第15回 わが言説の弁明

おまえのかあちゃんデ~ベ~ソ!

第15回 わが言説の弁明

 日本中の人が北海道にプラスのイメージを持っている、と思う。だから、北海道は高倉健とか渥美清、吉永小百合に似た存在なのではなかろうか。だれも欠点を指摘しないし、悪口を言わない。食べ物はすべておいしくて自然は豊かで、外国でいえばカナダのようなところだと思い込まれているらしい。牛乳もおいしい、チーズもバターも、乳製品はやっぱり北海道。北海道はデッカイドー! と。
 そういう北海道のプラスイメージに、あえて異論を唱えるのはなかなか勇気がいる。大げさに言えば、日本国中を敵にまわす覚悟さえ必要かもしれない。しかし、高倉健にだって吉永小百合にだって弱点や欠点はあるだろう。いや、絶対にあるハズだ! と思う。そして、北海道にもそれはある。この連載では、そういう弱点をふくめて北海道の日本における歴史的な立ち位置というようなことを考えてきたつもりだ。

2011年6月6日の東京スカイツリー 写真:和多田進

2011年6月6日の東京スカイツリー

 そう考えようとした理由は、日本中の人が、なにより北海道に居住する「北海道人」自身が、自ら住む大地についてほとんど考えないでいるらしいと思ったからである。自分の住む場所を知らない“ナショナリズム”というものがあるのじゃないか、そうも思った。実像や歴史を見ない郷土愛。
 郷土を愛する、というのは大切なことだろう。けれども、郷土だからといって、理由もなく、やみくもに愛するわけにはいくまい。自分はなにをやってもヨロシイが、他人はすべてヨロシクナイというのと同じになってはまずかろう。そうならぬためには、相対化が脳味噌のなかで行われねばならない。
 わが郷土・北海道を愛するには、そのどこに弱点や欠点があるのかを知らねばならぬ。それは、他所との比較に負う必要があるのである。
 この欄における言説の弁明をこの際、ひとこと記しておきたいと思った次第である。

プロフィール

和多田 進(わただ すすむ)

ジャーナリスト、編集者。1945年北海道生まれ。1976年晩聲社創立。『週刊金曜日』初代編集長兼社長。月刊誌「CHAI」編集長。荒木経惟「日本人ノ顔」プロジェクト代表。日本聞き書き学会理事。著書に『生きてるうちが花なのよ 編集現場で考える』(晩聲社)、『横撮り』(バジリコ)、『ドキュメント帝銀事件』『Story A 天才アラーキーの撮影現場』(いずれも新風舎文庫)など多数。

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