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『メルマガ北海道人』第155号 2010.1.28. ―「北海道人」、吹雪ときどき晴れ―

 強い風で飛ばされてくる雪で前が見えない! 建物からガラス越しに見下ろす通りでは雪が真横に降っている! 今週は吹雪の日が多かった気がします。ここ数日、頭のなかで一番多くかかっていたのは井上陽水さんの『氷の世界』。吹雪が止んで晴れ間が見えたら、プッチーニの『ある晴れた日に』が聞こえてきました。曲に合わせて鼻歌を歌いながら道を歩いていると、吹雪の仕業と思われる雪の彫刻が目に留まりました。一点の迷いもない彫刻は自然の芸術です。街や山や浜辺などいたるところに作品を残していることでしょう。皆さんは吹雪の芸術を目撃しましたか?
 『メルマガ北海道人』第155号、吹雪の芸術も春のような今日の気温であっという間に消えてしまいました、配信!

もくじ

連載【岩崎稔の『大陸人の時間』】

 1月21日で、上海万博まであと100日。岩崎さんは中国外交部の取材ツアーで上海に向かいました。案内された虹橋空港第二ターミナルの規模の大きさに思わず感嘆の声を漏らす日本人記者、7年ぶりに会ったフランス系企業で働く友人イヴァンに上海の勢いを感じたという岩崎さん。第77回は「上海出張記」です。

連載【橋場了吾の『SAPPORO MUSIC LETTER』】

 今回橋場さんが紹介してくれるアーティストは、千葉で結成された4人組のバンドNICO Touches the Wallsです。とても変わっているその名前の由来とは、NICO Touches the Wallsの目指す音楽とは。2月5日(ニコの日)に札幌・ペニーレーン24でライブがあります!

連載【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】

 何年か前、井上ひさしさんに教えられて読んだというアントン・チェーホフの『たわむれ』。それはそれは切ない恋物語なのですが、人間はそういった「切ない物語」なしでは生きていくことができない動物であるらしいと、和多田進は言います。第43回は「謎は解明せぬがよろしい」です。

【岩崎稔の『大陸人の時間』】第77回

上海出張記

 1月21日で、上海万博まであと100日となった。中国外交部の取材ツアーで上海に向かった。最近、上海に来るたびに感じるのだが、親友の子どもがものすごいスピードで成長するように、街もものすごいスピードで発展しているようなのだ。
 今回ツアーで最初に訪れたのは市内に近い虹橋空港の第二ターミナルだった。上海には、主に国際線を取り扱う浦東国際空港と、主に国内線を取り扱う虹橋国際空港がある。虹橋空港は巨大都市上海の国内の玄関口としては、少し小規模であった。報道陣に公開された第二ターミナルは、空港の施設以外にも、ショッピングセンター、地下鉄駅、将来浦東国際空港と結ばれる予定のリニアモーターカーの駅までもが建設中であった。
 取材に参加した日本人記者は、「羽田に新しいターミナルができた時に取材したけど、やっぱり規模が違う」と感嘆の声を漏らしていた。
 翌日、上海万博会場や新しく建設中の地下鉄を取材する。地下鉄の総距離は、昨年東京を抜いてアジアで一番になった。私がはじめて上海を訪れた時は地下鉄の路線がほとんどなかったが、ここ数年でアリの巣のように至る所に張り巡らされている。
 万博会場も順調に建設が進んでいた。よくこんなに市内に近い場所に、これほどの規模の会場を作ることができたと感心させられる。しかしその裏には、私が昨年上海で取材した、万博会場から立ち退きさせられた一部市民の不満や怒りがあることを、会場内を歩きながら思い浮かべた。

上海の工事現場

 最終日、7年ぶりにフランス人の友人イヴァンに会う。彼は、私が95年に北京を訪れた際に通っていた中国語学校のクラスメートだった。彼とは私が泊まるホテルで落ち合うことになった。ロビーに現れたイヴァンは7年前とほとんど変わらない。ベトナム系の血を引いた彼は、どことなくアジア人の面影がある。「外に車があるから」と彼の運転手つき高級車に乗り込み、レストランに向かう。フランス系の会社に勤めるイヴァンは37歳という若さにして、アジア全体を管理する財務部長までのぼりつめていた。彼が管理するのはオーストラリア、シンガポール、インドネシア、韓国、日本、中国など。ほとんど出張しているので上海を留守にすることが多いという。
 夕食でメキシコレストランに入る。上海にこんなにも欧米系外国人がいたのかとビックリする。まるで他の国に来たようだ。最近、日本人とばかり交流していてこういう場所にすっかり来なくなってしまったが、改めて国際都市上海を体感する。
 イヴァンは途中フランスにいた時期を抜かすと、中国に10年間赴任していることになる。「もう他には行かず、定年までは上海でビジネスをするよ」と明言する。「フランスで仕事がないわけではないが、新しいことに挑戦しようとする人はみんな海外に出てしまうんだ、特にいま上海ではビジネスが動いているからね」。
 普段ビジネスマンと接することのない私にとって、彼は大変新鮮だ。たしかに気がつけば日本は年内にもGDPを中国に抜かれる状況だ。中国の勢いは止まりそうにない。こんなにも経済発展をつづける国で働くことは、ビジネスマンにとってやりがいがあるのかもしれない。
 「40歳になるまでに自分の会社を開きたい」と明確な目標を打ち出すイヴァンに、上海の発展の勢いを感じずにはいられなかった。

終わり

著者近影

いわさき・みのる…写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。
*現在ANAの機内誌「翼の王国」で、作家の原口純子さんと「中国万事通」を連載中です。

ホームページ:http://www.minoruphoto.com/japanesemainpage.htm

【橋場了吾の『SAPPORO MUSIC LETTER』】 第31回

何気なく触れた壁に映る極彩色の世界

 「メルマガ北海道人」をご覧の皆さん、こんにちは。今回も【SAPPORO MUSIC LETTER】では素敵なミュージシャンの魅力をお伝えしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 皆さんが日常生活を過ごしている中で、普段通りのことでも何気ない瞬間に感動することがあると思います。そんな瞬間がトイレの中で訪れたとしたら……。
 今日ご紹介するNICO Touches the Wallsは千葉で結成された4人組のロックバンドです。メンバーはヴォーカル&ギターの光村龍哉さん、ギターの古村大介さん、ベースの坂倉心悟さん、ドラムの対馬祥太郎さん。光村さんと坂倉さんが同級生で、古村さんは彼らの高校時代の1年先輩で同じ軽音楽部に所属していました。対馬さんは古村さんのバンド仲間で、少し遅れて合流しました。
 NICO Touches the Walls……非常に変わったバンド名ですが、光村さんにその由来を伺いました。
 「どこで話してもガッカリされる由来なんですが(笑)、バンド名を決める話し合いをしていた時に、偶然入ったトイレがめちゃくちゃせまくて、そこで転びそうになったんです。その時にトイレの壁があったおかげで、トイレに落ちずに済んだという(笑)。壁というとよく辛い時に使われる表現ですけど、僕は壁があることで助かったので、『壁に触れる』という言葉がいいなと思って。自分の中で壁の捉え方が変わったんですよね。それでバンド名にしたいなと思って『Touches the Walls』を提案しました。主語には女の人の名前をつけたかったので、最初は『MICO』だったんですが『NICO」の方がいいんじゃないかという話になってこのバンド名になりました」

NICO Touches the Wallsの光村龍哉さん(左)と古村大介さん

 トイレの中で訪れた偶然……それがバンド名という必然に変わってしまう。そんな経験がNICO Touches the Wallsが目指している、歌の主人公の気持ちの移り変わりを大事にした作風に表れているのかもしれません。
 昨年11月25日(ニコの日)にリリースされた2ndアルバム「オーロラ」では、一人の主人公の気持ちの変化を12曲で表現、見ている景色が空から大地に移り変わる様子を綴ったアルバムになっています。主人公は同じでも気持ちは全然違う……その気持ちに応じて1曲1曲に色をつけていった結果、極彩色の世界が広がるアルバムが完成しました。
 「必然的にイメージされる音が曲ごとに違うんですよ。それぞれの曲に対して集中力を高めてやっていかないと、その音を4人でなかなかモノにできないというのは実感しましたね。猛烈なこだわり・自分たちのイズムが如何なく発揮されていると思います」(古村さん)
 日常生活から生まれたNICO Touches the Wallsというバンドが、日常生活の深いところを見てみたらそこに映る景色は極彩色だった……このNICO Touches the Wallsにしか作りえない世界観が展開されるのは2月5日、これまたニコの日という偶然です。
 実は古村さんの出身は函館ということで、北海道にも縁があるバンドです。実は、何気なく触れた壁から得た偶然だと思われていた事柄そのものが、NICO Touches the Wallsにとって必然のことだったのかもしれません。

【NICO Touches the Walls ライブ情報】
・NICO Touches the Walls TOUR2009〜2010「& Auroras」
 2010.2.5(金) 札幌・ペニーレーン24 開場18:30 開演19:00

(HP)http://www.senha.jp/nico/

著者近影

橋場了吾…1975年札幌市生まれ。1998年同志社大学卒業後、札幌テレビ放送入社。ラジオディレクターとして「日高晤郎ショー」「ライブスピカ」等を担当。2005年同社を退社。以後広告制作プロダクションなどを経て、2008年株式会社アールアンドアールを設立し、札幌発の音楽情報WEBマガジン「SAPPORO MUSIC NAKED」を立ち上げる。「音楽で北海道を元気にする」を信条に、札幌にやって来たミュージシャンの取材を続けている。

「SAPPORO MUSIC NAKED」:http://www.sapporo-mn.com/

【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】 第43回

謎は解明せぬがよろしい

 アントン・チェーホフに『たわむれ』という恋物語がある。何年か前、この物語の粗筋を井上ひさしさんから教えられたのだった。教えられて、さっそく読んでみると、井上さんが語った物語の方がずっと面白く、劇的かつ感動的だった。
 若者と娘が一緒に橇に乗って滑っている。橇のスピードが最高潮に達したとき、若者が娘に言葉を発した。
 「あなたを愛しています!」
 たしかそのように娘には聞こえたのだが、激しい滑走音にかき消されて彼女は確信がもてない。娘は、あのとき若者が発した言葉を確かめることもできずに時が過ぎていく――。そんな物語だった、と思う。
 いま手元に本がないので確かめることができないけれど、娘は若者の言葉を「そうに違いない」と信じつつ老いていくという結末だったかもしれない。井上さんの創作と私の創作も混ざって、私はそんな物語として記憶してしまったのかもしれないけれども。
 確かなことは、娘が橇の上で若者が言った言葉を「あなたを愛しています!」であったかどうか確信できないまま生きていったということである。
 切ない話だと思う。恋というのは、そのように「切ない物語」なのだ。そして、人間はその「切ない物語」なしでは生きていくことができない動物であるらしい。
 ところで、人間は「切ない物語」をだれからどのように学ぶのだろうか? これはひとつの謎である。両親も友人も学校も、そんな物語は教えない。教育できない物語、それが「切ない物語」なのである。脳のどこかに発生するこの物語の起源を突き止めた人はまだいない。謎は謎のままなのだ。

聖路加病院('09.3月)

 「好き、嫌い」のメカニズムもいまだ不明である。何故に「好き」なのか、「好き」の起源はどこにあるのか、それが分からない。しかし、人間には「好き・嫌い」の感情が発生し、その感情によって正邪の判断が下されるようなことも稀ではない。ところが、この感情のメカニズム、発生の起源も依然として不明のままである。
 人間がずっと一夫一婦制の婚姻できたのでないことはだれもが知っている。ところが、現代を生きる私たちは一夫一婦制以外の実感というものがない。だから、たとえば『万葉集』や『古今集』『源氏物語』の恋は分かりにくい。考えてみれば、奈良時代は「妻問い婚」が主流だったようだし、平安時代は「婿取り婚」が主だったというのである。「嫁取り婚」は室町時代以降だと高群逸枝が言っている。
 『万葉集』にいくつもでてくる「妻問ふ」は、夜、男が女の家に行き、早朝になると自分の家に帰るという婚姻の方式を表現している。それが分からなければ歌意は不明だろう。歌意不明は、歌っている人の感情が分からないということでもある。
 今風に言えば奈良時代はナンパによる婚姻だった。道端などで出会った女に男が家の住所と名前を尋ねる。女が男を気に入れば教える。OKのサインということで、男は夜、女のところに行く。それが結婚だった。女は自分の家におり、男が女のところにやってくる「妻問い婚」だった。
 愛はともかく、恋しい気持ちが男と女を結び合わせる。それはむかしもいまも変わらない。ただし、「切なさ」には軽重があるのかもしれない。そうは思うが、「切なさ」の軽重を計る道具がないのである。そういう器具が発明されたらノーベル賞は間違いないだろう。そして、このノーベル賞は人間を幸福にするとはかぎらない賞となることもまず間違いない。
 謎は謎のままがよろしい、ということを知らないトンチンカンが世の中には多過ぎないかと思う。だから、そういう器具など発明されぬことを私は念じるわけなのである。

次号予告

 次号の配信は2月4日(木)です。2月4日は立春ですが北海道の春はまだまだ先、5日からは「さっぽろ雪まつり」や「小樽雪あかりの路」など冬のイベントがはじまります。
 さて、次号のメルマガラインナップは、上林早苗の「上海日記」、「とろんのPAI通信」、若月元樹の「南の島から――沖縄県黒島の日々」です。
 お楽しみに!

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