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『メルマガ北海道人』第105号 2009.1.29.―「北海道人」、雪の上の足あと―

 ぼんやりと窓から眺める冬の公園は真っ白で、夏に比べて見るものが少ない……そう思っていたのは間違いでした。雪の上には人と動物のたくさんの足あとがついていました。散歩と思われる人間と犬は、木をぐるり一周したようですが、そのルートは円ではなくなぜか正方形でした。それと交錯して自由に歩き回る小さな足あとは、家から脱走した猫のものでしょうか。朝、ご近所の玄関から道路につづく足あとを見て「奥さん今日は仕事なのね」と思ったり、自宅の玄関につづく足あとを見て来客を知ったり。途中、深みにはまってころびかけたことも足あとから分かってしまいます。
 現場検証をする捜査員のような気持ちで足あとを見るという冬ならではの楽しみ、みなさんもいかがですか?
 『メルマガ北海道人』第105号、一週間に一歩ずつ足あとつけながら配信!

もくじ

連載【岩崎稔の『大陸人の時間』】

 春節(旧正月)を祝う中国では、1月25日がおおみそか、26日は新年で、2月1日までは春節休みだそうです。春節を前に、岩崎さんは四川大地震の被災地に向かいました。仮設住宅のなかで黙々と餃子を包む女性、テントで作られた市場で書道をする男性……。第52回は、「被災地の春節」です。

連載【橋場了吾の『SAPPORO MUSIC LETTER』】

 今回橋場さんがピックアップしたアーティストは、Caravanさんです。小さなころから各地を転々としていた自分自身のイメージにぴったりという理由から、Caravanと名乗るようになったそうです。ギター片手に弾き語りというスタイルのCaravanさんが創り出す音楽とは? 旅の途中、3月8日に札幌でライブが行われます。

連載【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】

 前回、写真というものは、肉体をただ批評、評論の対象にしてしまう冷酷な行為ではないか、写真では戦争は止まないと思う、と和多田進は書きました。今回は、「それでは、写真は反戦の役にまったく立たぬというのか!」という反論からはじまります。写真が持つ多面性、見る側の「教養」――。写真の考察はどこまで深まってゆくのでしょうか。

【岩崎稔の『大陸人の時間』】第52回

被災地の春節(旧正月)

 中国はこの原稿が出るころは、ちょうど春節(旧正月)休みのなかである。旧暦だから今年は1月25日が大みそかで、26日は新年。春節休みは1日までだそうだ。私は26日の春節を前に四川大地震の被災地へ行く。
 地震の震源地だったブンセン県英秀に向かう。街は地震発生時の状況とほぼ変わっておらず、どこも手付かずのままである。斜めに傾いた中学校が地震の激しさをいまも生々しく物語っている。その脇にいくつかの仮設住宅が連なってつづいている。春節前だというのに特に目立った飾り付けもない。
 「赤いちょうちんや飾り付けは春節の前の日、大みそかに付けるからまだ早いんじゃない」と仮設住宅の中で黙々と餃子を包む女性は語った。
 「地震の被害はひどかったんですか?」という私の間の抜けた質問にも、四畳半ぐらいの仮設住宅に招き入れ答えてくれた。
 「家も財産も全部無くなった。兄の子どもも、弟の子どもも小学校の校舎の下敷きになって死んでしまった。とても今年は春節を祝う気分にはなれないわ」と、カラ元気なのかうっすらほほ笑んだ顔は、すぐに黙々と餃子を包みはじめて真顔に戻った。
 「何にも作らないわけにはいかないし、気が紛れるからね」とも。
 傾いた校舎の向いには、テントで作られた市場ができていた。春節を故郷で過ごすために出稼ぎから戻ってきた人、各地から復旧作業にやってきてこれから故郷に戻る人、そんな人たちで市場はにぎわっている。
 市場の片隅で面白い男性に出会った。
 男性は路上に机を置き、赤い紙に新年の祝いの言葉を、美しい筆使いで次々と書いて行く。かなりの腕前だ。

赤いちょうちんの飾られた被災地

 「ボランティアで春節期間中被災地を回っているんです」
 すべてただで配る春節のお飾りだという。現地の人たちも興味津々で彼を取り囲む。 “春節期間中店を閉めます”と書いてくれとか、“ミカン500グラム4元”、“ピーナッツ500グラム7元”と書いてくれと言う果物屋まで現れる。男性は嫌な顔一つせず、段ボールに果物の名前と値段を書いていく。被災地だからといって暗い空気ばかりが流れているわけではない。大変な状況だが明るい空気も流れている。私は被災地のそんな人たちから逆にパワーをもらって次の被災地へ向かった。
 成都市内から車で3時間ぐらいかかったのだろうか、綿竹市安仁村に行く。数日前、ここで永久住居の完成を祝う宴会が行われ、その写真を見た知人に勧められたことがきっかけだ。近くまで辿り着いたが運転手も道が分からず、通りがかりの女性に道を尋ねると“私たちはそこに住んでいるから乗っけていってくれ”と、大きな買い物袋を抱えた女性3人が車に乗りこんできた。四川省のなまりがとてもきつくて何を言っているのか分からない。とにかくうるさい。車の中は大パニックだ。細い畑道を抜けるとそこには作りかけの長屋のような住宅があった。
 「お金が調達できた人からここに引っ越して来られるの」と女性は言って、いま住んでいる所へ案内してくれた。自宅は地震でボロボロに崩れ、辛うじて残ったキッチンにベッドを押し込んで生活している。
 「地震当初は余震が怖くてテント暮らしをしていたけど、いまはここに住んでいるの」と明るく語る。村人たちに囲まれた私は、「私の家も見てくれ」と必死に訴えられる。どこもまだ倒壊した家の隣にテントを立てて暮らしている。すでに地震から9カ月が過ぎようとしているのに、まだテント暮らしを強いられる被災民。先進国とはケタ違いの格差と厳しさがそこにはあった。

終わり

著者近影

いわさき・みのる…写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。
*現在ANAの機内誌「翼の王国」で、作家の原口純子さんと「中国万事通」を連載中です。

ホームページ:http://www.minoruphoto.com/japanesemainpage.htm

【橋場了吾の『SAPPORO MUSIC LETTER』】 第6回

生粋の旅人が創造する“ロハスミュージック”

 「メルマガ北海道人」をご覧の皆さん、こんにちは。今回も【SAPPORO MUSIC LETTER】では素敵なミュージシャンの魅力をお伝えしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 2009年は昨年に引きつづき、ますます世界経済の悪化が懸念されています。そんな中、数年前から注目されている生活様式に“ロハス”があります。“ロハス=LOHAS”とはLifestyles of Health and Sustainabilityの略で、健康と環境、持続可能な社会生活を心がける生活スタイルのことです。有機農業やエコ活動などに強い関心を寄せることも“ロハス”と呼ばれています。
 その“ロハス”を音楽に置き換えているのが今日ご紹介するCaravanさんです。Caravanというのは「隊商」という意味ですが、Caravanさんはギター片手に弾き語りスタイルで地球に優しい音楽を創りつづけているソロアーティストです。
 Caravanさんは小さいころ、日本国内で引越しを多く経験し、さらには南米ベネズエラでも5年ほど過ごすなど、常に転々としているのが日常だったといいます。学生時代、そして社会に出てからも世界各地を旅し、自身のイメージにぴったりだという理由で自らをCaravanと名乗るようになりました。
 Caravanさんは学生時代、ジャンルにこだわらず心に刺さる音楽を聴き漁っていたそうです。バンドを組んでいた当時はギター担当でしたが、解散したときに一人で音楽をつづけていこうと思い、たまっていたデモテープを聴きなおしたところ、素朴な歌モノばかりだったことに気づき、現在のスタイルである温かみのある歌を弾き語りで綴るという形を取るようになりました。

 Caravanさんの最新アルバムは昨年9月24日に発売された「Yellow Morning」です。このタイトルは、アルバム制作直前に訪れたモロッコで見た砂漠の夜が明ける風景をイメージして付けたそうです。砂漠の砂と朝日の神々しい雰囲気で世界中が黄色くなったかのような、日本ではなかなか体験できない「黄色い朝」の情景……こんな発想が浮かぶのもCaravanさんならではでしょう。そして、このアルバムの歌詞の中には幾度となく旅にまつわる言葉が出てきます。
 「♪暗闇手探りドライブして君に会えるかな」(「Lonesome Soul Survivor」)
 「♪誰もがそうさ旅するflowers 虹の彼方へ」(「Wind Blow」)
 私はこのアルバムを札幌から支笏湖の方へドライブするときにカーステレオでかけていったことがあるのですが、Caravanさんの爽やかな歌声が清々しい北海道の空気とぴったりで素敵な時間を過ごせました。そういう時間を提供してくれるという意味でも“ロハス”な音楽と言っていいかもしれません。
 Caravanさんは旅の途中で3月8日に札幌にフラリとやって来ます。日常では忘れてしまいがちな周りの人への優しさ、そして私たちを生きながらえさせてくれる地球への優しさをいま一度確認するためにも、Caravanという名の音楽隊商に加わってみるのはいかがですか?

【Caravan ライブ情報】
Caravan “Yellow Morning TOUR” 2009
2009.3.8(日) 札幌・cube garden
(札幌市中央区北2東3/開場17:30・開演18:00)
(HP)http://www.caravan-music.com/index.html

著者近影

橋場了吾…1975年札幌市生まれ。1998年同志社大学卒業後、札幌テレビ放送入社。ラジオディレクターとして「日高晤郎ショー」「ライブスピカ」等を担当。2005年同社を退社。以後広告制作プロダクションなどを経て、2008年株式会社アールアンドアールを設立し、札幌発の音楽情報WEBマガジン「SAPPORO MUSIC NAKED」を立ち上げる。「音楽で北海道を元気にする」を信条に、札幌にやって来たミュージシャンの取材を続けている。

「SAPPORO MUSIC NAKED」:http://www.sapporo-mn.com/

【和多田進の『濡れにぞ濡れし』】 第19回

写真機携帯症患者の病状報告(15)

 前回のような説を立てると、すぐさま反論が用意されるに違いない。「それでは、写真はまったく無力なのか!」と。「それでは、写真は反戦の役にまったく立たぬと言うのか!」と。
 そう問われると私は答えに窮する。私は「残虐写真」が戦争を止めさせたり、抑止したりするための役に立ってほしいと思っているし、主観的にはそうあるべきだとも思っている。しかし、写真というものには幾重もの性質が重なり合っているようなのだ。ひと色で人間を表現することが難しいように、誤りであるように、写真についてもまたひと色で言うことができない。
 写真はたしかに「現実」を写す。しかし、それは「現実」の一部ではあっても全てではない、という話にふたたび舞い戻っていってしまう。写真は「現実」を写せない、とも言い得る。あるいはまた、写真は「真実」を伝えない、とも言うことができる。このことは、これまでるる述べてきたところでもあるけれど、繰り返せば、写真家と写真を見る側(見せられる側)に内在するであろうバイアスを避けることができないということでもある。もちろん、社会や時代というバイアスもあるであろう。
 そういうふうに考えを詰めていくと、写真を見る人びとの「教養」の問題というところまで話はいきつく。「教養」という言葉に抵抗があるかもしれないが、それはまさしく「教養」の問題としか言いようがない。世界をどのように把握するのかという哲学・思想の問題と言う他ないような気が私にはするのである。

札幌駅横駐車場('08.12)

 そしてもしそうだとすれば、「戦争写真」や「残虐写真」、つまり人間の苦しみや不幸や悲惨を写した写真の意味は、そうした写真の受け手がどのような「教養」によって受け止めるかという一点にかかってくるということになる。それらの不幸・悲惨を、「私」とは直接かかわりのない抽象的な問題として受け止めるのか、それとも「私」にとって切実な問題として受け止め得るのか、ということである。
 しかし、かりに私たちが後者の「教養」の持ち主であったとしても、あまりにたくさんの、数え切れないほどの不幸と悲惨を前にしてなす術はあるのだろうかとも思う。ガザでもアフガンでも旧ロシアの地域でもアフリカでも、戦争があり残虐があり、不幸があり悲惨があって、毎日毎日それらを写した写真が私たちの眼の前につぎからつぎへと送り届けられているのである。
 私は、その悲惨がどこの地域、どの国、どの都市のものであるかを覚えていることができない。記憶にとどめることさえ能力を超えてしまっている。もちろん、私は、そこに写っている写真の悲惨の主人公の名前も知らない。未知未見のだれかであるにすぎない。爆弾で傷つき倒れている子どもの名前など、写したカメラマンさえ知らないのではあるまいか――。
 どこのだれであるかが不明な、名無しの悲惨、無名の不幸について、たとえば私の同情ははたして本気で惹起されるだろうか? そのことに私は疑問を持たざるを得ないでいるのである。

■『北海道人』in 「さっぽろ雪まつり」 さっぽろ雪まつり会場に『北海道人』ブースがお目見え! あふれるほどの熱気、はみでるほどの品数でお待ちしています。

 場所は大通7丁目のHBC大韓民国広場です。ブースには、雪まつりにぴったりの食べものがずらり勢ぞろい! 2月5日からはじまる「さっぽろ雪まつり」にお出かけの際は、大通7丁目の『北海道人』ブースをぜひのぞいてみてくださいね!

<ブースメニューの一例>
雪ミルク・ふわとろシュウマイ・札幌ピロシキ・たこかまおでん・薄皮たい焼き・じゃがホタテスープ・ニセコ高原ポークのあらびきフランクなど

※イベントは終了しております。

次号予告

 次号の配信は、2月5日(木)です。「第60回さっぽろ雪まつり」がいよいよはじまります。雪、もうちょっと降るといいですね。
 さて、次号のメルマガラインナップは、上林早苗の「上海日記」、「とろんのPAI通信」、若月元樹の「南の島から――沖縄県黒島の日々」です。
 お楽しみに!

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