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        <title>鯨森惣七コラム | 北海道人</title>
        <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/</link>
        <description></description>
        <language>ja</language>
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        <lastBuildDate>Thu, 15 Mar 2012 13:49:12 +0900</lastBuildDate>
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        <item>
            <title>きらきらひかるやさしい風に逢いたい 6</title>
            <description><![CDATA[<br />
<p style="font-size: 16px; color: #7b0000;">
	<strong>きっと、おもしろい冒険になるね。と少年ジミーが言った</strong></p>
<br />
<p>
	その頃、父島はまだ閉鎖されたままで、一般の民間人の入島はゆるされていなかった。雑誌のレポーターとして写真を撮りにきたことは、あくまでも内密で、復興工事の道路穴掘り作業員として島にいた。<br />
	だいたい3日働いて、4日目の朝には、腹などが痛くなったと言って休む。<br />
	まわりに誰もいなくなった頃、こそこそカメラを抱えて出掛けた。<br />
	次の日はいっしょうけんめい穴を掘る。2日過ぎれば、すがすがしい日曜日がやってくる。<br />
	天気のいい青空の日曜日はウキウキした。<br />
	<br />
	飯場（はんば）から、遠くの水平線を観ながら、ジャリ道を歩いて船着き場までいくと、マーケットがある。その向かいには白サンゴのクズが敷きつめられた小道が教会までつづいていて、そのまわりをかこむように芝生が広がっていた。<br />
	このあたりが父島のメインストリートとなっていた。<br />
	マーケットの裏手の小さなカフェでコーヒーをもらい、外のテーブルに腰掛けると、すぐ目の前が海だった。<br />
	少年たちが遊んでいた。そのなかにジミーもいた。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" border="" height="334" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol31/120315ph01.jpg" style="border: 9px solid #dfd9ca" width="540" /></p>
<br />
<p>
	3日ほど前のことだった。<br />
	ひじきと豚の皮の炒め物をおかずに朝飯をすませた。肉ではなく皮の千切りってあまり聞いたことがないし、とにかくボソボソしてまずいのだ。食事係のおばさんをジーっとにらみつけても、とぼけた顔をする。飯場のめしはこんなのばかりだった。<br />
	飯場の窓から海が見える。すぐそばの海辺には何隻かの漁船が並んでいた。外に出た。波打ち際で、大工のかしらが釣り用のボートを洗っていた。<br />
	ロープを結わえたバケツで海水を汲み、それをボートにまきちらし、こびりついた汚れをタワシで落としていた。<br />
	「・・・いい天気ですね」<br />
	汗をぬぐいながら、かしらは顔をあげる。日焼けしてぎらぎらしているが、目のまわりの小皺が歳を感じさせた。<br />
	「おー　お前か」<br />
	ボクは、ボートの舳先に手を掛けながら質問をした。<br />
	「かしらは　南島に行ったことあるんですか？」<br />
	「あるよ・・・どうしてだ」<br />
	「いや　どんなところなのか気になってさ」<br />
	かしらはタバコに火をつけながら、ボートの椅子に座った。<br />
	鮫がうじゃうじゃいるけどな、深い藍の海水が美しい、しっとりしている、日本じゃないな、天国だな。と言いながら両手をひろげて、こんなのが釣れる天国だな。と、おおげさに、うれしそうに、話してくれる。ボクは南島に行きたがっているジミーたちのことを伝えた。するとかしらは、このボートを使えと言いながら船底をたたいた。驚いた。ボクのカラダは熱くなって、こっぱみじんに砕けそうになった。ほんとうに、南島に行けるんだ、と思った。ジミーの喜ぶ顔が、すぐに浮かんできた。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" height="305" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol31/120315ph02.jpg" style="border: 9px solid #dfd9ca" width="540" /></p>
<br />
<p>
	カフェを出て、少年たちの遊んでいる海辺に向かった。そして、大工のかしらの話を伝えた。大物の魚のことも言った。少年たちは飛び上がって喜ぶだろうと思っていたがその逆で、ボクの顔をジーっとみあげたままでいる。<br />
	ジミーなんか、すごく強い視線を投げかけてくる。<br />
	どーした、なんで、と不思議に思ったが、そーか、誰がボートの運転をするの、アンタ？　ほんとうに大丈夫、てな不安な雰囲気がただよっていたのだ。<br />
	「お前たち・・・何を考えているんだ。うれしくないのか？」<br />
	ジミーが飴をのどにひっかけたみたいな、こころぼそい声で言った。<br />
	「うれしいけど・・・だけど」<br />
	「心配するな！　オレは小型船舶の免許をもっているから、大丈夫だって」<br />
	ボクは説明した。そのへんの観光船の船長にもなれる免許なんだ、と話しをしたが、なんだか大人気なく、だれかの選挙演説のようで、しっくりしなかった。<br />
	少年たちは、知識やプライドなんかどうでもよくて、肌で感じる本能で、空気を読む。YESかNO、ただそれだけである。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" height="372" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol31/120315ph03.jpg" style="border: 9px solid #dfd9ca" width="540" /></p>
<br />
<p>
	それでも、少年たちは、ボクを信頼して喜んでいた。<br />
	「きっと、おもしろい冒険になるね」とジミーが歩きながら言う。<br />
	「そうだな、こんどの日曜日だ」<br />
	<br />
	とは言ってみたが、ボクはこのあたりの海を知らない。<br />
	そのことがプレッシャーとなって、どこかで気になっていた。</p>
<p style="text-align: right;">
	&nbsp;</p>
<p style="text-align: right;">
	つづく</p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201203/post-6.php</link>
            <guid>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201203/post-6.php</guid>
            <pubDate>Thu, 15 Mar 2012 13:49:12 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>きらきらひかるやさしい風に逢いたい 5</title>
            <description><![CDATA[<br />
<p style="font-size: 16px; color: #7b0000;">
	<strong>少年は小鳥のように喜びはしゃいでいた。</strong></p>
<br />
<p>
	ポンコツのスポーツカーを連絡船の船底におさめてから、デッキのベンチで脚を伸ばして、海を観ていた。<br />
	青森から津軽海峡をわたるのは2度目だった。<br />
	冷たくとぎすまされた北風がささるように吹き降りてくる。ジャンバーの裾がびらびら音を立ててまくれあがってくる。襟までチャックをあげても冷たさはしみてきた。<br />
	<br />
	方向のさだまらない北風が海面のうねりをさらい、白波をつぎつぎと生みだして暴れまくっていた。遠くを走る漁船がぐりぐり振りまわされ、舳先が沈み込むほどもてあそばれていた。<br />
	こんな荒れ狂う海原を何度かケイケンしてきた。<br />
	<br />
	小さな貨物船で南鳥島（マーカス島）に行ったときもそうだったが、小笠原諸島の父島から少年たちと沖の南島に向かったときは、もう駄目だと覚悟するほどだった。<br />
	<br />
	小笠原諸島が日本に返還されたころ、ボクは父島にいた。<br />
	首からカメラをぶらさげて海洋雑誌のレポーターみたいなことをやっていた。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" border="" height="346" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol30/120202ph01.jpg" style="border: 9px solid #dfd9ca" width="540" /></p>
<br />
<p>
	父島に到着した日、客船が着岸された岸壁でアメリカンタイプの自転車をじぐざくに乗り廻している少年たちがいた。<br />
	彼らは下船したボクらに向かって、ばかやろーお前ら帰れ！　てな奇声をあげて走り去った。小石を投げつけてくる少年もいた。<br />
	彼らは欧米系島民の子供たちで、小笠原が返還されることを不満に思っていたのだ。<br />
	<br />
	穏やかな陽ざしが静かにひろがる朝だった。<br />
	白いサンゴ砂と深いエメラルドブルーの海水がまじりあう波打ち際を裸足で歩いていた。やさしくゆったりした波が、足の甲でふたつにわかれていく。まだ気温があがる前だったから、冷たくて気持ちがよかった。<br />
	岸壁の上で自転車のハンドルをにぎったまま突っ立っている少年をみつけた。あの少年グループのひとりだった。<br />
	ボクは岸壁をみあげるように声をかけた。<br />
	少年は無視していた。<br />
	近づいて、そこで何してる？　もう一度聞いてみた。<br />
	少年はボソッとしゃべった。<br />
	あんたここから飛べるかよ、と聞こえた。<br />
	おお、もちろん飛べるサ。<br />
	砂浜から岸壁の上まで2メートルちょっとの高さだった。これくらいなら簡単だと思った。バックから靴をだして、岸壁をのぼった。<br />
	彼はニタニタ含み笑いをしていた。<br />
	そして、岸壁の反対を指差して、あそこからこの自転車を走らせて、ここから海まで飛んでみろ。島の大人はみんな飛べるんだ。と言って彼はめちゃくちゃうれしそうに笑った。<br />
	自転車で飛ぶとは思ってもみなかった。どうやらボクは、少年の挑発にのせられてしまっていた。<br />
	<br />
	ふくらはぎの筋肉を撫ぜながら、海までの距離を考えていた。できるだけ遠くに飛んだほうがすんなりいくだろうと思った。<br />
	ボクは自転車を押しながら距離をつくった。サドルに尻をあずけてペダルを漕いだ。ハンドルをしっかり握り直して、飛んだ。<br />
	後輪から着地させようとハンドルを手前に引く。あらら中途半端な着地。と思ったときにはカラダが空中で回転して、海中に沈んだ。<br />
	すぐに立ちあがったが、太ももあたりの深さのところまで飛んでしまったのだ。<br />
	ずぶ濡れになったボクをみて、彼は叫んでいた。すごい、すごい、ビックマン、ビックマンと言いながら両手の親指を立てて喜んでいた。なんだか照れくさいような気分でいっぱいだった。少年は11歳でジミーだと名のった。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" height="335" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol30/120202ph02.jpg" style="border: 9px solid #dfd9ca" width="540" /></p>
<br />
<p>
	ボクらは白いサンゴ砂のうえに並んで座った。<br />
	目の前には、着地を失敗した自転車が横たわったままだった。<br />
	<br />
	ジミーは島のことをいろいろ話してくれた。父島全体が彼の天国のように聞こえてくる。<br />
	あの山の向こうの海中には、錆びついたまま沈んでいる戦闘機があって魚たちのベッドになっている。その海に流れ込む川には、大蛇のようなウナギがいて、夜はギラギラ光線をだしている。カエルなんか野球のベースぐらいでかいらしいのだ。どの話もすてきでわくわくしたが、この海岸のかなり沖では、イルカが飛び跳ねていて、ザトウクジラが背中をそらして立ちあがる海流の近くに、熱帯魚とサンゴに囲まれた無人島がある。そこには星空のように輝いているビーチがあるらしいのだ。<br />
	少年ジミーはチャンスがあるなら、その無人島の南島に行きたいんだと言いながら遠くの沖をみていた。ボクもこの島にそそられたのだ。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" height="341" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol30/120202ph03.jpg" style="border: 9px solid #dfd9ca" width="540" /></p>
<p style="text-align: right;">
	&nbsp;</p>
<p style="text-align: right;">
	つづく</p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201202/post-5.php</link>
            <guid>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201202/post-5.php</guid>
            <pubDate>Thu, 02 Feb 2012 13:48:14 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>きらきらひかるやさしい風に逢いたい 4</title>
            <description><![CDATA[<br />
<p style="font-size: 16px; color: #7b0000;">
	<strong>光って、こんなにも愛しいとは思わなかった</strong></p>
<br />
<p>
	紅色とオレンジの深い色で染まった朝焼けの空を、突き刺すようにのびる東北自動車道を走っている。<br />
	口をへの字にしたまま、ラジオから流れるニュースや歌謡曲を聴きながら、だまりこんだ美術館の銅像のように固まっていた。トンネルを走るたびに、暗く寂しげな自分の顔が窓ガラスに写ったり、対向車のライトで消えたり、そんなことが淡々と続いていた。<br />
	北の古里までの長い時間、こんな沈んだ気分でのひとり旅ははじめてのことだった。<br />
	<br />
	東京に来た頃の自分の姿を思い出していた。<br />
	<br />
	18才だった。先輩のスーツを借りてシャキっとおしゃれして、地下鉄で都会人の集まる赤坂まで行ったんだけど、なんだか勝手に恥ずかしがってさ、六本木の交差点でユーターンして帰ってきた。誰もがオレをジロジロ見ている気がしてね、アホだったよな。<br />
	それから、驚いたのは先輩たちと湘南の海に行ったときのことだ。ビキニでね、麦藁帽子にサングラスのお姉さんたちがたくさんいてね、日活の映画そのものを観ているようで、熱くなったな。<br />
	その年の夏は千葉の勝浦の海の家で、客引きのアルバイトしちゃったんだわ。駅でお客さんをひろって連れて行くと、ひとり100円もらえた。<br />
	タラタラやっていてもしょうがないと思って、国道で大きな旗ふって観光バスを止めてね、説得してバスごと連れて行くんだわ。いやいやお前には参ったなーてなこと言われてさ、だいたい4000円ぐらいになるんだ。<br />
	それで、昼過ぎに駅前の銀行に持っていく。海野かつおってな通帳を作ってさ、ポケットから砂だらけの100円玉をごっそりカウンターにだすんだわ。窓口のお姉さんたちが手をたたいて笑ってたな。その海ではさ、ジョンってニックネームで、少しモテたよな、ハハハー。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" border="" height="324" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol29/ph2901.jpg" style="border: 9px solid #dfd9ca" width="540" /></p>
<br />
<p>
	そう言えばオレはいつもいつも生活に追われていたな。その頃の風潮で、大学を出ていないとリッパな会社には入れてもらえなくて、給料の安いところしか入れなくてさ、大学に対するコンプレックスもあったし、子供の頃なんかもっと悲惨な生活していたし、ズーっと気持ちが開放されたことがなかったんだ。<br />
	<br />
	それでオレね、どうしてもやってみたいことがあってね。<br />
	暴走族みたいに深夜の街をブッとばしたら最高の気分になれそうな気がしてたんだよ。でも、バイクを買う余裕なんかなくて、すぐにはできなかった。<br />
	27才だったかな、追い詰められた状況があって、自分を見失ってしまってね、会社をやめてしまったんだけど頭のどこかにバイクのことがあったんだろうな。<br />
	もういい大人だよね、その大人が、高校生が乗っていた50CCのバイクを5000円で買って、自分で金色のペンキを塗ったくって、深夜の街を騒がすひとり暴走族だぞ、てな気分でさ、アパートからすぐ近くの阿佐ヶ谷駅のロータリーをゆっくり廻って駅前のカフェに入るのさ。それだけでけっこう楽しいのね、コーヒーが旨かったな。<br />
	驚いたのはオレより年上の普通のヒトたちが近寄ってきて、乗せろって言うんだよね。だから、後ろに乗せて夜の街をキンキラキーンのバイクだーって走ったんだよ。このヒトたちもオレと同じ思いをどこかに秘めて活きていたんだなぁーって感じたな。それで少し安心したよ。・・・・・馬鹿まるだしだったよな。でも、楽しかったなー。<br />
	<br />
	てなこと考えていた。けっこう楽しいこともやってきたんだな、と思った。<br />
	いつの間にか夜になりかけていた。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" height="339" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol29/ph2902.jpg" style="border: 9px solid #dfd9ca" width="540" /></p>
<br />
<p>
	向こうにみえていた山並みの上に鉛色の雲が覆いかぶさるように流れていた風景も、白波をたてて激しく流れていた河も、収穫を終えて黄色く枯れた畑も、光を失って闇の世界に呑みこまれていく。<br />
	都会のはなやかなネオンサインに慣れてしまっていたこのカラダは、静まりかえった闇の中を走ることに、多少動揺している。どんなにあがいても、どんなに不安がっても、闇の世界は深くなるばかりだった。ときどきすれ違う遠くの民家の灯りがふぁっと浮かびあがり、ほんの一瞬だけど、気持ちがほぐれることを知った。<br />
	そっかぁ、光ってこんなにも愛しいとは思わなかった。<br />
	月の光も、星の輝きも、ジッと観ているだけで見守られているような気がしてくる。それに近いのかもしれない、そう思えるだけで、肩の力がぬけた。<br />
	<br />
	まもなくしてとんでもないことが起きはじめていることに気がついた。<br />
	闇の世界をカァーっと切りひらいてくれているヘッドライトの光が消えかけていた。またトラブルだった。<br />
	発電機が必要な電気を作ろうとしていないのだ。どんどん車の前が暗くなり、前方を走る大型トラックが灯す赤いバックランプだけを頼りに走った。<br />
	やっぱりな5万円のポンコツだもんな、こんなことも起きるよな。てなこと思ったが、ハンドルを握っている両腕は固まっていた。<br />
	<br />
	トラックの後ろ3メートルを維持しながら、2時間近く走ってきた。このまま走りつづけることは無謀だと思った。いつ急ブレーキを踏まれるか判らないし、そんな危険な賭けはできなかった。次のインターンで降りることにした。秋田県の十和田だった。<br />
	<br />
	静まりかえった荒地にポンコツのスポーツカーを停めた。朝の空が光で満ちるまでネブクロに抱かれて寝ることにした。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" height="372" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol29/ph2903.jpg" style="border: 9px solid #dfd9ca" width="540" /></p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201112/post-4.php</link>
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            <pubDate>Thu, 22 Dec 2011 13:00:51 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>きらきらひかるやさしい風に逢いたい 3</title>
            <description><![CDATA[<br />
<p style="font-size: 16px; color: #7b0000;">
	<strong>ふぁふぁと舞い降りる　ボタン雪だった。</strong></p>
<br />
<p>
	ズダダダーン　ズザザザー。<br />
	いきなりの衝撃音だった。<br />
	沈黙に包まれていた海底をゆさぶり、シャンパン状の泡がうずまき、きらきら照らしていた陽光をさえぎるように黒い壁がゆっくりと落ちてくる。<br />
	作業をしていた相棒が、沈めていた腰を浮かして海面をみあげていた。何が起きているのか、いったいどうなるのか、解らないまま強い恐怖心でカラダが動かなくなった。<br />
	全身を細い針でちりちりと刺されているような痛みがかけめぐり、あと数秒で死に直面するだろうと言った予感でいっぱいになってくる。<br />
	ヘドロで土色ににごる海面が遠くに感じた。<br />
	<br />
	突然だった。<br />
	足元の海流が湧きだつようにおおきくうずまいて、カラダごと持ちあげられ、台風に吹きあげられた麦藁帽子のようにくるくる飛ばされた。<br />
	抵抗することなどまったくできないほどの水圧だった。気がついた時、ふたりは海面に浮いていた。<br />
	水中メガネをはずした。すがすがしい秋風が顔をやさしくなぜまわす。何か雄大な運命に助けられたと思った。<br />
	海面をもてあそぶように手足を伸ばした。<br />
	ウロコ雲がぽつらぽつらと静かに流れていた。<br />
	<br />
	右手の人差し指が痛いと思った。<br />
	病院で診てもらったら、複雑骨折でバラバラだった。海底で吹きとばされたとき何が起きたのか、よく覚えていない。<br />
	全治5ヶ月の診断だった。<br />
	それは致命的で、3週間後のエジプトの夢は消えた。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" border="" height="336" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol28/ph01.jpg" style="border: 9px solid #bccecb" width="540" /></p>
<br />
<p>
	まもなくして、事件の真相が解ってきた。<br />
	150トンの鉄の扉。全長が30メートルほどで、ちょとしたビルの壁ぐらいはあった。その扉を空中で吊りあげたまま、海上で待機していた運搬船のワイヤーロープが、いきなり切れて落下してきたのだった。<br />
	扉の重圧が生みだした推進力で、ふたりは吹きとばされて助かった。<br />
	もし逆方向にとばされていたならば、まちがいなく下じきになっていた。その話を聞かされて、呆然とするしかなかった。<br />
	ショックだった。事件のことよりも地中海に行けなくなったことでイライラした。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" height="322" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol28/ph02.jpg" style="border: 9px solid #bccecb" width="540" /></p>
<br />
<p>
	いったいオレは東京で何がしたかったんだろうかと考えこんでしまった。<br />
	八丈島で漁師の絵を描こうとして、ちゃんと自分と向き合うことなく挫折した。それから子供の頃から好きだった映像の世界にとびこんだ。まもなくして合理化の時代が来た。素材の良いフイルムからビディオテープと変わりはじめた頃、こんなビディオなんかで立体の美しい映像は作れないとほざき、表現者をめざしていたチャンスをつぶした。<br />
	そして、20代ラストチャンスのエジプトの夢は運命にもてあそばれた。<br />
	<br />
	右手に巻かれたホウタイをみていた。<br />
	ふと思い出したのが、ふぁふぁと舞い降りるボタン雪の風景だった。<br />
	<br />
	その3日後、骨折した右手をハンドルに縛りつけて北に向かった。<br />
	北海道の海が観たかった。<br />
	生まれ育った、あの海のそばに行きたいと思った。<br />
	そんな思いで胸はいっぱいだった。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" height="353" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol28/ph03.jpg" style="border: 9px solid #bccecb" width="540" /><br />
	&nbsp;</p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201111/post-3.php</link>
            <guid>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201111/post-3.php</guid>
            <pubDate>Mon, 14 Nov 2011 15:06:37 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>きらきらひかるやさしい風に逢いたい 2</title>
            <description><![CDATA[<br />
<p style="font-size: 16px; color: #7b0000;">
	<strong>金色にきらめく暗黒の海</strong></p>
<p>
	<br />
	国道5号線から、ハンドルを右にゆっくり切って、淡々とおいしげる背丈草のなかをきりさくように連なるわき道を走った。<br />
	その先には、海がある。<br />
	乾いた土煙をふりまくデコボコのわき道では、すれ違う車はまったくなく、静か過ぎるのが気になった。</p>
<p>
	&nbsp;</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" height="336" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol27/ph01.jpg" width="540" /></p>
<p>
	<br />
	30年前の早朝のことである。<br />
	ポンコツのスポーツカーで札幌に向かっていた。窓を擦りぬける秋風は、さすがに冷たかった。<br />
	5万円で買った中古の車は、白にちかい空色でふっくらとしたボディーラインが好きだった。エンジンだって昔のイタリアの戦闘機と同じだというこだわりも気にいっていたし、ぺダルを踏み込むたびにヴォロローンてな、唸り声がたまらなかった。<br />
	バッグに詰めた身のまわりのものとキャンプグッズ、それとレイ・チャールズの古いレコードとギターを後部座席に積んで、東京を出た。<br />
	レイ・チャールズのレコードは、高校の頃からそばに置いてあった。たましいを揺さぶるような沢山の名曲があるが、「愛さずにいられない」この曲を聴くたびに、空を見あげるようにピアノを叩きながら歌うレイ・チャールズと、雲から光が射してきて海原をキラキラと金色に染める風景が、ダブって浮かんでくるのだ。<br />
	なんだかさ、守り神のような存在だから、置いてはいけない、そんな気がしたのだ。<br />
	<br />
	荷物をまとめて旅に出ると決めたのは、3日前のことだった。<br />
	ぎすぎすした生活から開放されたいと、以前から思いながら活きているところに、大きな事件が起きてしまった。</p>
<p>
	&nbsp;</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" height="394" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol27/ph02.jpg" width="540" /></p>
<br />
<p>
	その頃、ボクは東京湾で潜る仕事をしていた。<br />
	最悪だったのは、ヘドロで泥まみれになった都会の海底では、3m先がまったく見えない闇夜のようで、自分がどこにいるのかも判らなくなってくる。毎日が洞窟探検でもしているような緊迫感で、ストレスがカラダを締めつけていた。<br />
	それでも、暗黒の海底のなかにほんのりと灯るひとつの希望がみえかくれしていた。<br />
	あと3週間もすれば、エジプトのスエズ運河での仕事に参加できることだった。<br />
	<br />
	すぐそばにある地中海をわたると、エーゲ海の島々に囲まれたギリシャがある。すべてが白く光り、すべてが青くきらめく、まぶしくて雪の降らない遠い国。子供の頃に観ていたフランス映画で深く深く染み込んでいる。<br />
	行ってみたいと思っていた。あこがれがふくらんで夢のなかで、エーゲ海を泳いだりもした。<br />
	海辺からの坂道にぎっしりと白い家がたちならんでいて、山までつづく大きなカイダンのような街並みのどこかで、冷えきったグラスをにぎりしめて、ビールをのむ。<br />
	海を見下ろしながらね。美味いだろね。たまらないよね。<br />
	てな思いで、胸は熱くなっていたのだ。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" height="427" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol27/ph03.jpg" width="540" /></p>
<br />
<p>
	事件が起きた日は久しぶりの秋晴れだった。強い陽光が海面をとおしてゆらゆらと静かに射し込んでいた。オレンジ色のメバルが、こちらを気にするように泳いでいる。ヘドロの海底で魚をみるのは、めったにないことだった。<br />
	めずらしい光景に目をやりながら、作業する手も止まりがちだった。<br />
	<br />
	ズドーンと海面をたたきわる音が、海底をゆさぶり、竜巻のように隆起した水流が根こそぎかきまわした。海底を狂った突風が吹き荒れたようだった。</p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201110/post-2.php</link>
            <guid>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201110/post-2.php</guid>
            <pubDate>Thu, 06 Oct 2011 14:13:50 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>きらきらひかるやさしい風に逢いたい 1</title>
            <description><![CDATA[<br />
<p style="font-size: 16px; color: #7b0000;">
	<strong>八雲の海に抱きしめられた</strong></p>
<br />
<p>
	いつのまにか新しくリッパになってしまったハコダテ駅にいた。札幌行きのキップを手にして待合スペースで腰掛けている。<br />
	ハコダテ駅よ、お前だけ21世紀の顔みたいなふりをしたってよ。<br />
	街の風情はちっとも変わってなくてよ、寂れながらもいい感じで輝いていたぞ。<br />
	てなこと率直に思っていた。<br />
	あまりにも閑散としていて、まるい地球を無理やり四角に変えてしまったような、不自然で冷たい風が漂っているようだった。<br />
	まーそれでも、ボクは列車の旅は嫌いではないのだ。</p>
<br />
<p>
	ひとりポツンと窓の外の風景にとけこんで、やさしくされている気持ちは悪くないしさ。ヒトの気配でなんとなく安心の温もりがあって、自然の時間が流れているように思う。<br />
	座席に背中をあずけながらこきざみに揺れる列車の動きで、読みづらいはずの本が、カフェや自宅のソファで静かに読むときの気分とは、何か違う感触でしみこんでくる。<br />
	列車の揺れで生まれてくるリズムが、ここちよくリラックスさせているからかね。目が疲れて顔をあげれば、窓の外の風景がスーっとなごませてくれて退屈させないしさ。それに歳をとってくると、なんだかひとつひとつの時の流れを大切に受けとめようと思ってしまうんだろうね。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="あぶないスー　ふー" height="300" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol26/ph01.jpg" width="540" /></p>
<br />
<p>
	列車は函館を離れて、のんびりと札幌に向かっている。<br />
	ハコダテはいつきてもボクの気持ちを揺さぶり、なんどおなじところを訪ねても確実に、またちがったおもしろい顔を表現してくれた。<br />
	コレって何だろうな。<br />
	たとえばね、こんなことだろうか。<br />
	ヒトの限界をはるかに超えてしまった文明のシステムが、がちゃがちゃ音をたてて走りまわっているような都会の臭いが、ここハコダテにはないからだと思う。子供の頃に観たイタリア映画のような哀愁が息づいていたり、路上の犬や猫たちがヒトの気配を気にしている風でもなくのんびりあくびをしている。路面電車の時間表をみていると、気軽に声をかけてくれるおじさんがいたり、ついでに、眼鏡をなくしちゃってヨーこれから捜しにいくのヨー的な会話をしてくる。<br />
	あれ、このおじさん危ないヒトかね。てな風でもなく、ごくあたりまえに日常のことのような感じだった。修学旅行の小学生たちに向かって、コラお前ら線路で遊ぶな電車がガァーってくるからヨー。てなことも普通にぶちかましている。<br />
	ヒトがヒトとの関わりを昔のように大切にしてきた証しのようだった。それがハコダテだった。ヒトが積み重ねてきたノスタルジーがコンクリートや便利な文明に負けることなく、泥臭い温もりとして静かに息づいているのだ。</p>
<br />
<p style="text-align: center;">
	<img alt="" height="347" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol26/ph02.jpg" width="540" /></p>
<br />
<p>
	列車は八雲に停車した。<br />
	噴火湾からの潮風が囁くように線路脇の野花を揺らしていた。<br />
	その先の国道5号線を横切ると、海原が限りなくひろがっている。<br />
	ボクは子供の頃から、海と話ができた。<br />
	だからおそらく、なぁー久しぶりじゃないか、あれからちっとも顔をみせてくれないね、どーしてたんだ、30年も。<br />
	てなこと聞かれるはずだ。<br />
	白い光をきらきらさせながら、背丈草をわさわさ揺さぶりながら、30年前のあの時のように聞いてくるにちがいない。</p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201109/post-1.php</link>
            <guid>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201109/post-1.php</guid>
            <pubDate>Thu, 01 Sep 2011 11:49:24 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>函館編　その11</title>
            <description><![CDATA[<p style="text-align: center; background-color: rgb(142, 207, 245);">
	<img alt="HAKODATE MAP 11" height="370" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol25/map.jpg" width="540" /></p>
<p>
	<br />
	<img alt="函館編11" height="50" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol25/title.gif" width="200" /></p>
<br />
<p>
	ハコダテ駅まで路面電車で行くのはやめた。<br />
	海の観える岸壁の近くのベンチに腰を下ろした。湾内の遠くを走る白い観光遊覧船を観ていた。 また昔を、思い出していた。</p>
<br />
<p>
	ハコダテに何度も来ていて、海から街を見たことがなかった。<br />
	んじゃ観光船に乗ってみっか。てなことで、すかさず乗船することにした。<br />
	はじめての観光船、それはやはり7年前の訳ありのあのヒトといっしょのことだった。<br />
	というのも列車の時間まで2時間近くもあったのと、なんだか会話も暗い感じがつづいていたから、気分を変えたかった。<br />
	船内のホールでサービスのドリンクを受けとって、2階のデッキに向かった。<br />
	ボクはウーロン茶で、あのヒトはビールを持った。<br />
	船はゆっくりと走りだし、沖に向かう。赤レンガ倉庫はどんどん小さくなって、ゆらゆら揺れて観える。<br />
	舳先でかきわけられた波は、砕けて飛び散り霧のようになって顔をぬらした。それでもなにかうれしい気持ちが湧きあがっていた。自転車のぺダルに足をのせたまま坂道を勢いよく滑らせ、下から巻きあげる風を切りさいて走るときの気分。それと同じものを感じていたからだった。<br />
	横でビールを飲むあのヒトは無言のまま沖を見ているようだが、ボクは内心浮かれていたのだ。ああ、いいなこの風の匂い、たまらなくいいな。てなこと思っていたとき、あのヒトがちょっと下に行ってくるね。とボクにビールを渡して階段を下りていった。<br />
	右手にウーロン茶、そして左手にビールを持ったまま風に吹かれていた。<br />
	突風が舞いあがり、目の前を横切ろうとしたカモメといっしょにボクの帽子も吹き飛んだ。反射的に飛んでいく帽子を右手で捕まえようとした。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="ああ　ボクの帽子　サヨーナラ" height="342" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol25/ph01.gif" width="540" /></p>
<p>
	すると、ウァヒーワワワッてな・・・・・情けない男の悲鳴が左から聞こえてきた。大げさな声の次に、感情的な顔でボクに何か言っていた。<br />
	けど、ボクの視線は海に浮かぶ帽子を見ている。陽焼けしていい感じの色合いになっている帽子。15年近くもかぶってきた思い出深い帽子。なんで飛んじゃったの。てなこと考えていた。<br />
	しかし、とんでもない事件は起きてしまっていた。<br />
	となりの怒っている、その方の顔から白いワイシャツまで、茶色いウーロン茶でずぶ濡れになっていることに、ボクはまったく気がついていなかったのだ。<br />
	あれー、それって、オレがやったの？・・・・・てな感じなのだ。<br />
	とにかく、ポケットからくちゃくちゃのハンカチをとりだして拭いているのだが、いまいちピーンと来ていないのだ。・・・・・そっかぁ、あれか、帽子を捕まえようとした時だね。とにかく、とにかく、とにかーく。謝りながら洗濯代を請求してくださいと自分の名刺を渡した。そして当然のように、その方の名刺をいただきたいと要求をしたとたん、その方の顔色は感情的なものから穏やかな顔つきに変わり、いやいや、もーいいですからと事件のあったデッキから離れていったのだ。<br />
	あれれ、ウーロン茶で茶色になってしまったままのワイシャツで、どこに行ったんだろうかと考えてしまった。<br />
	「アンタの顔がコワイひとにみえてきたんじゃない」てなこと、いつの間にか帰ってきていた訳ありのあのヒトがぶつぶつ言った。<br />
	飛んでしまったボクの帽子は、波にのまれて消えていた。</p>
<br />
<p>
	なんだかスッキリしない気分のまま遊覧船を降りて、赤レンガ倉庫のカフェでお茶をしていた。すると、先ほどのウーロン茶をかぶってしまったあの方が入って来た。<br />
	ボクの顔をみたとたんユータンをして出て行ったのだ。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="ウーロンの神様は茶色なのか？　ニワトリ先生するどいですね。" height="342" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol25/ph02.gif" width="540" /></p>
<p>
	なぜなんだ。あれはどうゆうことだったんだ。岸壁のベンチで7年前の、そんな記憶をたどっていた。<br />
	名前をあかすのを拒んだあの方は、もっととんでもない事件を背負っていた逃亡者だったのか？　それとも本当にボクの顔がコワイひとにみえてきたのだろうか？<br />
	そんなことアンパンマンにだって判るはずがないだろうし、人生はいつだって謎だらけなんだ。この先何が起きるか誰にもわからないのだ。<br />
	とりあえず腕立て伏せ100回ぐらいやりながらカラダを鍛えておくしかないのだ。<br />
	てなことで、イカ墨ソフトクリームをしゃぶりながらハコダテ駅に向かった。</p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201106/11.php</link>
            <guid>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201106/11.php</guid>
            <pubDate>Thu, 30 Jun 2011 19:27:45 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>函館編　その10</title>
            <description><![CDATA[<p style="text-align: center; background-color: rgb(142, 207, 245);">
	<img alt="HAKODATE MAP 10" height="370" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol24/map.jpg" width="540" /></p>
<p>
	<br />
	<img alt="函館編10" height="50" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol24/title.gif" width="200" /></p>
<br />
<p>
	十字街の近くでバスを降りた。このまま路面電車に乗ってしまえば、函館駅に行ってしまうことになる。<br />
	なんだか後ろ髪引かれるような気がして、反対の南部坂を見上げていた。</p>
<br />
<p>
	この左奥には、谷地頭温泉がある。<br />
	この温泉の風情がたまらなくいい感じなんでさ、若い頃から何度も来ているのだ。<br />
	泊まるところはいつも同じでね、老舗の旅館らしく、お風呂の湯の花が床のタイルを隠すように広がっていて歴史の匂いがする。あふれて流れ落ちる湯道も、波紋が造りだした茶黄色の花を咲かせている。<br />
	硫黄の色がずっしりと染み込んだヒノキの湯船に、背中をあずけながら湯煙がたちあがるのを見ていると、ただただ溜息がもれてきて、なにか温かいパワーで支 えられているような不思議な思いが染みてくるんだ。湯の中にいるんだからあたりまえのことであるが、なんて言うのか俗世間では、なかなかそんな温もりと出 逢うことは少ないよね。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="KAZENO RAKUENN" height="340" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol24/ph01.gif" width="540" /></p>
<p>
	火照ったカラダに糊の効いた木綿のユカタを羽織って、風呂場からの渡り廊下を歩いていると、庭の春の草が山から吹きおりた風で揺れていた。<br />
	ガラス戸を少しあけて、ユカタの襟をひろげて風をいれると冷やりとして気持ちがなごむのだ。このままここに座り込んでビールを手にしながら、庭を観ていたいといつも思っていた。</p>
<br />
<p>
	そしていつでもそうしているように、しばらくしてから函館山の山頂に向かうのだ。<br />
	7年前のことだった。<br />
	ロープウェイの切符売り場で「今日の夜景は無理じゃないか」と言われた。<br />
	昨夜の強風のなごりで、山背の風が乱れはじめていた。山頂をモヤと雨混じりの霧がとりまいていて月も星もないのだ。てなこと言われたが、それでも行く。ぜったい行かなきゃならないと思っていた。<br />
	吹き荒れる風の音を耳にしながらロープウェイに乗った。夜景が見えるはずの展望喫茶の壁いっぱいの窓越しに、灰色にまきあげるモヤがへばりついている。<br />
	訳ありのあのヒトとここで別れ話しをしたことがある。そんな記憶が気持ちをゆさぶり強行させる理由でもあった。男はそんな苦いひとときを、ロマンとして楽しむ時間が必要となることがあるのだ。<br />
	カフェオーレを飲みながら、この窓越しに沈む夕日が観れたらしびれるんだろうな。てなこと考えたり、北九州のホテルの大きなガラス窓からも、玄界灘の海辺のホテルからも、その訳ありのヒトと観てしまった夕日を思い出していた。<br />
	そんなとき急に山背の風が逆にせりあがり、灰色のモヤの中から街の灯が観えはじめ、地上が星空のようにきらきら輝いていた。こんな凄い出来事が突然やって くる。天神の龍が暗雲をけちらしてくれているのだ。お前よ、ロマンばかりじゃ活きられないのよ、もっと前を登るのだ。てなこと言われているような気がしたのだ。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="ステキな夜ね　星だ　ガラララー　グルルル" height="340" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol24/ph02.gif" width="540" /></p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201105/10.php</link>
            <guid>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201105/10.php</guid>
            <pubDate>Fri, 06 May 2011 18:31:24 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>函館編　その9</title>
            <description><![CDATA[<p style="text-align: center; background-color: rgb(142, 207, 245);">
	<img alt="HAKODATE MAP 09" height="370" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol23/map.jpg" width="540" /></p>
<p>
	<br />
	<img alt="函館編 9" height="50" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol23/title.gif" width="200" /></p>
<br />
<p>
	ボクはいまロイヤルミルクティーと雑誌の両方に集中している。<br />
	「野生のピューマが獲物を狙いさだめるとき、静かに草のなかで身を沈めて、いつでも跳びかかろうとする緊迫した姿は美しい」雑誌の写真は、そんなふうに語っていた。<br />
	ニンゲンは野性の世界から、もっと学ぶことがいくらでもあって、ズーっと昔の人間は自然から深く学んだものだった。今、それが薄れてきて物事の本質から遠ざかってしまった。てなこと、雑誌のページから読みとれる。</p>
<br />
<p>
	ロイヤルミルクティーはどうなんだ。紅茶の深い香りを包み込むように、粘りのあるミルクがコクを作り、舌の奥でまろやかにひろがる感触が、ほしかった。ピューマのような野生の緊迫した、旨味は伝わってこなかった。てなことは書いていないけどさ。ミルクティー作ったヒトに、この雑誌みせたいよな。</p>
<br />
<p>
	さて、ここを出てどこに行こうかと考える。かなり昔だったけど、この近くのどこかの坂に、鯨を祭った神社があったことを思い出した。<br />
	注文のときに少し間を作った可愛らしいスタッフに、神社のことを聞いてみることにした。<br />
	「ちょっとおまちください」と、その子は奥のキッチンで聞いている。誰もが「そんなの知らねーよな？」てな顔をしている様子が伝わってくる。他のホールスタッフにも聞いてくれていた、そしてついに料金所のあの忘れちゃならない美しい娘さんにも聞いていた。<br />
	ボクはすでに立ちあがっていて、いつの間にか、その料金所の近くにいた。<br />
	あったような気がするけどさ、どこの坂なのか判らない、とふたりで話していた。<br />
	「あーそうなんですか、そうですか、ま、捜してみますよ」てなこと言って、ボクはふたりの会話のなかに、なぜか割り込んでいたのだ。何だろうねこのオヤジは、てなこと自分に少し思った。しょうがないな誰も判らないのか、しょうがないな、てな顔で階段を下りて、外に出たのだ。<br />
	忘れちゃならない美しい娘さんをチラっと振りかえって観た。娘さんもチラっと見ている視線を感じたのだ。まさにこれがピューマの緊迫なのだー。ゲへへへへ。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="野生の親はこどもにたくましさを伝える　ニンゲンの親はだらくのココロを伝えるのか" height="340" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol23/ph01.gif" width="540" /></p>
<p>
	さてさて、ここから弁天末広通りを西に向かう。<br />
	そしてその鯨の神社を捜すことにした。<br />
	基坂・東坂・弥生坂・常盤坂・姿見坂・幸坂・千歳坂・船見坂・魚見坂のどこかにあるのは確かなのだが、ひとつひとつ覗きながら歩くのだ。ヒャーこりゃ大変なことになってきた。</p>
<br />
<p>
	そもそも鯨に興味をもちはじめたのは、20代のはじめ頃だった。<br />
	その頃はダイバーをしながらカメラを首から下げて、取材のようなことをしていた。まだまだセミプロであって、素人の撮った写真とレポートを雑誌社に売り込む、そんなきわどい生活をしていた。ある時、ニホンの最東端にある南鳥島に行く船のことを知った。観光気分で気楽に行けるような島ではなく、ほとんどのヒトに知られていない魅力があった。ただキツイ条件があった。気象観測用の水素ガスボンベを背負って運搬する作業員としての採用試験がある。<br />
	南鳥島には米国軍基地と小さな観測所しかない。海抜5メートル。歩いて30分たらずで一周できてしまうサンゴ礁の島。海辺には何千羽もの野生の黒アジサシが群がっている。誰も行ったことのない宝石の島だった。<br />
	500トンの黒い貨物船で太平洋の海原を旅することは、はじめての経験で、コウフンして眠れなかった。3日目の夜は、星がすぐそこまで降りてきて、この手のなかにつかめそうな光景に胸がいっぱいになった。<br />
	いままで知っている自然の世界とは、まるでちがっていた。観たことのない空の青さがひろがっていて、都会の匂いもスモッグのような現象も起きていない大気の風が、素肌になめらかにそそぎ体内に染みてくるのがハッキリと感じられた。手のとどかない空のなかの風は、こんなに新鮮で生きている実感を湧き立たせてくれるものなんだと知った。<br />
	なんのかざりっけもなくて、おだやかで、やさしくて、ひたすら青い海原も水平線のかなたで、空といっしょに輝いて観せてくれる。なんだろう、この目の前でゆらゆらと包み込んでくれる大きな自然の世界は、ニンゲンの知恵だけではとうていかなわない深い深い驚きは、なんだろう。<br />
	次々と不思議な思いが胸をふくらませて熱くした。</p>
<br />
<p>
	そんな時だった。貨物船の左舷に近づいてくる鯨を観ていた。ゆうぜんと泳いで船の横にならんでくる。力強い海のとどろきのように黒い活きたカタマリが、どこまでも静かに泳いでいる。信じられなかった。<br />
	ニンゲンに対する警戒心を、まったくみせようとしていないばかりか、生まれてまもない子供を連れて泳いでいた。そんなやさしい姿に感動するしかなかった。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="mAKKOU　SYACHI" height="340" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol23/ph02.gif" width="540" /></p>
<p>
	この時の出逢いがキッカケで、鯨に興味を持ってしまった。いろいろと調べていくうちにおもしろいことが解った。18世紀の動物学者たちが、陸上の古い哺乳類の化石とにているところから、おそらく先祖は共通しているだろうと推論したのだ。<br />
	鯨の先祖は海に帰り、そこで生活をするようになった。陸に残った鯨は進化して象になったと言われている。鯨と象は親戚だと思った。陸での争いごとをさけるように、鯨は海に戻った。そんな鯨の気持ちに、ボクは感銘したのだ。<br />
	それ以来、鯨を意識して人生を過ごしてきている。鯨のようなやさしい気持ちで活きてみたいと思ったからだった。</p>
<br />
<p>
	観光ルートから離れてしまっている9個の坂たちには、のんびりとした少し悲しげな風がいすわっていて、静まりかえっていた。それでも何とも言えないような、遠い過去の美しさが埋め込まれている。そんな気がしてならなかった。<br />
	・・・・・捜しまわってみたが、鯨を祭った神社を発見することができなかった。帰る時間が迫ってきていた。入舟町からバスに乗った。後部座席に腰を埋めて、窓越しに鯨を捜した。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="KAIBUTU　CUZIRA　旧約聖書のなかにでてくるクジラはカイブツあつかいだった" height="340" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol23/ph03.gif" width="540" /></p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201103/-9.php</link>
            <guid>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201103/-9.php</guid>
            <pubDate>Thu, 31 Mar 2011 17:30:18 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>函館編　その8</title>
            <description><![CDATA[<p style="text-align: center; background-color: rgb(142, 207, 245);">
	<img alt="HAKODATE MAP 08" height="370" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol22/map.jpg" width="540" /></p>
<p>
	<br />
	<img alt="函館編　8" height="50" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol22/title.gif" width="200" /></p>
<br />
<p>
	星型のお堀の先端に立つと、マンションやビルの街並みが観える。その向こうに函館山がポっつらとあって、山をかこむように津軽海峡が広がっているだろう。<br />
	海を渡ってきた風が、足もとの野草をなでまわし、ボクの背中でうずまいて消えた。<br />
	土方歳三も、この先端に立ったことがあったんだろうか。彼は坂本龍馬と同じように、未来の日本に希望を抱くようなポーズをつくりながら、遠くの海を観ていただろうか。歳三は龍馬と深く話をしたことがあるんだろうか。<br />
	てなこと、意識した訳でもなく、ふらっと空から舞い降りてくるように思いが走ったのだ。おそらくこの先端に立つヒトは、誰もが思うことなんだろうな。<br />
	近藤勇・沖田総司・勝海舟・西郷隆盛・岡田以蔵、そして龍馬と歳三。ボクの子供の頃から、ズーっと時代のなかで活きつづけてきている。なぜこの人達ばかりが、現在でもヒーローとして忘れられない存在であるのか不思議である。昭和の時代には、これほどの存在感と名前を残すヒトはいなかったということなのか。不思議でならない。<br />
	純心な男たちが報われない時代だったから、そのココロザシが強烈な記憶として人々に残ってしまったからだろうか。<br />
	てなこと思いながら、電車に乗った。十字街で降りて二十間坂の中腹あたりから、先ほどとは逆に五稜郭公園の方向を観ている。</p>
<br />
<p>
	足に負担がかかってきているのを感じた。ふくらはぎがぶるぶる震える。これ以上に急な坂を登ったり下ったりするのはやめて弁天末広通りを歩きはじめた。<br />
	西風が港のほうから吹いてくる。ゆるい風は気持ちがいいよね。また露天風呂にでも浸かって、海風に吹かれながらゆっくりしたいなと思った。<br />
	下り坂との交差点を渡るたびに、青い港が見えた。おだやかな港内を遊覧船のつくりだす白い波だけが、流れ星の尾のようになぞられていく。<br />
	港を見下ろす風景は好きなんだと思う、と言うより中学生の頃に見慣れた風景が、カラダのどこかに染みこんでいるんだろうな。ボクは室蘭で生まれたから、小樽だとかハコダテのような港のある町に、なんとなく来てしまう。<br />
	そしてこんな風に港を見下ろしながら歩いてしまうのだ。胸の奥でしっくりとするような、自分の存在を受けとめられるような、そんな気分になれるからだろう。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="近藤勇・沖田総司・勝海舟・西郷隆盛・岡田以蔵、そして龍馬と歳三" height="290" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol22/ph01.gif" width="540" /></p>
<p>
	いくつかの下り坂を横切ったあたりだった。ふくらはぎの震えが、下腹部あたりでぐりぐりと鳴る音に変わってしまった。「あれーあれーなんだ・・・・・またかよ」てなことになってきた。<br />
	とにかく、近くのカフェを捜す。カバンのポケットから地図を出す。ここから距離にして10分ぐらいかな。もーすぐ楽になれるぞ、てな勢いで向かった。<br />
	緑色にペイントされた横長の間口。つきだしたヒサシを支える何本かの柱に、バラの蔦がからみついているヨーロッパ風のたたずまいだった。おっ、いい感じのカフェじゃないかな。ここのトイレなら、アンティーク調のかわいらしい空間だろうなーとなんとなく思えたのだ。<br />
	デパートの閑散とした空間とはちがって、流れる水の音も小川のようにさらさらとしていて、小鳥でも鳴いているようなイメージも湧いてきていた。それもこれも、なんとか早く落ち着きたいってな思いと、自分自身に魔法でもかけないとヤバイことになるからね。<br />
	てなことで、ドアのノブに手をかけて引こうとしたら、開かないのだ。店内の様子をうかがうように、耳をかたむけてみた。ひっそりと静まりかえった空気が伝わってくる。よく見るとドアノブに小さなカンバンが架けられていた。<br />
	「本日の営業は終了させていただきました。」って、どーゆうこと。<br />
	吹き抜けていく風の音に、意識が遠くなるような気がした。・・・・・とにかく、別の店を捜す。ただそれだけで頭がいっぱいになっていく。<br />
	人生には予想もしないことが、どんどんと起きてくる。ジっと耐えることも時には必要なのである。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="ギリギリ　パー" height="323" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol22/ph02.gif" width="540" /></p>
<p>
	石畳がしきつめられた左側の登り坂の奥で、イギリスの国旗がゆれている。この国旗が呼んでいる。ボクは僕に言い聞かせた。・・・・・てなことよりとにかく領事館の石段をかけあがり、入口に飛びこんだ。奥の階段は少し高目になっている。モダンな照明は薄暗い感じがした。受付けカウンターにはふたりの女性がいた。入場料が設定されていて、すこしとまどってしまった。「どのコースを見学しますか？」と声をかけられた。コースによって料金もちがっている。大人は300円だった。頭のなかで鳩がぐるぐる廻りはじめていた。ボクはとまどっている、どーしたものか、とまどっている。<br />
	「あのー正直に言っていいですか。・・・・・トイレに行きたいだけなんです。スイマセン」すると意外にも「あ、どーぞ。その手前のドアですから」とやさしくされた。その女性の顔は忘れないと深く深く思ってしまった。</p>
<br />
<p>
	おだやかな気分になってしまったせいなのか、女性にやさしくされた義理立てなのか、そのまま奥のティールームでお茶をしていくことにしたのだ。英国の雰囲気を味わいながら、おしゃれなひととき、てな感じがただよっていた。アンティークなテーブルが、がっしりとしていて掌で撫ぜてみると、なめらかな感触が伝わってきた。窓の外のバラ園のあたりで、寄りそい合った恋人たちのうらやましい姿が、眼に焼きつくように飛びこんできても、今は美しいと思える気分である。<br />
	やがてかわいらしい女性スタッフがメニューを開いて、注文を聞いた。おしゃれなティールームで英国なんだから、そりゃロイヤルミルクティーでも飲んでみたくなる。とりあえず聞いてみたのだ。「イギリスだから紅茶は旨いよネ」。するとね「・・・・・エッ、おいしいです」。少し間のある返答が気になりますよね。</p>
<br />
<p>
	「便利になって、最も困っているのが　ニンゲンなんだよな」<br />
	東本願寺の門の横でみつけた、大きな書き文字を思い出してしまった。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「まー大変」　どーぞ　おじーさんは近いですからネ" height="293" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol22/ph03.gif" width="540" /></p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201102/8.php</link>
            <guid>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201102/8.php</guid>
            <pubDate>Thu, 24 Feb 2011 17:12:59 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>函館編　その7</title>
            <description><![CDATA[<p style="text-align: center; background-color: rgb(142, 207, 245);">
	<img alt="HAKODATE MAP 07" height="370" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol21/map.jpg" width="540" /></p>
<p>
	<br />
	<img alt="函館編　7" height="50" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol21/title.gif" width="200" /></p>
<br />
<p>
	競馬場から4っ目の停留所の五稜郭公園前で、電車をおりた。目の前のデパートに突撃する。と言うのも、電車にのったとたんに下腹部がぐりぐりと鳴りだしてきたからだった。<br />
	エスカレーターを小股の早走りで駈けあがった。ゴージャスな照明がまぶしい婦人服売り場を、おじさんはウロウロと歩きながらトイレを捜した。<br />
	思い込みで2Fに突入したのは、まったくのハズレだった。それなら地下の食品売り場へといそぐのであるが、ふたつあるエレベータの前で、黒いコートの怪しいご婦人が突っ立ている。<br />
	このヒト、ジっとしていないのだ。エレベータの表示ランプが灯るたびに移動する。左のドアに、そして右に、何度もさ、ボクの前でやっているんだよ。そんなことされるとさ、なんとなく腹が立ってくるものである。でね、ご婦人のタイミングが大はずれでさ、左に動いたとたんに右のドアが、シャーってな音をたてて開いてしまった。<br />
	ボクはすかさず、なかにおさまったのだが、ご婦人はなかなか入ってこないのだ。ドアをおさえながら、覗いてみると、表示ランプをみたまま動こうとはしないのだ。多分いじけてしまったんだよ。<br />
	「どーぞ、ドアが閉まりますよ」てなふうに声をかけてみた。<br />
	「おっへー・・・・」てな作り笑いをしてみせていたが、鋭い目つきで天井をにらんでいた。</p>
<br />
<p>
	食品売り場のトイレは快適だった。嵐がすぎさって、さわやかな静けさにつつまれている、そんな感じである。それしても、エレベータのあのご婦人からただよってきた、ひんやりとした空気は恐ろしいものがあったね。なんか殺気だっていたからさ、もー絶対に逢いたくないよねと思っていたところに、魚売り場の人込みのなかで動きまわっている黒いコートがみえてしまったのだ。あれれれ・・・また、でたな。てなことで、なんとなく人込みの遠くから、ちょっとだけ覗いてみたのだ。<br />
	立派なマグロがドーンと横たわっていて、包丁を持ったおやじさんが、黒光りする背びれをにぎって、手早く解体していたのだった。<br />
	あのご婦人は、横たわるマグロの前をフラダンスでも踊るようにはしゃいでいた。なんでしょうね、このヒトは、そーだな波風たてながら、へたくそなクロールでばたつく熱帯魚。てなことで納得した。でね、よーく考えると僕はこのご婦人のマジックにピピピーって、取り込まれていたんだと思う、もう少しで金の壺だとか買わされるところだった。</p>
<br />
<p>
	しかし、マグロの醤油わさびの熱い茶漬けを食いたいなー。てなこと考えながら、近くにならんでいる弁当をながめていた。鮭弁を買って、デパートからでた。天気は上々でさわやかだった。どこかの草むらで、ひとりピクニックでもしょうかなーと思った。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「マグロちゃんスキ」「下腹部の嵐よ」" height="300" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol21/ph01.gif" width="540" /></p>
<p>
	なんどもハコダテに来ているのに、五稜郭公園あたりを探検するのは、はじめてのことだった。<br />
	広い駐車場を通りぬけて、ボクは弁当をゆらしながら奥へとすすんだ。星型のお堀をつなぐ大きな橋を歩いているとき、手漕ぎボートが石垣の下でならんでいるのをみつけた。なつかしいと思った。<br />
	ボートは多くの視線があるなかで、ふたりっきりの親密な空間を作りだせる道具であると思う。ゆるい風が背中をぬけて、あのヒトの透きとおるブラウスの襟もとが、ふわりとゆれて、なんとも言えない感触と深くてやさしい時間がただよっていた。てなことも遠い昔にあったような気がした。<br />
	橋を渡りきった先に、藤の棚のトンネルがある。曲がりくねったか細い老木は、100年も前からここで活きている。枝のひとつひとつに想像もつかない、長い時間の思いがしみているような香りがした。そして枝先は、どこまでも青い空を目指してのびていた。<br />
	淡いムラサキ色のつぼみがたれさがり、風がそよぐと静かにゆれる。<br />
	ボクは櫻の木がなによりも好きなのであるが、藤の花がたれさがるトンネルを、ゆっくりと歩くのもたまらないものがあるのだ。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「あ　ハァー」「へんなオヤジだよね　クアー」" height="280" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol21/ph02.gif" width="540" /></p>
<p>
	藤の棚をぬけて、石垣の壁の道を曲がると、草むらが広がっていた。その中央にある登り坂をあがり切ると、お堀の向こう岸がみえる高台にでた。きらきらする水面に空と雲が写っている。ときどき風が吹きおりて、さざ波が空と雲をゆらしていた。<br />
	ボクはその風をさけるように、小道を歩いた。ちょうど星型の先端あたりの陽だまりのある草地に、あぐらをかいた。気持ちがおちついた。<br />
	鮭をわりばしで割って、口にはこんだ。マグロの刺身が食いたいと思った。<br />
	視線をあげると、ママチャリを押してくる老夫婦がみえた。ふたりは小道をはずれて、草のなかに自転車をおいた。籠から花柄のビニールシートをだして、草地にしき、ふたり並んで、お堀の池がみえる方向に座った。その横には、うすい紅色のツツジが咲いている。<br />
	なんとも言えない、静かで素朴な老人のピクニックをみている。ふたりは弁当を開けて、黙ったまま食べはじめた。<br />
	ボクは胸にしみてくるものを感じて、泣きそうになった。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「Itumo」「FutaRi」「なにみえる」" height="280" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol21/ph03.gif" width="540" /></p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201101/7.php</link>
            <guid>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201101/7.php</guid>
            <pubDate>Wed, 26 Jan 2011 17:08:43 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>函館編　その6</title>
            <description><![CDATA[<p style="background-color: rgb(255, 224, 221);">
	<img alt="HAKODATE MAP 06" height="370" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol20/map.jpg" width="540" /></p>
<p>
	<br />
	<img alt="函館編　6" height="50" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol20/title.gif" width="200" /></p>
<br />
<p>
	ザブーン・スダダダー。激しい海鳴りで起きてしまった。<br />
	霧はすっかり消えていて、きらきら海面のひかる水平線がひろがっていた。<br />
	さわやかな気分だった。いつまでもホテルにいるのもなんだから、でることにした。さて、今日はどこに行こうかと考えながらホテルを出たとたん、つまずいてバンザイするように前のめりのまま飛んでしまったのだ。まー気分のいい日はこんなこともあるのよ。とりあえずとことこ電車の線路沿いを歩くことにした。</p>
<br />
<p>
	すれ違うあのコも、さっきのソフトクリームのようなてんこもりカットのおばちゃんも、なんだか美しくおしとやかにみえてくるのはナゼなんだ。空にスカイブルーの透きとおった空気が流れているからか。それともドーナツを食いたいからか。ナゼだかよく解らないのだ。<br />
	左手に線路が何本もいりくんでいる広場がある。おそらく電車の車庫なんだろうね。門の前のカンバンに路面電車の歴史のようなものがあるから、ジーっとみることにした。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「大谷くん　君はスナイパーみたいだね」「カントクもゴルゴサンテンみたいス」" height="246" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol20/ph01.gif" width="540" /></p>
<p>
	ここは100年前は馬車鉄道だったんだわ。<br />
	馬糞風が吹いて臭いのヨ。馬車はとろとろスピードが遅くてさ。てな理由で電気式鉄道に変わってしまったんだね。<br />
	『駅馬車』って映画があってさ、西部劇なんだけどさ、砂漠のような赤い土の荒野を駅馬車が走っているところに、インディアンがライフル銃を片手にふりまわしながらさ、キャホーキャホーてな奇声をぶちまけて、その駅馬車を強奪しょうとするわけなのね。<br />
	でね、駅馬車の御者は逃げようとして馬のたずなをピシャピシャやったり、ムチでびゅーびゅーぶったたくのさ。叩かれた馬たちはよだれを吹きながらスピードをあげて走るんだわ。ああ馬は何にも文句を言わず叩かれるまま走ってしまうんだなーてなこと思ってしまったのよ。<br />
	馬の目は静かで奥深くてやさしいんだよね。<br />
	そんなやさしい馬の走る馬車鉄道でパカパカゆったり会社に行くのもいい感じだと思うけどさ。ニンゲンはスピードが好きなんだね。<br />
	てなこと考えていたら、車庫の屋根越しに緑色の管制塔のようなものを発見したのだ。ハコダテ競馬場があの先にあるんですね。<br />
	&ldquo;ひゃー&rdquo;なんて、胸が熱くなって声がとびだしそうになってね、ものすごくなつかしいのさ、ここで起きたおもしろいことを思い出したのだ。<br />
	もー何10年も前のことだけどさ、野蛮人のへんとこりんなおっさん達の野球チームがあってね、そのメンバーとハコダテの七重浜でキャンプをしたんだよ。夜のキャンプファイヤーの資金は競馬で作ろうじゃないかって、肉も酒もカニもタコもどっさり食いたいから、競馬場にどどどってなだれ込んだのさ。<br />
	ところが、さっぱり当てられない。誰がどーやってもポケットがふくらまない。作戦が悪いんだってなことでね、パドックに行くことにした。<br />
	パドックでは競走馬が目をつりあげて、前足をかきこむように歩いているんだよ。それをとにかくとにかくジっくりにらむように観たのである。すると、メンバーの大谷くんが「カントク！　あの馬さ、なんかおかしくない？」なんて聞いてくる。カントクってボクのことだよ。大谷くんってね、なにやらせても墓穴をほってしまう性格でさ、ときどきズボンのチャックなんか開いてたりするんだよ。<br />
	その彼が、あの馬を観ろっていうのである。<br />
	「あの8番の茶色いやつのこと？」<br />
	たしかに他の馬とはどこか違っていた。鼻息が荒くオレは走るぞーてなふうでもなく、ボケーっとしているようだけど、深く観察すると上品でぴかぴか輝いているのである。しかも、地面から5センチも浮いているようにみえる。<br />
	「なーあの8番。サンタクロースのトナカイみたいなやさしい目をしてるぜ。たしかに地面から飛んでいるな」<br />
	ボクたちには、そーとしか思えなかった。<br />
	この馬の名前は忘れてしまったけど、人気はまったくなくて、けっこうな倍率になっていた。<br />
	ポッケトの最後の1000円札をにぎりしめて、馬券売り場の窓口で「大谷！これでいいんだな」「はい」「おーし買うぞコノヤロー」てなこと騒ぎ立てながら8番の馬券に賭けてしまったのだ。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「いただき」「ブルル」「カホー」「大谷くん」「バカヤロー」「クソー」「コノヤロー」" height="296" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol20/ph02.gif" width="540" /></p>
<p>
	ボクたちふたりは人込みをかきわけて、ゴールのみえる手すりに張り付いた。<br />
	レースは始まった。あいつは中段あたりの内側を走っている。気の強そうな馬におされるように挟まれている。それをみてしまったふたりは、やっぱりダメなんだ。いやいやそんなことはない、絶対くるのだ、ゼッタイくるのだ、てなこと祈るようにぶつぶつ言っていた。<br />
	ラストコーナーを周ったあたりで大谷くんの高い声が裏返ってきて、マントヒヒの笑い声のように聞こえてくる。<br />
	「おまえーもっと走れよーたのむーモモモヒヒヒー」<br />
	すると、8番の馬がするするっと前をかきわけて走りこんでくる。ふたりは興奮して叫んだのである。<br />
	「きたきた、行け行けケケケーわァー」<br />
	「そのままーままままーキャー」<br />
	なりふりかまわず大声ではしゃいでいるのは、ボクたちふたりだけだったのである。</p>
<br />
<p>
	8番の馬と大谷くんのヒラメキは凄かった。ビール大缶ごちゃごちゃどっさりと上質の肉をたらふく、それと花火とアイスキャンディーで夜のキャンプファイアーは朝まで盛りあがった。それは大谷くんが少しズレた天才だったということの証しでもあった。<br />
	そー言えば大谷くんがレースのあとに、こんなこと言っていたな。<br />
	観客のいなくなったスタンドの椅子にふたりで座り込んでいた。足元にはハズレ馬券がパレードのあとのように散らばっていた。まだ、あのゴールでの激戦劇がそこにあるかのように遠くをみていた。<br />
	「カントクの言うように、あの馬はトナカイのようなやさしい目をしてたんですよ。あれは、神の馬ですね。ボク、みんなに迷惑かけるから、これで少し恩返しできてうれしいス。あの馬の目、忘れないよ。・・・・・こんどココに子ども連れてきて、今日のこと話すよ」<br />
	彼はぼそぼそと噛みしめるようにうなずいていた。<br />
	静まりかえった競馬場の向こうには海が観える。白い貨物船がゆったりと浮いていた。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「Kamisama」「ARigato-」" height="310" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol20/ph03.gif" width="540" /></p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201012/6.php</link>
            <guid>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201012/6.php</guid>
            <pubDate>Wed, 22 Dec 2010 17:06:57 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>函館編　その5</title>
            <description><![CDATA[<p style="background-color: rgb(255, 224, 221);">
	<img alt="HAKODATE MAP 05" height="370" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol19/map.jpg" width="540" /></p>
<p>
	<br />
	<img alt="函館編　5" height="50" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol19/title.gif" width="200" /></p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「お前だな　オレのメガネ」「ダラララー　おだまり」「もー　キーさん　いらっちゃいよ」「ホホホ」" height="312" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol19/ph01.gif" width="540" /></p>
<p>
	十字街の交差点で信号が変わるのを待っている。<br />
	空はさきほどよりオレンジ色が深くなっているような気がした。まもなく夜がくる。<br />
	信号のむかいには、路面電車の停車場があるのだ。ツツツーってなブレーキの音を静めるように電車が止まった。信号はまだ変わりそうにもないのだ。<br />
	無視して走ってみようかと思うのだが、迷っている。<br />
	そんなとき電車の運転士がボクをみた。目が合った。待っててくれよ頼むよ、てなねちっこいラブコールをおっくた。運転士はまたボクをみてくれた。そしてボクをジーっとみながら走りだすのである。ツィーンゴーツィーンゴーと線路をこする音をたてた電車の後姿に、夕陽が反射してまぶしかった。</p>
<br />
<p>
	誰もいなくなった停車場で、壁の時刻表をみていた。すると首からカバンをさげた作業着のおじさんがボクの横にすりよってきて、声をかけてきた。<br />
	「13分だよ」<br />
	「あ、そーですか・・・・・けっこありますね」<br />
	「フッ・・・・・そんなにないよ、すぐくるよ」<br />
	「・・・・・ハァッ？」<br />
	「・・・・・ま、眼鏡どっかに忘れたんだよな」<br />
	「あーそうですか」<br />
	「どこいったのか、まったくわからないんだよな」<br />
	どんどん話し掛けてくる。このおじさんのカバンのなかを遠くからのぞく、たいていその辺があやしいと思うからさ。<br />
	「いや・・・・・こんなかは、もー捜したのサ」<br />
	「あーそーですか」<br />
	「どこの飲み屋だったかな？」<br />
	「エッ、飲み屋ですか・・・・・覚えてないんですか？」<br />
	「そーなんだよ・・・・・な！」<br />
	目がぼやけているのか、覚えていないと言ったことを気にしたのか、下からにらむようにボクをみるのだ。どーしてそんな顔をするのか、よく意味がわからないのだ。<br />
	電車がきた。・・・・・なんだかうれしかった。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「夜を走る電車はマジカルな香りがする」「うー　ワン」" height="350" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol19/ph02.gif" width="540" /></p>
<p>
	松風町でおじさんは降りた。少しさびしげな背中だった。<br />
	赤いちょうちんが、風にゆれている。おそらく眼鏡を尋ねて、おじさんは歩きまわる旅にでたんだな、てなこと思った。</p>
<br />
<p>
	観光街からはずれたこの町の匂いと、ドカドカ路面を走る電車のゆれとが重なって、なんだかのんびりした、いごごちのいい気分になっていたのである。<br />
	夜を走る電車は湯の川温泉で、誰もいなくなったのだ。ボクだけ闇のなかにポッっと残されてしまったような気がした。やっぱり不安だった。<br />
	走りだした電車の中を歩きながら「湯の川のしおさい亭は、つぎの終点でいいんですよネ？」てなこと、少し高くなった声で聞いてみた。<br />
	すると「さきほどの温泉で降りたほうがよかったんですよねー」てな声が天井のスピーカーから流れてきた。<br />
	おおー、天井からだよ。<br />
	男ふたり、薄暗い箱のなかで、なんだかへんとこりんなことになっているような気もするのだ。スピーカーからは業務的な伝言しか聞いたことがないから、不思議な気分だった。<br />
	「あーやっぱり！　そーでしたか・・・・・やっぱり」<br />
	「観光ですか？」<br />
	「あ、いや、札幌からです」<br />
	「札幌ですか・・・・・しばらく行ってないですネ」<br />
	あらら、なにか意味ありげのような静かな口調だった。しばらく沈黙があった。薄暗い電車のなかはドカドカゆれる音だけが、ひびきわたっていた。<br />
	「終点でユータンして戻りますから、そのままゆっくり座っていてください」てな職務を超えてしまった運転士のやさしい声がスピーカーから流れてくる。<br />
	そのやさしさにちょっぴり感動してしまったのだ。<br />
	まもなくして大勢の乗客がならんでいる前を、電車とボクはゆっくり止まった。なんとも言えないスペシャルな気分がこみあげてきてキャハキャハてな、思いで外のざわめきをみていた。</p>
<br />
<p>
	ホテルの部屋についた。夜のベランダにふぁっとしたライトが灯り、湯煙がぽやぽやゆれていた。いわゆる海を観ながらたっぷり楽しんでください、てな温泉があるんだけど、やっぱりひとりじゃ寂しいからさ、大浴場のでかい湯船につかることにしたのだ。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「コイツはパーなのよ」「いいところもあるのにな」「やっぱりネ　アホよね」「カァー　もももー」「スキ」「いそがしいーの」" height="350" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol19/ph03.gif" width="540" /></p>
<p>
	広い部屋の真中にふとんがひとつ、ほてったカラダを投げだす。ふわりんこんと気持ちがいいのだがなんだか寂しいのだ。静かすぎてサ。<br />
	窓をあけるとザブーンダダダーてな波うちぎわの音がひびいてくる。ベランダにでて海をみようと思ったが、湧きあがってくる霧につつまれて何もみえないのだ。星も観えないこんな夜は、誰かに電話をしたくなるのよ。<br />
	「あ、もしもし・・・・・おれだけど、久しぶりだね。いまハコダテなんだけどさ。8年ぶりに来ちゃったんだけどさ」<br />
	「・・・・・ハイ」<br />
	「あのさ、ちょっと、お茶でものまないか」<br />
	「・・・・・ちょっと、忙しいーんです」<br />
	「あッ・・・・・」</p>
<br />
<p>
	ザブーンダダダー・・・・・わきだつ波の音だけがボクに地球のあたたかさを伝えてくれる。ふんわりと抱きしめてくれるダダダーの子守唄で、深く眠るのである。<br />
	もももーカァー・・・・・。</p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201011/5.php</link>
            <guid>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201011/5.php</guid>
            <pubDate>Thu, 25 Nov 2010 17:04:07 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>函館編　その4</title>
            <description><![CDATA[<p style="text-align: center; background-color: rgb(255, 224, 221);">
	<img alt="HAKODATE MAP 04" height="370" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol18/map.jpg" width="540" /></p>
<p>
	<br />
	<img alt="函館編　4" height="50" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol18/title.gif" width="200" /></p>
<br />
<p>
	チャチャ登りを下りてバスにのった。大きな門構えのお寺の前が終点だった。<br />
	このあたりが舟見町で、このお寺は高龍寺と言って江戸時代の初期に創ったんだって。そうだろうな、ただならぬムードが煌々としているんだよ。<br />
	そこから外人墓地に向かって歩いた。気持ちのいい空気につつまれている路地で、しばらくすると海が見えてくる。<br />
	思えばハコダテって、横浜や長崎とおなじように国際的な貿易港だったんだよね。リッパな深い歴史が眠っているんだよね。だから外国人の墓地がいっぱいあるんだわ。てなことカバンからだしたガイドブックを覗きながら、ひとりごと言ってしまっている。</p>
<br />
<p>
	静かだった。大きな松の木と白い十字架とキラキラと跳ねかえるまぶしい海が、これほどしっくりと穏やかな風景を創りだすとは思ってもいなかった。墓地のなかの石段を下っていくと、海まで降りられる小道があった。<br />
	玉石の海岸線に小船を寄せる老人の漁師がいる。コンブを抱きかかえて何か吠えていた。<br />
	「巻きーい　巻きーいー」「とめーとめとめー」<br />
	かんだかい声なのだが、みょうにコブシの効いた演歌調なのである。犬小屋のような小屋のなかで青いゴム手をつけた、おカァーちゃんが掛け声にあわせるように機械を動かすのだ。玉石をこするようにワイヤロープがピーンとはり、老人の小船を岸へとあげていたのである。おトーちゃんとおカァーちゃんの毎日の作業風景なんだけど、長い時間をかけてできあがった「まきとめ」の人生演歌って言うやつなんだね。誰も知らない、たったふたりだけのラブソングなんだと思った。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「大きな松の木と白い十字架とキラキラと跳ねかえるまぶしい海」" height="282" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol18/ph01.gif" width="540" /></p>
<p>
	海から墓地にもどる小道に、水平線が一望できるカフェがある。コーヒーをたのんで庭の椅子に両肘をついて、海を見下ろすように観ていた。<br />
	ため息が湧いてくる。ニャーニャーと、手のとどきそうな近くで、ウミネコが風を切って舞っている。いやー静かだな。<br />
	グィーンと枝を崖ぷっちまでのばしている松の木がうらやましいね、毎日こんな静かな海風になでまわされてやさしくされているんだ、てなこと思ってしまう。<br />
	あっ、でましたネ。やっと顔をみせた今日はじめての太陽です。白い雲をかすめてこぼれるように降りそそぐ陽光が、水平線で銀色に輝いてくれている。<br />
	なんどもなんども観てきたがあきないね、不思議だよね、と思わず口走ったんだね。いつのまにか後ろに立っていたカフェの主人がコーヒーを置きながら、毎日観ているんですけどあきないですねと静かにささやくのだ。日焼けして真っ黒だった。とくにオデコあたりがギラギラしていた。<br />
	主人は水平線を指差して言う。<br />
	昨日もですね、青森の岬にある温泉なんだけど、ヨットで行っちゃったんですよ。エーッ、ここからヨットで？　銭湯みたいに行っちゃう訳？　はーい、そうなんですよね。<br />
	でね、帰りにイルカが5匹ぐらい、いつものようにヨットの横を泳いでくれてね、昨日は特別にハイジャンプしてくれました。<br />
	・・・・・どうしてそんなことまでやってくれるのか、不思議に思いますね。<br />
	そーですか。なんでイルカはいつも人間に近づいてくるんですかね。<br />
	そんな質問を主人に訊ねてみた。すると、そーですね。それはまったく解らない謎なんです、不思議ですよ。</p>
<br />
<p>
	街に戻るバスのなかで窓から差し込む夕陽を感じながら、ヨットの先を案内するように泳ぐイルカのことを想像してしまっていた。なぜなんだ。イルカたちは人間が怖くないのか。ボクはできるだけ深く深く考えてみた。<br />
	ひとつ思いあたることは、おなじ地球に生きる生命体として、イルカたちは人間を愛すべき仲間だと思っている。・・・・・ボクはそんなふうに感じる。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「IRUKAWA TENSHI」" height="260" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol18/ph02.gif" width="540" /></p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201010/4.php</link>
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            <pubDate>Thu, 28 Oct 2010 17:02:24 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>函館編　その3</title>
            <description><![CDATA[<p style="text-align: center; background-color: rgb(255, 224, 221);">
	<img alt="HAKODATE MAP 03" height="370" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol17/map.jpg" width="540" /></p>
<p>
	<br />
	<img alt="函館編　3" height="50" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol17/title.gif" width="200" /></p>
<br />
<p>
	カフェは静かなジャズが流れていた。<br />
	白波をかきわけてゆったりと走る、壁のポスターの蒸気客船は、かなり古いものでタイタニック号あたりの時代を感じさせた。そのポスターを背にした若いふたりが、グリーン色のソーダー水をずるずる吸いあげている。そしてときどき、見詰めあったままでもずるずるしているのだ。コラコラもっと離れろ。てなこと感じてしかたがなかった。<br />
	おそらく、ポスターをながめながら、タイタニックの映画でも思い出しているんだね。<br />
	そんなときスーっと白いがっちりしたマイカケ姿のマスターが近づいて来た。<br />
	笑いながら覗き込むように、久しぶりと声をかけてくれた。ほんとうに久しぶりだよね、この前さ、7年ぐらい前に来たときはさ、いなかったようだけど。そうなんだよね、その頃はね、ハワイにいたんだよ。エッ、なんでハワイ？<br />
	・・・・・てな会話がつづくなか、ところでホントにボクのこと覚えているのかな。20年ぶりなんだけどさ。その頃さ、マスターはロングヘアーでよれよれのジーンズだったよな、ホントに覚えている？<br />
	ほら、だって今はさ、かなり髪うすくなってさ、その頃の面影なんかないよな。<br />
	・・・・・てなこと、ココロの奥で思うものです。もちろんマスターにも自信がないんです。記憶の迷路をもてあそぶように、昔をたぐりよせながら確信のもてない会話がつづく訳ですよ。<br />
	・・・・・だけどさ、まったく昔のままだよね。あれなんか、よく残っていたよね。赤と白のコカコーラのまるっこい冷蔵庫とか、ソフトクリームの照明器具とか、天井のすすけたペンキの色もさ、古いアメリカそのままなんだよね。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「hakodate minato」「ズーズルルル」「ズルズル　ズルン」「近い」" height="300" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol17/ph01.gif" width="540" /></p>
<p>
	オープン当時と変わらない、やさしさが湧きあがってくるような空間だった。マスターの頭はうすくなっていたが元気だった。<br />
	カフェを出た頃、灰黒のどんよりしていた空には、やわらかな白い雲が走りはじめていた。教会やお寺にはさまれるように、ボクはけっこうキツイ坂道を登っている。<br />
	さらにもっと上にあるチャチャ登りと言う名の坂をめざしていた。以前にも登って、てっぺんから見下ろす港の風景がたまらなく気持ちがいいことを知っているから、つい登ってしまう。だけどね、7年前とはカラダのつくりがちがっていた。膝裏の筋肉に痛みがきて、かばうように歩いてしまう。<br />
	もーこれ以上は無理だな、てなふうに思ったとき後ろの小学生たちから声をかけられた。おじさん、上まで登りますか、てなこと聞いてきた。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「namidaAFuRete tukiFutatu」「ゲゲゲ」" height="285" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol17/ph02.gif" width="540" /></p>
<p>
	「えっ・・・どうしてヨ！」<br />
	「あのですね・・・上で記念写真、撮ってくれますか？」<br />
	ストレートな子供の要求だった。もーさ、足が動かないのよ、てなこと言えなかった。<br />
	あと180m、おじさんは登ってしまった。すでに小学生たちは、港をバックに笑いながらならんでいる。どこか会話になまりを感じていた。<br />
	「な、修学旅行？　どこから来たの」<br />
	「あのですね、青森です！」<br />
	グループの班長らしき者が、そー答えて、ピースサインでシャッターの催促をする。おじさんの息はまだととのっていないのだ。目の前にだされたカメラをかまえる。<br />
	「行くぞー。　お前ら、もっと笑えーって」ゲゲゲてな笑いがおこり、むじゃきな輝きでまぶしいぐらいだった。その表情を逃がさないように2枚ほど撮った。<br />
	「おじさんも撮ってヨ。　お前らの記念にしてくれないの」と言ってみた。子供たちは少しとまどった顔をしたが、ゲゲゲとまた笑って走るように坂を下っていく。はるか下に見える港の風景にすいこまれていくようだった。</p>
<br />
<p>
	くたびれたおじさんはチャチャ登りのてっぺんで座り込んでいる。そして港の向こうの山並みを走る白い雲を観ていた。</p>
<p style="text-align: center;">
	<img alt="「スキ」「カァー」「おじさんカワイソーだから　パッチよ」" height="310" src="/hokkaido-jin.jp/upload/images/special_contents/cuziramori/vol17/ph03.gif" width="540" /></p>
]]></description>
            <link>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201009/3.php</link>
            <guid>http://www.hokkaido-jin.jp/special_contents/cuziramori/201009/3.php</guid>
            <pubDate>Thu, 30 Sep 2010 17:00:25 +0900</pubDate>
        </item>
        
    </channel>
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