花にハチが集まって、ハチに人が集まった! 第2回

 広大な自然のある北海道は蜜源となる花も多く、全国の養蜂家がミツバチを移動させてきて活動をしている土地だ。札幌の都心部を考えても、道庁の森や北大植物園、大通公園、中島公園などがあり、蜜源となる樹木や花も豊富である。
 2010年春、札幌の都心部で3つの養蜂プロジェクトがスタートした。「赤レンガはちプロ」「サッポロ・ミツバチ・プロジェクト」「サッポロハニーエンジェルズ」の看板を背負ったミツバチたちが、札幌の街中を飛びまわっている。花の蜜を集めたミツバチたちが帰る先は、なんとビルの屋上!
 ビル屋上のハチたちが集めた蜜は、複数の花が混じる百花蜜と呼ばれている。季節ごとに色や香りが違うこのなんとも魅力的なはちみつを使ったおいしいスイーツが話題を呼んでいる。はちみつを使ったスイーツと、蜜を集めるミツバチたちに注目が集まった。

文・写真/杉本真沙彌

第2回京王プラザホテル札幌の「さっぽろハニーロール」と「サッポロハニーエンジェルズ」

庭先で採れたはちみつを使ったロールケーキと、はちみつを提供している有限会社アイズの取り組み


「サッポロハニーエンジェルズ」について
・運営 有限会社アイズ
・巣箱の設置場所 北海道自治労会館(北区北6条西7丁目)、
 第7松井ビル(中央区南2条西7丁目)
・ミツバチの種類 セイヨウミツバチ ヨーロッパ種の雑種 
・ 群数 5群でおよそ24万匹(2010年7月末現在)

●京王プラザホテル札幌

庭先のミツバチ、はちみつとの出会い

▲かなりのお客さんがリピーターとなっているさっぽろハニーロールはいつも完売する。はちみつの香りが最後に残るので好き、とはお客さんのコメント

 京王プラザホテル札幌1Fのペストリーブティック「ポピンズ」で、毎月8(ハチ)のつく日に数量限定で販売されている「さっぽろハニーロール」は、美味しいものに敏感な女性たちがこぞって買い求めるという人気の商品だ。このケーキを考案したのは、同ホテル製菓料理長・中村不二男さん。パティシエ歴34年、幼いころに食べた生クリームを使ったショートケーキのおいしさに感激してこの世界に入り、現在も1日に2、3個は食べるというケーキに魅せられた人物である。
 中村さんは「銀座みつばちプロジェクト」に関心を持ち、以前から都心部で採れるはちみつに魅力を感じていた。そんな中村さんのところに、同ホテルのすぐそばにある北海道自治労会館の屋上で養蜂をやっているという話が耳に入ってきた。屋上にその様子を見に行くと、そこではミツバチたちが元気に飛び回っていた。このはちみつで商品を作りたいと思い、自治労会館の屋上で養蜂を営む「サッポロハニーエンジェルズ」(有限会社アイズ)との縁もあって、はちみつを分けてもらうことが決まった。

 

季節の花が香るロールケーキ

▲さっぽろハニーロールを楽しんで作っているという中村料理長

 このはちみつは、採れる量がそのときどきによって違い、分けてもらえる量も限られている希少品。“多くの人に手軽に食べてもらえるお菓子を”と考え、ロールケーキをつくることに決めた。
 はちみつは、ケーキの生地、焼きあがったスポンジに打つはちみつシロップ、ハニーミルクジャムと贅沢に使われている。はちみつをふくんだスポンジはしっとりしていて、中には生クリームと、はちみつと相性の良いオレンジが入っている。ジャムの量、はちみつシロップの濃さなどを決めるため、かなりの回数焼きなおして完成したというこのさっぽろハニーロールは中村さんの自信作。口の中に広がるはちみつの香りとさわやかなオレンジの酸味がシンプルなロールケーキを特別なものにしている。
 庭先で採れたこのはちみつは、季節によってさまざまな花の蜜が混じる百花蜜。はちみつのサンプルを比べると、色も香りも違うのがわかるそうだ。
 「6月のはちみつを食べたとき、これは大通の花だな、と想像していました」
 秋口には栗の花などの蜜がとれ、蜜色も濃くなり独特の香りになる。
 札幌の街中に咲く季節の花の蜜を使ったさっぽろハニーロールが食べられるのは、10月いっぱいだろうか。
 「来年は春一番からミツバチさんに活動していただいて……。来年のことを思うといまから楽しみです」と中村さんは笑顔で語る。
 この秋、ロールケーキを食べながら目を閉じて、ホテルの近くを飛び回るミツバチや、大通公園など都心で咲いた季節の花々に想いをめぐらせてみてはいかがだろう。次の春がいっそう待ち遠しくなるのでは。


京王プラザホテル札幌 「さっぽろハニーロール」の情報はこちら

 

●サッポロハニーエンジェルズ(有限会社アイズ)

自治労会館の屋上で活動! 「サッポロハニーエンジェルズ」

 前述のさっぽろハニーロールにはちみつを提供しているのは、杉山充宏さんが代表取締役を務める有限会社アイズだ。ラーメン店・三代目月見軒札幌駅北口店を経営する同社は、アグリビジネスの1つとして、都市型養蜂プロジェクト「サッポロハニーエンジェルズ」を立ち上げた。
 銀座ミツバチプロジェクトをニュースで知った杉山さんは、4年前から同プロジェクトのイベントに積極的に参加するようになった。そこで聞いた「ミツバチ(昆虫)に優しい街づくりは、人に優しい街と必ずなる」という一言が、養蜂業にいどむきっかけになったと語る杉山さんが、実際に銀座の屋上に立ったとき、「札幌の方がいけるんじゃないか」と思ったそうだ。しかし、札幌には長い冬がある。
 北海道はスイーツ原料の宝庫、はちみつだけではなく加工品をつくれば成功する、と発想を転換することにより、ビジネスとしての道が見えた杉山さんは、2010年の1月に道庁に北海道で都市型養蜂業者第1号となる届出を出した。銀座の屋上に立ってから4年後だった。

 

ミツバチが教えてくれたこと

▲ミツバチの世話をする鈴木さん。丁寧に作業をしながらミツバチの様子を観察する。ハチの立場で世話をすれば刺されることはないそう

 2010年5月から屋上での養蜂がスタートし、現在、サッポロハニーエンジェルズのミツバチたちは、北海道自治労会館(北区北6条西7丁目)と、第7松井ビル(中央区南2条西7丁目)の屋上を活動拠点とし、それぞれに3群17万匹、2群7万匹(2010年7月末日現在)がいると推定されている。採蜜の頻度は、5月は月1回、6~7月は週に1回、8月は月2回行われた。蜜の量は、6~7月にかけては1群から1週間で約12キロも採れたそうだ。
 世話をするために巣箱のふたを開けると、そのときどきの花の香りがするという。春一番に開けたときはほんのり桜のいい香りがしたそうだ。

 

はちみつスイーツの展開と来年のプロジェクト

▲元気に活動している「サッポロハニーエンジェルズ」のミツバチたち。中央にいる一番大きいのは女王蜂

 京王プラザホテル札幌にはちみつを提供するほかには、自社ブランドのロールケーキを販売している。開発・製造は札幌のわらく堂が担当。北海道産米粉を使ったもちもちとした食感のスポンジの中に、生クリームとカスタードクリームが巻き込まれ、甘みにはすべてはちみつを使っているというぜいたくなロールケーキだ。
 8月26、27日に行われた自治労全国大会では 、協力してもらった自治労会館のみなさんへの還元という意味も込めたというjichi roll(ジチロール)が販売された。8月31日からは同商品をeco-ROLL(エコロール)として一般発売をはじめた。再利用できる包装箱に入っていることからこの名前が付けられたというエコロールは、三代目月見軒札幌駅北口店とサッポロハニーエンジェルズのサイトで買うことができる。
 さて、今後のサッポロハニーエンジェルズの展開はどうなるのだろうか。杉山さんはすでに来年に向けてスタートをはじめている。
 「まずは群を6倍ぐらいにし、巣箱の置き場も10カ所程度に増やしたいと思います。ビルのオーナーさんにはすでにお願いをし、OKをもらっています。そして、京王プラザホテル札幌さんに充分なはちみつを提供できるようにしたいです」
 秋の花が終わると、ミツバチたちの越冬の時期がくる。
 「北海道で越冬させるには、自分たちはまだ技術不足。今年は、このミツバチがやってきた埼玉県の熊谷養蜂所にお願いして預かってもらいますが、3年後ぐらいには自分たちで越冬させたいと思っています」

 北海道ではじまった都市での養蜂プロジェクトには、たくさんの夢や可能性が見え隠れしている。一年目のプロジェクトでミツバチが教えてくれたこと、ミツバチやはちみつを通じて見えてきたものは想像以上に多かったのでは。今後もミツバチとミツバチをめぐる人びとから目が離せない。


「サッポロハニーエンジェルズ」のはちみつを使った「eco-ROLL」の情報はこちら

前へ | 新着順一覧 | 次へ

この記事を知らせる

ブックマークする