第11回 縮小社会のパイロットとなる資格

未来パイロット・北海道

第11回 縮小社会のパイロットとなる資格

 日本は15歳未満の人口比率が13.4%であるが、これは世界最小である。一方、65歳以上の人口比率は22.7%であり、これは世界最大である。平均寿命が男女とも世界最高であることも影響しているが、人口を基準に国家の盛衰を判断すると憂慮すべき事態である。
 今後について、国立社会保障・人口問題研究所が発表している2035年までの人口推計結果があるが、日本全体では2005年の1億2777万人から30年間で1億1068万人に減少し、減少比率は14.4%、15歳未満の人口比率は9.5%、65歳以上の比率は33.7%になる。
 同様に道内人口は563万人から441万人に減少し、減少比率は21.6%、15歳未満の人口比率が8.2%、65歳以上の比率は37.4%になる。これらは全国平均以下であり、減少比率では最大の秋田から数えて13番目、15歳未満の人口比率は最小の東京に次いで2番目、65歳以上の比率は最大の秋田から数えて5番目である。
 この縮小ともいうべき方向に転換していく時代に、どのように社会を構築していくかは、日本全体にとって国家の命運を左右する重大問題であるが、限界集落という名前が象徴するような消滅していく場所が多数存在する地域にとっては一層深刻な課題である。
 さらなる問題は、太平洋戦争後の短期の期間を例外として、明治時代以来、人口も経済も増大一途で発展してきた日本の社会には、縮小する社会を経験した人間が皆無ということである。そこで皮肉なことであるが、北海道人の出番になる。
 それは夕張を筆頭に石炭産業の衰退の影響で人口や経済が急速に減少し、経営が破綻している都市が道内に多数存在しているということだけではない。極端に人口が少数であった時代の伝統や記憶が現在まで明確に伝承されている国内唯一の地域だからである。
 明治初期に発行された『日本帝国統計年鑑』に、1880年の府県単位の人口が記録されている。日本全体で3590万人、道内人口は16万人である。この130年間に、日本全体では3.6倍の増加であるが、道内では34倍も増加したことになる。
 極端に人口が少数であった時代は、本州以南でははるかな過去のことで十分な記録も記憶もないが、道内には蓄積されており、それらを参照し、北方の大地が縮小社会の先駆となれば、日本をはじめ、縮小に直面している世界各国のパイロットとなることが可能である。

(2011年2月)

プロフィール

月尾 嘉男(つきお よしお)

1942年愛知県生まれ。1965年東京大学工学部卒業。1971年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。1978年工学博士。名古屋大学工学部教授、東京大学工学部教授、総務省総務審議官などを経て、2003年より東京大学名誉教授。2004年2月ケープホーンをカヌーで周回する。専門はメディア政策。著書は『IT革命のカラクリ』『縮小文明の展望』など。趣味はカヌー、クロスカントリースキー。
月尾嘉男の洞窟(http://www.tsukio.com/)

月尾 嘉男(つきお よしお)

前へ | 新着順一覧 | 次へ

この記事を知らせる

ブックマークする