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100の物語[自然] 流氷

豊かな恵みの源、流氷
 それまで青かった海が、突然氷原に変わる。数ある自然現象の中でも、流氷は最も劇的な変化を見せるものかもしれません。北海道のオホーツク海沿岸は流氷の南限です。同じ緯度の日本海、太平洋では流氷は発生しません。なぜ、オホーツク海だけが凍るのか? 秘密はこの海の特殊な構造にあります。
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流氷船
誕生のメカニズム
 オホーツク海の平均深度は約800メートル。他の海に比べると浅い海です。そこにシベリアの大河アムール川から大量の真水が流れ込み、塩分の薄い海水の層を作ります。塩分の濃い本来の海水は比重が重いので下に沈み、水深約50メートルを境に塩分の薄い海水と濃い海水に分かれた特殊な構造をした海に変えます。
 塩分を含んだ海水はマイナス1.7℃以下にならないと凍りませんが、オホーツク海の表層にある塩分の薄い海水はそれよりも高い温度で氷結します。さらに海が二重構造になっていることから、水深50メートルまでの塩分が薄い海水の中でしか温度変化による対流が起こらないので、冬になると急激に海水温が下がります。オホーツク海は凍てつきやすい性質をもった海なのです。

オホーツク海の特徴
■オホーツク海の特徴
参考:『白い海、凍る海 オホーツク海のふしぎ』(青田昌秋著/東海大学出版会刊)
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流氷の多様な表現
 蓮葉氷、幻氷、流氷山脈、冠雪氷、くらげ氷、氷泥、氷岬、群氷。これらはすべて流氷の状態や形などを表す言葉です。このように多様な表現方法があることからも、流氷が刻々と姿かたちを変えて、オホーツク海を漂っていることが分かります。

氷板
■氷板(ひょうばん)
海に氷の結晶「氷晶」が発生して海面をおおい、やがて薄い氷の板になる。 

流氷山脈
■流氷山脈(りゅうひょうさんみゃく)
風や海流で移動する流氷が、ぶつかり重なり合ってできた、氷の山脈。

幻氷
■幻氷(げんぴょう)
4月から5月上旬、晴れた日の海上に見える流氷は、冷たい海水の上にあたたかい春の空気が入り、光が屈折して見える蜃気楼。
蓮葉氷
■蓮葉氷(はすはごおり)
割れた氷板がぶつかり合って角が丸くなり、蓮の葉のような形になる。英語では「パンケーキ・アイス」という。

かなとこ氷
■かなとこ氷
流氷が溶け始める春先、オブジェのような氷の塊が見られることがある。これは鍛冶屋の鉄床(かなとこ)形の氷。
(写真提供:オホーツク流氷館)
流氷の天使クリオネ
 流氷の海をフワフワと翼を広げて泳ぐクリオネ。頭のように見える部分にはツノがはえて、鮮やかな赤色。その姿はまさに流氷の天使です。クリオネの学名は「クリオネ・リマキナ」。ギリシャ神話の海の女神「クレイオ」が語源で、なんともロマンチック。しかし、和名は「ハダカカメガイ」でサザエに代表される巻貝の一種。つまり、クリオネは泳ぐ貝です。
 愛らしい見かけからは想像しがたいですが、クリオネは意外にも獰猛で、同じく巻貝の一種の「ミジンウキマイマイ」をがっちりと捕まえ、頭のツノの間にある口からガツガツと食べてしまいます。赤く見える部分、実は消化器官です。
クリオネ
■クリオネ
体長2〜3センチの小さな生き物は、流氷とともにやってきて、流氷とともに去っていく。
流氷からの恩恵
 かつて漁師たちは流氷を氷で海を閉ざす厄介者と考えていましたが、科学的な研究によって数々の恵みをもたらす貴重な自然現象であることが分かってきました。
 冬、流氷は出入りによって海底をかき混ぜることで、海を浄化します。そして、春になると豊富な栄養素を含んだ陸水が凍った流氷は溶け出し、海中にプランクトンを大量に発生させます。つまり、流氷はオホーツク海の豊かな漁場を作り出しているのです。
ホタテ漁の様子
■ホタテ漁の様子
オホーツク地方での漁期は6月〜11月ごろまで。稚貝の放流も行われている。
ウニ漁の様子
■ウニ漁の様子
海開けとともに、流氷の下のウニを獲る。オホーツクの春の風物詩。
(写真提供:網走市)
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