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『メルマガ北海道人』第69号 2008.5.8. ―「北海道人」、連休と休日の間に―

 飛び石だったせいでしょうか。あっという間に過ぎ去ってしまった気がするゴールデンウィーク。メルマガ読者の皆様はどのように過ごされましたか? 何かと忙しいこの時期ですが、季節の進み方が早い今年は、やることが一気に押し寄せてきた感じがします。急いで花見して、ジンギスカン食べて、畑の土を起こして、花植えて、行楽地に行って……。気がつけば連休の最終日だったという方もいらっしゃるのでは。一息つけましたか? ゆっくりできましたか? 今日は木曜日、あなたの安息日まであと何日ですか?
 『メルマガ北海道人』第69号、70号まで息継ぎなしで配信!

もくじ

新連載【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】

 鈴木邦男氏との往復書簡の休載から約3カ月を経て、編集長・和多田進の新連載が始まりました。第一回目は「濡れにぞ濡れし」の由来について。これを読まねば、大きな誤解を生じたまま先に進む可能性があります。コラムを正しく読むためには、今回のオリエンテーションへの参加は必須です!

連載【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】

 ネットやテレビを見ると、いじめ、殺人事件、自殺のニュースが流れ、街を歩くと、老人たちが何をするでもなくベンチでじっと座っている光景を目にするという田野城さん。日本には希望がないのか? と嘆く一方で、日本も捨てたものじゃないと思うことがあったそうです。希望の光はいずこに?

連載【岩崎稔の『大陸人の時間』】

 聖火リレーをめぐるトラブルで、色々な意味で注目度が高くなった北京五輪と中国政府。今回の「大陸人の時間」では、中国のデモ事情について岩崎さんが伝えます。フランス系スーパー・カルフールに対する不買デモの取材で岩崎さんが見たものは! 政府公認のデモとは! 北京のことはここで知るべし。

【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】 第1回

ひとことコラムの標題について

 源重之に私の好きな「音もせで思ひにもゆる蛍こそ鳴く虫よりもあはれなりけれ」(『後拾遺』夏)がある。「思ひ」の「ひ」は「火」でもあって、秘められた恋の心が埋め込まれているのであろう。「音もせで」は、「声も立てずに」の意だから、ますます切ない。私に『葉隠』の恋を思い出させもする。
 その重之には「松島や雄島の磯にあさりせし海人(あま)の袖こそかくはぬれしか」(『後拾遺』恋四)という歌もある。これまた哀切をきわめた恋の歌である。
 しかし、いまやどうしてこういう「恋」はなくなってしまったのだろうか? テレビ、携帯電話、パソコンを駆使するような心の伝達方式になってしまっては、こういう「想い」が生き延びる途もなくなったということなのだろうか。要するに、男女という性の境界を越えてのやりとりは、まったく面白くなくなった、と私は考える。

雨の奄美大島

 重之の「松島や―」の本歌取りと長年解釈されてきた歌に、
  見せばやな雄島のあまの袖だにも濡れにぞ濡れし色はかはらず
 という殷富門院大輔(いんぶもんいんのたいふ)の一首がある。『千載集』(恋四)にある歌だが、一般には『百人一首』の歌として知られる。
 色も変わってしまったこの袖を見せたいものだワ、雄島の漁師の袖も濡れてびしょびしょだけど、私の袖のように色が変わるほどじゃないわヨ。
 大意は、というようなことだろう。「あま」が女性の「海人」なのか、それとも男性の「漁師」なのか、それは分からない。読み手の受取りかた次第なんだろう。これを本歌取りの歌と考えるか、さらには「あま」をどう考えるかで、微妙に歌はニュアンスを変える。
 「日本」とはやや隔絶していると言わざるを得ない北海道、よく言えば「ニッポン離れ」している雄大無辺の北海道では、『百人一首』も「かるた」もポピュラーとはいいがたい。したがって、このコラムの標題についてあらぬ誤解が生じないともかぎらない。濡れるのはあくまでの「袖」ないしは「心」であって「腰巻」なんぞでは決してないのである。
 余計なこととは思いつつ、連載開始にあたってひとこと標題の由来について述べておく次第である。

【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】 Lesson 31

好きな空間、好きな時間♪

 私は引っ越しが大好きです。新天地へ行くとなるといつもワクワクします。思えばこれまで幾度となく引っ越しを繰り返してきました。引っ越しをするにしても、ほんの数日間の旅行に出かけるにしても、場所を変えるという行為が私にとっては、思考をリセットでき、新しい何かを見つけ出せるチャンスになるのです。
 これが習性になったのは、私が小学生のころだったかもしれません。親の仕事上、私には何の予告もなく、いきなり荷物をまとめては引っ越し、転校を繰り返す生活をしていました。ですから自分の好き嫌いとはまったく関係なく、昨日までとはがらっと違う環境に、その都度、適応しなくてはなりませんでした。知らない街でどんな新しい友達に出会うのだろう? といつも期待と不安で一杯だった気がします。少なくともふつうの子どもが経験する数倍の出会いを与えてもらった訳ですから、今となっては、親に感謝しなくてはいけないかもしれません。
 音楽家になってからは、ライブやコンサートツアーのため各地を転々と移動してきました。今まで訪れたことのない地域へ足を運び、美味しいものを食べて、夜な夜なドンチャン騒ぎをする日々は楽しいものでした。まさに旅から旅への旅ガラス……とでもいいましょうか。旅に暮らす人たちの気持ちもまんざらわからないでもないです。たどり着いた地域での私はよそ者です。だからこそ、そこで見聞きした物事を客観的に捕えることができてしまうのです。この経験は自分にとって良い財産となっています。
 たしか私が中学生の時、漫画『ムーミン』がテレビ放映されていました。この『ムーミン』とは北欧の童話です。彼らが生息するムーミン谷の郊外にはスナフキンという“ムムリク”と“ミムラ”という種族のハーフが住んでいました。ムーミンたちにとって遠くもなく近くもない存在、それがスナフキン。私は音楽と釣りが好きで自由を愛する彼に憧れていました。また、ことあるごとに彼は優しくも重みのあるコメントをムーミンたちに語りかけていました。その姿にとても共感した記憶があります。
 ところで最近、ネットやテレビを見ると、学校でのいじめの悪質さ、殺人事件、はたまた毎日のように自殺のニュースが報道されています。街に出ると、デパートのベンチで老人たちが何をするでもなく、ただじっと座っている。その姿を観るたびにせつない思いがこみ上げてきます。
 それにしても暗い話ばかりなので、「日本にはまったく希望がないのか?」と嘆いてしまいます。……と言いながらも最近、なかなか日本も捨てたものじゃないなぁ〜と実感することがありました。残念ながら政治や景気、教育の話ではありません。それは日本の至るところで温泉が湧き出ているという事実です。そんなの当たり前じゃない! と思われる人もいるでしょうが、世界を見渡すと、温泉が湧き出ない地域なんていっぱいあります。食べ物や玩具などに有害物質が混入されているというようなニュースが珍しくない現在、とても身近に危険と隣り合わせで生きていると感じさせられます。そんな時代に、人工ケミカルではなく、純粋に自然がつくりだした成分が一杯入っている温泉が利用できる地域に住まわせてもらっているのですから、こんな贅沢な話はないと思うのです。何事もそうですが、この当たり前が結構落とし穴になります。物事の大切さを見落としてしまうからです。
 先日、北海道余市郡の赤井川村にて、ロッジを貸し切り、サックスキャンプを行いましたが、ここのロッジの天然温泉に出会えたのはキャンプのおかげでした。ものの10分も入浴していると、手足がびんびんシビレてくるではないですか。さすがカルデラの上に建てられたロッジだけあって泉質が違います。地下水が何千年もかけてマグマにグツグツ煮込まれてきたのですから、もうエネルギーいっぱい! なのでしょう。
 いつもの音楽スタジオから抜け出し、新しい空間に飛び込んで思う存分サックスを吹く! 今回のサックスキャンプ一つをとってもそうですが、今までとは違う環境に強引にでも身を置くことで、思考のリセットのみならず、素敵なスペースや天然温泉にも出会えたのです。日本もなかなか捨てたものではありません。これからもどんどん旅に出たいと思います。

著者近影

たのしろ・ひさお…1958年広島市生まれ。サックス奏者。78年バークリー音楽院入学。在学中から精力的に活動し、帰国後の87年サリナ・ジョーンズの日本ツアーにソロ奏者として参加。91年「25周年記念」のモントルー・ジャズフェスティバルに出演。音楽家はもちろん、多彩なジャンルの表現者たちとのコラボレートを積極的に実践、近年は「音楽教育」の必要性を重視し、広い層の若者たちに個性的な指導を続けている。

ホームページ:http://www.tanoshiro.com
携帯サイト:http://www.tanoshiro.com/m/

【岩崎稔の『大陸人の時間』】第34回

中国のデモ事情

 世界各地を北京五輪の聖火リレーが物議をかもしながら巡回する中、五輪開催まであと100日を切った先日、中国各地で盛大なイベントが繰り広げられた。北京では数万人規模の市民マラソンや、五輪テーマソングの発表で、ジャッキー・チェンを筆頭に香港、台湾、大陸のアーティストたちが一斉に集った。五輪に対する各国との価値観の違いが浮き彫りになる中、私はその渦中のある出来事の取材に送られることになった。フランス系スーパー・カルフールへの不買デモの取材だ。
 パリでの聖火リレーの妨害や、開幕式のボイコットを匂わすサルコジ大統領の発言に対し、ネット上ではカルフールで不買運動をしようと書き込みが殺到した。実際に先月、各地のカルフールや北京のフランス大使館でデモが行われた。それを受けてサルコジ大統領は、親書を温家宝総理に出して収集をはかったのだが、ネットでは5月1日のメーデーに更なる不買運動をしようとデモが呼びかけられていた。
 例のごとく私は記者と現場に向かう。
 「さすがに今日は何もないでしょう」
 記者も私も予想は同じだ。関係を回復しようとするフランス政府の行動を受けた中国政府にとって、これ以上のデモは悪いイメージにつながりかねない。愛国心を煽るばかりでなく時には鎮めもする。

故宮

 私たちが向かったのは北京大学や清華大学がある学生街のカルフール。中国のデモは学生たちが火付け役になることが多く、数年前の反日デモも学生街から始まった。カルフールの出入り口付近に到着すると、100人を超す野次馬がデモ隊がやって来るのを行ったり来たりしながら待っているようだ。もちろん警察や私服警察が数十人警備していて、少しでも人が集まると散らばるように誘導する。早速、私は警察に身分証明の確認を求められた。
 「何をしに来たんだ、早く帰りなさい」
 何をしに来たのかなど一番理解しているくせに平気で何も知らないふりをする公安当局に、私も慣れてしまった。以前であればこういった取材は一切できなかったのだが、五輪を前に自由な報道を認めざるを得ず、強制的に記者を排除することはできない。
 しばらくすると、「祖国分裂反対」と書かれたTシャツを着た数名の若者がやって来た。何を叫ぶでもなく、ただ歩いているだけなのだが、そこに駆けつけたメディアに囲まれ、さらにそれを野次馬が囲む。その人だかりに気づいた警察は、すぐにTシャツを着た若者をパトカーに誘導する。野次馬たちからは歓声や拍手が起きた。気がつくと、かなりの数の人たちがデモ隊がやって来るのを待っていた。この野次馬の行動に火がつくと、大規模なデモになることは明らかだ。やはり今日も何が起こるかわからなくなってきた。
 先週末にフランス大使館で行われたデモは、政府公認のものだった。警察や武装警官らは、何時にデモ隊がやってくるのかを知っていたし、デモを起こした人たちもどこまで抗議してよいか熟知していた。また、外交部もこれらのデモに対して肯定的だった。
 以前に反日デモやNATOの中国大使館誤爆に対するデモなどを取材したことがあるが、これらも政府公認型デモで、「今回は大使館に投石などが起きても許可する」「このデモに関しては抗議のみ」といった具合で警察が介入するタイミングが毎回違う。中国政府にとってデモは相手国に対するメッセージであり、若者や民衆の怒りのガス抜き的要素がある。
 数時間過ぎると遠くのほうが何やら騒がしくなった。気がつくとカルフールへの不買と米テレビ局CNNに対する抗議が書かれたプラカードを待った若者がすぐ傍に現れた。野次馬たちがそれをとり囲み、まさに一触即発の空気が流れた。

次回に続く

著者近影

いわさき・みのる…写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。
*現在ANAの機内誌「翼の王国」で、作家の原口純子さんと「中国万事通」を連載中です。

ホームページ:http://www.minoruphoto.com/japanesemainpage.htm

次号予告

 次号の配信日5月15日は、沖縄本土復帰記念日で、その日の誕生花のひとつにわすれな草があります。花言葉は「真実の愛、私を忘れないで」。読み忘れないでいただきたい次号のメルマガラインナップは、上林早苗の「上海日記」、「とろんのPAI通信」、若月元樹の「南の島から――沖縄県黒島の日々」の3本立てです。
 『メルマガ北海道人』第70号は5月15日(木)に配信します。

※インターネットに接続するとメルマガ上の画像をご覧になれます。

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