コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。

HAKODATE MAP 02


函館編 2


線路はプラットホームのどんづまりで終わっている。それはいつものコトだった。
しかしハコダテ駅は、いつのまにかリッパになっていた。それは聞いていないのだ。ボクは聞いてなーイって。
かつては夜行列車でゆられてきて、くたびれた臭いトイレで顔を洗ってから市場の屋台で、朝めしといっしょに焼酎のキツイのを飲んでいた。そ、朝からヨッパライになり、それがハコダテの旅の楽しさだった。
そんなだらりんこんとした空気は、ひとつも流れていなく、昔のおもかげはまったくなかった。8年ぶりだから、なにがあってもしかたがないが、ただボクは、ちょっぴりさびしい気持ちになったのだ。

どこまでもどんどん灰白色の霧のなか「ハコダテだ」

カメラの電池がぴこぴこ「あぶないよ・なくなるよ」てな合図をしていたから、駅前の繁華街をうろつき、やっと小さなカメラ店をみつけた。ちょっとマリリンモンロー的な、いちいち色っぽくふるまってくれるお姉さんに、カメラごと渡した。がばっとひったくるように捕られ、なにやら赤と黒の棒状のキカイで電池をチエックするんですね。
お姉さんは「あら・・アウト!」と可愛らしく言いながら、ついでに「レンズ!汚れている。 ちゃんとちゃんと やさしくしてあげないと・・・ね」と怒られたんです。
だけどボクは、久しぶりに時代遅れのフイルムカメラを陳列棚からとりだし、撫でまわしていたからね、聞こえないふりをしていたと思う。
それから駅横の市場あたりをぶらぶらと。どーだろ、都会のスーパーで買う近頃のホッケは、輸入物が多くて塩っぱくて、ひっからびていて、かたくて、うすくて。昔のような油のパリッとのったホッケはどこに行ったんだろう。てなことぶつぶつ思いながら、定食をたべることにした。
どーも、ウニやイクラどっさりの観光丼は手がだしにくくてね。ま、高カロリーは老人にはきつい訳で、素朴なひかえめの定食をスポーツ新聞みながら静かにいただくのが、おいしいんでありますよ。

「ネ どこいくの」 「ハイ」「今日も元気ね」

青函連絡船だった摩周丸が停泊している岸壁の淵沿いを、海を観ながら歩いていた。
岸壁に小さく波がうちよせては返す。船とのあいだをせりあがる波のうえには、カモメが静かに浮いていて、クァーとカラスのように鳴く。ゆったりした時間が流れていた。
とにかく、ゆったりゆったりと潮風に吹かれながら赤レンガ倉庫前を歩いた。信号のある交差点でカメラをのぞく。レンズはグレーに近いペンキがしみこんで、古くくすんだ色合いが輝いてみえるカフェレストランを写しだしていた。黄色の看板には、カルフォニア・ベイビーと英文字で描かれている。
ここのお店とは、20年以上も前からの知りあいで、どこを撮らえても、ひとつひとつに時間の風格が浮きでていて、昔のままだった。
交差点をわたってドアのガラス越しに、店のなかをのぞいた。
大きな煙突をもつ蒸気客船のポスターが、20年前と変わらぬ位置にある。その凄さにケケケケっとうれしくて、笑ってしまったのだ。

レンズがとらえたのは古さがしみこんだ昔のままの美しさだった

プロフィール

鯨森惣七(くじらもり そうしち)

室蘭生まれ。東京八丈島でダイバーとして漁師と共に働く。のちにCM制作の職に就く。札幌でTOMATOMOONとサクラムーンを設立、プロデュースする。近作として、JR車内誌での「陽だまりがあれば地球人」、サッポロビールでの「ボクだって星の王子様」などのイラストエッセイ。現在、HTBテレビ「ハナタレナックス」の収録スタジオのデザインおよびオープニング映像・タイトルの企画制作を手掛けている。2010年5月に絵本「ぺ・リスボーの旅・ダラララー」を出版した。
cuzira@leo.interq.or.jp

前へ | 新着順一覧 | 次へ

この記事を知らせる

ブックマークする