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北海道人特集―「となりの北海道人」
文/大藤紀美枝 写真提供/小宮山英重さん
子孫繁栄を願う勝負服! 〜私のお父さんin知床〜 シロザケさんとカラフトマスさん=知床出身、遡上中

子孫繁栄を願う勝負服! 〜私のお父さんin知床〜

ここ一番というとき


川の水を引き入れた水槽で泳ぐ魚たち。上からシロザケ・雄、シロザケ・雌(未熟)、カラフトマス・雌、サクラマス・雌(1994.9.8撮影)

 ―カラフトマスやシロザケが成熟して戻ってくる秋の知床の川はにぎやかですね。

 その年、その場所によって異なりますが、カラフトマスは7月下旬、シロザケは9月上旬に海から川へ遡上がはじまります。カラフトマスはシロザケに比べて体が小ぶりです。産卵がはじまるのはカラフトマスが8月下旬、シロザケは9月中旬。成熟したカラフトマスの背中から側面は茶褐色で、おなかは真っ白です。シロザケは緑褐色の地色に黒と赤紫色が複雑に入り組んだ独特の婚姻色が現れます。婚姻色が現れたシロザケは、“ブナ”または“ブナ毛”と呼ばれますが、これは模様の色や形がブナの木肌に似ているからです。さらに、今すぐ卵を産める状態になった雌の体の側面には、頭から尾にかけて黒い縦じま(はた目には横じまに見える)が現れます。この黒い縦じまはカラフトマスとシロザケの完熟した雌に共通する勝負服といえます。

 ―勝負服はそれだけですか。

 シロザケは闘うときに違う勝負服を着ます。産卵行動中のシロザケの雌は産卵場所の取り合いをし、雄は雌を巡って雄同士で争います。その際、ブナ毛の赤紫色の部分が1分ぐらいの間に見る見る鮮明になります。闘い終えて産卵準備が整った雌は、体の側面の黒い縦じまを明瞭にして雄に知らせます。そのさ中、別の雌から横やりが入ったら、即座に赤紫色の勝負服になって闘います。二つの勝負服をいつでも使い分けることができるのは雄も同じです。

 ―カラフトマスには、どんな勝負服がありますか。

 たくさんの服を使い分けるので、もっと複雑です。産卵行動中(完熟)の雌は、やはり体の側面に黒い縦じまを出し、背中は緑褐色に変化します。その雌を取り巻く雄は、雄同士の社会的優劣関係によって体色が変化し、私が記録したところでは、強い順に赤褐色、黒褐色、茶褐色、茶褐色プラス体の側面に黒い縦じま、灰褐色プラス体の側面に黒い縦じま、最下位は緑褐色プラス体の側面に黒い縦じまです。つまり最下位の雄は雌そっくり。シロザケも同じで一番弱い雄は、体の側面に黒い縦じまを出して雌そっくりになります。

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