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『メルマガ北海道人』第72号 2008.5.29. ―「北海道人」、萌黄色のトンネルをくぐり抜けて―

 札幌から郊外に車を走らせていくと、民家も徐々に少なくなり、ひと気のほとんどないエリアが開けてきます。鳥たちの高らかな歌声が聞こえてきたら、あたりは萌黄色一色の世界。傷んだ葉の一枚もないような木々のまぶしさに、思わず目を細めてしまいます。光を受けた若葉がまぶしいのか、その存在自体がまぶしいのか。まぶしさを感じているのは目なのか、それとも心なのか。萌黄色のトンネルと錯覚してしまいそうな5月の北海道。長いトンネルをくぐり抜けたら、季節が新しくなっているかもしれません。
 『メルマガ北海道人』第72号、まぶしさに目を細めながら配信!

もくじ

連載【上林早苗の『上海日記』】

 チャンインの物語はひと休みです。中国・四川省の地震について上林さんが伝えます。大災害などの情報公開に消極的だと言われてきた中国ですが、今回は、TVやインターネットを通じてリアルタイムに情報が流れました。深い悲しみと感動。「被災地のパラシュート部隊」から見えてくる中国という国と人民。

連載【とろんのPAI通信】

 ムーンビレッジの我が家が、あっという間に解体される様子を見て、うろたえるとろんさん。その一方で、新居作りに心躍る日々でもあるそうです。両親の介護生活から解体移築生活へ。ギリギリ必死の毎日の中、ドキドキワクワクするのはなぜ? 創造と破壊の神・シヴァ神が舞い踊る「とろんのPAI通信」第26回。

連載【若月元樹の『南の島から――沖縄県黒島の日々』】

 毎回、黒島ならではの出来事に「あっ」とか「えっ」などと驚かされていますが、今回は「ホント?」です。黒島には「清掃検査」なるものがあるそうです。若月さんにとって大変迷惑だというこの検査は、いったいどんなものなのでしょう? 猫とか犬とかトイレとか。知られざる「清掃検査」の全貌が明らかに!

【上林早苗の『上海日記』】 第33回

被災地のパラシュート部隊

 四川省の地震は歴史に残る大惨事となってしまった。震災から12日がたった現時点の発表で死者6万560人、行方不明約2万6221人、その数は今後さらに増えていくだろう。校舎の下敷きとなって亡くなった7000人ともいわれる子どもたちの恐怖と苦痛は想像を絶する。
 これまで中国は大災害や重大事件の情報公開に消極的だといわれてきた。しかし、今回はちがった。CCTV(中央電視台)は地震発生直後から24時間体制で特別番組を流し、インターネットの主なニュースサイトは随時、被災地の最新情報を更新しつづけた。おそらく人びとにとってこれほど大量の死をリアルタイムで「目撃」したことなどなかったにちがいない。いま中国全土はかつてない驚愕と悲しみの中にある。あのチャンインでさえテレビカメラに映る生命のあまりのもろさに「人生観が変わってしまった」というぐらいだ。
 悲しみの分、感動も深い。ブラウン管のなかでは連日、「英雄」が生まれている。生徒を救うために犠牲になった教師、家族を失いながらも任務遂行する婦人警官、身をていしてクラスメイトを助けた小学生。その姿に皆が泣いた。そして、地震後4日目ぐらいからだったろうか。CCTVアナウンサーたちはニュースの合間に短いコメントを入れるようになった。
 「これこそ中国人です。これこそ今の中国の若者たちに欠落しているといわれてきた人類愛です。偉大なる中華民族の精神は復活しました!」
 非常時というのは思想教育に適しているらしい。同様のセリフは毎日、聞かれた。

「ふんばれ四川」「がんばれ中国」「祖国万歳!」。地震犠牲者を悼む「全国哀悼日」の最終日、四川省出身者を含む若者たちが被災地激励の行進をした(南京路歩行者天国)

 話は変わるが、地震2、3日後の報道に「パラシュート兵、遺書したためて出発」というのがあった。なんでも兵士4500人が陸の孤島となっている被災地へパラシュート降下するのだという。着地点は険しい山間部。悪天候のうえに通信回路が寸断されているため、地上の状況は不明だ。兵士たちは情報なし、目標物なし、誘導なしのまま地上5000メートルから救援物資を背負って飛び下りなければいけない。前代未聞の危険きわまりない任務である。そこで出発前、兵士全員が万一を覚悟して遺書を書いた、というのだった。
 私は腰を抜かした。中国で解放軍は「人民の子弟兵」だ。人民のためにある。だけど、彼らも人の子なのだ。「数打ちゃ当たる」じゃあるまいし、そんな博打みたいな救援活動がいまどきあっていいはずがない。第一、人民が許さないはずだ。
 ところが、である。このニュースのコメント掲示板をのぞくと、どこも支持意見ばかりが数百件も並んでいた。
「感動! 無事を祈る」
「ありがとう、愛すべき人たち。敬礼!」
「人民のために身を捧げる偉大な英雄。パラシュート兵万歳、中国万歳!」
 もちろんこれは世論の一部にすぎないと思う。特に中国のニュースコメント欄は表面に出てこない意見があることを計算しつつ読まなければいけない。「問題発言」は審査のうえ掲載拒否されていることが多々あるからだ。実際、この作戦が本当なら賛成しかねると言う友人もいた。しかし、その比率がどうであれ、妄想癖のある私の頭にはどうしてもちらついてしまう。出撃前、人びとに祝福され、敬礼され、天皇陛下万歳とさけんで空に消えた神風特攻隊の姿が――。もちろん想像だけれど。
 結局、後になって「遺書」は誤報で正しくは「任務志願書」だったと訂正された(決死の覚悟という意味ではどちらも似たようなものだろうか)。また、ヘリはパラシュート兵100名を乗せて出発したが、悪天候で危険なため作戦を変更し、15名だけが地上4999メートルから降下。全員無事に着地し、ただちに地上での救援活動に入ったということである。高難度の任務を見事に果たした兵士たちには心からの拍手を送りたい。
 いずれにしても、この国はいざというときに決死部隊を出せるということをいまさら再認識した自分を恥ずかしく思う。今後は落下傘を見るたび己の平和ボケを戒めたい。
 チャンイン物語は次回より再開します。6万560の命に合掌。

かんばやし・さなえ・・・1978年生まれ、奈良出身。京都外国語大学中国語学科卒業。上海在住8年目。中国人の夫と姑との3人暮らし。

【とろんのPAI通信】 第26回

イノチとうちゅうのダイジョーぶ

ひでさん&麻陽君たちの新居 in NEW MOON VILLAGE PHOTO BY 林あすか

 きのう、5月15日に我が家の解体が終わり、地面に埋めていたコンクリートの基礎が3年半年ぶりに、今、地上のアチコチにあらわな姿で転がっている。3年半前にこの我が家を建てたとたんに愛妻はるかがボクの前に現れ、一緒に住み始め、そして、1年9ヶ月前に太一もこの我が家で産まれ出たのだから、このボクら3人家族の目の前で、あ!!っという間に、たった2日間で愛しの我が家がこの地上から消え去ってゆく風景に、今、ちょっと、うろたえている。アリガトウ! おつかれさま!! お世話になりました!!! 等というしみじみとした想いと共に、解体された我が家のすべての木材を使ってNEW MOON VILLAGEへ移築するのだから、このイノチの(恩家)に相応しい新居作りへの思いが膨らみ、心躍る日々でもある。この家なくしては愛妻はるかとも出会ってないし、太一もこの世には誕生してないコトを思うと、ひとが生きてゆくことのおもしろさ、運命の不思議さを思い、ドキドキわくわくしてしまう。
 この6年の間にムーンビレッジに建てられた26の建物のうち、我が家の解体は13番目。今、ちょうど半分が解体され、菩提樹、ブーゲンビリヤ、バラ等、想いの込められた木たちも、全てを移植してゆく。14本のうち7本が移植済みだから、これも半分だな。4月11日にPAIに戻ってきたのだから、一ヶ月ちょっとでやっと半分にまでこぎつけたわけだ。PAIを出るのが6月11日だから、ギリギリ必死の毎日。綱渡り的介護生活から解放されたと思うと、次にはギリギリ必死の解体移築生活。そういう中で、運命の不思議を想い、ドキドキわくわくしてしまい、生きてゆくことの面白さを感じてしまうのは、一体、何なんだろう???
 ムーンビレッジに残された半分の建物の中で、なんとか、今、ボクら3人家族が暮らしている。井戸のある台所には、前の住人のひでさんファミリー(写真)が忘れていった(シヴァ神)の大きな絵が貼ってある。この(シヴァ神)、インドの神様たちのひとりで(創造と破壊)を司る神様なのだ。破壊されゆく愛しの我が家を目の当たりにして、うろたえつつもドキドキわくわくしてしまう自分。
 そして、まだ2歳にも満たない太一などは、やっと喋り始めた、たどたどしくってかわいい響きの日本語で「おいえがこわれてるう! スゴイね! タノシイね!!」と、そのこうふんを全身で表して、うろたえるボクら大人を勇気づけてくれている。2週間程前の大洪水でムーンビレッジが池化した時も、ボクらが必死で下にあるものを片付けていると、「ううみいはひろいいなあおおきいなあいいってみたいなあよそのくうにい♪」とベランダから何度も何度も歌ってくれてボクらを元気づけてくれていた。積み木だって、時間をかけて積んで家を作る時よりも、一瞬にして、そのでき上がった家を壊す時のほうが、嬉しそうだし気持ちよさそうだしね。

ボクらの新居予定地 in NEW MOON VILLAGE PHOTO BY 林あすか

 ボクらの体の中も、日々細胞がいっぱい壊れては新たなる細胞が創られてゆくそうだし、ボクらも地球の表皮を傷つけては作物を作り、自然を壊しては道路や建物を作ってゆく。そして、その食べ物を食べて壊して体を作り、そのせっかく作った道路や建物を近代化や戦争で破壊しては、また作ってゆく。インドに行っては病気し骨折し、ドラマティックに精神混乱し、今までの自分が壊されてゆく。もう2度とインドなんかには来ない!! と断じてインドを出てゆくのに、また時が熟してくると、壊されに、またインドに向かう自分。激しく恋をし、傷つき死ぬほど壊されてしまうのに、時が熟すると、またもや恋心が膨らみ、こりずに阿呆のように究極の女神を求めて女に向かっていってしまう自分。
 この6年間、ムーンビレッジでは、ボクの(想い)が膨らみ続け、(形)が完成され、49日間の祭りも終わったかと思うと、まさに絶妙なるタイミングでボクらの土地が売られ、日本にいるボクの両親も二人同時に痴呆症になってしまった。この“イノチ命いのち”したタイミングのいい展開力を想う時、(破壊と創造)の展開エクスタシーを感じてしまう。壊されないで壊さないで生きようとする人種でさえ、日々壊し壊されていることを想う時、もう、笑うしかない、この宇宙とイノチのしくみ、そして(イノチとうちゅうのダイジョーぶ)。

 またタバコを始めたバカとろんより。

とろん・・・1969年高校卒業直後、フランス郵船に乗ってインドに上陸し地球放浪を始める。帰国後、専門学校、大学、夫などを中退しながらも、旅と文筆とライブ活動を続行し、今に至る。著書に『純粋単細胞的思考』『まるだしのエクスタシー』『とろんのダイジョーぶ経典(スートラ)』(共に、晩聲社刊)があり、この3年間は『とろんのPAI通信』を(なまえのない新聞)に連載中。2001年、50歳のときにタイのPAIに流れ着き、MOON VILLAGEという村つくりを展開しながら、(くるくるPAIバンド)を率いPAIでライブ活動中。

ホームページ:http://amanakuni.net/toron/

【若月元樹の『南の島から――沖縄県黒島の日々』】第7回

清掃検査

清掃検査済票シール

 温暖な黒島では草木の伸びが早い。つい先日、草刈りをしたばかりだと思っていたところに草が生い茂っているのを見ると、「自然のままが一番」などと言い訳しながら放置し、気づいた時にはジャングルになっているということがしばしばある。
 この草木が良く茂る気候は、牧草の生育には好条件であり、採草地では年に6回も草を刈り取ることができるそうである。ちなみに、北海道は年に2回程度とのことなので周囲わずか12キロの小さな島でも畜産が基幹産業として成り立つようである。
 毎年、春と秋に「清掃検査」なるものが実施される。清掃検査とは公民館の役員や理事らが、島内を一軒ずつまわり、清掃が行きとどいているかチェックするという、私にとっては大変迷惑な検査である。私が黒島に来て最初の清掃検査に臨もうという時、「汚かった場合は罰金を取られる」と聞かされた。罰金は確実であろうと、金額を聞きに行ったら怒られた。「検査前に罰金について聞くヒマがあったら清掃しなさい」と。確かにその通りではある。しかし、この罰金というのは新参者をからかうデマだった。
 ちなみに、近くの竹富島では清掃が行きとどいていない家の名前を、検査後に島内のスピーカーで放送するそうだ。もし、私が竹富島に住んでいたら、スピーカーから私の名前が流れたことだろう。
 黒島での清掃検査もかつては厳しかったそうだ。掃除が行きとどいていないと「バカにしているのか」と怒鳴られたり、屋敷を囲う石垣に草が生えていると「子どもがハブにかまれたらどうするんだ」などと怒られたりしたことがあるという。
 さて、この清掃検査についてであるが、沖縄独特のものなのか、日本各地の田舎で見られるものなのか、調べたことも調べる気もないが、この検査が根強く残っている背景にはそれなりの意義もあったのであろう。八重山はかつてマラリアに苦しんだ地域であるため、マラリアを媒介するハマダラ蚊が繁殖しないよう、きちんと清掃する必要がある。それと多少関係あるのではないかと思う。
 実は、私も清掃検査の検査員をしたことがある。まさに自分のことを棚に上げた検査員である。清掃検査は目視による清掃状況のチェックの他に、聞き取りもある。世帯の人数や、トイレが水洗かどうか、飼い犬や飼い猫の数などである。
 検査に行った家で、家主のおじーが出てきたと同時に、家の中から白い猫が出てきた。それを見た私は、「猫は何匹飼っていますか」と質問した。するとそのおじーは、「飼ってない」と答えた。「さっき、白い猫が出てきましたよね」と追及すると、「もらうか」と返ってきた。あるおばーの家では、「猫飼ってますか」との問いに、「毛並みのいいのが居たらもらってもいいよ」との回答だった。こんな感じのやりとりだから、聞き取り調査の精度は高いとはいえないが、それでもデータを見ると黒島の人は圧倒的に猫派であるということは確かなようである。
 ちなみに私も猫派である。今月、子猫2匹をもらい、飼いはじめた。近所に度々家出を繰り返す犬がおり、その犬が散歩でよくウチの前を通るが、その度に猫の可愛さを再確認させてくれる気がする。
 つい先日、「春の清掃検査」があった。今回は、いつもと違った思いで臨んでいた。「猫は飼っていますか」と聞かれ、「2匹飼ってます」と言いたかったのである。
 しかし、今回まわってきた検査員は、私と同レベルのいい加減というか、適当な人だった。きっと、「清掃検査なんて大きなお世話だ……」と思いながらやっているに違いなく、ろくにチェックせず、検査料の500円を徴収して足早に去っていった。
 八重山諸島の民家の玄関付近には、といっても玄関の無い家も多いが。検査料の領収証代わりに渡される「清掃検査済票」と書かれた役場が作ったシールがベタベタと貼られている。
 梅雨空の下で実施された今年の清掃検査のシールは青だった。

わかつき・もとき・・・1974年広島県生まれ。沖縄国際大学大学院地域文化研究科修了。高校まで広島で過ごした後、沖縄の祖母の家へ移り住む。大学卒業後、そのまま沖縄でサラリーマンになったが、遊び足りなくて退職。大学院へ行ったはいいが、みんなまじめに研究していて衝撃を受ける。現在は八重山諸島の黒島にあるNPO法人日本ウミガメ協議会の附属研究所・黒島研究所でウミガメや島の人々らと戯れている。

次号予告

 次号が配信されるのは6月です。6月には国民の祝日がありません。ゴールデンウィークがあった5月とは大違い! 働きすぎにご注意ください!
 さて、次号のメルマガラインナップは、田野城寿男の「楽譜のいらない音楽授業」、岩崎稔の「大陸人の時間」、編集長・和多田進の「濡れにぞ濡れし」です。
 『メルマガ北海道人』第73号の配信は、6月5日(木)です。
 
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