妥協しない姿勢とチャレンジ精神が育んだ空知の地鶏「ノースバード」

文・写真/和泉朋樹(写真提供/エヌ・ビー・エス株式会社)

手間ひまかけるから高くなる。それでも「納得の品質」

 脚の太さに驚かされた。一般的な鶏のイメージより明らかに大きい。逞しい脚で力強く大地を蹴り、元気に走り回る姿が印象的だ。
 歌志内と滝川の農場でのびのびと育つ「ノースバード」は、名古屋コーチンを父に、軍鶏とロードアイランドレッドをかけ合わせた品種を母に持つ在来種100%の地鶏である。エヌ・ビー・エス株式会社が北海地鶏の品質をより向上させてブランド化し、今年から全国へ向け本格的にPR展開を始めた。
 エヌ・ビー・エスが北海地鶏の事業化に取り組み始めたのは、十数年前のことである。「(ノウハウを)教えてくれる人がいるわけじゃないので、自分たちで考えて、いいと思ったことはとりあえずやってみますね」と、専務取締役の橋本勇一郎さんは語る。
 農場では、絶えずスピーカーでクラシック音楽を流している。「動物の神経にクラシック音楽の波長は合うらしいですよ」と、飼育総責任者の奥山募さんが教えてくれた。特定JAS基準が定める地鶏の飼育密度は1平方メートル当たり10羽以下(生後28日齢から)だが、ノースバードは1羽あたりに1平方メートル以上という広さだ。飼育期間は120〜140日と、これも80日以上と定めたJASの基準よりはるかに時間をかけている。
 「ヒナのうちからよく運動するように、鶏舎にも工夫をしています。いろいろ試行錯誤しながら、常にヒナの動きに気を配ってますね」と奥山さんは言う。鶏舎は清掃をまめに行い、常に清潔に保たれている。餌や水にも内臓をきれいにする成分を配合し、糞の臭いを抑えることでストレスのない環境が実現した。このような創意工夫と贅沢な環境が、鶏たちを大きく健康的に成長させるのだ。
 鶏は注文を受けてから1羽ずつ選別し、赤平の直営工場へ送るオーダーメード体制だ。工場内での手洗い励行はもちろん、各室に入るたび色の違う服に着替え細菌の感染を防ぐなど、ここでも徹底した衛生管理がなされている。解体の際は先に精肉をさばき、雑菌を持つ内臓部分は最後に処理する。内臓の検査で引っ掛かったものは1羽単位で廃棄される。こうした衛生検査は工程ごとに行われ、それから真空パックされる。出荷前にもう一度数量や包装状態を最終チェックし、合格したものだけが「ノースバード」として流通するのである。
 卵から肉になるまで、すべて自分たちで面倒を見る。途中の過程をほかの業者に任せず、生産ラインを自社で一元化することで、消費者にとっても「誰が育て加工したか」までがよりシンプルかつ明確になる。
 「おいしいだけでなく、安心して食べられるものを提供したい。生産者として当たり前の願いですけど、実現するのはなかなか難しい。だから製品づくりには一切妥協しません」
 効率主義とは対極にあるやり方は、当然、価格にも反映される。しかし橋本さんは「食べれば必ず納得していただけるはず」と自信を覗かせる。

こだわりが生んだ「特別な日に食べる鶏肉」という自信

 ほどよい弾力とうまみが楽しめる肉と、濃厚さと爽やかさのバランスがよい卵は、道内外の料理人など「食のプロ」から高い評価を得、徐々に口コミでも広まりつつある。さらに、思わず飾っておきたくなる上品で洗練されたパッケージデザインも、従来の地鶏のイメージを覆す。「ちょっと特別な日に食べていただく鶏」という橋本さんの言葉通り、ギフトやパーティなどに使えば、いつもの食卓に贅沢な華を添えるに違いない。
「“食べ物を育てる”のって楽しいんですよね」と話す彼ら作り手が、手塩にかけて育て上げた北の地鶏は、「鶏肉のトップブランド」をめざし、文字通り今、大きく羽ばたこうとしている。

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これが「ノースバード」の成鶏。太く逞しい脚が特徴(写真提供/エヌ・ビー・エス株式会社)

これが「ノースバード」の成鶏。太く逞しい脚が特徴(写真提供/エヌ・ビー・エス株式会社)

滝川の広大な敷地にあるノースバード第2ファーム(写真提供/エヌ・ビー・エス株式会社)

滝川の広大な敷地にあるノースバード第2ファーム(写真提供/エヌ・ビー・エス株式会社)

飼育場の鶏たちは、ハウスから自由に出て走り回ることができる

飼育場の鶏たちは、ハウスから自由に出て走り回ることができる

ファームを案内していただいた飼育総責任者の奥山募さん

ファームを案内していただいた飼育総責任者の奥山募さん

札幌にある「北海地鶏庵」ではノースバードを使った料理を味わえる(写真提供/エヌ・ビー・エス株式会社)

札幌にある「北海地鶏庵」ではノースバードを使った料理を味わえる(写真提供/エヌ・ビー・エス株式会社)