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『メルマガ北海道人』第133号 2009.8.20.―「北海道人」、夜風と口笛―

 日が短くなりました。少し前までは、まだ夜の8時なの? と思うくらい夜でも明るかった気がしますが。
 数日前の夜7時半ころでしょうか、夜風がそよそよ吹くなか、バス停に立っていると、自転車に乗った若者が右側からやってきました。Tシャツ短パン姿の彼は口笛を吹きながら通り過ぎていきました。なんだか懐かしい気持ちになりました。昭和っぽい……。今度は左側から女性二人が近づいてきました。聴き取れない会話は中国語のようでした。楽しげに話しながら目の前を横切り、少しすると、良い香りがただよってきました。ジャスミンのような白い花を想像させる香りは、中国女性のイメージそのものでした。暗くなって目が休息しはじめると、音や匂いが気になるようです。
 『メルマガ北海道人』第133号、うっとりするような香りの3連載を夜風にのせて配信!

もくじ

連載【岩崎稔の『大陸人の時間』】

 北京五輪から1年が過ぎました。五輪後は仕事が減るだろうと思っていた岩崎さんですが、かえって忙しくなったといいます。今回は「国民健康増進の日」に行われたイベントの取材に向かいます。3万4千人による太極拳でギネスに挑戦……無事に終わったのでしょうか。

連載【橋場了吾の『SAPPORO MUSIC LETTER』】

 この夏、北海道では大きな音楽のイベントがありました。「SAPPORO CITY JAZZ」と「RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO」です。2つの音楽フェスティヴァルを楽しんだ橋場さんが、そこで見たものとは、感じたこととは? 注目アーティストの紹介もありますよ!

連載【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】

 「外国語はすぐれていて日本語は遅れていると私たち日本人は百年余にもわたって思い込まされてきた」。明治時代に日本語文法を外国の文法にあてはめて考えようとした学者がいたことは日本の不幸だと編集長・和多田進は言います。第33回は「日本語文法とアンポンタン学者の罪悪」です。

【岩崎稔の『大陸人の時間』】第66回

北京五輪から1年

 8月で北京五輪開催から1年が過ぎたことになる。ずいぶんむかしのことのようにも感じるが、あっという間であった気もする。五輪が終わってしまったら私の仕事はめっきり減るだろうと考えていた。ところが地方の取材が増え、かえって忙しくなってしまった。
 北京五輪の開幕式が開催された昨年の8月8日は、今年から「国民健康増進の日」と定められ、各地でスポーツに関する行事が行われることになって賑わった。北京では一斉に3万4千人が太極拳を行いギネスに挑戦するというイベントが通称「鳥の巣」の脇で開催された。
 朝6時40分、私も取材のために会場に向かった。3万4千人も人が集まれば大混乱になるだろうと予測したのだが、私が会場に到着したときには太極拳スーツをまとった3万4千人がすでに万端整えて待機していた。脚立に乗りあたりを見渡すと、波のように人がどこまでもつづいていた。もの凄い光景だ。
 撮影のために設置された高さ約6メートルの足場に上り、太極拳がはじまるのを待つ。そうするうちに雲行きが怪しくなってきて、小雨がパラつき、遠くで雷が鳴りはじめた。 
 7時を過ぎて3万4千人の太極拳が音楽とともにはじまった。同時に雷が激しくなり、雨足も強くなる。
 そんななか、太極拳は終わり、3万3千996人が参加してギネスに登録されましたと発表された。

33,996人

 つづいて「国民健康増進の日」の記念式典が行われる。雨と雷はさらに激しさを増して普通に立っていることも困難になる。雷が地響きをたてて近くに落ちると、約3万4千人は一斉に避難をはじめた。雨宿りができるスペースはすぐに人で埋め尽くされた。私は雨に打たれながら右往左往するばかりだった。
 車椅子で参加していた障害のある人たちも雨に打たれながら耐えている。昨年のパラリンピックでは障害者を大切にしようと大宣伝していたのに、だれひとり助けようとする気配もない。助ける余裕がないほどの突然の豪雨で、だれも周りが見えないのだろうか?
 私のカメラやパソコンも濡れてしまって取材どころではなくなっていた。「国民健康増進の日」の記念式典ははじまっていなかったが、私は現場を後にすることにした。なんとか雨を避けようと逃げまどう約3万4千人を必死でかき分け車が走っている通りを目指した。びしょびしょに濡れてやけになっているのか、大声でわけのわからぬ歌を歌う集団までいた。
 ようやく車に乗り込んで現場を離れる。少し走ると雨が小降りになった。驚いたことに、5キロくらい離れた場所の地面は濡れていなかった。まったく雨の形跡がない。もの凄い集中豪雨が「鳥の巣」一体で起きていたようだ。
 五輪が開催される前、「五輪が終わったら中国はいったいどうなるのだろう」、いやそれよりも「私はいったいどこに行くのだろう」なんてことをよく考えていた。しかし、いまの中国を見ていると、世界的不況も何のその、経済成長しながらじわじわと世界的に影響力を強めているように見えるではないか。
 私はというと、あれから1年たったいまも相変わらず「鳥の巣」界隈をウロウロしているのである。

終わり

著者近影

いわさき・みのる…写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。
*現在ANAの機内誌「翼の王国」で、作家の原口純子さんと「中国万事通」を連載中です。

ホームページ:http://www.minoruphoto.com/japanesemainpage.htm

【橋場了吾の『SAPPORO MUSIC LETTER』】 第20回

北海道を音楽一色に染めた、世界に誇る二大フェスティヴァル

 「メルマガ北海道人」をご覧の皆さん、こんにちは。今回も【SAPPORO MUSIC LETTER】では素敵なミュージシャンの魅力をお伝えしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 今日はいつもと趣向を変えまして、北海道が世界に誇る二大音楽フェスティヴァルについて書かせていただきます。
 まずひとつめは「SAPPORO CITY JAZZ」。今年3回目を迎えたジャズの祭典は、7月末から大通西2丁目の期間限定ライブハウスWHITE ROCK MUSIC TENTをはじめ札幌市内のいろいろな場所でジャズのライブを行うというフェスティヴァルです。そのファイナル2DAYSが8月8日(土)・9日(日)に札幌芸術の森・野外音楽ステージで行われました。
 初日は「North Jam Session」。【SAPPORO MUSIC NAKED】でインタビューをさせていただいたJABBERLOOP、Jazztronikも参加した、日本のミュージシャンを中心にした先鋭的ジャズをたっぷり聴かせてくれる1日でした。約10カ月ぶりに見たJABBERLOOPは演奏力・構成力共に格段の成長を遂げ、トップバッターとして会場を盛り上げました。Jazztronikはクロスオーヴァージャズの先駆者としての貫禄を如何なく発揮、ヴォーカル曲・インスト曲の両方を披露しました。
 2日目は世界のジャズヴォーカリストが集まった「World Jazz」。今後世界的に人気ミュージシャンになりそうなのがカナダ出身の15歳の歌姫、ニッキ・ヤノフスキーです。15歳とは思えない妖艶な歌唱力と安定感のあるスキャット、愛らしいルックスとトップミュージシャンになるための素養が揃った彼女の名前はしっかり覚えておいてほしいと思います。

 ふたつめは今年11回目を迎えた「RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO」。今年も石狩樽川埠頭が音楽一色に染まりました。まずは8月14日(金)。注目はデビュー25周年を迎えた吉川晃司さん。1曲目からCOMPLEX時代の名曲「BE MY BABY」! その後も「モニカ」「憎まれそうなNEW FACE」などヒット曲を連発し、観客の期待に見事に応えました。得意のシンバルキックも出ましたよ! 先日インタビューさせていただいた9mm Parabelum Bulletも初出演という緊張感の中、勢いのある演奏を聴かせてくれました。
 翌15日(土)はこちらも初出演となるのあのわ、Nothing’s Carved In Stoneが出色の出来でした。のあのわのファンタスティックな世界観、NCISのロックオーラ……どちらも今年デビューしたとは思えない素晴らしいパフォーマンスでした。そして小泉今日子さんも登場! 吉川さん同様「水のルージュ」からスタートし「渚のハイカラ人形」(20年ぶりの演奏だったそうです)、「木枯らしに抱かれて」などヒット曲を中心にしたセットリストで観客を魅了しました。
 そして、個人的に応援している札幌出身のサカナクションの凱旋ライブも素晴らしかったです。全曲アレンジを変えてきた心意気にも感動しましたが、何よりその場にいる人たちを楽しませようという気持ちがステージから伝わってきて、こちらも思わずカラダが動いてしまうという“化学反応”が起きていました。サカナクション、このバンド名も覚えておいてほしいと思います。
 2週にわたって繰り広げられた非日常的な音楽フェスティヴァル。おそらくこのイベントで多くの感動や勇気をもらった人も多いと思います。もちろん私もその一人です。これからも音楽の素晴らしさが伝わるように精進しなければ、と心を新たにする2週間でした。

著者近影

橋場了吾…1975年札幌市生まれ。1998年同志社大学卒業後、札幌テレビ放送入社。ラジオディレクターとして「日高晤郎ショー」「ライブスピカ」等を担当。2005年同社を退社。以後広告制作プロダクションなどを経て、2008年株式会社アールアンドアールを設立し、札幌発の音楽情報WEBマガジン「SAPPORO MUSIC NAKED」を立ち上げる。「音楽で北海道を元気にする」を信条に、札幌にやって来たミュージシャンの取材をつづけている。

「SAPPORO MUSIC NAKED」:http://www.sapporo-mn.com/

【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】 第33回

日本語文法とアンポンタン学者の罪悪

 アメリカのイラク侵攻を鋭く批判するなどして世界的に著名な言語学者・チョムスキーが提唱する言語理論は、「生成文法」という名で呼ばれる。その名の通り、簡単に言えば文法が重要な鍵となっている理論で、人間の言語機能は人間の他の機能とは別に自律している――という考えが基本にある。つまり、人間は生まれながらにして言語に関する普遍的な文法を内在しているというのがチョムスキーの考えだろう。
 日本人の両親が、たとえばイギリス語を話す環境で子どもを産み育てれば、その子はイギリス語を話す人間になるのだが、これは、両親がもっている言語機能とは関係なく、そもそもヒトの脳味噌にはどんな言語にも共通する普遍文法が組み込まれているからだ、と考えるわけである。
 生成文法と対極の言語論理は「認知言語学」と呼ばれる。人間の言語機能というのは言語以外の認知機能と不可分の関係にあるという考え方である。だから、生成文法と違って、言語は生得的な機能などではなく学習によって獲得されるという主張が基になる。
 どちらがいいのか私には判断できない。どうも、どちらか一方が正しいというのではなく、どちらの考えにも一長一短があるのではないかと思う。そのいずれが正当であるにしろ、私たち日本人の不幸のひとつは、明治の時代に日本語の文法を全て外国語の文法に当てはめて考えようとしたアンポンタン学者がいたことだと私は考える。アンポンタン学者ほど恐ろしいものはない。それ以来ずっと、日本語を外国語(なかんずく英語)文法に当てはめるのが日本語文法の歴史になっちゃったのだから。

ローマ('07.11)

 言葉が違うということは、ものごとを考えるうえでの順番・手続・判断の仕方が違うということじゃないのか。人間同士のかかわり合い方が違うことだと言ってもいい。その違いを無視して、言葉の原理、法則まで外国流にしようとした学者の罪は相当重いと思う。そういうアンポンタン学者のせいで、外国語はすぐれていて日本語は遅れていると私たち日本人は百年余にもわたって思い込まされてきたのである。その極端な例が「日本語は論理的じゃない」という、まったく無謀かつ非論理の主張にまでなってさえいるようなのだ。いまだに日本語は論理的でなく、英語は論理的だと思い込んでいる日本人は多い。英語を話す非論理人間がうじゃうじゃその辺りをうろついているにもかかわらず、である。
 もし日本語が論理的でないというのが本当なら、日本語でコミュニケーションすることは不可能だろう。あらゆる言語にはその言語に特有の性格があるにしても、コミュニケーション不能の言語が存在しつづけることなど不可能である。さらに、もしある言語が人間同士のコミュニケーションに適さないとすれば、その言語は自然に消滅する運命をたどらざるを得ないはずである。
 消滅せずに長く生きつづけている言語は、どれもがみな論理的だと言い得るのである。そもそも言語であるかぎり、言語であることと論理的であるということは同議でなければならない。なにしろ、言語とは論理のことなのだから。

次号予告

 次号の配信は8月27日(木)です。8月もそろそろ終わりです。空は高くなっているでしょうか、その空に赤とんぼは飛んでいるでしょうか。 
 さて、次号のメルマガラインナップは、上林早苗の「上海日記」、「とろんのPAI通信」、若月元樹の「南の島から――沖縄県黒島の日々」です。
 お楽しみに!

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