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『メルマガ北海道人』第127号 2009.7.2. ―「北海道人」、ハードボイルド志向−

 いっせいに薔薇が咲き、街は花の香りであふれています。早朝の散歩で汗をかくと、タイミングを見はからったように爽やかな風が吹いてきます。高台から石狩湾を見渡すと、さざ波が朝日を受けて輝いています――素晴らしい日です。あまりにも素晴らしすぎて、バランスが悪いような気がしました。ふと 思い浮かんだのは“ハードボイルド”でした。非情で感情に左右されないさめた感じが必要だと。肉体と精神をギリギリまで追い詰めるような“ハードトレーニング”でも良いかもしれません。容易に折れたりせず、開いてもすぐ閉じてしまうような頑固で分厚い“ハードカバー”でも大丈夫かも……。
 『メルマガ北海道人』第127号、いつもは半熟ときどきhard boiledで配信!

もくじ

連載【岩崎稔の『大陸人の時間』】

 あちらこちらで区画整備がはじまった北京市内の一番大きな通りで、「久しぶりに死にそうになった」という岩崎さん。気温40度を超える北京で岩崎さんがパンダの取材に向かいます。死とパンダが隣り合わせの「大陸人の時間」第63回は「灼熱北京動物園」です。

連載【橋場了吾の『SAPPORO MUSIC LETTER』】

 今回橋場さんが紹介してくれるアーティストは、シンガーソングライターのYOUNGSHIMさんです。音楽好きの家庭に育ったというYOUGSHIMさんのお姉さんはレゲエシンガーとして活躍中のPUSHIMさん。R&Bとロックの要素が絡み合うYOUNGSHIMさんの音楽とは? 7月5日のイベントまであと少し!

連載【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】

 『古今集』の壬生忠岑(みぶのただみね)の歌、桂銀淑が歌う『すずめの涙』。まったく無関係に見える二つの歌ですが、「私の脳味噌のなかでは不思議に連動する。」と和多田進は語ります。「濡れにぞ濡れし」第30回は、「現代の“恋”の文法」です。

【岩崎稔の『大陸人の時間』】第63回

灼熱北京動物園

 先日、久しぶりに死にそうになった。しかも北京市内の一番大きな通り長安街での出来事だった。何度もしつこいようだが中国は今年、建国60周年を迎える。街のあちらこちらで区画整理がはじまり、私の行きつけの日本人が経営するイタリアンレストランもとうとう取り壊されることになった。
 最後にワインでも飲みに行こうと取材の帰り、機材を抱えながら長安街でタクシーを探していた。すると後ろからだれかの呼び声が聞こえ、振り返ったその瞬間、道の真ん中にポカリとあいていた穴に足を引きずり込まれた。
 機材や荷物を抱えていたため体勢を立て直せず、まずカメラが地面にたたきつけられる。そのままだとコンクリートに衝突しそうな体を腕で何とかかばうが、腕の皮が切り取られたようにむける。こんなに綺麗に道の真ん中で転んだのは久しぶりだ。抱えていた他の鞄の中身もぶちまけ、携帯などが道路に散らばる。道の真ん中で工事をするなら、何か囲いのようなもので覆っておけばいいのに、それはまるで動物を捕獲するための罠だった。
 血を流しながらカメラや携帯を拾い集める。こういうときに一人だと感情をどのように表したら良いのか分からない。とにかく荷物をかき集めてタクシーで現場を立ち去った。呼び止められたと思ったあの声は、どうやら勘違いだったようだ。
 話は変わるが、まだ6月の末だというのに、歩いているだけで意識が薄れてくるほど北京は暑い。新聞を見ると一部の地域で42度を越えたと報道されている。インターネットのニュースサイトには国家一級重点保護野生動物に指定されている金絲猴(キンシコウ)が、必死な顔でアイスクリームを食べている写真が掲載されている。もしかしたら北京の動物園でも動物たちがかき氷でも食べているのではと、取材に向かった。

パンダキン

 中国と言えばやはりパンダである。動物園には昨年の北京五輪開催の際に建てられた新しいパンダ舘がある。昨年までそこには地震で被害に遭った四川省のパンダが数匹いた。今年は建国60周年ということで、別のパンダが連れてこられている。一般の客に去年のパンダと今年のパンダの見分けが付くのだろうか。
 新しいパンダ舘に入るが、生き物の気配を感じない。そこには四角く切られた大きな氷があちらこちらに置かれている。これは熱中症のパンダが氷にしがみついて体を冷やすために置かれているに違いない。しかしパンダの姿はどこにもない。
 10分ほど待ったがやはりパンダは現れない。あまりの暑さに檻の奥にある部屋から出てきたくないようだ。待つこと30分、できれば私があの氷にしがみつき体を冷やしたい……遠のく意識の中、ぼう然と檻の中を眺めていると、飼育員がなにやら合図をした。すると3匹のパンダが奥の部屋からのしのしと現れた。早速氷の近くを通るが、私への嫌がらせなのか、まったく氷に興味を示さない。見ているこちらは暑さで、もう倒れそうだ。粘ること数分、一匹のパンダが私の目の前にある氷目がけて歩いてきた。氷を見つめる目は餓えたオオカミそのものだ。目にはくままで出来ている……。しかし、近くまで来ると観客を意識しているのか、先ほどとは打って変わって涼しげな顔つきだ。顔を近づけ一瞬「ぺろっ」と氷を舐めたように見えた。
 ありがとうパンダ。ちなみに金絲猴舘にも訪れたが、まったく生きものの気配を感じることはなかった。無事なのだろうか。

終わり

著者近影

いわさき・みのる…写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。
*現在ANAの機内誌「翼の王国」で、作家の原口純子さんと「中国万事通」を連載中です。

ホームページ:http://www.minoruphoto.com/japanesemainpage.htm

【橋場了吾の『SAPPORO MUSIC LETTER』】 第17回

リアルシンガーが創るリアルR&B……すべては聴いてくれる人のために

 「メルマガ北海道人」をご覧の皆さん、こんにちは。今回も【SAPPORO MUSIC LETTER】では素敵なミュージシャンの魅力をお伝えしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 今日は前回ご紹介したSATOMI’さんとともに7月5日(日曜日)に行われるイベントに登場するシンガーソングライターYOUNGSHIMさんをご紹介します。
 YOUNGSHIMさんは大阪出身で、お姉さんはレゲエシンガーとして活躍中のPUSHIMさんです。家族全員が音楽が大好きという家庭で育ち、小さいころから邦楽・洋楽問わず様々なジャンルの音楽に触れていたといいます。
 PUSHIMさんがレゲエシンガーとして活躍しだすと、YOUNGSHIMさんもライブに行く回数が増えていきます。
 「レゲエのライブに行くことが多かったんですが、実は自分で歌うのはR&Bの方が好きだったんです。最初は単純に『黒人は歌がうまいな〜』というところからスタートしました」
 Michael JacksonやMary J. BligeのCDを聴きこんで、実際に歌いはじめたのは20歳を過ぎてから。プロミュージシャンとして活躍している方の中では遅いスタートかもしれません。
 そのYOUNGSHIMさんがメジャーデビューを果たしたのが昨年6月。そして、今年4月に待望のファーストフルアルバム「Distance」をリリースしました。「Distance」を制作するにあたり、以前とは違うことがいろいろあったそうです。

 まず第一にアーティストとしての自覚が強くなっていたこと。以前はインタビューなどでも自分の作った曲のことをうまく伝えられずに苛立つこともあったそうですが、どういう気持ちで作ったのかを伝えられないとダメだなと思えたことが曲作りにも役立ってきたといいます。1曲1曲のメッセージをわかりやすく表現したい……そんな思いで「Distance」が完成しました。
 そしてもう一つはR&Bの要素にロックの要素が絡んできていること。これは現在のR&Bシーンがロック寄りになっているという時代の流れもありますが、小さいころ聴いたロックバラードのイメージを投影したものだそうです。YOUNGSHIMさんはロックバラードの力強さによって背中を押された経験があり、その前向きな力を「Distance」にも込めたそうです。
 このように「Distance」というアルバムはYOUNGSHIMさんの過去と現在が詰まった1枚ですが、特に印象的な楽曲として「Next To You」について簡単に説明しておきましょう。この曲は直訳すると「あなたのとなり」……YOUNGSHIMさんが自分の歌を聴いてくれるすべての人への愛情表現として作った曲です。
 「聴いてくれる人がいるからこそ私は歌っていられるので、全然会ったこともないのに『この人の歌いい』とか『この人と同じ気持ち』という想いで聴いてくれているのがとても嬉しくてその気持ちを曲にしました」
 自分が歌うのは自分のためにあらず人のため……そんな強い思いを抱いたリアルシンガーYOUNGSHIMさんの歌声を聴ける日まであと3日です!

【YOUNGSHIM ライブ情報】
2009.7.5(日)
札幌・Sound Lab mole(札幌市中央区南3西2)
開場17:00 開演17:30
(HP)http://www.artimage.co.jp/artist/youngshim/top.html

著者近影

橋場了吾…1975年札幌市生まれ。1998年同志社大学卒業後、札幌テレビ放送入社。ラジオディレクターとして「日高晤郎ショー」「ライブスピカ」等を担当。2005年同社を退社。以後広告制作プロダクションなどを経て、2008年株式会社アールアンドアールを設立し、札幌発の音楽情報WEBマガジン「SAPPORO MUSIC NAKED」を立ち上げる。「音楽で北海道を元気にする」を信条に、札幌にやって来たミュージシャンの取材を続けている。

「SAPPORO MUSIC NAKED」:http://www.sapporo-mn.com/

【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】 第30回

現代の“恋”の文法

 有明のつれなくみえし別(わかれ)より暁(あかつき)ばかりうきものはなし

 『古今集』恋三に見える壬生忠岑(みぶのただみね)の歌だが、私なりの歌意は以下の通り。
 「有明の」は、要するに「有明けの月」で、夜が明けてなお空に残っている月のことだろう。ということは、男と女の別れの歌ということになる。SEXし終えた(こう書いては身も蓋もないが)夜明け前後の別れほど辛いものはない、ということなんだろう。すっきりしないが、女性との別れが男の気持ちのなかで糸を引いているのだろうか。
 いま私は意識的に下品かつ素っ気無く歌意を表現するが、詠む男の気持ちはただごとではないように見える。ただし、こう詠んだ男の気持ちを疑う余地がないなどと私は考えない。男は本音を言っていないのじゃないか。歌のために、歌のテクニックとしてそう表現しているのじゃないか、と底意地悪く考えるのである。男の生理というものはもっとシンプルなはずだから。
 この『古今集』の一首を詠みながら私はまた別のことを考える。桂銀淑という韓国人歌手が歌う『すずめの涙』(作詞 荒木とよひさ)を思い出すのである。まったく無関係に見える『すずめの涙』と『古今集』だが、私の脳味噌のなかでは不思議に連動する。

 …たかが人生 なりゆきまかせ
 男なんかは 星の数ほど
 泥んこになるまえに 綺麗にあばよ
 好きでいるうちに 許してあばよ

新潟県十日町('03.7月)

 『すずめの涙』のサビの部分だが、この詩、なかなかあなどれない。女が男を捨てる歌だということはこの四行に集約されているのだが、その捨て方がカッコいいのである。捨てられる男が私だったら、辛さに身悶えするに違いないけれど、それが我身に無関係であるかぎり、私はこの捨て方をおおいに支持する。なにしろ、『古今集』のようにめめしくないのが好きだ。
 しかし、男を捨てるこの女性が悲しくないのかといえばもちろんそうではあるまい。彼女は、悲しく切ないのだ。淋しさもふくめたやるせなさ、身の置き場もないほどの苦痛を、「たかが人生」とか「なりゆきまかせ」だとかと思い込むことによって捨て去ろうというのである。それも、なるだけ乾いた気分で、そう、「あばよ!」という気分で捨て去りたいのである。簡単には捨て去れないものを、あたかも容易に捨て去れるかのごとくふるまうこの女性が、このうえなく美しいものに私には見える。とことんカッコ良く見える。
 人間の感情は何百年たっても変わらないという説があるようである。でも、こうして新旧二つの歌を見てみると、感情にも大きな変化が生じているのではないかと思わないではいられない。むかしむかしの“恋”は、いわばストーカー行為によって支えられていたような気がする。しかし、現代のように携帯電話やメールで“恋心”を伝達し、追いかければストーカーだと訴えられるというような事態になると、『古今』や『新古今』、『源氏』の世界なんかは成立しまい。味も素気もないのが現代の“恋”だとも言えるが、それは大むかしの“恋”との比較において、ということである。おそらく、現代の“恋”には現代の“恋”としての文法があるのであろう。ただし、私はもはやその文法の埒外の存在になってしまったということであるらしい。

インフォメーション ポータルサイト「北海道人」更新情報

「私の好きな店」File.No.09

「さっぽろ浪花亭」―和食―

第9回目は「Sagra(サグラ)」の店主・村井さんの「私の好きな店」をご紹介します。

「私の好きな店」File.No.09

次号予告

 次号の配信は7月9日(木)です。1877年のこの日、第1回ウィンブルドン選手権が開催されたそうです。今年の結果はどうでしょう。
 さて、次号のメルマガラインナップは、上林早苗の「上海日記」、「とろんのPAI通信」、若月元樹の「南の島から――沖縄県黒島の日々」です。
 お楽しみに!

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