島・本州(東北)
 アイヌ語には、地域によって方言差がみられます。方言は、大きく分けると、北海道・樺太・千島・本州(東北)の一部で話されていた4つに分類されますが、本州の一部で話されていたアイヌ語の方言については、ほとんど分かっていません。
 千島の方言は、わずか1000語の単語しか残されていませんが、北海道や樺太の方言とはかなり異なった単語が見られます。樺太の方言は、西海岸、東海岸とで多少の差があります。北海道の方言は、大きく北東部と南西部に分けられますが、発音、文法において根本的な違いはありません。
語り継がれてきたゆたかな文化/口承文芸
 口承文芸とは、文字を使わず口頭によって語り継がれる文学のことです。儀式の一部として語られたり、娯楽としても親しまれました。語り手それぞれの語り口や、即興的な表現が楽しめるのが特徴です。口承文芸のなかで物語としての内容をもつものを、「英雄叙事詩」、「神謡」、「散文説話」の3つに分けることができます。
 また、地域によっては、英雄叙事詩はユカ、サコペ、ハウキなど、神謡はカムイユカ、オイナなど、散文説話はウエペケ、トゥイタクなどと呼ばれます。
知里幸恵と伯母の金成マツ
■知里幸恵と伯母の金成マツ
『アイヌ神謡集』を出版した知里幸恵(ちり・ゆきえ)は、祖母と、母の姉である伯母マツからユカを聞いて育った。(写真提供:知里森舎)
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*写真提供:北海道大学付属図書館[北方資料データベース]
 写真キャプション文責:北海道庁
*1 久摺日誌 (戊午) / 松浦武四郎 請求記号:多気志楼 38 データベースレコードID: 0A004140000002
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