メルマガ北海道人

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『メルマガ北海道人』第27号 2007.07.12. ―「北海道人」、バーベキュー日和―
 土日ともなると、どこからか肉の焼ける匂いが漂ってくる近頃の北海道。匂いのする先からは、酔っ払ったお父さんの上機嫌な笑い声が聞こえてきます。
 このバーベキューにも鍋と同様に奉行がいます。“バーベキュー奉行”です。うちわ片手に炭の燃え具合をこまめに調整し、焼けすぎないよう肉を網の端に寄せたり、絶妙なタイミングで肉を追加したりします。お奉行様がいないバーベキューは不幸です。あっという間に肉や野菜が黒こげになるか、あるいは炭の燃えが悪ければ、生焼けの素材を食べることになります。
 ブラボー、バーベキュー奉行! ありがとう、バーベキュー奉行! 
 しかし、ひとつ疑問が残ります。夏のバーベキュー奉行は冬の鍋奉行と同じ人物なのでしょうか。どうですか? お奉行様。
 バーベキュー気分で、『メルマガ北海道人』第27号を配信します。ジュウジュウ。

となりの北海道人 『私のお父さん』




■もくじ

連載【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】

 ボストンに留学中、お世話になった現地の病院で垣間見たアメリカの医療のあり方、大学の音楽授業で体験した驚くべき教授と生徒の関係に、民主主義を感じたという田野城さん。「今私達に必要なもの」と題された今回の授業は、いつも以上に学ぶべきことが多いはずです。

連載【岩崎稔の『大陸人の時間』】

 北京オリンピックに向けて、中国の人びとの気持ちは高まっています。今回岩崎さんが出向いた先は、「世界オリンピックコレクター博覧会」。そこには元国際オリンピック委員会会長のサマランチさんの姿がありました。元会長を歓迎する人びとの熱狂が、北京の気温を上昇させます。

連載【大竹正枝の『新・自然真営道』】

 シリーズでお届けしていた「園芸療法」の話も今回が最終章。資格を取得し、介護老人福祉施設の現場で実践する園芸療法士さんの体験談、3回にわたり様々な角度から見てきた「園芸療法」の総括、そして大竹さんの決意が語られます。

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□連載
【田野城寿男の『楽譜のいらない音楽授業』】 Lesson 10

「今私達に必要なもの」

 今私達に必要なものは、音程ではなく、音色である。
 大学生の頃、何度か病気になり、ボストンの病院にお世話になった事がある。
 患者の僕に対して、ドクター5名が専門チームを組んだ。彼らは僕と話し合い、診察しながら、最終的に病名を決めて治療方法を検討した。面白いことに彼らは1人ずつ僕を同じように診察し、何回も似た様な質問をした。
 「一体、いつになったら終わるのか?」
 と、僕があきれる程、繰り返し行った。
 既に当時からアメリカでは、極めて客観的な患者への診察や治療が実践されていたようだ。
 また、病院内の診療にアーキパンクチュアつまり、針治療があった事は当時の僕にとって非常に驚きだった。アメリカ医療の持つ、ある種の寛容さを感じた。
 「一体その人に、何が最も必要なのか……」
 これを最優先に考える医療姿勢に、民主主義を感じた。西洋医学だ、東洋医学だとカテゴリー化し、患者の選択肢を少なくさせる考え方ではない。一方、帰国後受けた日本医療は、「東洋医学は○○○」「西洋医学は□□□」等と区別し、お互いを認めるというよりは、区別することで患者の選択肢を狭めている印象を受け、アメリカとの意識のギャップに戸惑いを感じたものだった。
 僕は医者ではないので専門的な事はわからないけれど、当時の日本医療には何か大きな力が働いていて、間違った方向にベクトルが向いていたのではないか? とも思う。
 話は変わるが、大学で初めて楽器を持って授業に出たとき、もちろん超初心者クラスに入れられた。初めて楽器を持つ学生が対象で、14〜15人程度のクラスであった。
 担当教授がやってきて、楽器の持ち方や吹き方をわかり易く説明してくれた。そのとき、1人の学生が手を挙げるなり唐突に言い放った。きれいなブロンドを長く伸ばした男子学生だった。
 「先生、その吹き方は嫌です。僕は掟破りなこっちの方が良いです」と言ってサックスを頭上より高く持ち上げて吹いたり、フルートのように横に持ち上げて吹いてみせた。その姿を見ていた教授は、ゆっくりと真面目にこう答えた。
 「もちろん、そういう奏法も可能だろう。皆、身長や体重、生まれた環境も違う。好みも違って当然だ。もし君がその方法が良いと考えるならば、そのように演奏して構わない」
 ……私は、ショックだった。 初心者の僕でさえ彼の突飛な考えには、「なんてバカな事を言うんだろう」と呆れた。だから教授も「それは、無理だろう。奇想天外な演奏をしたところで長続きしないよ」ぐらい言うのかと思っていた。ところが教授は生徒の意見を認めたではないか! これが教育なのか……と理解に苦しんだ。
 でも、しばらくたって気づいた。これが民主主義なのだ……と。
 たとえ将来、ブロンドの彼が演奏方法で壁にぶつかったとしても、大学側は模範となる演奏方法をきちんと教授しているのだから、あとは、ブロンドの彼が自ら修正していかなければならなくなるだろう。
 学生の意見を頭ごなしに否定するのではなく、まず彼の個性を認め、「決めるのは君だ」と選択権と責任を与えた教授の……言い換えればアメリカ教育の懐の深さに驚きを感じた。
 科学技術の発達で様々なものがコンピューター化されている現代、音程を数値で表す測定器も近くの楽器店で簡単に手に入る。詳しい話は別にして、かつて僕は大学で“音程は耳で判断するものだ”と学んだ。現在もその考えに変わりはない。誤解のないように付け加えるが、測定器を否定しているのではない。ただ、これまで中高生などの吹奏楽を指導して気になっている事の一つがこの音程についてなのだ。ひとことで言えば、彼らは音程の問題にとらわれ過ぎている、のである。
 “マニュアルありき!”と考えるあまり、音楽を演奏するのに何が一番大切なのかが完全にズレてしまっているのだ。音そのものに自分の感情を吹き込ませる事が大切なのに、音程、つまり数値化されたマニュアルを優先している。その結果、彼らの音楽は十把一絡げで魂の無い、無表情な音楽になってしまっている事に気づかないでいる。
 この問題は、音楽の世界だけではない。企業でも同じ事が言えるだろう。
 新しい発想で物を創り出すには、マニュアルや前例に捕われすぎては何も生まれない。マニュアルや前例に捕われる事なく個性を大切にする事で、本当の意味で新しい産業が生まれてくるのではないだろうか?
 音楽現場でいうなら、教育者は、まずその子どもの持っている個性=音色を判断し、その子が持っている最大のポテンシャルを引き出す事が一番大切だと思う。
 海外のアーティストは、音程の問題を取り上げると不思議がる。極端に言えば、音程が狂っているピアノであっても、それがそのピアノの最大限の能力であるならば、個性と認め、笑って演奏してしまうのだ。
 ハイテクな機器に合わせるあまり、あなた個人が出す音色は、死んでいませんか。あなたが生きてきた証、自分の生き方や感情を出し切って演奏しているのでしょうか? “十人十色”という言葉があるように、人間には、みな個性があり、音楽の中にも好き嫌いがあって当然なのです。その個性が激突し、調和して、さらに新しいものが生まれもするのじゃないだろうか。
 画一を良しとするのか本当の意味で個性を尊重するのか……。これまた意見は様々だろう。でも私は個性の尊重を選ぶ。これを実践するには、まず組織のトップに立つ人物がいかに全体のバランスを見渡し様々な意見を拾い上げ、個性を認めながら、最善のベクトルを指し示す事ができるかで大きく変わる。また私達もその組織人となっている限り必死に発言し、行動し、責任を受け持って生きて行く覚悟が必要だ。それが民主主義ではないだろうか。だからこそ敢えて、もう一度言わせてもらう。
 「今、私達に必要なものは、音程ではなく、音色である」と。

写真:田野城寿男氏

たのしろ・ひさお…1958年広島市生まれ。サックス奏者。78年バークリー音楽院入学。在学中から精力的に活動し、帰国後の87年サリナ・ジョーンズの日本ツアーにソロ奏者として参加。91年「25周年記念」のモントルー・ジャズフェスティバルに出演。音楽家はもちろん、多彩なジャンルの表現者たちとのコラボレートを積極的に実践、近年は「音楽教育」の必要性を重視し、広い層の若者たちに個性的な指導を続けている。

ホームページ:http://www.tanoshiro.com

携帯サイト:http://www.tanoshiro.com/m/

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□連載
【岩崎稔の『大陸人の時間』】第13回

「恐ろしき五輪熱」

 中国では偽ブランド品や海賊版CDなどの著作権を侵害した商品は以前から悪名が高かったが、この数ヶ月間、使用禁止とされている化学薬品を使った食品や薬品などの中国製品が海外で問題になっている。口に入れる食品や農産物となると、その被害は深刻である。
 中国の人たちにとっては来年、オリンピックが北京で開催されることは、誇らしいことなのだが、何と偽物を越え、自分で作り上げたオリジナルのオリンピックマスコットも出回っていた。
 「これ、出来れば取材してきてほしいんだけど……」
 ある通信社の人に「世界オリンピックコレクター博覧会」と書かれた紙を渡された。世界中から五輪関係のグッズを集めているコレクター達が集まるらしい。出席者に「サマランチ元会長」とある。
 「ああ、そういえば北京五輪開催を決めたときの組織委員会の会長でしたっけ?」
 「まぁ、それほど重要と言うわけではないんだけど」
 あの「ベイジン(北京)」と2008年の開催地を発表した人か。特別に中国と関係がなかったら、あの地味なおじいさんの顔と声は思い出せなかっただろう。日本のメディアにとってはそれほど重要でもないのだろう、なにせ「元会長」だし。とりあえず段さん(白タクの)に連絡し車を手配した。翌朝現場に向かう道すがら、段さんと北京五輪の話になった。
 「北京五輪開催まで間もなく1年切るね。商売繁盛しているみたいじゃない」
 空港までの運転を頼めばいつも他の客と相乗りさせ、2倍のお金を稼いでいる段さんにチクリと嫌みを言ったつもりだった。
 「全然だめだよ。前にも言ったが、この2、3年顧客はマイカーを買ったり、引っ越したりで減ったし、外で知らない人に声をかけて、また警察に捕まったらたまらないしね。五輪で良いことなんて全然ないよ」
 車を買って独立したが、それでむしろ時流に乗り遅れてしまったのだろうか。
 「街は五輪に向けて整備されてきたね。もうそろそろ完成かな」
 「緑化、緑化と言ってあちらこちらに木を植えているけどだめだね! 北京は元々緑が育つ環境じゃないんだよ。ほら見てみろ、道路脇の木なんて埃で真っ黒じゃないか! だいたい政府がやっていることは、どうも見せかけばかりでいけないね」
 ごもっともである。

写真
立ち退き地域の壁に貼られる引っ越し屋の広告

 現場に着くと、意外にも、すでに人だかりが出来ていて、厳重な警備をくぐりながら何とか撮影場所まで辿り着いた。数百人の市民が開幕式の行われる会場を取り囲んでいて、最前列には「私たちの親友サマランチさん、ようこそ北京へ」と書かれた赤い垂れ幕をもった集団がいた。その集団は応援団のように掛け声をかけ合いながらこう叫んでいた。
 「I LOVE YOU サマランチさん! ようこそ北京へ、サマランチさん!」
 中にはサマランチ元会長の写真をもって
 「武漢から飛行機に乗って会いに来たよ!」
 と叫んでいる人もいる。この熱烈ぶりは中国のマスコミにも異様と映るのだろうか、さすがに報道陣も引き気味だ。確かに北京が開催地に決まった要因の一つはサマランチ元会長の支持であったが、普通の人がなぜこんなにも興奮して迎える理由があるのだろうか。ここに集まった市民は悪者に操られているショッカーそっくりに一様に洗脳されているかのようだった。
 そこにサマランチ元会長が現れると、会場は大混乱である。悲鳴にも似た歓声が上がり、押し出されるように前に進む群集を警備員が必死で止めている。サマランチ元会長が舞台に上ってなにやら挨拶し始めた。人だかりで何も見えないので、現地のカメラマンが警備員の間をくぐって独占的に写真を撮り始めた。こんなじいさんの取材で何でこんなにヒッチャカメッチャカになるんだろうとあきれずにはいられなかった。その後、元会長はこの博覧会が行われているビルに入って行くのだが、歩くのもままならない混乱ぶりで、あれでは死んでしまうのではないかと心配になるくらいだった。アホらしいからもう帰ろうと思ったが、もしもサマランチ会長に何かあったら大ニュースだと思い、私も続いて博覧会会場へと入った。

 続く


写真:岩崎稔氏 いわさき・みのる…写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。

*現在ANAの機内誌「翼の王国」で、作家の原口純子さんと「中国万事通」を連載中です。

ホームページ:http://www.minoruphoto.com/japanesemainpage.htm

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□連載
【大竹正枝の『新・自然真営道』】第16回

「広がる活動の輪〜園芸療法(3)」

写真
五天山園の畑―みんなで楽しく畑作業を行っている
 「今日は草取りから始めましょうか?」と、お年寄りたちに明るく元気に声をかけているのは、高橋タカ子さん(60歳)。毎週月曜日、五天山園デイサービスセンター(札幌市西区)の介護老人福祉施設では園芸療法が行われており、高橋さんはここで園芸療法士として実践活動を行っている。
 高橋さんは平成14年に札幌国際短期大学の社会人コースで、園芸療法士の講座を1年受講し、園芸療法士の資格を取得した第1期生である。授業内容は1年の半分は園芸、残り半分は福祉・医療について学ぶというもので、週3日は学校で授業があった。社会人コースとしてはかなりハードなスケジュールと内容だ。現在でも日本国内では園芸療法士の資格制度化はまだしっかりと根付いてないが、その当時、道内でこれほどまでの講座が開講されたのは画期的なことだったと言ってよいだろう。「生徒は園芸、福祉、医療関係の専門家たちで、およそ40名ほどが受講していました。初めて知る内容も多く、いつも学校から帰宅すると夜遅くまで勉強しなければなりませんでした」と、高橋さんは懐かしみながら当時を振り返る。
 資格取得後、高橋さんはすぐに園芸療法士のメンバーを中心とした「ぐり〜んの会(田中信也会長)」を設立した。そして、同時に札幌市内の高齢者福祉施設で園芸療法の実践活動を始めた。「いくら勉強したといっても、実践は別。分らないことばかりで、実践を始めてから学んだことの方が多い」と話すように、日々新しい発見の連続だったという。“種まき”の作業では、小さい種子だとお年寄りにとっては見えづらいだけでなく、扱いにくいことが分った。花の色については、クリーム、ピンク、うす紫などの淡色系はほとんど判別できない。そのため、はっきりとした原色の方が好まれることを知った。園芸の道具も力のない高齢者にとっては扱いにくいため、道具を改良したり工夫したりして使ってもらうようにした。「楽しかった。またやりたい」とお年よりから言われると、高橋さんは素直に「この道を選んで良かった」と思えるという。また、園芸に参加した人たちの表情がいきいきして違うと、施設からの評判も上々だそうだ。
 このような高橋さんたちの地道な活動が少しずつ広がり、園芸療法は福祉施設や医療機関で少しずつ認められてきてはいるものの、課題はまだまだ山積みである。福祉施設や医療機関でいかに園芸療法を根付かせていくか、また、有効な園芸療法プログラムをどうやって提案するかなど、まだまだ未開発な部分が大きい。いかに園芸活動が魅力的で、リハビリや疾病予防に対して効果的な作業に思えても、それをどう活用してよいのか分からないのであればどうにもならないのだ。
 現在、福祉、医療、そして園芸や造園など、様々な角度から園芸療法についての研究や調査が進められている。私も農学を学ぶ者として、高橋さんたちのような活動を後押しできる研究を続けたいと思っている。

おおたけ・まさえ…1965年生まれ、千葉県出身。現在、北海道大学農学研究科に在籍。植物が人間に与える不思議なパワーに興味を持ち、主に園芸療法について研究するかたわら、ガーデニング、環境保全、そして地域・農村活性化など幅広く関心を持つ。

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■インフォメーション

特別養護老人ホーム 五天山園夏祭
 「新・自然真栄道」の執筆者、大竹正枝さんの読み物にも登場した「五天山園」で、ふれあい夏祭が開催されます。催し物、縁日、屋台と盛りだくさんな夏祭にぜひご参加ください!

・催物 新発寒ふるさと太鼓、よさこいソーラン、地空人
・縁日 射的、北愛館…瀬戸物市、ぐり〜んの会…こけ玉
・屋台 栄養科長オススメ!カレーパン、うなニギリ、はんぺんコロッケ、焼きそば、など
・日時 平成19年7月21日(土曜日) 13:00〜15:00
・場所 特別養護老人ホーム 五天山園 札幌市西区平和54番地3
・電話 011-667-1133
※駐車場は福井野中学校です。




■次号予告
 次号の配信は、大通公園のビアガーデンのオープン前日です。そわそわしてものどが渇いても、まずはメルマガをお読みください。
 次号のメルマガラインナップは、上林早苗の「上海日記」、「とろんのPAI通信」、「危機の時代に―鈴木邦男・和多田進 10年目の往復書簡」です。
 『メルマガ北海道人』第28号の配信は、7月19日(木)です。
 
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