第6回 視点の転換で発掘する埋蔵資源

未来パイロット・北海道

第6回 視点の転換で発掘する埋蔵資源

 日本最大のサクランボの産地である山形県東根市では、食品に加工した残滓の大量のサクランボのタネの処理に苦慮していた。そこで外国での利用を参考に、枕内に充填したところ、感触だけではなく、タネの断熱効果で快適な睡眠を約束する新規の商品になりそうである。
 日本最大のキュウリの産地である福島県須賀川一帯では、規格に合致しないためスーパーマーケットが購入してくれないキュウリを廃棄していた。しかし、その搾汁を胡瓜美水という化粧用水にして販売したところ、年間約2万本の需要がある人気商品になった。
 今年7月、鹿児島県では大雨による土砂災害が話題になったが、その原因は火山灰性のシラス台地である。この砂礫は表面に無数の小孔があるため、微細なゴミを吸着する作用があることに注目し、化粧クリームに加工したところ、全国で販売される商品になった。
 道内にも事例はある。大空町東藻琴の旅館では粗末な食堂で高価な山菜料理を提供している。地元では、無知な都会の人間に年寄りが採集してきた安価な雑草を高価な値段で提供していると悪評であるが、都会の人間は過疎地域の旅館に高価な料金を支払いにくるのである。
 流氷は冬場の道東の観光の目玉資源であるが、数十年前までは、漁業は出来ない、気候は寒冷になるなど、迷惑な自然現象でしかなかった。最初は外部の資本で遊覧観光資源になったが、最近では地元の漁師が流氷ウォークを考案して観光の目玉にすることに成功した。
 世界最初にパーソナルコンピュータの登場を予測したアメリカの天才学者アラン・ケイは、物事を観察する視点によって結果の8割が決定されると提言している。タネも購入されないキュウリも迷惑なシラス台地も廃物という視点から観察するかぎり廃物以上にはならない。
 サロマ湖畔の各地に堆積するホタテガイの貝殻、空知の各地に堆積するズリなどが象徴するように、これまで道内の一次産業は目的とする資源以外は贅沢に廃棄してきた。しかし、携帯電話さえ最高品位の金鉱とされる時代に、視点を変換すれば、それらは膨大な資源になる。
 ただし、重要なことは一番には価値はあっても、二番には価値がないことである。あまりにも有名になった徳島県上勝町のイロドリの成功から、道内にはいくらでも紅葉はあるといっても勝負にはならない。視点の転換を競争する時代なのである。

(2010年9月)

プロフィール

月尾 嘉男(つきお よしお)

1942年愛知県生まれ。1965年東京大学工学部卒業。1971年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。1978年工学博士。名古屋大学工学部教授、東京大学工学部教授、総務省総務審議官などを経て、2003年より東京大学名誉教授。2004年2月ケープホーンをカヌーで周回する。専門はメディア政策。著書は『IT革命のカラクリ』『縮小文明の展望』など。趣味はカヌー、クロスカントリースキー。
月尾嘉男の洞窟(http://www.tsukio.com/)

月尾 嘉男(つきお よしお)

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