第47回

私のお父さん

第47回

話すこともあまりなく、聞くことも少ないお父さんの話。でも、お父さんにまつわる話はおもしろいんです。

■226『父が見せてくれた人生の楽しみ方』

樫田一恵さん(62)=映画ライター、フローリスト、札幌市出身、札幌市在住

 ─お父さんとの一番の思い出は?
 私が6歳の時、まだ小さい弟たちも連れて親子5人で、暴風雨なのに近所の映画館に『七人の侍』を観に行ったこと。結局停電になり、半券もらって帰ってきました。それが洞爺丸の沈んだ日だったので、よく覚えてます。なんであんな日に映画を、って(笑)。
 ─それほどに映画がお好きだった?
 父も母も祖母も好きでしたね。昔はテレビなんてないから映画は最大の娯楽。時代劇から洋画までたくさんの映画に連れて行ってもらいましたよ。花を好きになったのも、小学生の時に父と一緒に庭づくりに熱中したから。新しいもの好きで、コーヒー通で、70代でも赤やオレンジ色のゴルフウェアが好きでハイカラなの。子どもを管理せず、やりたいようにさせてくれたし、父からは人生の楽しみ方を教わった気がしますね。
 ─そのお父さんは11年前に他界されたんですね。
 ビルマ戦線に従軍し、九死に一生を得て、「人間は紙一重の人生」と話してくれた父も、80歳でぽっくりと逝きました。四十九日までは近くに父の匂いがずっとして、そばで守ってくれてると感じました。もうしないから、あっちのほうが居心地いいのかな。

(鶴見裕子)

■225『私と父、実は結構似てるのかも』

森田香さん(33)=会社員、恵庭市出身、恵庭市在住

 ─子ども時代は家族でよく外食や旅行をしたそうですね?
 うちは農家で年中休みなしのはずなのに、小さいころからいろんなところへ連れて行ってもらいました。農家だからと子どもにガマンさせたくなかったみたいです。そのぶん両親は大変だったと思います。ありがたいことですよね。
 ─じゃ、お父さんとはよくおしゃべりしたり?
 いえ、今実家にいていつも顔を合わせているせいか、つれない娘です(笑)。同性としてやはり母の大変さのほうによく目が行ってしまうので、プレゼントを贈るときもなんとなく母のほうに比重が……。お父さんってソンですよね。
 ─そんなお父さんと似ているところ、あります?
 父は好奇心が旺盛で、興味のある記事を見つけたら新聞社に電話で問い合わせたり、講演会に一人で足を運んだりと行動力があるんです。人と会うのも好きで、憧れのシャロレー牛を飼っている人を探し出して、四国まで会いに行ったり。そこまで積極的ではないですけど、私も面白そうなことがあれば一人でも出かけるタイプなので、そういうところはかなり似てます。姉や妹は違うんですけどね(笑)。

(鶴見裕子)

■224『馬を売って大学へ行かせてくれた』

鈴木宗男さん(62)=政治家 「新党大地」代表、足寄郡足寄町出身、釧路市在住

 ―何かと話題の「ムネオさん」の出身地といえば、足寄町大誉地(およち)。どんな場所ですか。
 私の生まれた大誉地は自然環境の厳しい所で、小・中学校時代の思い出といえば、冬はマイナス30度以下が1週間、マイナス25度以下が1カ月もつづく、厳しい場所でしたね。そんな自然の厳しさが、私に根性だとかやる気だとか、思いやりだとか優しさだとかね、様々なものを教えてくれたと思いますね。
 ―お父さんはどんな方でしたか。
 オヤジはね、田舎の一百姓でしたけども、政治好きでした。だから町会議員選挙や町長選挙にはいつも関わってました。まあ、その血を私が引いているんでしょう。
 オヤジはいつもね、子どもたちに勉強させたいという気持ちを持っててくれました。オヤジは大切な馬を一頭売って、そのお金で私を東京の大学へ送り出してくれました。今日、中学時代の恩師たちが集まってくれましたが、「ムネオのオヤジは偉かった。人づくりをした」と言ってくれました。先生たちが評価してくれて、私はうれしかったですね。
(2010年9月12日収録)

(及川直也)

■223『無口な父が残した一言』

坂口仁さん(56)=古書店主(さっぽろ萌黄書店http://www.d2.dion.ne.jp/~moegi/)、釧路市出身、札幌市在住

 ―お父さんは転勤が多かったそうですね。
 父は開発局勤務で、港湾関連の仕事をしていました。私は釧路で生まれ、間もなく函館へ。それから室蘭、札幌、網走、また札幌と。そして中3の1年だけ釧路で過ごし……と、道内を転々としました。寡黙な父で、家でもほとんどしゃべらない人だった。定年を過ぎてからですよ、家の中で「なんだ、しゃべることできるじゃないか」と思うようになったのは。何か特別なことを話したというわけではありませんが、それくらい静かな父でした。
 ―印象的なエピソードといえば。
 父は15年ほど前、肺を悪くして亡くなりました。ある日病室へ行くと、私の腕をぎゅっと強く掴んで引きつけた。「なんだ」と顔を寄せると、「煙草」とつぶやいたんです。ヘビースモーカーでしたからね。

(及川直也)

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