メルマガ北海道人

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『メルマガ北海道人』第43号 2007.11.01. ―「北海道人」、赤や黄色、気がつけば紅葉も進み―

 パラパラと雪のように肩に降ってくるもの。それは細い細いカラマツの葉でした。冬の予行演習……、そんな気がしました。季節が秋と冬を行きつ戻りつしている間に紅葉がずいぶん進みました。紅葉というよりは落葉が進んでいる地域もあります。残りわずかな秋の楽しみ、紅葉を満喫するにはやっぱりコレしかありません。紅葉、露天風呂、熱燗の3点セット。オプションで頭にのせる手ぬぐいもお付けいたしますか?
 『メルマガ北海道人』第43号、露天風呂で一杯の気分で配信!

となりの北海道人 『私のお父さん』




■もくじ

連載【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】

 10年前、二度も肺炎にかかり長期の療養生活を余儀なくされたという田野城さん。禁止されていたサックスを時々懐かしむように吹いていたそうです。しかし、それは少し間違えれば死につながること。死の淵に立ったとき、人間は何をするのでしょう。死と芸術についてのLesson18。

連載【岩崎稔の『大陸人の時間』】

 5年に一度開催される中国共産党大会が10月21日に閉幕しました。開催期間中にいつもの記者から岩崎さんに取材の依頼が入ります。取材場所はある病院。そこで政府への直訴者による記者会見が行われるというのです。しかし、そこで待ち受けていたのは、白衣の……。コスプレ? 何だ?

連載【大竹正枝の『新・自然真営道』】

 今回は「食を考える」シリーズの第3弾であり連載の最終回です。「遺伝子組み換え食品を支持しますか」というタイトルどおり、大竹さんが読者の皆さんに問いかけます。遺伝子組み換え食品が安全だと主張する側の理由、報道のあり方、農業の抱える問題などについて語ります。

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□連載
【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】 Lesson 18

死を感じて生きる!

 今から約10年前、私は健康管理をおこたってしまい肺炎を2度も経験しました。40度を超す高熱が続いた後の微熱が下がらない1年以上にもわたる療養生活に、体力も気力も尽き果てて、ただダラダラと毎日が過ぎて行ったような記憶があります。
 そんなある日の夜、ベッドから身を起こして左の窓を見てみると、何と外から緑色のとても奇麗な立体的な形をした物体が音もなく部屋の中に入ってくるではありませんか! それは私の目の前をゆっくり通り過ぎ、部屋の右奥の窓から出て行きました。今でもそのときのことを鮮明に覚えています。“熱に浮かされる”とはこういうことなのでしょうか……。
 私が普段通りの生活を送れるようになるまでには約3年もかかってしまいました。ベッドから這い上がっては、時折、サックスを手に抱いて懐かしむように吹いていたのを記憶しています。実際のところ、肺炎にサックスなんてとんでもない話です。ドクターストップも言い渡されていたので、一つ間違ったら死んでいたかもしれません。人間は時に不思議な行動をとるものなんだなぁ〜と改めて自分自身を知った時期でもありました。おそらく私は本能で音楽を求めていたのでしよう。
 さて、人間は生きるか死ぬかの窮地に立たされたとき、いったいどんな行動をとるのでしょうか?
 たとえば、あと1週間で大彗星が地球に衝突する、あるいは地球上に残されたのが自分を含めたった5人になってしまった、なんてことを想像してみて下さい。
 皆さんだったら、何をしますか?
 私なら、やはりサックスを手に持って楽しく演奏してしまうでしょう。
 大学時代、ルームメイトでフロリダから来た黒人のヴィンツというギタリストがいました。彼は自費で大学に通っていたので、お金もなく、日々の生活費を切り詰めていました。ある夜、彼はお腹が空いたと言って、手持ちの全財産5ドルを持ってサンドイッチを買いに出かけました。ところが、戻ってきた彼の手には1枚の中古レコードがあるではないですか!
 彼はそのレコードを聞き終わると、心配そうに眺めていた私に向かって、
 「音楽を聴いてお腹がいっぱいになった!」
 と不思議な言葉を言ったのを覚えています。音楽がお腹を一杯にする? 当時の私にはまったく理解できませんでした。
 先日、炭坑の街夕張の歴史について聴く機会がありました。石炭が日本の最も重要なエネルギー源とされ、炭坑が栄えていた頃、炭坑夫は収入の良い仕事でありました。小さな田舎町だった夕張の人口は、多い時で12〜15万人となり、商店街はまるで毎日がお祭りのごとくぎゅうぎゅうと押し合うほどの人の群れで賑わっていたそうです。
 27年前、そんな夕張の鉱山で爆発火災事故が起き、約80名が山に閉じ込められました。二次災害を防ぐために、やむを得ずまだ坑夫がとり残されている穴めがけて大量の水を流し込んだそうです。
 クラスメートの父親はほとんど坑夫。学校でその知らせを受けたとき、一気にクラス中が悲しみに包まれ、あちこちですすり泣く声が聞こえたことは今でも忘れることができないと話し、次の歌を教えてくれました。
 「夕張、食(苦)うばり、坂ばかり、ドカンとくれば死ぬばかり」
 「炭坑で生きる」とは「死と隣り合わせで生きる」ということ、つまり明日をも知れぬ人生を生きるということなのだと改めて考えさせられました。
 「明日は生きていないかもしれない」という緊張したギリギリの毎日。そんな彼らが暮らしの中で求めたものが、娯楽だったそうです。
 通りにはいくつもの映画館が立ち並び、炭坑夫の父親に連れられて映画を見に行ったこと、芸人さんが訪れて演劇が上演されるたびに、人だかりで背伸びしてもなかなか観ることが難しかったという思い出話を聞いて、なるほど! と納得しました。明日をも知れぬ命をかけて働く炭坑夫の街夕張だったからこそ、娯楽に対しても夢中になって楽しむエネルギーが存在していた……。その情熱は受け継がれ、炭坑の街ではなくなった今でも、「夕張国際映画祭」というかたちで芸術文化を存続させようと、新たなチャレンジをしているのだということを理解しました。
 今回皆さんにお伝えしたいこと。それは、ダラダラした生き方をすれば、そこからは何も産まれてこない。極端に言えば、「死を意識した時」にこそ人間は本当に求めているものを知るのです。たとえば、心を揺さぶるものや色鮮やかな生き方を強く求めて生きようとするのではないでしょうか。
 「死を感じて生きる!」
 それが文化芸術を成長させる原動力なのです。

写真:田野城寿男氏

たのしろ・ひさお…1958年広島市生まれ。サックス奏者。78年バークリー音楽院入学。在学中から精力的に活動し、帰国後の87年サリナ・ジョーンズの日本ツアーにソロ奏者として参加。91年「25周年記念」のモントルー・ジャズフェスティバルに出演。音楽家はもちろん、多彩なジャンルの表現者たちとのコラボレートを積極的に実践、近年は「音楽教育」の必要性を重視し、広い層の若者たちに個性的な指導を続けている。

ホームページ:http://www.tanoshiro.com

携帯サイト:http://www.tanoshiro.com/m/

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□連載
【岩崎稔の『大陸人の時間』】第21回

白衣の刑事

 北京のマンションは冬になると都市暖房のお陰で、部屋の中はものすごく暖かくなる。暖房開始の日は例年11月15日前後と決まっており、それまでの一ヶ月は部屋の中が外の温度とあまり変わらないほど寒い。一昨年、この一ヶ月の寒さを我慢できずに買った暖房器具の調子が今年は思わしくない。作動しているのかどうか分からないほどかすかな温かさしか放出しないそれを二匹の猫と見つめているうち、幻想の中に引きずり込まれるように眠りにつく。このままでは11月15日を無事迎えられないのでは……。
 5年に一度開催される中国共産党大会は先日閉幕したが、開催中は街中の広告が党大会のスローガンに変わっていて、本来の社会主義国らしさを取り戻したようだった。もちろん、中国政府の党大会への意気込みは、こんな表面的なことだけに限ったことではなかった。
 開幕して数日後、例のごとくある記者から仕事の依頼が入った。
 「病院で政府への直訴者が記者会見を開くらしい。一緒に来てくれ」
 しかし、それはただでさえ政府にとっては不都合な行動だし、ましてやこの時期である。直訴者が病院で記者会見など開けるのだろうか……。疑問を持ちつつ病院へ向かう。
 病院にはやたらと警備員が多かった。カメラを持って中に入ろうとすると、案の定、警備員にカメラをしまえと厳しく注意された。
 「しまう鞄など持っていない」
 そう言い捨ててとにかく中に入ろうとするも、つかまれるようにして押し返された。そうこうしているうちに、二人の白衣を着た医者に囲まれてしまった。
 「どこが悪いんだ?」
 「何しに来たんだ?」
 と矢継ぎ早に追及される。風邪を引いたと言って中に入るが、医師と警備員の厳しい監視が続き、あっけなく退却させられた。後でわかったことなのだが、病院には警察が白衣を着て警備に当たっていたらしい。私にしつこく問いただしてきたのは間違いなく、白衣で扮装した警察だ。よく考えれば、普通の医者が警備員と病院の前に立って患者の身元をチェックするのはおかしい。あの偽医者、私を見つめる目もどこか取り調べのときに見せる疑いの目だったし、医者の患者に対する優しさのかけらも無かった。警察が医者に扮装して警備に当たっていたということは、直訴者はとっくに連行されていただろう。

写真
人民大会堂

 その後、党大会が行われている人民大会堂に行ってみた。人民大会堂は天安門広場に隣接していて、文字通り北京の中心にある。向かう途中の車内から道路を眺めていると、ほぼ10メートル置きに一人の割合で警察や私服の警察が立っている。まさに蟻の入る隙間も無い。市民の中にも腕に赤い腕章をして、おかしな行動をする人はいないか見回っているおばさんやおじさんがいる。一般の人や観光客を見かけることのほうが少ないぐらいだ。
 天安門に一番近いバス停に着くと、さっそく警察に取調べを受けている数名の女性を発見した。何やらビラのようなものを持っていて、直訴にやってきた人のようだ。足を止めて様子を見ていると、護送車に乗せられ、あっという間に連行されてしまった。   
 天安門広場に入ると、厳しい検問を通り抜けてたどり着いた直訴者がパトカーに押し込まれるところに出くわした。人民大会堂は目と鼻の先なのに、さぞかし無念だろう。直訴者の多くは、バスや列車を乗り継ぎ、地方から何日もかけてはるばるとここまでたどり着くのだ。訴えは色々だが、個人的な内容が多く、自宅の取り壊しの補償問題や未払いの医療費問題等々……。地元政府にも相手にされず、中央政府にも相手にされず、党大会が開かれているこの期間、大会の参加者に訴えを聞いてもらおうと決死の直訴を試みるのだが、まともに取り上げてもらえることなどほとんど無い。
 仕事を終え、新しく出来たビジネス街で日本風のラーメンを食べる。高層ビルから見えるビルの谷間には、昼時とあってビジネスマンやOLが溢れている。ここには緊迫感も無く、警察もいない。もちろん腕に赤い腕章をしたおじさんやおばさんも見当たらない。たった数キロ離れただけで、重たい政治の色もにおいもしなくなる。背中を刺すような監視の目も感じない。本当に同じ国なのだろうかと頭をぐるんぐるんと振ってみたくなる。しかし、病院には白衣の警察まで現れたのだから、この平和に見える雑踏の中にビジネスマンに扮装した警察がいないとは限らない。などという疑念を払拭できないまま、複雑な気持ちでラーメンを食べた。

写真:岩崎稔氏 いわさき・みのる…写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。

*現在ANAの機内誌「翼の王国」で、作家の原口純子さんと「中国万事通」を連載中です。

ホームページ:http://www.minoruphoto.com/japanesemainpage.htm

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□連載
【大竹正枝の『新・自然真営道』】最終回

食を考える(3)〜遺伝子組み換え食品を支持しますか

写真
いずれ選択する時がやってくる
 遺伝子組み換え食品は、農薬漬けの野菜から人間を開放する救世主となるべく誕生した。しかし、その安全性については圧倒的に「支持しない」という意見が多い。その理由を訊ねると「何となく」と答える人が多い。なぜ明確な反対理由を持たずにそう答えるのだろう? マスコミが流す情報に私たちが混乱させられてしまっていることも理由として挙げられる。しかし、遺伝子組み換え食品がどのような理由で安全と判断されたかを知ってから反対しても遅くはないのではないか。
 コロラドハムシの例を検証してみよう。ジャガイモの葉を食べて転がって死ぬコロラドハムシの映像を見て“絶対に食べない”と思った人も多いはずだ。しかし、このハムシが死んだのは、葉に毒素が含まれていたわけではなく、消化不良になったからである。映像だけ見ると、まるで殺虫剤でも撒かれたようにすぐ死に至っているが、本当はそんな即効性はない。これは報道の仕方に問題があるのだ。
 遺伝子組み換えのジャガイモやトウモロコシには、バチルス・チューリンゲンシス(Bt)と呼ばれる土壌中のバクテリアが持つ遺伝子が利用されている。このBt菌の殺虫作用は、トウモロコシならアワノメイガ(鱗翅目)に、ジャガイモならコロラドハムシ(鞘翅目)に特異的に有効であることが近年の研究で判っている。もう少し詳しく触れると、Bt菌の持つタンパク質を鍵とするなら、標的昆虫の中腸上皮細胞の受容体は鍵穴である。つまり、どの鍵でも良いというわけではなく、鍵に合致する鍵穴を持っていなければ、そのタンパク質は働かないのである。さらに近年の研究では、この菌のタンパク質は哺乳類動物が摂取すると、ほぼ完全にアミノ酸に分解され、新たなアレルギー源とならないことも確かめられているのだ。つまり、特定の昆虫だけが標的となっているのである。
 ジャガイモやトウモロコシの栽培には、害虫防御のために殺虫剤散布が欠かせない。広大な栽培面積を持つアメリカやカナダのコーンベルト地帯では、害虫が大発生で丸坊主になることもあるため、どうしても農薬に頼らざるを得ないだろう。しかし、それではジャガイモやトウモロコシの大半を輸入に頼っている私たちの食卓には、いつまでも農薬漬けの野菜が並ぶことになる。「農薬」と「遺伝子組み換え」、一体どちらが良いのだろう?
 欧米諸国では、遺伝子組み換え食品を受け入れつつあるようである。農薬より組み換え食品の安全性を選択したのである。私たちもいずれどちらかを選択する時がやってくるのだろう。
 最後に、私は遺伝子組み換え食品を推奨しているわけでも、また反対しているのでもない。どんなことであろうと裏と表の面があり、その両面を見てから物事を判断しても遅くはないということを言いたいのだ。何の根拠もなく「悪そうだから」というのではあまりにも無責任ではないか。我々は両方の意見に耳を傾けるべきなのである。

おおたけ・まさえ…1965年生まれ、千葉県出身。現在、北海道大学農学研究科に在籍。植物が人間に与える不思議なパワーに興味を持ち、主に園芸療法について研究するかたわら、ガーデニング、環境保全、そして地域・農村活性化など幅広く関心を持つ。

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■インフォメーション

鯨森惣七さんの「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅」を更新しました!

 鯨森惣七さんが旅先で見て感じたことをイラストとエッセイで紹介します。第2回目は1回目に続き小樽の旅です。ほわりんこ〜んとした気分になりたい方はこちらから↓。




■次号予告
 ついに霜月に突入しました。2007年も2ヵ月を残すのみです。あぁーと焦っている間にも時は進みます。焦っちゃいけない、と考えている間にも時は進みます。そう思うとますます焦ってしまって……。
 次号のメルマガラインナップは、上林早苗の「上海日記」、「とろんのPAI通信」、鈴木邦男氏による「危機の時代に―鈴木邦男・和多田進 10年目の往復書簡」です。
 『メルマガ北海道人』第44号の配信は11月8日(木)です。
 
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