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『メルマガ北海道人』第126号 2009.6.25.―「北海道人」、牧歌的、あまりに牧歌的―

 先日、日高本線と平行に走っている国道235号線を襟裳方面に向かいました。鵡川町を抜けたころから景色が徐々に変わりだし、広い牧場が道の両側に見えてきました。薄霧のかかったゆるやかな丘陵には、ところどころに馬がいました。ほとんどの馬が頭を垂れて草を食んでいました。時計を見ると12時15分。ランチタイムです。馬の首から背にかけてのラインに見とれていると、牧場を囲むフェンスが目に入りました。フェンスは丘の起伏に合わせるようにみごとな曲線を描いていました。丘陵の牧場、馬の背、フェンスの曲線がすべて北海道の背骨・日高山脈とリンクしているような気がしました。夕方、札幌方面に向かう途中で再び馬たちを見ました。また草を食んでいました。時計を見ると18時05分でした。
 『メルマガ北海道人』第126号、牧歌的な景色にカンパーイ、配信!

もくじ

連載【上林早苗の『上海日記』】

 チャンインが妻に離婚話を切り出していたそのころ、中国では離婚が一つのブームになっていたそうです。別れ話がうまく進まず、離婚裁判に発展しますがチャンインはなぜかそのことを楽しみにしているよう。「上海日記」第60回は「性格の不一致」です。

連載【とろんのPAI通信】

 ほんのちょっと揺れた心の指が地獄へのエレベータースイッチに触れたり、天国へのエレベータースイッチに触れたり、危なっかしい日々を送っていると語るとろんさんですが、昨年頭を悩ませたミツバチとの関係も今年は変わり、お父さんとの関係にも変化が……。第53回は「気がついてみると、朝の光」です。

連載【若月元樹の『南の島から――沖縄県黒島の日々』】

 自動車に寒冷地仕様があるように、沖縄の家電には「沖縄仕様」があるようです。クーラーの「沖縄仕様」とはヤモリ対策がされているということのようです。ヤモリがいったい何を? 第34回は「ヤモリのえん罪」です。真犯人はだれだ!

【上林早苗の『上海日記』】 第60回

性格の不一致

 気の重くなるニュースだ。中国で販売するパソコンに当局指定の「検閲ソフト」搭載が7月1日から義務づけられる。名目は「ポルノなどの有害情報から青少年を守る」ということだが、その他の「社会有害情報」へのアクセスも今まで以上にシャットアウトされていくだろう。つい数日前、中国人の友人と冗談で「有事の時、中国15億人が外部と一切の接触が取れなくなる可能性」について話していて、私は「あり得る」、彼はインターネットが発達しているという理由で「あり得ない」と答えたのだが、これでは有事どころか一日24時間、公然とフィルターをかぶせられることになってしまう。しかし、中国の友人たちがこの一件にそれほどの関心を示さないことは、もっと気が重い……。

 さて、離婚というとマイナスのイメージがどうしてもつきまとう。ところが、友人チャンインの場合、そのころ中国で離婚が一つの「ブーム」となっていたために離婚という事態そのものにあこがれを抱いていた。それがこのたび、心から夫婦になりたいと思える人に出会い、さらにトレンドである「離婚」も体験できる、ということでドラマの主人公になったような軽い快感を覚えていたらしい。もちろん離婚話を切り出したとたんに妻がガス心中を図るとは思ってもいなかったが……。
 しばらくして心中騒動のほとぼりが冷めると、「家を用意してくれたら離婚してもいい」と妻が条件を出した。しかし、チャンインにそんな金があるはずもなく、話の流れはやがて離婚裁判へと進んでいく。チャンインの血がまた躍った。
 「離婚と監獄、裁判の三つは、一度体験してみたかった」
 夢はかなったが、裁判は思い通りには進まなかった。チャンインの離婚申し立て理由は「感情破裂(夫婦間の感情不和)」「性格の不一致」だが、妻は「仲はよく、離婚する理由がない」と反論する。「妻は邪教の信者」と主張してみても、提出できる証拠はなく、逆に「信仰の自由は認められている」といって退けられてしまった。離婚は認められなかった。

20世紀初頭、ゴールドラッシュで栄えた町・九份(台湾台北県)

 これを機にチャンインが考えたのは「性格の不一致」とはいったい何かということだった。彼に言わせればそれは生活上の本当にささいな問題だった。たとえば餃子のタレは酢に醤油を入れるのか、入れないのか。子どもに宿題をさせるのは食後すぐか、それともテレビ鑑賞の後でもいいのか。練り歯磨きを出す時に、チューブの真ん中を押すか、底を押すか。そうした一見どうでもいい習慣の違いでたまったイライラがある日、突然爆発して「性格の不一致」離婚になるのだと思った。ちなみにチャンインはチューブの「底派」、妻は「真ん中派」だったそうだ。
 妻の懐の狭さも許せない要素の一つだった。
 自宅のシャープ製カラーテレビは1990年、チャンインが7500元をはたいて買ったものだ。ただし、リモコンは別売で150元。あったら便利だろうと、妻がお金を出して買った。ところが、その後彼女は「自分のもの」とばかりにリモコンを常に独占した。チャンインが手動ダイヤルでガチャガチャとチャンネルを回していると、リモコン操作でパッと彼女の好きな番組に変わる。娘が宿題せずにいたら何も言わずに遠くからプッと消してしまう。手動ダイヤルはしょせんリモコンにかなわない。7500元のテレビはしょせん150元のリモコンに勝てない。そう思っていつもみじめな気分だったという。
 しかし、チャンインを何よりも傷つけたのは自分の話を聞いてくれないことだった。彼のところには職業柄、関係筋から未発表の最新ニュースが入り、チャンインはよくそれを「極秘情報だ」と言って妻に披露した。そのとき妻は興味なさげに上の空で聞いているのだが、後日、それがニュースとして公開されると独自入手したスクープのごとく得意げにチャンインに教えた。
 「だから、ずいぶん前に教えただろう」
 そう言っても彼女に記憶はなく、プライドの高いチャンインはひどく傷ついたという。
 しかし、こうした生活の細部を裁判所に訴えたところで相手にされるわけがない。かといって、新しい恋人と再婚したいからと本音を言えば高額の慰謝料を払わせられる。チャンインは夢がかなった満足感を覚えつつも、苦脳していた。

かんばやし・さなえ・・・1978年生まれ、奈良出身。京都外国語大学中国語学科卒業。上海在住8年目。中国人の夫と姑との3人暮らし。

【とろんのPAI通信】 第53回

気がついてみると、朝の光

 昭島市にある借家に向かう電車の中の風景も東京の街並みも歩く人々も話す声々も、すべてが「どーでもよく」て、すべてが苦々しく、すべてが暗い世界に変貌していてね。四〇代は最悪だ、もう死ぬしかない、という完全モノクロ世界にはまってしまい、ボクのまわりから色とりどりの美しさが消えゆき、白と黒、それも全面暗いモノクロの世界に、もだえ、苦しむ。

 またもや『とろんのダイジョ〜ぶ経典(スートラ)』からの抜粋。ボクの40歳の誕生日(18年前!!)の「翌朝風景」を描いている。この『メルマガ北海道人』の編集長、和多田さんの家で、前のパートナー「きらきら」とともに祝ってもらったのだ。お祝いの天国のただなかで、ほんのちょっと揺れた心の指が地獄へのエレベータースイッチに触れたとたん、あ!!!っと奈落に向かって落ちて行き、もだえ、苦しむ。

 そして、気がついてみると、朝の光。前の日に一睡もしてなかったので、嘘みたいに熟睡できて、その朝の光も、嘘のように美しくてね。前の日のあの「全面暗いモノクロ世界」がね、嘘のように「きらきら」と輝いていて、ボクの気分も嘘のように「ああいい気持ち」がよみがえっていてね。ボクのどこを訪ねても一片の妄想もなくって、ただ、「ああいい気持ち」に満ち溢れていてね。単に睡眠不足のために妄想が流れ溢れていたのか、それとも吹き出もののように、自分の中の毒素が、このボクの四〇歳のときを境に出てきたのか。どちらにしても、ボクの「ああいい気持ち」の朝の中で「ああ、いままでで最高の誕生日だった」と感謝に満ち溢れてしまってね。

母性2高橋さん(5月10日、太一や第4回目ライブ「シクラメンズとちくはぐ兄弟」のVOCALIST)

 あれから18年たった今も、相も変わらず、ほんのちょっと揺れた心の指が、地獄へのエレベータースイッチに触れゆく「危なっかしい日々」を送っている。だけど、全ての生存在そのものが「危なっかしい日々」ではあるし、その「危なっかしさ」こそがヒトの文化や文明を産み出す力となっているのだろうし。
 そして、ほんのちょっと揺れた心の指が、天国へのエレベータースイッチに触れ、「気がついてみると、朝の光」の日々でもある。出しては食べ、脱いでは着て、汚しては洗い、閉めては開き、壊しては作り、失恋しては恋をし、止めては始め、泣いては笑い、呼いては吸い、そして波打つ心電図のイノチのエレベーター現象の終焉とともに、人間はヒトとして死にゆく。どうせ出すなら食べるな、どうせ汚れるなら洗うな、どうせ失恋するなら恋するな、といわれても、ヒトは人間として生きゆくために、食べて洗って恋をし、イノチのメインテナンスをしながら、この世にドラマを産みだしてゆく。
 昨年、我が家に住み着いたミツバチについて描いたことがある。今年もスゴイ数のハチたちが舞い、巣を作っているのだけど、昨年は全力でハチと戦いつづけたボクなのに、今年は全く「しらんぷり」して放っている。共存しながらの「しらんぷり」だ。昨年の「絶対排除」にむけての戦いの日々に比べて、この共存しながらの「しらんぷり」の、なんと楽チンで軽快な日々だろう。ハチの舞いが、昨年は喧しくって煩わしかったのに、今年は、その同じ舞いに美さえ感じてしまう。今年は、天井から彼らの蜜が垂れてきたら、それをガムテープで必死で防ぐよりも、せっせと集めてみんなで食べようと楽しみにしている日々。
 そして、父に対する「初むなぐらづかみ」「深夜の初罵倒」などがつづいた挙句の果て、産まれてはじめて、ついに、「生理的にとてもイヤ!!」な父と、目を見つめあいながらの固い握手をしてしまった!!! 「一瞬先は、光」のフシギなイノチのエレベーター現象。そして、ボクが変われば周りも変わりゆく、フシギなイノチの感染構造。

  気がついてみると、朝の光の中のとろんより。

著者近影

とろん・・・1969年高校卒業直後、フランス郵船に乗ってインドに上陸し地球放浪を始める。帰国後、専門学校、大学、夫などを中退しながらも、旅と文筆とライブ活動を続行し、今に至る。著書に『純粋単細胞的思考』『まるだしのエクスタシー』『とろんのダイジョーぶ経典(スートラ)』(共に、晩聲社刊)があり、この3年間は『とろんのPAI通信』を(なまえのない新聞)に連載中。2001年、50歳のときにタイのPAIに流れ着き、MOON VILLAGEという村つくりを展開しながら、(くるくるPAIバンド)を率いPAIでライブ活動中。

ホームページ:http://amanakuni.net/toron/

【若月元樹の『南の島から――沖縄県黒島の日々』】第34回

ヤモリのえん罪

 沖縄で走行している中古車に「寒冷地仕様」というステッカーが貼ってある車があったりする。機械音痴の私には具体的に何がどう寒冷地対応なのかはわからないが、寒い地域からはるばる沖縄にやってきたんだなぁと思う。きっと凍ってはまずい部分があったりしてその対策を施した車なのだろう。沖縄にも「沖縄仕様」というものがあるはずで、車のことはよくわからないが、クーラーに「沖縄仕様」があることは知っている。
 家電メーカー各社は、沖縄でのCMで「沖縄仕様」をうたっている。クーラーにおける「沖縄仕様」とは、ヤモリ対策であった。ヤモリが室外機やクーラー本体に入りこんでショートさせ、使用不能とならないようにヤモリガードがついているのである。
 では、ヤモリは沖縄の人にとって厄介者かといわれればそうでもない。ヤモリは虫などを食べてくれる「益虫」だという人もいるし、「家守り」と書くのだと言って縁起がいいと言う人もいる。実際には「守宮」と書くらしいが……。ヤモリは日常生活で本当によく見られ、縁起が悪いとか害虫だと感じる人は沖縄の田舎では生活できないと私は思う。夜、照明がついているところの窓にはヤモリが大体くっついていて、光に寄せられてくる蛾などの虫をパクリと食べている光景が普通に見られる。姿も愛らしく、瞳もかわいいと私は思っているが、私の勤める黒島研究所でもそのヤモリの被害に悩まされていた。
 黒島研究所には観光客などが見学できる展示スペースがある。そこの資料展示室のクーラーが度々ヤモリの侵入によってショートし、壊れて困っていた。先述したように、家電メーカーはクーラーの「沖縄仕様」を宣伝しているわけであるが、私の職場で活躍する業務用クーラーは「沖縄仕様」になっていないようである。

焦げたクーラー内部と感電死したサキシママダラ

 先日、頻繁に壊れる資料展示室のクーラーを見てもらう際、業者さんに設置場所の影響の有無を尋ねたところ、「場所によってはある」との回答を得た。ヤモリによるショートの頻度があまりにも高いそのクーラーを、今回の故障を契機に、修繕とともに設置場所自体の付け替えをお願いした。言葉では簡単なことであるが、実際は大ごとである。業者さんはいちいち石垣島から呼ばなくてはならず、新設ならまだしも、修繕で来てくれる業者さんを確保することは大変なのである。
 そして、今回の被害もヤモリによるものだと思っていた。ところが、違っていた。なんと今回の故障の原因は、ヘビだったのである。サキシママダラという名称のヘビがクーラーに入り込み、感電死していたのだ。サキシママダラは無毒のヘビである。ちなみに黒島にはこの他にサキシマハブとサキシマアオヘビというヘビが生息し、これまでにサキシマハブも研究所に侵入してきたことがあったので、残りはサキシマアオヘビだけとなった。サキシマアオヘビは滅多に見かけない珍しいヘビなのでぜひ入ってきてほしいと思っている。これまでヤモリの黒こげ死体は何度となく目撃したが、ヘビの感電死体は業者さんもはじめてとのことだった。黒く焦げた部分を見ながら火災に至らなくてよかったと胸をなでおろした。
 現在、沖縄はハブ咬症注意報が発令されるほどヘビの活動が活発な季節で、先日も島民から「車の中にハブが出た」との連絡が入り、現場に駆けつけてサキシマハブを捕獲した。そして、捕獲したサキシマハブを逃がそうとしたところ、「殺してくれ」と懇願されてしまった。その島民に、現在では生息に適した場所が減ってきてサキシマハブも減少していると思われることを説明し、その辺に逃がさないなら殺さなくてもいいとの理解を得て、研究所に持って帰ってきたという出来事が先週あったばかりだった。
 ハブ咬症注意報は6月いっぱい発令されるのであるが、今年はあと何件ヘビとのかかわり合いがあるのであろうか。

著者近影

わかつき・もとき・・・1974年広島県生まれ。沖縄国際大学大学院地域文化研究科修了。高校まで広島で過ごした後、沖縄の祖母の家へ移り住む。大学卒業後、そのまま沖縄でサラリーマンになったが、遊び足りなくて退職。大学院へ行ったはいいが、みんなまじめに研究していて衝撃を受ける。現在は八重山諸島の黒島にあるNPO法人日本ウミガメ協議会の附属研究所・黒島研究所でウミガメや島の人々らと戯れている。

黒島研究所ホームページ:http://www.kuroshima.org/

次号予告

 次号の配信は7月2日(木)です。雑節では半夏生(はんげしょう)、ヘルマン・ヘッセの誕生日でもあります。
 さて、次号のメルマガラインナップは、岩崎稔の「大陸人の時間」、橋場了吾の「SAPPORO MUSIC LETTER」、編集長・和多田進の「濡れにぞ濡れし」です。お楽しみに!

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