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『メルマガ北海道人』第161号 2010.3.11.―「北海道人」、春の響き―

 全国的には季節はずれの大雪となったようですが、札幌圏では雪どけがすすみ、幹線道路の多くはアスファルトが見えるようになりました。道が雪で覆われていたときにはゆっくり走っていた車も、近ごろでは走りやすくなった路面への喜びを、アクセルをブルルッとふかして表現しているようです。
 冬の間、雪に吸い込まれていたいろいろな音がとけだしたかのように街に響き渡るようになりました。クラクションの音、靴音、話し声……。ぼやきも、ひそひそ話も冬よりは響きますから、ボリューム調整をお忘れなく!
 『メルマガ北海道人』第161号、こちらはアクセル全開春の空に思い切り響かせてブルルン配信!

もくじ

連載【岩崎稔の『大陸人の時間』】

 カメラマンという仕事柄、中国各地へ出張に行くことが多いという岩崎さんは、北京にいるときでも忙しく、買い物もままならないそうです。そんな岩崎さんがはまっているのが、旅先での買い物です。「どうしてこんな物を買うの?」とまで言われてしまう、その買い物の内容とは?

連載【橋場了吾の『SAPPORO MUSIC LETTER』】

 今回橋場さんが紹介してくれるアーティストは、日本のヒップホップシーンを牽引しつづけている3人組、RHYMESTERです。歌詞では痛烈な社会批判をも繰り広げるというRHYMESTERの素顔が垣間見える今回のエッセイ。ライブは4月23日にZepp Sapporoで行われます!

連載【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】

 この原稿を書いた旅先の南の島で、朝起きたときに最初に頭に上ってきたことが、「私は早晩死ぬのである、ということを忘れていた」ということだったという和多田進。『死の棘』の作者が何年かを過ごしたというこの南の島で、和多田進が体験した不思議なこととは……。

【岩崎稔の『大陸人の時間』】第80回

買物紀行

 このメルマガを読んでいただいている方はご存知かもしれないが、私は仕事柄、中国各地への出張が多い。昨年は、出張日数が150日以上に上り、日本への一時帰国の日数も加えると北京を留守にする日が本当に多かった。北京でも仕事に追われ、食料品以外の買い物をすることがほとんどない。
 そんな私が数年前からはまっているのが、各地を旅するたびにその土地の工芸品や特産品を買うことだ。普段買い物ができないため、購買意欲が爆発する。福建省武夷山で購入したとても重い切り株の机セットや、江西省景徳鎮で購入した陶器製の牛の飾り物、甘粛省で購入した牛の皮で作られたカエルの形をした影絵などなど、これまでに買ったものを数えるときりがない。どれも他人からは「どうしてこんなものを買うの?」と突っ込まれてしまう品々だが、独身男性のささやかな幸せなのである。
 今年に入ってすでに6カ所ほど出張に行ったが、その中でも青海省と湖南省で思わぬ買い物をしてしまった。
 まずは青海省だが、オバマ大統領がダライ・ラマ14世と会談したことから、久しぶりにチベット族や寺院の取材を試みた。すでに数え切れないほど青海省を訪れているのだが、一度行ってみたい村があった。それはチベット文化圏で最も有名な宗教画「タンカ」を生産する村だ。村の男性のほとんどが絵描きで、忍耐力と細かい技術が必要とされる「タンカ」を朝から晩まで描いていると聞いていた。今回はぜひその村も訪ねられればと思っていた矢先、村でお祭りがあることを聞きつけた。こんなチャンスはないと、その村へ向かった。
 祭りでほとんどの村人は寺院に出払っていたが、数件の「タンカ」屋さんを見つけて中に入る。店には、チベット仏教の神が目の覚めるような色彩で描かれ、展示されていた。この村の「タンカ」の特徴はとにかく細かいことである。虫眼鏡を渡され、絵の細部まで見ると、釈迦のまとう袈裟の小さな模様まで細かく描かれていた。

子羊とラマ

 何件か店を回った後、農家も訪ねてみた。いたって素朴な外観の家の中に入ると、仏壇があり、美しい仏の絵が飾られていた。部屋に通されると数枚の「タンカ」を見せてくれた。部屋の外では牛の鳴き声が聞こえるが、中にはどこかの美術館を訪れているような錯覚を覚えるほど、素晴らしい作品ばかりがあった。もちろん私は数枚の「タンカ」を購入してしまったのだった。
 湖南省では古い村「古鎮」の取材で、ほとんど旅行者を見かけることのない村を訪れた。古い城壁で囲まれた村には一軒の骨董品屋があった。この地域は漢族以外にミャオ族や土族が暮らしていて、店にはエスニックな工芸品や、刺繍がたくさん置かれていた。店の外には槍や弓などが粗末に立て掛けられていて、その中に何と日本刀があった。
 亭主に聞くと、この村は国民党の軍人や人民解放軍が駐在していたことがあり、その兵士らから買ったという。金属製の刀を抜くと“天皇”と刃の根元に書かれ、裏には「昭和15年、佐藤小太郎、36821」と書かれていた。亭主はしつこく私に購入を迫った。こんな辺鄙な村に日本刀が粗末に置かれているのも可哀そうだし、機会があれば遺族に返すこともできるだろうと、思わず購入してしまった。購入した後に気がついたのだが、北京に戻るためには飛行機に乗らなければならない。どう考えても日本刀を持ち帰ることはできない。これが日本であれば銃刀法違反で捕まってしまうのでは……。中国の法律ではどうなのだろう……。
 その日の夜、ホテルで北京に持ち帰る方法を調べてみるが、やはり飛行機には持ち込めない。この日本刀の素性を調べていくうちに、私を不安にさせるサイトを幾つか見つけてしまった。日本刀の刃に書かれた「佐藤小太郎」とは有名な軍の指揮官の名前で、この日本刀の名前でもあった。この「佐藤小太郎」ブランドの日本刀は幾つか制作されていることも分かった。しかし、「36821」の数字の日本刀を検索すると、中国語で書かれた日本刀コレクターのブログが数多くヒットし、そこに「この日本刀は偽物ではないか?」といった疑惑が書かれていた。
 とにかく北京に持ち帰ることができないので、旅行社の社長に預けることにした。こうして私は旅すがら不思議な買い物をするのであった。

終わり

著者近影

いわさき・みのる…写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。
*現在ANAの機内誌「翼の王国」で、作家の原口純子さんと「中国万事通」を連載中です。

ホームページ:http://www.minoruphoto.com/japanesemainpage.htm

【橋場了吾の『SAPPORO MUSIC LETTER』】 第34回

有言実行の「マニフェスト」を掲げた最強のヒップホップ三銃士

 「メルマガ北海道人」をご覧の皆さん、こんにちは。今回も【SAPPORO MUSIC LETTER】では素敵なミュージシャンの魅力をお伝えしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 今や日本のミュージックシーンのメインストリームといっても過言ではない「ヒップホップ」というジャンルにも、もちろん黎明期がありました。だれにも見向きもされない、自分たちの世代は捨て駒になっても次代には花を咲かせてもらいたい……今日ご紹介するRHYMESTERはそんな思いでスタートした3人組のヒップホップユニットです。
 RHYMESTERが結成されたのは1989年。「ヒップホップ? あれは黒人のバネでねぇ、なんて笑われた時代です。日本語でラップができるのか? という問いまでありましたから」と振り返るのはMCの宇多丸さん。「幕末を知っている古参の人たちのように扱われるんじゃないですかね」と笑うのはMC兼プロデューサーのMummy-Dさん。「今は、物心がついた時に日本語ラップがある世の中ですから」と感慨深く語るのはDJ兼プロデューサーのDJ JINさん。
 結成からの20年間は彼らの予想をいい意味で裏切る結果となりました。暗黒の時代(宇多丸さん・談)も経験しましたが1990年代のラップヒット曲の誕生により、ヒップホップは一躍知名度・認知度をアップさせ、RHYMESTERも「キング・オブ・ステージ」というニックネームがぴったりの迫力あるライブを展開してきました。
 2月3日にリリースされた4年ぶりのオリジナルアルバム「マニフェスト」には、メインストリームとなったヒップホップに対するRHYMESTERの姿勢が確認できる楽曲が収録されています。

左から宇多丸さん、DJ JINさん、Mummy-Dさん

 「伝えようとしていることの本質や姿勢は同じなんですけど、より客観的に見たというのはありますね。これはちゃんとリスナーに届く表現なのか? とか」(宇多丸さん)
 「自分の歌と思ってほしい、というのが最初に凄くあったんですよね。今自分たちがやらないといけないことはシーンの中の下の世代が今後出て行くためにも、外に向かって発信していく……こんな面白い生き方があるんですよ、という提示もしていきたかったので物凄く考えましたね」(Mummy-D)
 音楽に対し、ヒップホップに対して誇りを持ち、真摯に接しているからこそ、素晴らしいライブに繋がる……RHYMESTERはそんなユニットですが、ライブの前は緊張で大変なんだそうです。「実はステージに出てしまうとそうでもないんですが、手前が嫌なんですよ……ステージ直前の俺たちの愚図りっぷりっていったらないですよ」と笑いながら語る宇多丸さんではありますが、こういうギャップも、歌詞では痛烈な社会批判をも繰り広げるRHYMESTERの魅力なのかもしれません。
 北海道の食事も大好きなお三方は、北海道でのライブはいつも“ホーム感覚”で展開できるといいます。4月23日・金曜日のZepp Sapporoのライブはツアー初日ですが、ファイナルのような気合の入れ方で臨んでくれるとのこと。「キング・オブ・ステージ」のライブを全身で体感してください!

【RHYMESTER ライブ情報】
・RHYMESTER「マニフェスト」RELEASE TOUR 2010
 〜KING OF STAGE VOL.8〜

 2010.4.23(金) 札幌・Zepp Sapporo 開場/18:00 開演/19:00

(HP)http://www.rhymester.jp/

著者近影

橋場了吾…1975年札幌市生まれ。1998年同志社大学卒業後、札幌テレビ放送入社。ラジオディレクターとして「日高晤郎ショー」「ライブスピカ」等を担当。2005年同社を退社。以後広告制作プロダクションなどを経て、2008年株式会社アールアンドアールを設立し、札幌発の音楽情報WEBマガジン「SAPPORO MUSIC NAKED」を立ち上げる。「音楽で北海道を元気にする」を信条に、札幌にやって来たミュージシャンの取材を続けている。

「SAPPORO MUSIC NAKED」:http://www.sapporo-mn.com/

【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】 第46回

不思議な体験

 このメールマガジンの私の連載は、あと一回で終わる。同時に編集長の役も終わる。 
 考えてみれば、北海道人にかかわってから4、5年の歳月が過ぎたのではなかろうか。正確な時間は調べれば分かるのだが、それには手間がかかる。いま、正確な年月を必要としないことのために力は使えない。旅先なのだ。
 きょうの朝起きたとき、さいしょに私の頭に上ってきたことは、私は早晩死ぬのである、ということを忘れていた、ということであった。そうだ、私は近々死なねばならぬ身なのである。それを忘れていたのであった。そして、このことは私にとってなかなか新鮮な驚きだった。
 いうまでもなく、死はありふれた日常にすぎない。そこここに転がっているし、例外なくだれの身にもやってくるものである。そんなことは、改めて言うほどのことでもなく、だれでもが知っている。知らない馬鹿はいない、はずなのだ。
 けれども、この当たり前のことをみんな忘れているのではあるまいか。
 少なくとも私は忘れていた。忘れているのでなければ、忘れたことにしている、考えないことにしている、のである。
 地震のことと同じだ。地震は必ずやってくる。それなのに、人は知らないふりをして、たとえばめくるめく都市の建設に熱中する。
 そんな小賢しいことをしてごまかしたって、地震も死も、必ず確実にやってくるのに……。

九州・大宰府('09.2月)

 2010年3月6日のきょう、この原稿を書いている朝は、『死の棘』の作者が戦後の何年かを過ごした島なのである。あるいはまたこの島は、死後に突然、藪から棒に世に知られることとなった、その意味で不幸な画家終焉の島でもある。
 起きざめにわたしが死を忘れていたことに気づいたのは、それらのことに関係していたのかいないのか――。
 そんなあれやこれやを考えながら、この島に住む友人と一緒に海辺を歩いていたら、彼が突然、マブイがいるかも知れないと言ったのだった。だから海に近づくな、とも。
 沖縄でも何度も同じような話を聞いたことがあるのを思い出した。沖縄ではマブイグミといったはずである。目取真俊のそういう物語を読んだ記憶がある。
 マブイは魂のことであるようで、この島の人たちも沖縄の人たちも、どこか本気でその存在を信じているように見える。郷に入っては郷に従え、この島に遊んでいるかぎりは、私も彼らの言葉に従って、自分の魂を守ろうと思った。

 戀ひ死なむわが世の果てに似たるかなかひなく迷ふ夕暮の雲

 南の島に在っても、こういう歌が頭をかすめ得るというのは実に不思議な体験であった。

インフォメーション 「北海道人」からのお知らせ

 『メルマガ北海道人』とポータルサイト『北海道人』は、4月にリニューアルを予定しています。現在のメルマガ執筆者のエッセイは、新たなかたちでポータルサイト『北海道人』でお読みいただけます。メルマガ、ポータルサイトともに、今後とも『北海道人』をよろしくお願いいたします。

次号予告

 次号の配信は3月18日(木)です。メルマガラインナップは、上林早苗の「上海日記」、「とろんのPAI通信」、若月元樹の「南の島から――沖縄県黒島の日々」です。3人のエッセイは、メルマガとしては最終回になります。
 ポータルサイトでは、ひきつづき3人のエッセイを掲載いたしますので、こちらもご期待ください!

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