メルマガ北海道人

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『メルマガ北海道人』第39号 2007.10.04. ―「北海道人」、きのこの季節―

 市場の店先に天然のきのこが並ぶようになりました。それは山からのきのこ便りです。からまつの下にはつややかな落葉きのこが、コケにおおわれた倒木にはボリボリが、重なり合った木の裏側に、大きなしいたけが生えていることもあります。
 しかし、山には市場で見かけないきのこもたくさんあります。「これは食べられますか?」「ダメだ、毒きのこだ!」「じゃぁ、これは?」「それはおいしくない」「これは?」「ダメだ!」。きのこ採りには観察力と経験がいります。山には熊もいます。「毒」と「熊」。大きな危険を冒してでも食べたい、天然きのこの味は格別です。
 『メルマガ北海道人』第39号、危険を冒しても読みたい内容で配信!

となりの北海道人 『私のお父さん』




■もくじ

連載【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】

 アナログ楽器は不思議な力を備えていて、音色には人生観や性格があらわれてしまうそうです。そう唱える田野城教授が、なんと今回の授業中に「テナーサックスの音色を完全に見失っていた」と衝撃の告白をしました。体の一部であるサックスが他人のようだったと。ドキドキ発言の真相は?

連載【岩崎稔の『大陸人の時間』】

 前回のジャッキー・チェンが登場したイベント同様、今回も狭い隙間に場所をとりシャッターを切る岩崎さん。狭いうえに、雨、風、雷におばさんまでが岩崎さんに襲いかかります。小泉政権下では盛大に祝うことができなかった「日中国交正常化イベント」も、今年は盛大のようです。

連載【大竹正枝の『新・自然真営道』】

 人間と植物との身近な接点は「食べる」ということです。今回は「食を考える」第1回として、化学肥料と農薬について大竹さんが語ります。なぜ化学肥料や農薬を使わなければならなかったのか、使った結果、農作物にもたらされたものは何なのか。「食」についての問題。これは知らねばなりません!

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□連載
【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】 Lesson 16

サックス――音魂

 アナログと呼ばれる電子音以外の楽器は、非常に不思議な力を備えています。たとえば同じ1本のサックスを2人で交互に吹いたとしても、音色はまったく違って出てきます。まるで演奏者の性格や人生観が音として表れているかのように。もちろん楽器そのものの特性により音質が変化したり、演奏する側の基本的な練習の違いが音色に大きな影響を与えることはありますが……。
 サックスはイマジネーションの楽器なのです。自分で一音一音、音色を創らなくてはならないのです。ボタンを押せば同じ音……はありえないわけです。ベルトコンベアーに流されて音が創られて行くのではありません。
 人間には心があります。
 音色とは、演奏者の心の反映です。
 しかし大変困ってしまったことに、私はここ数年、自分自身が奏でるテナーサックスの音色を完全に見失っていました。と言うより、自分自身の音色が分からなくなっていたのです。自分の生き方を見失っていたとも言えます。テナーサックスを持つたび、どうにもこうにも気に食わない、しっくりこない。吹けば吹く程、自分が嫌になってしまう。サックスと自分が一体になれず、自分の体の一部であるはずのサックスなのに、まるで知らない人と一緒にいるみたいな状況に苦しんでいました。
 特に最近はジャズをはじめ、クラシックの演奏会に数多く出演していたこともあってか、ますますテナーサックスとの付き合い方が分からなくなっていたのです。
 「哲学を失ってしまったのかもしれない……」
 そんな焦りや混沌とした気持ちの中で練習していたときのことでした。突然封印されていた扉が開いたのです。厳密に言えば、忘れていたことが次々と蘇ってきたのです。それは音楽を始めた頃の感覚や学生時代に教わった練習方法、音楽に対する心がまえ等々でした。
 その瞬間、今まで他人だったテナーサックスの音色が変わったのです。
 「そうそうこういう感じ!」
 いきなり数年前の自分に出会えた様な気がしました。いや本当はそうなのではなく、何だか分からないけれど、進化しはじめた自分に出会えたのかもしれません。
 他人で無口だったサックスがいきなり
 「元気? 久し振りだね!」
 と語りかけてくれたのです。
 私は常々感じていることがあります。1回のコンサートは10回の練習に匹敵し、1回のレコーディングは10回のコンサートに匹敵するということを。どの世界でも言われる「経験がものを言う」です。すなわち練習だけではすべてを捉えられないのです。人前での演奏によって、自分自身のバロメータを知ることができます。レコーディングは自分が現在持ちうる最大のポテンシャルを引き出しながら、さらに感性に磨きをかけて行います。
 時に私達人間は嘘をつきます。でも、人生経験からか不思議とその言葉が本心かどうか見破ることも出来ます。音楽も同じなのです。偽善的な演奏には偽善的な音が鳴り、単なる音の羅列が続きます。これを聴き手は“無意味な音”と判断します。だから、音に魂を入れることが大切なのです。
 “扉が開いた”今、私は最高に嬉しい時間を過ごしています。それは長く離ればなれになっていた家族が、ひょっこり帰ってきてくれた様な感じに等しいかもしれません。それとも内なる自分がやっと帰ってきてくれたのか……。
 いずれにせよ、この喜びは音楽家にとって格別なものです。

写真:田野城寿男氏

たのしろ・ひさお…1958年広島市生まれ。サックス奏者。78年バークリー音楽院入学。在学中から精力的に活動し、帰国後の87年サリナ・ジョーンズの日本ツアーにソロ奏者として参加。91年「25周年記念」のモントルー・ジャズフェスティバルに出演。音楽家はもちろん、多彩なジャンルの表現者たちとのコラボレートを積極的に実践、近年は「音楽教育」の必要性を重視し、広い層の若者たちに個性的な指導を続けている。

ホームページ:http://www.tanoshiro.com

携帯サイト:http://www.tanoshiro.com/m/

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□連載
【岩崎稔の『大陸人の時間』】第19回

日中国交正常化35周年イベント

 今年は色々なイベントに顔を出しているが、その中でも「日中文化・スポーツ交流年」と題したイベントをいくつか取材してきた。
 2005年4月に起きた反日デモや小泉元首相の靖国参拝で両国の関係は冷え込んでいたが、安倍前首相に変わってから両国が急速に仲直りをしようとする動きに変わったのは周知の通りだ。5年前の国交正常化30周年は小泉政権下でとても盛大には祝えなかったが、35周年という中途半端な区切りの今年、盛大に祝おうとするのがこの「日中文化・スポーツ交流年」だった。大小252ものイベントが両国で開催された。その中でも北京の頤和園で行われた「昆曲・狂言・京劇・能」の伝統文化交流は大変なイベントだった……。
 例のごとく依頼の電話があり、怪しい雲行きの下、記者と会場に向かう。
 「雨、降りそうですね」
 「大丈夫だろう」
 などと話しながら頤和園の中にある徳和園大劇楼という野外劇場に着いた。この大劇楼はあの西太后もよく観劇したという由緒正しい場所である。その西太后が観劇に使用していた頤楽殿の前に日本の大使夫妻やVIPたちが座り、一般の招待客は舞台の前に設置された椅子で観劇するのだが、われわれカメラマンは頤楽殿とVIPの狭い隙間に何とか場所をとる。
 中国と日本の伝統芸能を交互に演じる心にくいプログラムは、中国の「昆曲」(古典音楽劇。江蘇省の伝統劇で、京劇よりも歴史が古い)で幕を開けた。最初は特殊効果か何かかと思ったが、間もなく遠くのほうで雷が鳴り、激しい風が吹き始め、少しすると「ザーッ!」と激しい雨が降り始めてしまった。われわれは頤楽殿の屋根で雨には濡れないのだが、ほとんどの招待客が激しい雨に打たれるままになっている。係りの人があわててゴミ袋を改造したような雨具を配り、大使夫妻やVIPたちもそれをかぶった。ゴミ袋の様な雨具をまとった集団は激しい風と雨に打たれながら何とか昆曲を見終わったが、関係者が出てきて一時休憩に入った。

写真

舞台袖

 どうやら雨に打たれた照明が壊れてしまったようで、20分過ぎても次の演目が始まらない。このイベントは日中友好のメインイベントでもあるから、そう簡単に中止にできないのである。幸い、雨も弱くなり、先ほどよりかなり照明の数が減ってしまったが、新しい照明も持ち込まれて「狂言」が始まった。しかし数分すると雨脚がまた激しくなり、観客のほとんどが雨を避けて避難した。
 そのとき、ひとりの中国人のおばさんが大使夫人を押しのけて私のほうにずんずんと向かってきた。何をしてくるのか身構えていると、私の隣に入れてくれと言うのである。おばさんは私の返事も待たずに荒い息をして私の隣までやって来ると、空になったVIP席にどすんと鞄を置き、席を確保する体勢に入ったのである。おばさんの一連の動作には迷いというものが微塵もない。私は迫力に圧倒されるばかりで呆然と眺めていた。
 能には所縁の地に故人の霊が姿を現すという話があるけれど、西太后がこのおばさんに乗り移ったのか、あるいは西太后の霊が現し世に現れたのか……。場所柄と天候のせいか、中国では決して珍しくはないそのおばさんの行動のような現実を私はつい幻想的に解釈してしまうのだ。
 「京劇」(中国の代表的な古典音楽劇。昆曲をはじめ各地方の劇のよいところを取り入れて形成された)まで見終わると、最後の「能」を見ずにぱらぱらと人が帰ってゆく。国交正常化30周年の際も、最後に日本の歌手が登場したため閉幕を待たずに中国客は帰ってしまうのだったが、それで客席はまばらになってしまうイベントがあった。今回も同じ轍を踏んでしまったようだ。会場を後にする人たちをそのままに、「能」も激しい雨の中、プログラム通りに強行的に演じられ、何事もなかったようにイベントは終了した。
 雨に濡れることもなく、日中の伝統文化を観劇できた私は多少なりとも両国の文化の特徴などを垣間見ることができたが、大雨の中を右往左往しながらゴミ袋のような雨具をかぶった招待客らにそんな余裕はあったのだろうか。「日中文化・スポーツ交流年」のイベントはまだまだ続く。

写真:岩崎稔氏 いわさき・みのる…写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。

*現在ANAの機内誌「翼の王国」で、作家の原口純子さんと「中国万事通」を連載中です。

ホームページ:http://www.minoruphoto.com/japanesemainpage.htm

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□連載
【大竹正枝の『新・自然真営道』】第22回

食を考える(1)〜化学肥料と農薬

写真
農作物は人間の手を借りないと生きていけない。
もはや野生の植物ではないのだ
 これまで園芸療法や森林療法などについて色々書いてきたが、人間と植物の接点は何も癒しや育てる楽しみばかりではない。簡単に言うなら、人間と植物は食べる(=野菜や果樹)という身近な接点をもっているのである。私たちは毎日食べる。食べることでエネルギーを吸収し、生きていくことが出来るのだ。
 でも人間というのは実に贅沢な生き物で、ただ「食べる」だけでは満足しない。どうせ食べるのなら「美味しいもの」「栄養価の高いもの」「自分の好きなもの」を食べたい生き物なのである。とくにここ数年、日本は、超飽食の時代と言ってよいだろう。私は経験していないが、「食べ物がなかった」「口に入れるものであったら何でも構わない」という時代が確かに日本の過去には存在していたのである。
 そういった貧窮生活から脱却し、敗戦からの復興とともに、さまざまなものが、大量生産されるようになり、食料もまたその例外ではなくなった。しかし、食料の大量生産には、病気や害虫に左右されないための策が必要である。そこで、登場したのが化学肥料や農薬だった。化学肥料や農薬のお陰で、食糧の生産量は著しく飛躍した。化学肥料や農薬が農業を変貌させたと言っても過言ではない。
 しかし、なぜ化学肥料や農薬が必要になったのか? 
 そもそも自然生態系と農業生態系は大きく異なる。自然生態系では多様な動植物が存在しており、一次消費者や二次消費者などの食物連鎖ができている。しかし、農業生態系は作物生産だけが目的だから多様性に欠けるのである。そのため、農業生態系は害虫などの一次消費者からの攻撃に非常に弱いのだ。農作物は野生の植物より栄養価に優れているため、一次消費者にとっては魅力的なご馳走になってしまうのである。
 さらにもう一つ厄介な理由がある。それは、植物本来がもっていた自衛防御能力を人間が解除してしまったことだ。私たち人間は美味しいものが好きである。そのうえ一度に多く収穫できたらもっと良いと考える。それらのことを実現するために人間は何代にもわたって品種改良を行ってきたのである。しかし、品種改良は同時に植物が持っていた病害虫からの抵抗力を軽減することになってしまったのだ。つまり、農作物は一次消費者から無抵抗に食べられることになってしまったのである。それで、ひ弱になった農作物を守るために、化学肥料や農薬に頼るようになったのである。
 農作物の安定供給を図り、生産者の立場を擁護するということからすれば、これら一連のことは仕方がないことだ、と言えるだろう。しかし、そのために私たちは化学肥料や農薬漬けの農作物を毎日食べることになってしまったというわけなのだ。(つづく)

おおたけ・まさえ…1965年生まれ、千葉県出身。現在、北海道大学農学研究科に在籍。植物が人間に与える不思議なパワーに興味を持ち、主に園芸療法について研究するかたわら、ガーデニング、環境保全、そして地域・農村活性化など幅広く関心を持つ。

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■次号予告
 次号のメルマガは、40号というきりの良い数字です。きりが良いと何かをしなくてはならないような気になるのはなぜでしょう。そんな決まりがあるのでしょうか。何か良いことでもあるのでしょうか。
 何かをするかどうかはさておき、次号の強力メルマガラインナップは、上林早苗の「上海日記」、「とろんのPAI通信」、「危機の時代に―鈴木邦男・和多田進 10年目の往復書簡」です。
 『メルマガ北海道人』第40号の配信は10月11日(木)です。
 
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