メルマガ北海道人

HOME > 第107回

『メルマガ北海道人』第107号 2009.2.12. ―「北海道人」、観光する気分で―

 バス待ちしている通勤途中の人たちの前を、観光バスが何台も横切っていきます。冬もまた北海道の観光シーズンですが、観光客と通勤者の間には非日常と日常の見えない境界線があるように感じます。うらやましさとくやしさが混じった気分で観光バスに乗っている人を見送る日々ですが、こんな風に考えてみることにしました。「私も観光客なのだ」と。すると、どうでしょう。なんて上手にブルドーザーが雪を集めてるんだ、グッジョブ! スズメの群れが雪浴びをしているじゃないか、ワンダフル! ああ、市場では新鮮な魚介がピカピカ輝いてる、ブラボー! なんだか急にハイテンションになってしまいました。観光客の人たちがうらやましく思えたら、観光する気分で街を歩いてみませんか?
 『メルマガ北海道人』第107号、今回は北海道・札幌から配信している気分です!

もくじ

連載【岩崎稔の『大陸人の時間』】

 春節の年越しは、冷凍餃子でも食べてゆっくり過ごそうかと考えていた岩崎さんですが、大晦日の前日には広東省の東莞(トウカン)に向かっていました。東莞では昨年末に玩具工場が倒産し、多くの労働者が失業しました。ここで出会った一人の男性といっしょに岩崎さんは大晦日を過ごすことに……。

連載【橋場了吾の『SAPPORO MUSIC LETTER』】

 北海道でも人気の高いレゲエですが、今回橋場さんがピックアップしたアーティストは、レゲエに魅せられたシンガーソングライターleccaさんです。一人のジャマイカ人との出会いが、レゲエにのめりこむきっかけとなったと語るleccaさんが創り出す音楽とは? バレンタインデーにキロロリゾートでトーク&ライブがあります!

連載【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】

 写真行為は、カメラという機器を使って三次元の世界を二次元に、彫刻は、三次元の世界を三次元に表現する。人間は、どうしてこんなに面倒くさいことをやるのだろうか? という問いを立てた和多田進が、大理石の羊羹や、男性写真家Aの写真行為からその答えを導きだしていきます。今回は、なんだか、ちょっと、エロティックな感じです。

【岩崎稔の『大陸人の時間』】第53回

東莞の春節

 中国は春節休みも終わり、新しい年がやっと幕を開けた。今年は冷凍餃子でも食べながらゆっくり年を越そうと考えていたが、旧正月の大みそかと元旦を広東省の東莞(トウカン)で過ごすことになった。
 東莞では昨年末に香港系の玩具工場が倒産して、6000人の労働者が一度に失業し、未払い給料の支払いを巡って地元政府の建物を取り囲む事件が起きた。アメリカに端を発した世界的金融危機の波は着実に“世界の工場”と呼ばれる華南地区一帯にも影響を及ぼしはじめていた。春節前に解雇された労働者たちが、今年は故郷に帰れずにいると聞きつけ、私は東莞に取材に向かった。
 東莞に着くとまず、帰省できずに長距離バスの乗り場でたむろしている出稼ぎ労働者がいないか捜しに行く。ホテルを出てバス乗り場に向かっていると、赤いヘルメットを被った若い青年が自転車を押しながら話しかけてきた。
 「どこに行くんですか? 自転車に乗りませんか?」
 自転車の後ろの席には座りやすいようにクッションが取り付けられている。10元で2キロ離れた長距離バス乗り場まで乗っけてくれるというので、「じゃあ」と言って彼の後ろに乗せてもらうことにした。
 きゃしゃな体のわりにはしっかりと自転車をこいで進んで行く。
 「珍しい仕事ですね、長いんですか?」と聞いてみる。1月15日に勤めていた工場を突然解雇されたので、以前から休みの日にやっていた自転車タクシーを本格的にはじめたという。 
 「今、そういう人を取材に来ているのだが、年越しの様子を取材させてくれないか」と、あつかましくも尋ねると、「明日の晩、年越しの料理を食べるから家に来てもいいけど……」と、私のことを怪しい日本人だと半分疑いながらも承諾してくれた。

一つの春節の風景

 彼は王さんと言って、中国内陸部の重慶から東莞に数年前にやって来た。1月に工場を解雇される前も建築現場や繊維工場などを転々としてきた。28歳には見えないぐらいしっかりしている。若い奥さんがいて二人の子どもの父でもあった。3歳になる長男は重慶の両親に預けてきて、もう2年半も会っていないという。9カ月の次男は東莞で一緒に暮らしていた。
 翌日の大晦日、数人の自転車タクシー運転手たちにまぎれて王さんも客引きをしていた。自転車タクシーで稼げるお金は一日40元ぐらいだと言っていた。合法的な許可もないので客を捕まえるのも大変そうだ。夕方、私と王さんは彼の自宅のある街の外れに向かった。王さんの住まいは、ドブ川のすぐ脇に立つ古い民家に増築された一間の部屋で、蛍光灯が一つあるだけで、お世辞にもいい暮らしとは言えない。
 「ちょっと私ビールを買ってくる」
 気を使わないでくれと、止める私を振りきり、5本もビールを抱えて帰ってきた。
 「重慶では正月は火鍋を食べるんです」
 唐辛子とゴマ油がたっぷり入った真っ黒い中華鍋に野菜やキノコを入れていく。
 「きっと私の人生で外国人とこんなふうに交流するのはこれが最初で最後だと思います。今日は飲みましょう」と乾杯する。王さんの家には春節の飾りも無く、灰色のコンクリの壁が殺風景だ。
 「春節を祝う気持ちにはとてもなれない。何とか家族を養うために働かなければ。できれば重慶にいる息子の顔を見たいけど、帰っても仕事が無いから」
 どん底の暮らしの中、それでも前向きに生きる王さん。
 「いい人だね、王さんは」
 私の言葉はそこにある現実とは程遠く、その場しのぎの風に乗ってただむなしく消えてゆく。世界的金融危機とは一体何なんだろう。今までは見たこともない世界と連結して利益を得ていたが、今度はその世界が急に牙をむけて末端で働く人たちの生活をけ散らしていく。
 「これからどうするの?」と訊くと、王さんは苦笑いを浮かべ「できることをするしかないでしょう」と答えた。
 旧正月の元旦、王さんは街で自転車を押しながら客を捜していた。

終わり

著者近影

いわさき・みのる…写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。
*現在ANAの機内誌「翼の王国」で、作家の原口純子さんと「中国万事通」を連載中です。

ホームページ:http://www.minoruphoto.com/japanesemainpage.htm

【橋場了吾の『SAPPORO MUSIC LETTER』】 第7回

Intelligent DeeJayが「I&I」の精神で歌う「いい人生の創り方」

 「メルマガ北海道人」をご覧の皆さん、こんにちは。今回も【SAPPORO MUSIC LETTER】では素敵なミュージシャンの魅力をお伝えしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 今年で60回目を迎えた「さっぽろ雪まつり」も終わり、春がだんだんと近づいてくるのを待つ季節になりました。北海道ならではの雪解け、そして土の匂いが春の訪れを感じさせますよね。そんな北海道の地球の裏側といえば、アメリカ大陸。その中央アメリカ・常夏のジャマイカで生まれた音楽がレゲエです。「ズチャズチャ」という裏打ちを基調のリズムにした陽気で熱い(暑い)イメージがありますが、実はここ北海道でも人気のジャンルで毎年大きなレゲエフェスティヴァルが行われています。そのレゲエに魅せられたシンガーソングライターが、今日ご紹介するleccaさんです。
 leccaさんは中学・高校時代から音楽を聴き、ステージで歌ったりもしていましたが、レゲエに対しては独特の声の出し方などが異様に聴こえたらしく、あまりいい印象を持っていませんでした。そのイメージが一変したのが、大学卒業後に訪れたカナダ・トロントでの出来事でした。トロントは移民が多く、ジャマイカ人も多数滞在しています。ある日、仲のいい友だちの家にジャマイカ人がやって来てセッションがはじまり、leccaさんにも歌うよう促したところ、leccaさんはいつものクセで「コードは? スピードは?」と考え込んでしまって歌えなかったそうです。そこでそのジャマイカ人がこう言いました。
 「音楽は数学じゃない。感じること、思っていることをそのまま出せば良いのに!」
 そのときleccaさんの中で自分の音楽への考え方が観念先行型で小さくなっていたのに気づき、レゲエの温かい音楽性に触れ、のめり込んでいくきっかけになったといいます。

現在はストレートに髪形を変えてしまったので貴重なドレッド時代の写真をどうぞ

 当時はラップも同時に勉強していたleccaさんですが、ラップの持つ戦闘的な部分に比べてレゲエの「I&I」の精神……“自分とあなたは同じ、もしかしたら自分があなただったかもしれない”という一緒に人生を駆け上がろうという精神性に、より魅力を感じ、レゲエを基調にした音楽活動をスタートさせました。
 leccaさんの歌詞は「言葉の力を信じる」というところが原点になっています。それが聴いてくれる人に対しても自分に対してもマイナスの言葉を使わない……ポジティブなメッセージにつながっていきます。「スタートライン」という曲には次のような一節があります。
 「♪まだ答えは出てないから このまま走り続けて その想いを消せないなら 前を見て」
 実を言うと最近のleccaさんの楽曲はレゲエの持つ「I&I」の精神を歌詞にふくませながら、少しずつスタンダードな曲調へと変化しています。その中で、leccaさん自身が持つ“芯”の部分をしっかり言葉で表現してくれています。一言でいうなら「intelligent(聡明な)」。3月4日にリリースされるシングル「For You」にも「I&I」の精神が目いっぱい詰まっています。

(余談)leccaさんは東京出身ながら、親戚が北海道にいたり、FM NORTH WAVEでレギュラーを持っていたり(『Yah Man! Writers』毎週日曜日19時〜20時)と、北海道との縁のあるアーティスト。将来は北海道に移住して、家庭菜園を造りたいそうです。

【lecca イベント情報】
FM NORTH WAVE「lecca TALK&LIVE」@キロロリゾート
2009.2.14(土) キロロリゾート(赤井川村字常盤/14:00〜・17:00〜)
(HP)http://www.avexnet.or.jp/lecca/index.html

著者近影

橋場了吾…1975年札幌市生まれ。1998年同志社大学卒業後、札幌テレビ放送入社。ラジオディレクターとして「日高晤郎ショー」「ライブスピカ」等を担当。2005年同社を退社。以後広告制作プロダクションなどを経て、2008年株式会社アールアンドアールを設立し、札幌発の音楽情報WEBマガジン「SAPPORO MUSIC NAKED」を立ち上げる。「音楽で北海道を元気にする」を信条に、札幌にやって来たミュージシャンの取材を続けている。

「SAPPORO MUSIC NAKED」:http://www.sapporo-mn.com/

【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】 第20回

写真機携帯症患者の病状報告(16)

 写真行為は、カメラという機器を使って三次元の世界を二次元に移し替える作業のことである。絵画もまた三次元の世界を二次元に移し替える作業であるけれど、これはすべて人間の手作業であってカメラのような機器は使わない。彫刻はしかし、不思議なことに三次元の世界を三次元に表現する。言ってよければ、三次元の存在を三次元の別のものに移し替えるのである。
 人間は、どうしてこんなに面倒くさいことをやるのだろうか? 早い話が、食べると甘くて旨い羊羹を、わざわざ大理石で本物そっくりになぜ作るのか? 作りたいのか? まぁ、羊羹の彫刻というものを私は実際に見た記憶もなければ見たいとも思わないけれど、「たとえば」ということで言えばそういうことである。
 しかし、上のような人間の行為には、おそらくなんらかの理由があるはずだ。人間をしてそうしたい! と行動に誘う強力な衝動のようなものがあるはずである。そうでもなければ、それを専門的にやろうとか、それで食えなくてもよいと覚悟を決めて一生涯を賭けるような人間がゾロゾロ現われてくるはずがない。
 では、人間は何故、そんな無謀かつ「無駄」な行為に取り憑かれるのだろうか。あるいはまた、そんな「無駄」な行為の結果に感動したりするのだろうか――。
 私の答えは以下の通りである。結局のところ人間は、それに触れたい、触りたいのだろう、ということである。保存したい、という欲求もそこに加えてよいかもしれない。

ローマ('07.11)

 たとえば、夕陽を背にした富士山を見る。だれもがそれを「美しい」と思うに違いない。だから、画家・北斎はそれを描かずにはおれないことになる。その富士を、私のものにしたいのである。可能ならば、触って抱きしめたい、そんな衝動が北斎をして絵を描かせるのに違いない。
 あるいはまた、男性写真家Aは、自分が秘かに愛するB嬢の顔を写真にしたいと思うだろう。自分の愛のために、AはB嬢のあらゆる姿態を写真にしたいのである。写真家Aの眼は、B嬢の顔はもちろん全身を撫で、触らないではおれない。手で触られぬAは、眼で触るのだ。つまり、視覚を働かせることによって、B嬢を写真として構成し直そうとするのである。それが写真行為ということなのだろう。
 三次元世界の存在に違いないB嬢は、男性写真家Aの「眼」によって見られ、触られて二次元世界に再構成されるわけである。だから、 実は純情可憐なB嬢が、Aの「眼」によって再構成された結果である写真は、極めつけ淫らな娼婦となって現われることがあるのも不思議ではない。
 彫刻のことは別にして、絵画とか写真のような三次元世界を二次元世界に移し替えることの特質についてもうひとつだけ述べておかなければならない。これらの行為は、ある種の錯覚を利用しなければならないということである。それをごく簡単に言えば、まるで本質のように見せる感じさせる「技法」のことである。トロンプルイユ(だまし絵)的方法といってもいいかもしれない。二次元の表現は、その「だまし」の技法なしに存在することはできないのではあるまいか。

ポータルサイト『北海道人』連載
和多田進の「ときどき北海道」

インフォメーション ポータルサイト「北海道人」更新情報

連載【となりの北海道人「私のお父さん」 第42回】

今回の「私のお父さん」4つタイトルはこちら↓
「働く父を見て身に付いた自営業的思考」
「不正やずるいことが嫌いだった」
「厳しかったけど、今はありがたいね」
「十勝の自然をたくさん見せてくれた父」

となりの北海道人「私のお父さん」第42回

次号予告

 次号の配信は2月19日(木)、ニコラウス・コペルニクスの誕生日です。地球が太陽の周りを回ってるんだと理解していても、実感をわかせるためには多少の想像力が必要です。最近の物理学では、11次元時空なんかも登場しますので、スーパー想像力が必要とされているような気がします。
 さて、次号のメルマガラインナップは、上林早苗の「上海日記」、「とろんのPAI通信」、若月元樹の「南の島から――沖縄県黒島の日々」です。
 お楽しみに!

※インターネットに接続するとメルマガ上の画像をご覧になれます。

メルマガに対するご意見・ご質問などはこちらまで
メルマガ執筆者へのメッセージもお待ちしております!
mailmag@prc.hokkaido-jin.jp

ポータルサイト『北海道人』
http://www.hokkaido-jin.jp/

※登録(または解除)は、こちら
http://www.hokkaido-jin.jp/mailmagazine/index.html

このページの先頭へ

バックナンバー

最新のメルマガ
第160回までのメルマガ
第140回までのメルマガ
第120回までのメルマガ
第100回までのメルマガ
第80回までのメルマガ
第60回までのメルマガ
第40回までのメルマガ
第20回までのメルマガ