コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。

HAKODATE MAP 01


函館編 1


函館に 向かう。


札幌駅の朝の地下通路。都会の真中は、人込みの竜巻で渦巻いている。
ほらさ、スターウォーズの白い軍隊が、ザッザッザッてな行進でせまってくる迫力なんだね。こんな光景は、もう何十年も忘れていたから、とにかくヒトを避けるタイミングがわからなくてよろけちゃうのだ。
歩きながら観察していると、誰もが宮本武蔵のような技を身につけているんだね、さぁっと紙一重で避ける、凄いなーって拍手したくなるよね。
てなことトロトロ考えていると、スターウォーズに後ろから急きたてられて、押されるように6番ホームのスーパー特急ハコダテ行きに乗っちゃうんだよ。その指定車両には、2人ほど先客が座り込んでいて、新聞をひろげていた。ボクは芋虫のようにとぐろを巻いて、窓際にもたれ掛かった。
海が観えるのはどっちの窓だっけ、てなこと考える。ホッとする。
山から降りてきて列車に座り込むまで、闘いなんだね。

「ススめ」 「ザ ザ ザ」 「ピヨ ピヨ」「ピロ」

外を走るトラックの屋根越しに、きらきら銀色に輝く海がひろがっていた。
「お客さん ここは自由席で指定車両は となりの列車ですね」キップの確認にきた車掌さんに、ほほえむ顔で言われた。
いや、いや、ここでいんです。てなふうに返答するとエッてな顔に変わった。
向こうの指定車両はリッパ過ぎて落ち着かないことと、クーラーも完璧過ぎて寒い感じがするとの理由に、車掌さんはハアってな表情で不思議がる。まーよくわからないこんなヒトもいるからな、てな困った顔で列車のゆれを上手にこなしながら行ってしまった。

「ケケケ」 「こんにちわ」

海は白波をたてて、なんども、なんども、寄せてくる。向こうの象のような岬は、ちっとも変わっていない。手前の広いなだらかな草原には、クローバーの花が見わたすかぎり咲いている。空で鳴く海ヒバリが急降下するように草のなかに潜りこむ。この広い草原に立ち、よく海を観ていた学生時代があった。その海はボクが生まれたムロランに繋がっている。


スーパー特急は東ムロランで停車した。
ここで降りて、各駅停車に乗り換えて、終着駅までゆられていくとムロランに着く。冬の駅待合室の煙突が赤くなるほど燃えあがるストーブの前で、冷えた指先をあたためてから家に帰った学生時代を思い出してしまった。

列車は、南の渡島半島に向けて走りだした。

「君はいくつだね...」 「16才です...」

駅の外にでた。空はどんよりとたれさがる雲が広がっていた。
ハコダテ山の東面をはいつくばるように、海から湧きだした霧がのぼっていた。
ロープウェイのゴンドラが、頂上を隠してしまった灰白色の霧のなかを、どこまでもどんどん終点のない雲のかなたまで昇っていくような気がした。
市場が目の前にある。そっか、やっぱり、このへんは烏賊の磯くさい匂いでいっぱいなんだね。ここハコダテは、8年ぶりだった。

プロフィール

鯨森惣七(くじらもり そうしち)

室蘭生まれ。東京八丈島でダイバーとして漁師と共に働く。のちにCM制作の職に就く。札幌でTOMATOMOONとサクラムーンを設立、プロデュースする。近作として、JR車内誌での「陽だまりがあれば地球人」、サッポロビールでの「ボクだって星の王子様」などのイラストエッセイ。現在、HTBテレビ「ハナタレナックス」の収録スタジオのデザインおよびオープニング映像・タイトルの企画制作を手掛けている。2010年5月に絵本「ぺ・リスボーの旅・ダラララー」を出版した。
cuzira@leo.interq.or.jp

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