新しくて懐かしい――素材はすべて北海道産の「鶏醤らーめん」

〜大豆粉入りラーメン開発に燃える食品会社社長の奮闘〜

文/杉本真沙彌 写真/杉本真沙彌・重泉正紀

自社製品で勝負、大豆粉入りラーメンへの道のり

 いままでにない北海道のラーメンができた。大豆粉入りの麺と鶏醤(けいしょう)を使ったスープの北海道ラーメンなんて聞いたことがないだろう。しかし、このラーメンはどこか懐かしい味がするのだ。
 「鶏醤らーめん」を開発したのは、株式会社MOVE(ムーブ)の代表取締役・泉澤章彦さんである。卸・販売が主力のこの会社が、なぜラーメンを作ることになったのか。
 「流通会社はいつも他人のフンドシで相撲をとっているんです。会社の将来を考えたとき、いまのままではやっていけない。だったら自社でオンリーワンの、こだわった商品を作ろうと思ったんです」
 泉澤さんがはじめに作ったのは、卵を入れない乾燥ラーメンだった。アレルギーによる辛さは経験者じゃないとわからない。卵に苦しんでいる子どもたちのためにという理由からだった。
 次に取りかかったのは北海道産小麦を使ったラーメンづくりだった。ラーメンには外国産の強力粉を使うのが一般的で、国産小麦に比べて外国産はグルテンの量が多い。それでシコシコした食感になる。合成添加物は入れたくない。シコシコ感を出したい。道産小麦に何を加えたら良い食感になるのか? それが問題だった。
 泉澤さんが目をつけたのは大豆のグルテンだった。しかし、さまざまな難題があった。大豆粉を小麦粉にうまく混ぜ込むには、200メッシュの小麦粉より細かくする必要がある。また、粉にするときに熱が発生すると大豆粉はきなこになってしまう。だから、一般に普及している機械では理想の麺づくりは無理だった。頭を悩ませていた矢先に出会ったのが、大豆粉を微粉末にできる機械だった。通常流通している大豆の水分量は15%だが、それを10%に過乾燥させることによって粉にする際の熱の発生を防ぐのにも成功した。常温で日持ちさせたいとも考えた泉澤さんは、麺の加水量を30%に抑えた昔ながらの低加水麺にしてみた。すると小麦の味がしっかりすることがわかった。添加物を入れずに、つるつるもちもちした食感の北海道産小麦と大豆の新しい麺が完成したのだった。

北海道産にこだわり、三笠の鶏醤と出会う

 大豆粉入り麺が完成すると、スープも北海道にこだわりたいと考えるのは当然だろう。そんなとき、泉澤さんは三笠市の中央食鶏がつくる「鶏醤」を知るのである。鶏醤は鶏の内臓を主原料とし、特殊酵母と天然塩を加えて半年間熟成・発酵させたもので、余分な添加物が入っていない。加熱処理もされてない。従って、うまみ成分であるグルタミン酸が豊富になる。なによりすべての原料が北海道産ということは、まさに泉澤さんが求めているスープの基だった。さらに鶏エキスと鶏油も加えられるのでコラーゲンたっぷりということだ。
 透明でコクがあり、あと味がさっぱり、小麦の味が生きているので懐かしさを感じるのだ、と泉澤さんは言う。麺には北海道富良野産の小麦と大豆を使っている。
 「北海道の人たちは美味しいものを食べていないと思います。北海道にはいい食材があるのだから、それをふんだんに使った食品を開発して食べてもらいたいんです。本来、人が一番おいしいと感じるものは、自分で身体を動かしてとった食べ物だと思います。社会の流れとともに本来の姿が変わってきましたが、それを本来の流れに近づけたいんです。食べるまでに業者がいっぱい入るから履歴がわからなくなりますが、間を抜いて風通しをよくすると自分で食べ物をとってくる感覚と近くなるはずです。生産者から消費者まで、いかに透明にできるかというのが僕らの仕事だと思うんです」
 泉澤さんの言葉は、食べ物の向こうに思いをめぐらせる想像力を惹起して、食の安全性を高めてゆく助けとなるのかもしれない。

株式会社MOVE
札幌市清田区平岡4-3-3-21
TEL.011-883-5777

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