原料となる天然原料を追いつづけて40年気が遠くなるようなこだわりが生んだ、まるさんの「極上ふりだし」
「ふりだし」は振り出し

 福岡県に、だしを作りつづけて40年になる「まるさん」(丸三食品株式会社)がある。最初に作られただしは「ふりだし」。その名前には、だしを振り出しに戻すという意味が込められていた。
 当時、ラーメンスープ作りを担当していたという現在の社長・前田澄夫さんは、スープ原料に使用される化学調味料のあまりの多さに、これはなんとかしなくてはならないと思ったという。
「なるべく化学調味料を使わず、天然原料を使いたい」
 これが40年にわたるだし作りのきっかけだった。

こだわりには限りがない

 前田さんのこだわりの源は、「お客様に身体に良いものを提供する」という信念だ。国産原料を使うのはもちろん、会社の姿勢を理解してくれる生産者が作る安全で良質なものだけを選んでいる。原料のひとつであるかつお節は、船で急速冷凍する際、塩水に鮮度保持剤として塩素化合物が混ぜられる。しかし、これがかつおの身に取り込まれ、汚染されてしまうという。 「まるさん」では、塩素化合物を取り除くためにかつおを大量の流水につけたり熱湯で洗い流したりしたものを使っている。えのき茸は杉のオガクズで人工的に作られた菌床で培養されるのが一般的だが、針葉樹がもっている殺菌成分をえのきが吸い込むので人に有害だという。だから、榎(えのき)の仲間である広葉樹のおがくずで栽培された安全なものを「まるさん」では使う。ほかにも「ふりだし」の原料はたくさんある。それら原料すべての安全性がこのようなレベルでチェックされているのである。

ティーバッグ

ティーバッグ紙には、酸素で漂白して有害物質を取り除いたパルプを使用。手で簡単に破れるけれど、茹でると破れにくい特別なものを使っている。ティーバッグだしを日本ではじめて開発したのは「まるさん」である

偶然生まれた究極のだし。素材が奏でるハーモニー

 「まるさん」の最初のだしであり、ロングラン商品でもある「ふりだし」と、2007年に発売された100%天然原料で作られた「純粋だし かつお」の2種類のだしを混ぜて使ってみたところ、これがとても良い味になった。それぞれの持ち味が相乗効果を発揮し、究極のだしとも言える「極上ふりだし」が生まれたのだ。
 「極上ふりだし」には、かつおやさばをはじめとする自社製約50種類のだし魚類、昆布や浅草海苔、きのこ類、野菜類などが使われている。魚類は鮮度、海藻は川から提供される栄養分、きのこは原木の質、野菜は完全無農薬で有機肥料が使われていること。これらが本物のだしを作る決め手になるのだという。
 一つひとつの材料が他の材料の味を引き立てるように作られたこのだしは、口に入れると、だれにも“身体に良い”ということがすぐ分かる。

だしの味、人間の健康を守るために

 前田さんのだし作りの基本は天然原料を使うことだ。しかし、あちこちで環境破壊がすすんでいる現在、汚染されていない良質な原料を確保しつづけることは容易ではない。だから、前田さんの仕事の中心は、原料生産地の環境を知り、原料となる生き物たちが健康に育つような環境づくりをすることである。「人間以外のものの健康があって、はじめて人間の健康があるんです」が前田さんの信条でもある。
 人間の身体に良いものを追いつづけて東奔西走する前田さんを、「環境にいいことをしてください。健康に良い食べ物を作ってください」と応援してくれる人も大勢いる。「生き物たちにも応援されているような気がする」と前田さんは言う。

だし粉末

たくさんの天然原料が入った「極上ふりだし」は、まるでふりかけのようだ。だしにふくまれる食塩は外国産の天日塩を主原料にしたものや、色をつけて付加価値を演出したものではなく、海水を原料とし、有害物質を完全に取り除いたものである

だしの向こうに見えてくるもの

 「ものは心がかたちになったものです。私には、お客様の身体に良いものを作ろうという目的があるだけです。そう思って行動していると、誰かの助けがあったり、偶然何かを発見したりして、なんとかやっていけるんじゃないかと思うんです。食べ物を食べて元気が湧いてくると、人は元気の源である食べ物やそれを作った人に感謝をするようになります。そして、自分を元気にしてくれたものや人に良いことをしようと思うようになるのではないでしょうか。そこに食物連鎖のようなつながりが生まれます」
 前田さんの心がかたちになった「まるさん」のだしは、何も知らずに口にしても美味しい。けれど、気の遠くなるような前田さんのこだわりの積み重ねや人ともののつながりに思いを馳せると、もっと深い味わいになるのだろうと思う。

「まるさん」の商品

極上ふりだし

ふりだし海苔

極上ふりだし ふりだし海苔

 

(文・杉本真沙彌 写真・杉本真沙彌・西田恵)

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