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『メルマガ北海道人』第93号 2008.10.30.
―「北海道人」、雪だよりが届くと―

 今週、札幌の手稲山に初冠雪が観測されました。毎年このニュースを耳にすると、そろそろ冬支度をはじめなくてはと思います。秋晴れの暖かい日がつづいたあとの雪だよりに、あわててマフラーを新調した方、早々とスキーの手入れをはじめた方もいらっしゃることでしょう。みなさんがお住まいの地域では冬の合図は何ですか? それはもう、届きましたか?
 『メルマガ北海道人』第93号、雪ときどきメルマガ混じりで配信!

もくじ

連載【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】

 2007年3月8日からはじまった「楽譜のいらない音楽授業」は、第43回をもちまして最終回となります。最後の授業は「結果とプロセス」について。11月にライブを控えている田野城さんのところにニューヨークから楽譜が送られてきました。その楽譜、普通とちょっと違うらしいんです。心のこもった田野城さんのラストエッセイです。

連載【岩崎稔の『大陸人の時間』】

 ひどい空気汚染で靄がかかったような天気がつづいていた北京は、10月24〜25日に開催されたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議の二日前に降った突然の雨で青空が戻ったそうです。ASEMの取材をした岩崎さんから届いた「大陸人の時間」第46回のタイトルは「恐怖の握手写真」です。

連載【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】

  「かりに『君、東京の橋をテーマに写真を撮ってみたまえ』と雑誌社に依頼されたら、あなたはどうするか」。みなさんならどうしますか? なすべきことを十分なさなければ写真など写りはしないと語る和多田進が考えるなすべきこと、写真を写すということはどういうことなのでしょうか?

【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】 Lesson 43

結果とプロセス

 来月行なわれるコンサートの演奏曲目の音源と楽譜がニューヨークから送られてきました。が、それを見るや否や……久々にボストンの学生時代が甦ってきました。
 私たち音楽家が集まって演奏する場合、無くてはならないものは楽譜です。楽譜が無ければ全員バラバラな演奏になってしまいます。そういう意味で楽譜は重要なのです。これを「列車で旅行する」ことにたとえると、「いつ・どこの駅から・何時何分に出発して・どこで乗り換え・どうやって最終目的地の駅に到着するのか?」という道程が正確に指示してあるのが楽譜なのです。
 ジャズを演奏する場合、特に大きなステージで日本ツアーを行うときなどは楽譜にかなり細かな指示が書かれてあります。あまり演奏者のコンディションなどに左右されず、すみやかに目的地まで、しかも迷わず確実に到着できるようになっているわけです。ということは、前もって自宅で楽譜をしっかり練習しておけば、リハーサルも時間をかけずに完成できますから、あまり経費もかかりません。きわめて合理的であるとも言えます。
 しかしその反面、何度演奏してもすべて同じになってしまうという弱点も兼ね備えているのです。ですから、演奏回数を重ねれば重ねるほどすべてが読めてしまい、まったく面白みに欠けてくる……なんてことにもなりかねません。そうなってしまうと、もうお手上げ。悲惨な精神状態に陥ってしまい、もはや音を心から楽しむことなどとうていできず、音の垂れ流し状態になります。しかもマニュアル通りに演奏すれば、常に平均点以上は取れる。
 ではもし逆に、楽譜に正確な指示が書かれていなければどうなるでしょうか?
 えっ!! そんなの演奏できるわけないでしょう? と思われるかもしれませんね。
 実は今回ニューヨークから送られてきた楽譜がそうなんです。かなりラフに書いてあります。楽譜ではなくフォームといえばイメージがわくでしょうか。これには、思わず笑ってしまいました。普通に考えると、楽譜という道しるべを失ったその瞬間から音楽家は宙に放り出されてしまい、バンドはバラバラに崩壊してみんなが迷い子になってしまうのではないかと不安にかられます。がしかし、実はここが演奏者にとってかなり面白い空白の部分と言えるのです。正直、私は燃えます!!

ニューヨークから届いた楽譜

 何故なら、細心の注意を払って状況判断をし、己の経験と直感だけをたよりに暗闇を前進して行けるからです。これほどワクワクすることはないです。一瞬一瞬のひらめきで音を創造していくわけですから、楽譜に無い音楽が誕生しているのです。これぞまさに芸術です。しかも、ライブ演奏では瞬時に音が消えていくため、再度同じ演奏ができるかどうか、あとは演奏者のセンス次第ということになるのです。おぉ〜天国か地獄か? でも、いいじゃないですか。正に経験が試される格闘戦がステージ上で行われるのです。
 海外の演奏仲間はこれを「Make a MAGIC!!」と表現しましたが、正しくそうでしょう。言い方をかえれば結果(完成品)よりいかに地道なプロセス(もちろん経験を持ち合わせた上で)を大切にしているか、とも言えます。私が大学時代に肌で学んできたものがこれでした。尊敬する恩師から受継いだ文化です。
 ステージで繰り広げられている演奏を聴くだけでは理解することは難しいでしょうが、演奏する者(音を創る者)にとってこの意識を持っているか持っていないか、経験しているか経験していないかは大切なポイントになります。ショウを目指すのか、アートを目指すのかを意識するようにもなるでしょう。
 私の好みからいえば、合理的な考えで音楽を創りあげるよりは、時間がかかるけれどこの個人の能力を最大限に引き出そうとする考え方に基づいたプロセスが好きです。なぜなら、人間を大切にするからです。たとえ音楽の演奏スタイルやジャンルが違っても、間違いなくそこには愛に満ちあふれた音が鳴り響いているからです。だからこそ、ライブ(生演奏)は格別なのです。
 音楽とは私にとって生きる上で必要不可欠なものです。2度死にかけましたが、現在50歳。これからサックス片手に再び世界へ挑戦していきたいと思います。読者の皆さんぜひ応援してください!
 最後にコラムを書くチャンスをくださったメルマガ北海道人編集部のみなさん、美味しいジンギスカンを食べながら「書いてみる?」と声をかけてくださったこと、本当に感謝しています。50歳新人アーティスト田野城寿男をどうぞ引きつづき宜しくお願いします。

著者近影

たのしろ・ひさお…1958年広島市生まれ。サックス奏者。78年バークリー音楽院入学。在学中から精力的に活動し、帰国後の87年サリナ・ジョーンズの日本ツアーにソロ奏者として参加。91年「25周年記念」のモントルー・ジャズフェスティバルに出演。音楽家はもちろん、多彩なジャンルの表現者たちとのコラボレートを積極的に実践、近年は「音楽教育」の必要性を重視し、広い層の若者たちに個性的な指導を続けている。

ホームページ:http://www.tanoshiro.com
携帯サイト:http://www.tanoshiro.com/m/

『メルマガ北海道人』編集部より

 田野城寿男さんの連載は、今回をもって終了いたします。音楽活動でお忙しい中、音楽愛・人間愛にあふれたエッセイを書いてくださったことに編集部一同、心から感謝しております。これからも『北海道人』は田野城さんを応援します! ますますのご活躍をお祈りいたします。

田野城寿男ライブ情報はメルマガ巻末をご覧ください。

【岩崎稔の『大陸人の時間』】第46回

恐怖の握手写真

 北京は先週までひどい空気汚染で靄がかかったような日がつづいていた。ところが、突然降った雨で空模様は一転、空はまっ青に透き通り、空気がおいしくさえ感じる。
 雨は北京で開催されていたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議の開幕式2日前に降った。うがった見方しかできない者には、空気汚染が進んでいることを各国の首脳たちに隠すため、人工的に降らせたのではないか? ピンとそんなかんぐりが来てしまう。
 今年は中国の話題がつきない。五輪が終わり、メラミン混入牛乳の次は殺虫剤が混入された冷凍インゲン、そして経済危機……。どれも中国が大きくからむ。経済危機はアメリカが主役だろうと安心していたら、世界的に経済危機が広まって、この時期に北京で国際会議の開催ということになった。とにかく、ニュースは中国中毒状態だ。
 私はこの時期の北京でのASEM開催が大変憂うつだった。北京で行われる国際会議や国賓との会談は、当時国の二国とそれ以外の第三国のメディアの代表で取材する。第三国は北京に駐在する主だった世界の通信社6社で代表を決め、月ごとに当番を回しながら取材する。今月は私が所属する通信社の当番だった。
 このような国際会議の場合、ぎりぎりにならないとだれがやって来るか分からない。しかも中国政府は直前にしかスケジュールを公開しないので、いつも慌ただしく準備に追われる。

紅い旗

 開幕式前々日、胡錦濤国家主席が会談する首脳のリストが送られてくる。メディアは会談45分前に人民大会堂に集合しなければいけないのだが、ものすごい交通規制でなかなか予定通りにはたどり着けない。遅刻しても待ってはくれないので、早めに家を出る。人民大会堂に到着すると数十分は外で待たされ、安全検査を通ってようやく中に入れる。取材者の数は全部で20人ぐらい。テレビカメラマンとスチールカメラマンが大きな機材を抱え、息を殺し、胡錦濤国家主席が会談する部屋に入るのを待つ。主席が到着すると、会談する部屋までの道が開き、撮影場所を獲得するため一斉にみんな機材を担ぎながら走る。さながら運動会の障害物競走だ。
 今回はASEMのために25カ国以上の首脳や国際機構のリーダーが北京を訪れた。午前中だけでもインドネシア大統領、マルタイ首相、シンガポール首相、フィンランド大統領と4人の首脳と胡主席は会談する。日本の新聞には使われそうもないが、第三国の代表メディアとしてはどれも落とせない。会談前の出迎えの握手と、会談風景を5分ほど撮影する。写真として絵になるのは冒頭の一瞬の握手だけだ。それを撮りのがすと取り返しがつかなくなる。撮影するとすぐ写真をパソコンに取り込み、現場からそれぞれ通信社に送る。
 この日はインドネシア大統領が胡主席との最初の会談相手だったのだが、前日撮影したヴェトナムの首相の写真のデーターが混じってどっちがどっちだか分からない。隣にいたインドネシア人に確認するが、そんなことも知らないのかと驚かれる。つづいてマルタ首相。マルタ国からの同行の記者が少ないので撮影しやすい。次はシンガポール首相。同行記者の数はものすごく多い。隣のカメラマンから、首相は女性に替わったとのデマが流れてきた。向こうから歩いてくるシンガポール首相は思いっきりおじさんだ。次はフィンランド。元々男の首相が訪れると聞いていたが、大統領に変更したらしく、今度は本当に女性が向こうからやって来た。突然予定とは違うことが起きるが、とにかく最初に首席と握手する人物を全て押さえる。
 この日は午前、午後合わせ9人との首脳会談があった。隣で撮影していた中国人の女性カメラマンは全ての握手写真を取り終えると、「さて家に帰って夕飯作らなきゃ」と言ってさっそうと去っていった。へとへとになって家路をたどる私は、まだまだ「握手写真」のプロとは言えないのであった……。

終わり

著者近影

いわさき・みのる…写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。
*現在ANAの機内誌「翼の王国」で、作家の原口純子さんと「中国万事通」を連載中です。

ホームページ:http://www.minoruphoto.com/japanesemainpage.htm

【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】 第13回

写真機携帯症患者の病状報告(9)

 新しくインターネット・マガジンのコンテンツを考えようと集まった人たちに、たとえば「東京の橋」とか「橋」をテーマに、その橋に関する多少の故事来歴と写真を軸にひとつのコーナーを作ってはどうか――と話したことがあった。それからしばらくして、その私のアイディアが企画のようなものになって会議の議題に取り上げられた。詳しいことは忘れてしまったが、勝鬨橋とか両国橋とかの写真を載せて……というようなプレゼンテーションになったのだったと思う。
 その提案を聞いていて、私は即座に「それは駄目だと思う」と言った。駄目だと思った理由のひとつは、有名な橋を最初に取り上げるのは芸がないということである。実は、東京は川と運河の都だから、人に知られぬ「無名」の橋が無数にある。その「無名」の橋を大勢の人に紹介してこそ企画の名に値するのではないか、というのが私の思いだった。
 提案に私が反対した理由は他にもあった。「橋」についてしっかり調べたり考えたりせずに企画を立てるという姿勢が不満であったのだ。
 まぁ、そんな出来事が実際にこの一年ほどの間にあった。
 それで写真の話になるのだが、かりに「君、東京の橋をテーマに写真を撮ってみたまえ」と雑誌社に依頼されたら、あなたはどうするか、それを考えてほしいのである。私なら、こんなことからはじめるだろう。
 (1)東京の河川、運河と街の成り立ちについて関連する書物、東京都の歴史とか橋にまつわる市販の文献のうちの目ぼしいものを読むだろう。(2)東京都や各区が出している橋に関する資料をひと通り調べてみるとも思う。(3)東京とは関係のない「橋」に関する文献を何冊か読むこともするに違いない。たとえば『橋構造』のような技術的なものには特に力を入れて読むだろう。(4)さらに、「橋」にまつわる小説など文学作品の類に目を通す。人間の喜びや悲しみ、感情と「橋」には密接なかかわりがあるだろうから。

江東区清澄公園('08.6月)

 そういえば、『君の名は』という何十年もずっと昔のラジオドラマは映画にもなったのだが、主人公のハルキとマチコの出会いと別れの場所はいまは影も形も無い数寄屋橋だった……。
 以上のような段取りをしつつ、「橋」を自分自身に問うのである。(1)〜(4)までの行為のなかで「橋」について考えに考えるだろう。そのプロセスのなかで、「橋」を写せる可能性が私に生まれてくることを期待するのである。(1)〜(4)のような経過を省略して両国橋に行ってみても写真は写るまい。自分の頭のなかで「橋」を可能なかぎり解体し、写す意味を熟考し、写さざるを得ない必然性が自分の中に生れてきたとき、私の指ははじめて写真機のシャッターに触れたがるのではあるまいか。それから現場に通う。現場に通いつつ考える。その繰返しからしか写真は生まれまい。
 すべてのことは同じである。表現するということ、仕事をするということは、右のような営為のなかでしか動きはじめることはない。写真機を持って写真を写すのではない。写真機を持つ前に、なすべきことを十分なさなければ写真など写りはしないのだ。そこのところが分かっていない人が案外多いような気がする。
 ひるがえって、「写真を読む」場合にも同じことが言える。この写真を写した人は、写す前になすべきことをどれだけ誠実に、真剣にやっているかが読まれるべきなのである。そういうふうに読む人にしか写真は読めない。本も、映画も、絵画も……、すべて同じことであろう、と思う。

インフォメーション ライブ・イベント情報

<“Beat in Pocket” JAPAN TOUR 2008>

昨年、田野城寿男さんがタノラボ・ニューヨークツアーで出会ったニューヨーク在住ドラマーの新井田氏からのお誘いで、今回は田野城さんがサポートメンバーとして参加します。スペシャルゲストは、マイルス・デイビスのバンドに在籍していたキーボーディストのアダム・ホルツマン! ライブは、東京・札幌・帯広・名古屋の4カ所で行われます。

新井田孝則(Drums)、養父孝(Guitar)、田野城寿男(Sax)、熊谷望(Bass)
スペシャルゲスト:Adam Holzman(keyboards)

<札幌 MESSE HALL>
札幌市中央区南3条西3丁目11 (メッセビル5階) 
2008年11月22日(土) 開場:6:30PM 開演 : 7:00PM
TEL : 011-221-8748
料金 : 前売5000円 当日5500円
ローソンチケット<ローソンLコード15935>

<帯広 MEGA STONE>
帯広市東6条南5丁目 メガセンター内
2008年11月23日(日) 開場:6:30PM 開演 : 7:00PM
料金 : 前売5000円 当日5500円
ローソンチケット<ローソンLコード15935>

<Tokyo TUC> 2008年11月21日(金)
*チケットなどの詳細はこちら↓
URL:http://www.tokyouniform.com/tokyotuc/

<名古屋 Tokuzo> 2008年11月24日(月)
URL:http://tokuzo.com/
チケットぴあ<ぴあPコード305-456>

次号予告

 次号の配信日は11月6日(木)です。ついに11月に入ります。このあたりから大晦日までは、あっという間です。時間が進むスピードが急に速くなるような気がします。
 さて、次号のメルマガラインナップは、上林早苗の「上海日記」、「とろんのPAI通信」、若月元樹の「南の島から――沖縄県黒島の日々」です。お楽しみに!!

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