メルマガ北海道人

HOME > 第35回

『メルマガ北海道人』第35号 2007.09.06. ―「北海道人」、小さな秋×5―
 空が遠くなりました。その空を背景にトンボの集団が飛んでいきます。海水浴場は人影もまばらで、街路樹はまつりの後のようにぐったりとしています。鈴虫の声も聴き取れるくらい夜が静かになりました。――秋です。小さな秋を無理やり数えてみました。5つありました。これからドンドン増えていきます。数え切れなくなったら、その時は……。
 『メルマガ北海道人』第35号トンボに紛れて配信? 配信!

となりの北海道人 『私のお父さん』




■もくじ

連載【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】

 近頃、ジャズサックス奏者としての枠を超え、クラシックのフィールドでも音楽活動をしている田野城さん。今回はコンサートのため、クラシックピアニストの方と出かけた道東の旅の話です。途中、立ち寄ったある場所で悲しい気持ちになったそうです。田野城さんがそこで感じたものはいったい?

連載【岩崎稔の『大陸人の時間』】

 北京五輪の影響でエキセントリックな行動をとる人が次々と現れている中国。出張先でそういった人を何人も目撃したという岩崎さん。今回は公害問題が深刻化する北京市の交通事情について。公害対策のための交通規制も中国ならではでしょうか、大胆なんです。人びともまた大胆なんです!

連載【大竹正枝の『新・自然真営道』】

 8月31日に講演を終えたばかりの大竹さん。今回は北大農学部園芸学教室のシンポジウムの話です。大盛況に終わったシンポジウム。しかし、それは喜ばしいことではないという大竹さん。その背景にある人びとがおかれた状況とは、「癒し」を求めるそのワケは?!

このページの先頭へ




□連載
【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】 Lesson 14

「北海道横断―オホーツクへの旅―」

 私は初めて会った方から「ジャズミュージシャンですか?」と尋ねられると、いつも答え方に迷ってしまう。なぜならその方がジャズの定義をどのように捉えられているかまったく判らないからです。歴史的にみてもその時代の社会を反映した色んなスタイルのジャズが存在しています。ということはジャズ自体が過去の学問ではなく、進化し続けているということになります。時にロック色が強くなったり、ラテンのテイストが多く含まれたり、最近ではクラブ系のビートで即興演奏を展開するジャズも数多く聴かれます。
 私はこれ迄、ジャズと呼ばれる音楽を演奏してきましたが、昨年から、クラシックフィールドで教会専属オルガニストと一緒にカトリックのミサ曲を演奏しています。また最近では、クラシックのピアニストの方々ともコラボレーションをしています。私がメシアンの作品を演奏したり、バッハのカンタータ140をサックスでブローする理由は、自分にとってより刺激的であり、また新たな感動を得ることが出来るからです。多分、自分自身決まったルーティンワークの音楽では満足しないのかもしれません。
 先日、札幌在住のクラシックピアニストから北見でのコンサートの誘いがあり、一緒に札幌から車で出かけて行きました。3泊4日の小旅行。
 クラッシック VS ジャズ――面白かったです。
 何たって前日が初めてのリハーサルという中で、最後に演奏した曲は2台のピアノによるガーシュインの『ラプソディー・イン・ブルー』。その完成されたメロディの上で自由に私のソプラノサックスが即興演奏で絡む! サックスの楽譜が無い曲だけに「乱入」という言葉が適しているかもしれません。会場のお客様は「いったい何が起きたのか…?」。という訳で、予定終了時間を40分もオーバーする程、熱く燃えたコンサートとなりました。
 そして翌日は地元の中学校へ! 来月、この中学校主催でクラシックとジャズのジョイント演奏を子供達の前で行う予定。校長先生をはじめ、皆さん温かく迎えてくれました。来月の演奏会が楽しみです。
 その後、佐呂間(サロマ)、そして最終目的地知床半島斜里(シャリ)へ!
 今回は天候にも恵まれ晴天続き。北見の郊外を抜けると、これぞまさしく北海道と言わんばかりの田園風景を滑る様に心地よく車を走らせ、約1時間でオホーツク沿岸の佐呂間へ到着しました。そこで見た物は……。ナント素敵なホールがあるではないですか! その名も「シンデレラホール」。そう再来月、私はここシンデレラホールでジャズコンサートを行う予定です。漁師の街でドカンと刺激を与えて欲しい……と!
 ライブ演奏の打ち合わせを済ませ、海岸線を一路斜里へ向けて車は発進。そして途中立ち寄ったのが、映画『網走番外地』で有名になった網走監獄。北海道に移住後、様々な方から伺っていた博物館網走監獄へ遂に行ってまいりました。私達一般の日本人には関係ない……では済まされない、暗く悲しい歴史の一片を知ることがここで出来ます。
 北海道の歴史=開拓の歴史であり、開拓の歴史=囚人達の強制労働の歴史とも言えるでしょう。因人達は険しい道無き原生林を、熊や天候と闘いながら粗末な道具で切り開きました。多くの方達が亡くなりました。冬になればマイナス20度なんてあたりまえです。また炭坑や硫黄採掘なども行っています。その苦労は北海道を横断してみると誰でもわかるでしょう。
 私はここ網走監獄に訪れて感じたことがあります。それは、北海道の歴史はアメリカ開拓史と似ている……と。
 そもそもアメリカ開拓の歴史は、現在のイギリスやアイルランドでピューリタン革命が起こり、弾圧を逃れるため新天地アメリカへユートピアを求めてピューリタンが移住したのが始まりです。その後、ヨーロッパ各地から豊かな暮らしを夢見た多くの移民達もやってきました。それによってネイティブ・アメリカンは自分達が生まれ育った土地を奪われていった訳です。
 また、アメリカ南部からカリブ海に面した国々で、タバコやラム酒などヨーロッパで高価に売れる作物を作るための労働力として、アフリカ黒人が奴隷として働かされました。彼らも因人達と同様、人間として認められていませんでした。
 皆さん、人間が人間として認められない社会は、実に虚しいと思いませんか?
 さて博物館を見学後、いよいよ最終目的地知床半島斜里へ向かいました。約1時間30分のドライブ。車窓から真っ青な空とオホーツク海を眺めていると、時折アメリカ東海岸を走っている様な錯覚に見舞われました。
 斜里に到着すると、すぐにペンションへ!
 このペンションには温泉があるということで、早速入ってみるとこれがまた気持ちいい! 温泉好きの私としては、大満足でした。そしてコーヒーを飲んで一息ついてから、斜里のコンサートホールへ出かけました。このホールも素晴らしい。嬉しい様な悲しいような……。その後、地元の音楽家達を交えての食事会が開かれ、美味しいウニや魚をたらふくいただきました。
 帰路は斜里を午後1時半に出発し、札幌の自宅に到着したのは午後9時を回っていました。途中寄ったドライブインで見た空いっぱいに飛んでいた赤とんぼの大群は圧巻でした。
 私にとって記念すべき初めての北海道横断。北海道開拓の歴史へ深く想いを馳せることができました。
 蝦夷地であった時代に、先住民のアイヌ民族がいたこと。また明治維新後、蝦夷地から北海道へ名前を変え開拓が本格化していく中で、囚人達や外国人らの強制労働も存在し、多くの命が犠牲になった事実を、網走監獄が改めて気づかせてくれました。

写真:田野城寿男氏

たのしろ・ひさお…1958年広島市生まれ。サックス奏者。78年バークリー音楽院入学。在学中から精力的に活動し、帰国後の87年サリナ・ジョーンズの日本ツアーにソロ奏者として参加。91年「25周年記念」のモントルー・ジャズフェスティバルに出演。音楽家はもちろん、多彩なジャンルの表現者たちとのコラボレートを積極的に実践、近年は「音楽教育」の必要性を重視し、広い層の若者たちに個性的な指導を続けている。

ホームページ:http://www.tanoshiro.com

携帯サイト:http://www.tanoshiro.com/m/

このページの先頭へ




□連載
【岩崎稔の『大陸人の時間』】第17回

「北京一斉交通規制」

 中国では9月1日から新学期が始まる。長い猛暑もようやく落ち着きはじめ、もうすでに新しい季節の風が吹いているように思える。今年の夏も何とか無事に乗り切った。新聞の8月末の日付を感慨深く見る。とてつもない記録に挑んでいた少女の話が載っている。中国最南端の海南島から北京の天安門広場までの約3558キロを57日間かけて完走した少女の話である。数日前の新聞に自転車で後ろから追いかける父親とそれに追われるように走る少女の写真が載っていたのを思い出した。この少女、夏休みはずっと走っていたことになる。
 エキセントリックなのはこの少女1人だけではない。彼女と似た現象が中国各地で起きている。国内の出張に出ると、自転車に五輪の旗や北京五輪のマークを付けて中国全土を横断している人を見かける。行き先を問えば、決まってゴールは天安門だと答える。来年の北京五輪の到来を黙って迎えることができず、何らかの形でからもうとする人は今まで何人も見てきた。その常軌を逸した行動と意味のなさに言葉を失うことがたまにあるが、今までのはまだまだ序の口で、これからどっとそういった輩が北京に現れるのだろう。
 公害が深刻化する北京市では、五輪を1年前に控えた8月、4日間にわたって交通規制テストが行われた。どのような規制かというと、ナンバーの末尾が偶数の車だけが走行できる日と、奇数の車だけが走行できる日とを設けるというものだった。この規制は一般車が対象となり、公共の車(タクシーやバスなど)は通常通り運転を許可された。

写真
「老人とミシン」

 知り合いの記者からこの話題の写真撮影を依頼された。その日は奇数が走行できる日。街に出ると、確かに普段より車は少なく感じるものの、元々ものすごい交通量なので効果が明確にはわからない。渋滞の多い幹線道路をたどっていると、警察が末尾のナンバーを確認しながら取締をしているところに出くわした。これはチャンスと望遠レンズで違反者の出現を待っていると、驚いたことに、ナンバープレート自体をつけていない車が次々と捕まっていく。これはナンバーを取り締まる以前の問題だ。シャッターを押そうにも今回の交通規制とはなんら関係ない。いつもこんなにナンバープレートをつけていない車が多かったのか、それとも今日だけ故意に外しているのかと疑問に思ったが判断しかねた。   
 さて待つこと数分、現れました、ナンバー末尾が偶数の車! 警察も即座に見つけ、路肩に車を止めさせ罰金の告知をしている。ちなみに罰金は100元(約1600円)だそうだ。近くに寄って話を聞いてみると、このドライバー、免許証すら持っていないという。何だかこの規制で思わぬ違反者が網にかかっていっているようだ。それでも10分で2台は偶数ナンバーの車が確実に捕まっていた。
 4日間のテスト規制が終わると、街はまた朦朦とした排気ガスに包まれ、渋滞は1日中続くようになった。この規制について市民は賛否両論だった。私の出会ったドライバーの間では今後も続けるべきだという声が多く聞かれた。しかし、私の親友、白タクの段さんも同じ意見を言ったのには驚きだった。
 空港に向かう渋滞の中で、「今回の交通規制、仕事できなくて困ったでしょう?」と段さんに訊くと、
 「それはもちろん困るけど、北京の渋滞にはうんざりしてるんだよ……。今回の規制では1日運転できなくても、次の日は快適に車を使える。とにかく何か対策を打たないと毎日こうして渋滞の中、貴重な時間が過ぎていくだけだ」
 段さんにそこまで言わせる北京の渋滞は本当に深刻なのである。しかし、順調に車が進み始めると、段さんは鼻歌を歌うように言った。
 「でもそうすると、やっぱり仕事に影響でるからな〜」
 その前に白タクから早く足を洗えばいいのに……。

終わり


写真:岩崎稔氏 いわさき・みのる…写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。

*現在ANAの機内誌「翼の王国」で、作家の原口純子さんと「中国万事通」を連載中です。

ホームページ:http://www.minoruphoto.com/japanesemainpage.htm

このページの先頭へ




□連載
【大竹正枝の『新・自然真営道』】第20回

「人間と植物の新たな関係〜シンポジウムを終えて」

写真
会場内は満席、立ち見もでるほどだった
 北大農学部で8月31日、北大園芸学教室100周年記念のシンポジウムが行われた。「園芸と健康・長寿社会〜園芸作物の癒しのパワーと機能性」と題されたシンポジウムの内容は次のようなものだ。
 現在の我が国は長寿高齢化社会となっており、老後を明るく生きることに関心を持っている人が多い。このような背景から、果樹や野菜の機能性、園芸作業が持つ癒しのパワーについても関心が寄せられるようになってきている。そこで、園芸療法の実践報告や果樹や野菜などの成分と健康との関係について、私を含め4人の演者がそれぞれ発表したのである。事前に新聞やHPでの宣伝が効したこともあって、会場は満席で立ち見もでるほどの盛況ぶりだった。私としては発表させて頂くだけでも光栄なのに、本当に嬉しい限りである。しかし言い換えると、人々はそれだけ「癒し」や「健康」に関心を寄せなければならない状況にあるのではないだろうか?
 それでは、その状況とは一体どういったことなのだろう? それは、現代がまさに高齢社会であることや医療費の削減政策が実施されている社会であること。また、中国野菜の残留農薬やその他にも巷を騒がせた一連の食に関するニュースを例に見るように、自己防衛しなければならない状況の表れではないかと私は考えている。「国は何もしれくれない」「他人が作ったものは信用できない」というのは極論かもしれないが、不信感を仰ぐような事件が実際に起きているのだからそう考えるのも仕方がない。そのため、「自分の健康は自分で守る」ということや「安全な食」についての探求から、必然的にシンポジウムで取り上げたような話題に人々の関心が集まるのだろう。
 また、現代はストレスが蔓延している社会とも言える。希薄な人間関係、国の境がなくなり昼夜を問わず稼動する複雑な社会構造、格差社会、そして頻発する凶悪犯罪などなど。私たちは何か得たいの知れないものに対して、日々脅えて暮らしていることを否定できない。その反動から、無意識に「自然」や「癒し」を求めてしまうのだろう。若い人の間で「盆栽ブーム」が起きているというのもうなずける。「自分の世界を作りたい」「人間以外の生物にしか心が開けない」などの感情が心の中で渦巻いているように見える。
 しかし、花や緑を育てる理由は否定的なことばかりでない。我々の遺伝子の中にはすでに緑を欲する遺伝子が組み込まれていると言われているように、私たちは無意識に自然(=緑)を求めているのだ。人によってそれが森林散策であったり、花や緑を育てたりといったように親しみ方は千差万別だが、自然を感じていたいという気持ちは同じだと私は考えている。
 最後に、これまで園芸学は農作物を生産するといった経済的効果ばかりを追求してきた。しかしここに来て、高齢化社会やストレス社会、医療費問題、そして食への不信感などを反映して、生産そのものを目的としない新たな園芸の役割が注目されている。園芸の豊かな可能性をこれからも私は追求していきたい。

おおたけ・まさえ…1965年生まれ、千葉県出身。現在、北海道大学農学研究科に在籍。植物が人間に与える不思議なパワーに興味を持ち、主に園芸療法について研究するかたわら、ガーデニング、環境保全、そして地域・農村活性化など幅広く関心を持つ。

このページの先頭へ




■インフォメーション

鯨森惣七さんの「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅」が始まりました!

 ポータルサイト『北海道人』で、イラストレーター鯨森惣七さんによる連載が始まりました。第1回目に選んだ旅先は小樽です。鯨森さんの旅を体験したい方はこちらからどうぞ。

http://www.hokkaido-jin.jp/issue/cuzira/vol01/

田野城寿男“The Secret Duo Live"情報

 サックス奏者であり、「楽譜のいらない音楽授業」の執筆者でもある田野城寿男さんのライブが9月26日(水)に行われます。今回は、ロックキーボーディスト友成好宏さんとのデュオです。何が飛び出すか分からないスリリングなステージになりそうです。

日 時:2007年9月26日(水) 19:00 開場 19:30開演
内 容:田野城寿男(sax.) 友成好宏(Key.)
会 場:ヤマハミューズクラブ札幌
スタジオフィールズ(札幌市中央区南10西1)
料 金:前売¥3,500 当日¥4,000
チケット取扱:ヤマハミューズクラブ札幌 TEL:011-512-5432
主催/FMノースウェーブ 
協賛/ヤマハミューズクラブ札幌




■次号予告
 9月は休日の多い月です。半ばを過ぎてから敬老の日や秋分の日がやってきます。そのカレンダーを見てニヤリとする月の前半がいいのです。
 さて、次号のメルマガラインナップは、上林早苗の「上海日記」、「とろんのPAI通信」、「危機の時代に―鈴木邦男・和多田進 10年目の往復書簡」です。
 『メルマガ北海道人』第36号の配信は9月13日(木)、月の前半です。
 
※インターネットに接続するとメルマガ上の画像をご覧になれます。

メルマガに対するご意見・ご質問などはこちらまで
mailmag@prc.hokkaido-jin.jp

ポータルサイト『北海道人』
http://www.hokkaido-jin.jp/

※登録(または解除)は、こちら
http://www.hokkaido-jin.jp/mailmagazine/index.html

このページの先頭へ

バックナンバー

最新のメルマガ
第160回までのメルマガ
第140回までのメルマガ
第120回までのメルマガ
第100回までのメルマガ
第80回までのメルマガ
第60回までのメルマガ
第40回までのメルマガ
第20回までのメルマガ