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サステナビリティへの挑戦 北海道人
エコロジーなどの視点を中心に、自らの生活や地域社会のサステナビリティ=持続可能性に挑戦する北海道人たちを追う。
(構成・文 森末忍)
→サステナビリティについて
第1回「カニを食べないカニツアー」〜<稚内発>循環型地域を体験してもらう新たな観光への挑戦
 何ともユニークで、刺激的なネーミングのツアーだ。
 これまで、カニに狂乱する北海道観光の一面を苦々しい思いで眺めていた。さらに言えば、自分ではカニ自体もほとんど食べない。来道する知人達から、「カニ・カニ・カニ・・・」と求められても困惑するばかり。そんな思いにピッタリはまるネーミングである。しかし、その内容は、「反カニ観光」というような否定型・対決型のものではなく、また短絡的なものではない、非常に大きな問題提起を含んだものだった。

 このツアーは、エコロジカルな生産や暮らしを模索するファーム&スペース・レラと、地域のサステナビリティ(持続可能性)を切り口にスタディツアーを企画する(財)北海道環境財団が共同主催したもの。
 稚内は1997年から本州観光客に5000円相当のカニ料理などをサービスする「カニ助成」を行ったこともある土地柄。その稚内で、「カニを食べない」ことをキャッチフレーズに謳うツアーである。
 稚内のカニ助成施策は、冬季の観光客誘致に苦しむ地域のアイディアとして否定はしない。短期的な成果だけでなく、これをきっかけとして、冬の稚内の魅力にふれてもらえれば、リピーターも出てくる可能性もある。しかし、北海道観光における「カニ」は、その吸引力の強さゆえか、すべてがそこで思考停止する場合が多い。それに加えて、カニ資源の枯渇という問題も見え隠れしている。「カニ」の先が見えなければ、「持続」は厳しいのだ。

サステナビリティ イメージ画像
カニツアー
   そんな稚内を取り巻く環境の中で、このツアーは稚内の、カニ以外の地域資源を活用する試行ツアーとして企画された。
 2003年実施の第3回目には、環境財団のメールニュースなどで、全国各地から12名の参加者が集まった。参加者は年齢層も職種も様々だが、ツアーの告知がインターネットベースであるため、ネット環境に恵まれている人がほとんどであることが特徴だ。私自身が、このツアーを知ったのも、枝廣淳子さんのメールニュースだった。ITが駆使されることによって、日本最北の地の試みが世界に向けて露わになる。地域のサステナビリティにもITは重要な役割を担っていることが実感できる。

 ツアーの日程は、まだまだ厳冬期ともいえる3月初旬の一泊二日。
 初日は、「地の利を活かした食べ物のお話」として、酪農家や、棒だらの生産現場を見学。気候風土を活かした、大量の棒だらが干される生産光景は、稚内ならではの壮観なものだ。その合間には、季節風で回る風車の真下で、自然エネルギーが生まれる瞬間を目の当たりにする。
 そして、宿ともなるファーム&スペース・レラへ移動。太陽光発電の灯りの下で、レラ産のオーガニック野菜や卵をはじめとして、地場産の食材がふんだんに盛り込まれたスローフードを味わう。昨今はやり言葉のように軽く使われつつある「スローフード」だが、ここではその本質が体感できる。
 翌日は、早朝から一両編成のローカル線で、ミニトリップ。遠くに利尻富士を臨む抜海港で、遙か北洋から、越冬で来ているゴマフアザラシを見学。レラに戻って、養鶏場で採卵体験の後、その卵を使った朝食を堪能し、ツアーを締めくくる。
 冬の日本最北端で、話す・食べる・見ることを通して、徹底的に地域資源の豊かさを感じてもらう内容だ。

カニツアー イメージ カニツアー イメージ カニツアー
 
 このツアーの出発点は、(財)北海道環境財団の久保田さんと、ファーム&スペース・レラの新田みゆきさんの出会いに遡る。2000年7月、久保田さん企画の、稚内・苫前の風車などを巡るスタディツアーに、みゆきさんがガイドとして参加する。その成功を機に「次は地域のサステナビリティをテーマにしたらどうだろう」と話は進んだ。
 背景には、久保田さん・みゆきさんに共通する、サステナビリティへの問題意識があった。風車を巡るツアーの成功が、カニという観光資源に依存せざるを得ない、持続性の見えない稚内の観光に、地域のサステナビリティという新たな切り口を加えることになった。
 そして、2001年に第1回目を実施。メニューづくりに苦労しながらも、稚内市役所の協力も得て、反応はよかった。参加者からは次へ向けてのアイディアももらった。当初は市内のホテル宿泊というプランであったが、第2回目からは、ファーム&スペース・レラでの滞在体験も加わった。これにより、サステナビリティの根幹とも言える、循環する地域・暮らしが体感できるツアーへと進化する。


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