第9回 自立のパイロットを期待される北海道人

未来パイロット・北海道

第9回 自立のパイロットを期待される北海道人

 説明するまでもないが、道内経済は公共投資に多大に依存しており、2005年度で公共投資総額は全国2位、1人あたりでも全国8位である。そして、実感しておられる北海道民や道内の産業分野の方々に説明するまでもないが、対北海道の公共投資は激減している。
 公共投資金額は1995年度の2兆7550億円から、2000年度には2兆4600億円、そして、2005年度には1兆8580億円となり、10年間で33%も減少した。日本全体では43%の減少であるから、まだまだ優遇されているとはいえ、道内経済にとっては深刻な事態である。
 域内総生産額に対比して公共投資の比率が日本全体では4.9%であるのに、道内経済では9.1%にもなっていることが深刻さを証明している。アメリカの2.5%、イタリアの2.4%、イギリスの1.7%などという数字と比較すると、数字の異常さが明確になる。
 近代社会へ転換して140年の歴史、人口あたり面積が広大、寒冷地帯であるから維持補修費用が多大などの反論がある。しかし、対北海道で面積は8倍、人口密度は4分の1近い寒冷国家スウェーデンの公共投資比率が2.9%という数字と比較すれば、反論は薄弱である。
 明治時代以来、日本の資源基地や食料基地として開拓するために国家が優遇してきた結果、北海道人の自立の精神が希薄になってきたことが主要な原因ではないかと筆者は想像しているが、それが単純な想像ではない経験を何度もしている。
 先日、ある道内の都市で経済の長期戦略について講演をしたことがある。質問の段階になって、地方議会議員から、林業を発展させようにも林道が整備されていないために開発ができないから、国家が政策を検討すべきだという意見があった。これが典型である。
 北海道人の開拓精神を象徴する言葉として、ウィリアム・クラーク博士の離別のときの「ボーイズ・ビー・アンビシャス」がよく引用される。その真意には諸説あるが、博士の出身のアメリカのニューイングランド地方の挨拶の言葉で「達者でな」が真意だという解釈もある。
 しかし、誤解だとしても、その長年誤解されてきた意味にこそ、現在の北海道人に必要な精神が集約されている。巨額の長期債務を背負う国家が、これまで以上に地方の面倒をみることはないと覚悟し、全国に先駆けて自立する意志を表明することがパイロットの役割である。

(2010年12月)

プロフィール

月尾 嘉男(つきお よしお)

1942年愛知県生まれ。1965年東京大学工学部卒業。1971年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。1978年工学博士。名古屋大学工学部教授、東京大学工学部教授、総務省総務審議官などを経て、2003年より東京大学名誉教授。2004年2月ケープホーンをカヌーで周回する。専門はメディア政策。著書は『IT革命のカラクリ』『縮小文明の展望』など。趣味はカヌー、クロスカントリースキー。
月尾嘉男の洞窟(http://www.tsukio.com/)

月尾 嘉男(つきお よしお)

前へ | 新着順一覧 | 次へ

この記事を知らせる

ブックマークする