メルマガ北海道人

HOME > 第67回

『メルマガ北海道人』第67号 2008.4.24. ―「北海道人」、空見上げれば、桜―

 20度を越えるあたたかい日が続いたため、道内各地から桜の便りが届きました。エゾヤマザクラにつづき、ソメイヨシノも街のあちこちで咲いています。一週間前と景色がガラリと変わってしまいました。いつのまにつぼみを膨らませ、花ひらく準備をしていたのでしょう。ものすごい早変わりです。桜開花の舞台裏が気になります。
 雨、嵐に顔のきく方は、ちょっとの間、遠慮してくださいとお願いしてくださいませんか。ちょっとの間、ほんの10日くらいでいいですから。
 『メルマガ北海道人』第67号、桜の花と香りの中から配信!

もくじ

連載【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】

 「卵が先か、鶏が先か」。音楽の世界でいつも問われるのは「技術が先か、ハートが先か」。人々が感動する演奏をするために、必要なものは何でしょう。反復練習? 感性? 素晴らしい演奏家やボクシングのチャンピオンに欠かすことのできない存在は何でしょう。気になる答えはLesson30で。

連載【岩崎稔の『大陸人の時間』】

 岩崎さんが突発事件の取材に追われているうちに、北京首都国際空港の第3ターミナル、通称“T3”がオープンしていました。国内出張でT3を利用する機会が訪れましたが、岩崎さんの行く手を阻むものがあります。チェックイン・カウンターで、出発ゲートで。今回はなんだかvery hotです。

【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】 Lesson 30

自由な表現の獲得

 「卵が先か? 鶏が先か?」良く聞く言葉ですが、音楽を演奏する上でいつも問われるのは、「技術が先か? ハートが先か?」です。もちろん答えはハートです。それを表現する上で必要なのが技術です。
 以前にもお話ししましたが、この逆はありえません。熱い血の通ってない作品ほどつまらないものはないのです。いくら綺麗な言葉を羅列されても、いっさい心に響かない! これは誰もが一度は経験しているのではないでしょうか。サックスを吹くにしても、ただ楽譜をなぞって演奏したところで何の意味もありません。しいて言えば反復練習をしているだけだと説明できるでしょう。この行為は音楽と呼べるしろものではありません。言葉も同じで、単語を並べ、なぞる練習をしたからと言って、他人を感動させることなどありえないのです。熱い演奏を展開するには熱い情熱がいる。これが絶対条件です。
 その思いが音楽理論やスタイルを超越した世界をつくりあげ、一般オーディエンスに感動を与えるのです。しかし、感動を実際に体感する、もしくは産み出すには、常に演奏家自身、自分を磨く努力が求められます。これは教科書などにはなく、自分の力で前進し、獲得していかなければいけません。さらに私はフィーリングや感性と呼ばれるものほどいい加減なものはないと思っています。あまり信用しません。人間は常に前に向かって進めるかどうか! なのです。前進すれば、その先に山があるのか谷があるのか、雨が降るのか雪が降るのか予測不可能なこともあるでしょう。しかし、おじけづくことなく、未知との戦いを楽しむ勇気が必要になってきます。新しい世界を体験するには、そこに踏み込まない限り不可能です。
 では次に、「あなたはこれまで学んだ考え方をすべて投げ捨てる勇気がありますか?」こんな質問をされたら、どうします?
 経験豊富であればあるほど、答えに苦労してしまいますよね。私がボストンとニューヨークで個人的に師事した先生方から最初に教わったことがこの試練でした。それまでバークリー音楽院で学んだサックス奏法、音楽理論、音楽家の心得等すべてに対して違う考えを提案してきたのでした。これは実に驚きでした! しかし、私は考え悩むこともなく、瞬時に自分の師事した先生について行こうと決めました。それまで高い授業料を支払って受けてきた音楽知識や経験をあっさり捨てた自分がいたのには驚きました。もちろん考え方はいろいろあるでしょう。どちらが正しかったのかわかりません。しかし、己の進む道は「これだ!」と決めなくてはならないのです。
 あれから30年、師匠の一人は残念ながら他界しました。しかし、これぞマエストロと言われた師匠(先生)のアドバイスは、現在に至っても私の中でまったく薄れることがありません。文化は継承されているのです。
 マイルス・デイビスのバンドで脚光を浴びたサックス奏者のボブ・バーグが交通事故で亡くなり、昨年はスタジオミュージシャンとして活躍したサックス奏者マイケル・ブレッカーが亡くなりました。彼らもまたマエストロ(師匠)の弟子の一人でした。ステージで演奏している姿からはうかがい知れなかったかもしれませんが、彼らが演奏する裏側では常にマエストロが力強くささえていたのでした。ボクシング選手がチャンピオンになるためには、いかに優れたトレーナーにめぐりあえるかが重要だそうです。これは音楽家をはじめとするすべての職業において当てはまるのではないでしょうか?
 本当に大切な部分は教科書には載っていない。それは師となる人との直接的な交わりをもつなかで鮮烈に体験し、必死に模索し、理解していく過程で初めて獲得してゆくものだと私は信じています。

  著者近影

たのしろ・ひさお…1958年広島市生まれ。サックス奏者。78年バークリー音楽院入学。在学中から精力的に活動し、帰国後の87年サリナ・ジョーンズの日本ツアーにソロ奏者として参加。91年「25周年記念」のモントルー・ジャズフェスティバルに出演。音楽家はもちろん、多彩なジャンルの表現者たちとのコラボレートを積極的に実践、近年は「音楽教育」の必要性を重視し、広い層の若者たちに個性的な指導を続けている。

ホームページ:http://www.tanoshiro.com
携帯サイト:http://www.tanoshiro.com/m/

【岩崎稔の『大陸人の時間』】第33回

大混乱の私と北京ニューターミナル

 農家体験出張の話が思いのほか長くなり、あっという間に4月も半ばになってしまった。この四半期、餃子事件で製造元の天洋食品のある石家荘へ、チベット暴動問題で四川省のチベット民族自治区へと、突発事件の取材に追われていたが、北京では着実に五輪に向けた準備が進んでいる。その一つが3月にオープンした北京首都国際空港の第3ターミナル、通称“T3”、北京の新しい玄関口だ。
 私が初めて北京を訪れた1995年当時、空港に一つしかないターミナルは北京駅よりも小さくて、まるで長距離バスのターミナルのようだった。夜、飛行機が滑走路に到着するとロシア製のバスが迎えにやって来た。そのバスの窓から見た忘れがたい風景は、暗いオレンジ色の街燈の下に見える自転車に乗った人影。さすが中国、空港にも自転車に乗った人がいるのだと思った。さらにターミナルに着いてトイレに行けば、ドアのないトイレが並んでいて、一体なぜドアがないのだろうと深く驚いたのを覚えている。
 そのうち第2ターミナルができ、ついに第3ターミナルまでできてしまった。空港に限らず街全体のインフラの発展は目覚しい。五輪景気で弾みがついて、ここ数年で住む人々さえも目を見張るスピードで増加している。
 早速、中国国内の出張で“T3”を利用することになった。外観は変わったが、中身は従来の中国そのものだった。
 記者と待ち合わせてチェックイン・カウンターに行くと、受付嬢は渋い顔で言い放った。
「あなた方は3分遅れました。もうチェックインはできません」
 私と記者は日常的に空港を利用しているため、毎回ギリギリにチェックインする習慣がついていた。以前までは国内線は30分前までにカウンターにたどり着けば間にあったのに、“T3”になってからは45分前に変更になったのだという。だが、そのような表示は空港内のどこにもない。何も知らない私たちは1時間前に到着していたのだが、打ち合わせをしているうちにこの時間になってしまっていた。
「何の表示もないじゃないか! たった3分遅刻しただけで飛行機に乗れないなぞというのは目茶苦茶だ。実際、間に合わないはずがない!」
「45分前にチェックインするのは新聞やニュースで告知をしました。それを見ていないあなた方に責任があります。諦めてください」
 諦めてくれと言われても、これからスケジュールの過密な取材に行かなければいけないのだ。とても譲歩できない。

軍事博物館

「もう少し上の人と話をしたい」
 ここでは埒が明きそうにないのでそう言うと、他のカウンターに回された。乗り遅れた数人が殺気立った雰囲気でカウンターを囲み、カウンター内の中年男性に向かって
「飛行機に乗せろ」
 と口々に叫んでいる。しかし、そのうち諦めて、他の飛行機に変更しているようだった。私はカウンター近くに“45分前でチェックインを締め切る”という旨の表示をすべきだと意見を出したが、返ってきた中年係員の言葉に卒倒しそうになった。
「空港の美観を損なうからそれはできない」
 過密スケジュールの中で予定の飛行機にいきなり乗れなくなってただでさえパニック状態なのに、そのうえこんなことを聞かされ、驚きと怒りで血が逆流するのを感じた。私と記者も次の便のチケットを購入し、改めてカウンターに向かった。すると、
「この便はまだチェックインできません。早すぎます」
「すでに離陸まで2時間を切っている。それなのに早すぎるとは何だ!」
 私たちは朝から怒りの坩堝(るつぼ)に落ちたように叫び続けた。
 ようやくチェックインして冷静さを取り戻し、出発ゲートに向かう。安全検査の前にスターバックスを見かけ、コーヒーを購入することにした。しかし、安全検査で引っかかってはいけないと、持ち込めるかどうか警備員に聞いてみると、大丈夫だと即答した。安心してカプチーノを片手に安全検査を通ったところ、検査員の言葉に耳を疑った。
「液体は持ち込めません。捨てるかここで飲んでください」
 検査員がやっと落ち着いた我々に新たに油を注いで火をつけた。もう我々は怒りで火だるま状態だ。
「あそこにいるやつが持ち込めると言ったんだ!!!」
「あの人は我々と別の部署です。あそこで何を言ってもこことは関係ありません」 
 と、買ったばかりのカプチーノを取り上げようとする。疲れてもう言葉が出ない。記者も私も無言のうちに安全検査所でカプチーノをすすった。
 たった12年の中国の発展ぶりはT3を見れば一目瞭然だ。しかし、この縦割り行政、あほみたいな柔軟性のなさ、立派な箱ができたところで人はなかなか変わらない。大きなツケが各所で現れる中国の今日この頃だ。

著者近影

いわさき・みのる…写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。
*現在ANAの機内誌「翼の王国」で、作家の原口純子さんと「中国万事通」を連載中です。

ホームページ:http://www.minoruphoto.com/japanesemainpage.htm

インフォメーション ポータルサイト「北海道人」更新情報

連載【となりの北海道人「私のお父さん」第38回】

読むたびに、いろんなお父さんがいるものだとあらためて感じさせられる「私のお父さん」。今回もお父さんは期待を裏切りません!

今回の「私のお父さん」のタイトルはこちら↓
「父の肩こりをなんとかしたい」
「おやじとの思い出は少ないね」
「ものづくりの魅力を教えてくれた父」
「ギネスに載るんじゃない?」

となりの北海道人「私のお父さん」第37回

次号予告

 次号はGWのすきまの平日に配信します。今回の「とろんのPAI通信」は、久しぶりにタイのPAIからお届けします。
 次号のメルマガラインナップは、上林早苗の「上海日記」、「とろんのPAI通信」、若月元樹の「南の島から――沖縄県黒島の日々」、強力連載3本立てです。
 『メルマガ北海道人』第68号は5月1日(木)に配信します。

※インターネットに接続するとメルマガ上の画像をご覧になれます。

メルマガに対するご意見・ご質問などはこちらまで
mailmag@prc.hokkaido-jin.jp

ポータルサイト『北海道人』
http://www.hokkaido-jin.jp/

※登録(または解除)は、こちら
http://www.hokkaido-jin.jp/mailmagazine/index.html

このページの先頭へ

バックナンバー

最新のメルマガ
第160回までのメルマガ
第140回までのメルマガ
第120回までのメルマガ
第100回までのメルマガ
第80回までのメルマガ
第60回までのメルマガ
第40回までのメルマガ
第20回までのメルマガ