第24回 150億円はどこへ?

おまえのかあちゃんデ~ベ~ソ!

第24回 150億円はどこへ?

 2007年7月13日付の『北海道新聞』に以下のような記事が掲載されている。

 次世代のインターネット情報検索エンジン開発を目指す経済産業省の「情報大航海プロジェクト」に、写真素材データ開発販売のデータクラフト(札幌)やソフト開発のソフトフロント(同)など道内企業五社の共同事業が採択されることが十二日分かった。これにより、米グーグルに対抗できる国産検索エンジン開発を目的とした国家プロジェクトに、道産技術が参画することになる。
 採択が決まったのは、二社のほか、JR北海道、北海道新聞社、ネット関連事業のインテリジェント・リンク(同)が参加する、観光情報検索システムの研究開発事業「ビュー・サーチ北海道」。北大大学院情報科の長谷山美紀教授が開発した次世代画像検索技術をベースに、五社が得意とする画像解析などの技術や観光情報を持ち寄り、観光データベースと情報提供サービスを構築する。(略)
 情報大航海プロジェクトは本年度から三カ年に百五十億円(本年度四十六億円)の予算を投じる大型事業。

2012年2月28日の東京スカイツリー 写真:和多田進

2012年2月28日の東京スカイツリー

 さて、このプロジェクトの表面に現れた概略は報道の通りだろう。経済産業省商務情報政策局長の私的研究会としてはじまったものがあっという間に150億の予算を計上するまで成り上がった。しかし、いったいなぜか。
 興味のある方はネットサーフィンして事実関係を調べてみるがいい。「出来レース」の臭いぷんぷんである。調べるコツは、当時の経産省商務情報政策局の幹部名簿と北海道の接点を探索することだ。三年間限定プロジェクトだから、2010年には活動は終わった。しかし、グーグルに対抗するような国産の検索エンジンの開発がなされたという噂さえ聞いたことがない。そんなスキルを持つメンバーなどは見えず、風呂敷の大きさだけが目立つ。結果はムニャムニャ、それで150億円を消費したらしい。いったい、どこにこの巨額の金は消えたのか? だれも問題にしないのが不思議である。
 これもまた北海道の「美しい」今日の風景のひとつなんだろうな。

プロフィール

和多田 進(わただ すすむ)

ジャーナリスト、編集者。1945年北海道生まれ。1976年晩聲社創立。『週刊金曜日』初代編集長兼社長。月刊誌「CHAI」編集長。荒木経惟「日本人ノ顔」プロジェクト代表。日本聞き書き学会理事。著書に『生きてるうちが花なのよ 編集現場で考える』(晩聲社)、『横撮り』(バジリコ)、『ドキュメント帝銀事件』『Story A 天才アラーキーの撮影現場』(いずれも新風舎文庫)など多数。

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