第3回 北海道産木材でエネルギーは自給できる

未来パイロット・北海道

第3回 北海道産木材でエネルギーは自給できる

 日本の食糧自給比率の約40%、穀物自給比率の約28%という数字は先進諸国のなかでも異常な数字である。アメリカやフランスのように輸出するまでの国はともかく、中国の需要増大などを想定すると、半分以下という数字は安全保障の視点からも重要問題である。
 そのようなとき、日本最大の食糧生産地北海道の200%近い数字は日本国民としては安心の源泉であるし、東京の1%、大阪の2%などという数字と比較すれば、北海道民としては優越の根拠にもなる。しかし、その安心も優越も正確なものではない。
 道外の農家1戸あたりの平均耕地面積1.82ヘクタールに比較して、道内の農家1戸あたりの面積は22.36ヘクタールと12倍近い格差がある。それは大型耕作機械なしには耕作も収穫もできないことを意味する。その機械は化石燃料を必要とするが、それは自給できていない。
 今後、世界では食糧以上に逼迫しそうなエネルギー資源が自給できなければ、農業王国は砂上の楼閣になりかねない。道内でも原油や天然ガスを産出しているが、それは使用しているエネルギーの1%にもならない気休め程度でしかない。
 しかし、自給できる方法がある。話題のバイオエタノールである。ただし小麦やトウモロコシを原料とするのでは、そもそも不足している食糧に影響するから意味がない。そこで面積の80%近くになる森林を資源とする木質エタノールを生産するのである。
 計算は複雑なので省略するが、道内の森林面積の約64%にあたる森林の樹木が毎年成長するだけの木材をエタノールに転換すれば、道内で消費されているガソリンに匹敵する液体燃料は確保できる。もちろん、成長部分だけを採集はできないから、伐採して植林していくことになる。
 ついでに道内で消費されている電力を木材を燃料とするボイラーで発電すると、道内の森林面積の約40%にあたる森林の樹木の成長部分で発電可能である。両者を合計すると森林面積が数%不足するが、それは2500平方キロメートルほど新規に植林すれば補充できる。
 現実に実行しようとすれば、伐採のための林道整備やアルコールスタンドの設置、小型発電施設の建設などの課題はあるが、大略は可能な数字である。エネルギーと食糧が自給できれば、これからの社会では断然優位であり、北海道州の独立も現実の目標となってくる。

(2010年6月)

プロフィール

月尾 嘉男(つきお よしお)

1942年愛知県生まれ。1965年東京大学工学部卒業。1971年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。1978年工学博士。名古屋大学工学部教授、東京大学工学部教授、総務省総務審議官などを経て、2003年より東京大学名誉教授。2004年2月ケープホーンをカヌーで周回する。専門はメディア政策。著書は『IT革命のカラクリ』『縮小文明の展望』など。趣味はカヌー、クロスカントリースキー。
月尾嘉男の洞窟(http://www.tsukio.com/)

月尾 嘉男(つきお よしお)

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