第12回 北海道のじゃがいもはウマイのか?

おまえのかあちゃんデ~ベ~ソ!

第12回 北海道のじゃがいもはウマイのか?

 中野重治に「短歌雑感」という文章がある。そこに「……歌のよしあしぐらいは、日本人なら誰でもわかるという太い線を、文学の世界での、自明の理として押したてる必要があると思う。『よしあしぐらいは』というのは、一首一首について見て決してやさしい問題ではない。それだから、『よし』と『あし』とについては多くの問題がある。あるにはあるが、それらをもふくめて、なおかつこの太い線を押したてる必要が絶対にあるとわたしは思う」という文言があって、食い物の「うまい」「まずい」を考えるにあたって中野のその考えが私の頭にのぼってきた。なにしろ、人間は毎日なにかを食して生命をつないでいるのだから、歌のヨシ・アシの比じゃないだろう、食のウマイ・マズイは。

2011年3月2日の東京スカイツリー 写真:和多田進

2011年3月2日の東京スカイツリー

 この正月、私はパリのスーパーで購入した何種類ものジャガイモ=五升イモを食してみた。品種によって料理への用途は異なるものの、総じて美味で、マズイものにはいちども出会わなかった。実は、イタリアでもドイツでもアメリカでも、マズイじゃがいもに出会った経験がないのである。私の貧しい経験だから、普遍性があるかどうか自信はない。しかし、長崎でも熊本でも、佐賀でも福岡でも富山でも金沢でも……私はマズイじゃがいもに出会ったことがない。ウマイのにばかり出会って感動しているのだが。
 しかし、じゃがいもの王国と信じられている北海道では違う。ウマイのに出会わぬばかりかむしろマズイのに出会ってばかりいるのである。だから、いまや私は北海道のじゃがいもはマズイ! と思ってしまっているというありさまだ。私の舌が馬鹿なのか、それとも北海道のじゃがいもに問題があるのか、教えてくださいませんでしょうか、みなさん。

プロフィール

和多田 進(わただ すすむ)

ジャーナリスト、編集者。1945年北海道生まれ。1976年晩聲社創立。『週刊金曜日』初代編集長兼社長。月刊誌「CHAI」編集長。荒木経惟「日本人ノ顔」プロジェクト代表。日本聞き書き学会理事。著書に『生きてるうちが花なのよ 編集現場で考える』(晩聲社)、『横撮り』(バジリコ)、『ドキュメント帝銀事件』『Story A 天才アラーキーの撮影現場』(いずれも新風舎文庫)など多数。

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