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サステナビリティへの挑戦 北海道人
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エコロジーなどの視点を中心に、自らの生活や地域社会のサステナビリティ=持続可能性に挑戦する北海道人たちを追う。
→サステナビリティについて
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[第3回]バイオガスプラントで描く、北海道酪農の未来
 北海道は今更書くまでもなく、酪農王国である。道の資料によれば、生乳生産量は全国の45%、肉用牛頭数は全国の15%を占めるという。この北海道の基幹産業「酪農」に、ここ数年様々な難題・課題が降りかかってきている。雪印事件、BSE問題、そして家畜排泄物処理法(※1)の施行。今回のテーマに大きく関わるこの家畜排泄物処理法という法律は、牛をはじめとする家畜のふん尿を、適正に処理しようというものだ。そしてその先のビジョンとしては、持続的に発展できる循環型社会を目指すための、バイオマスとしての総合的な利活用に繋がっている。これは2002年のヨハネスブルグ・サミット(持続可能な開発に関する世界首脳会議)での合意事項でもあり、2002年12月に農林水産省により策定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」では具体的に示されていて、廃棄物系バイオマス(※2)としてのエネルギー利活用・製品利活用というビジョンである。
 これを酪農の世界で簡単に説明すると、ふん尿からバイオガスを取り出し、その燃焼によって電気と熱を得てエネルギーに利用し、更に残りを肥料として利用しようということになる。このふん尿利活用を実現する、「バイオガスプラント」が北海道でも続々と建設されつつある。
 今回はこのバイオガスプラントを、酪農の人と牛と環境との関係で位置づけ、循環型ゼロエミッション酪農の核に据えて提案する、株式会社コーンズ・エージーに注目する。

 
※ 1正式名称は「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」
http://www.maff.go.jp/chikukan/1.law.htmlに詳しい。

※ 2バイオマス
「バイオ(bio=生物、生物資源)」と「マス(mass=量)」からなる言葉で、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義されている。(cf.バイオマス・ニッポン総合戦略)本来は幅広い意味を持つ言葉で、植物・動物由来の資源として、私たちの食べ物や木材などもバイオマスと考えてよいが、この文脈では、廃棄されたもの、使われていないもの、資源としてつくられるものを指す。



株式会社コーンズ・エージー

 

酪農の大規模化による課題が生んだ、バイオガスシステム
 恵庭市にあるコーンズ・エージーを訪ね、石島行三社長に話を伺った。
 コーンズ・エージーは、酪農全般の機械・技術を取り扱う企業として、1968年に設立。特徴としては、循環型農業の確立のため、海外最新技術・IT技術を積極的に導入したハイテク酪農を提案しているところだ。
 酪農の発展を全般的にサポートする同社は、北海道の酪農のあゆみにきっちりと寄り添い続けてきた。つまり、酪農の大規模化の過程を共に歩んだわけであり、そこから湧き起こる課題にもいち早く直面していた。酪農事業が大規模化する中で出てきた問題が、ふん尿の処理だった。「気がついてみたら、ふん尿が牛舎のまわりにあふれかえっていた。これは何とかしなければと思ったよ」
 目の前であふれかえるふん尿。さらに、その処理に地理的な悪条件が重なり、難問が生まれていた。一般的にふん尿は空気に触れるところで発酵させ堆肥化する。これを「好気性発酵」という。この場合、発酵の際に熱を持ち、熱を継続させることが必要であるが、冬の北海道ではその管理が非常に難しく、うまく発酵しない場合が多い。そして、未熟な発酵の堆肥を散布すると、そこでにおいを発してしまうのだ。
 この発酵がうまくいかないという難題を前に、石島社長が目を付けたのが「嫌気性発酵」によるバイオガスシステムだった。嫌気性発酵とは、空気(酸素)に触れない状態で活動する微生物の働きで有機物を分解する方法。発酵によりメタンガスが発生するため、「メタン発酵」とも言われている。このメタンガスを熱と電気のエネルギー源として利用するのがバイオガスシステムである。
 実はこの嫌気性発酵、当初北海道ではうまくいかないと言われていたそうだ。しかし、酪農技術の輸入などでたびたびヨーロッパを訪れていた石島社長は、ヨーロッパで行われている嫌気性発酵からエネルギーを取り出すバイオガスシステムの研究に注目していた。嫌気性発酵は密閉された空間で行われるので、北海道の寒さにも影響されず温度管理ができ、発酵がうまくいく。しかもにおいが外部にでない。北海道の酪農現場が抱える課題にマッチするシステムだったのだ。
 コーンズ・エージーは、1998年からバイオガスプラントの推進を開始した。「バイオマス・ニッポン総合戦略」というような国家戦略が謳うまでもなく、農家の立場に立って、自然な、ある意味必然の流れで、そこに至っている。その考え方・技術共に、非常に先駆的で画期的であった。


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