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北海道人特集−「となりの北海道人」
文・写真/杉本真沙彌 写真提供:国境なき医師団

手術は1カ月間で100件くらい


テメ病院にて国境なき医師団の現地スタッフと一緒に

 ―患者さんのなかで印象に残った方は。

 外傷センターなので整形外科的な手術が多かったです。外科医として私が役に立ったと思えたのはお腹の手術でした。交通事故で運ばれてきたショック状態の女の子がいたのですが、身体のどこからも出血が見られないんですね。レントゲンはあってもCTやエコーはありませんから、「どこが痛い?」と聞きながら、どこに出血があるのか診察しました。結局、破裂していた脾臓を摘出して女の子は一命を取りとめました。外科医でなければできなかった仕事だったと思いました。

 ―検査機器がないんですね。

 こちらから持っていってすぐ使える機器は少ないです。使っているうちに機械は故障したり壊れたりするものですから、メンテナンスの技術者や道具が必要なのです。募金の範囲で何もかもというのは難しいと思いますが、活動終了時のレポートで「エコーがほしい」と書きました。最近はハンディタイプのエコーもありますから、スタッフがヨーロッパに戻ったときに修理できるだろうと思うんです。エコーがあるとどうしてショック状態になっているか分かるケースが多くなりますからね。

 ―他に印象に残ったケースは。

 十数カ所もナイフで刺され、動脈が切れて出血性ショック状態の患者さんがいました。麻酔科の先生と二人でそれらの傷を処置するのに夜中の3時から朝の9時までかかりました。それで一命を取りとめることはできました。しかし、血液型がBマイナスというめずらしいものだったので十分に輸血ができず、手術の二日後に亡くなってしまいました。プログラムマネージャーも血液銀行に連絡するなどいろいろがんばってくれたんですが……。


国境なき医師団のスタッフと一緒に

 ―滞在1カ月で、何人くらい治療したのですか。

 今回の派遣では外科医は4〜6週間、整形外科医と麻酔科医は6〜8週間と滞在期間がだいたい決まっていて、その単位で入れ替わります。病院には約70人の患者さんが入院していて、重症者が多かったです。毎日外科、整形外科、麻酔科医3人で回診し、月曜日と金曜日はすべての患者さんを多くのスタッフとじっくり時間をかけて診ました。手術は少ない日で5件、多いときは外科と整形をあわせて十数件もありましたね。
 朝、病院に着いて、まずER(救急救命室)に行きます。そこでボードを見て、今日は新規の手術が何件だ、と知るわけです。定期手術のほかに緊急の手術が入ったりしますから、予定はいつも変わります。日曜日は休みなんですけど、日曜日にも手術をしなければならないことがありました。患者さんが多いですから。完全な休みは1日もなかったです。1カ月間で私自身は100件くらい手術したでしょうかね。

 ―ご自身の身体も大変だったんですね。

 いや、私はまったく元気、何の病気もせず、疲れもせずです(笑)。

 ―平均的な1日の過ごし方は。

 朝6時過ぎに起床して6時30分〜7時の間に朝食ですね。7時30分に宿舎を出発して8時から回診。普段は9時、10時からひたすら手術。昼食をとって夜の7時、8時まで手術です。宿舎に帰って晩ごはん。たまにビールが飲めました。常に電話を持っていて、何かあったら呼び出されることになっていましたが、夜間に呼ばれたのは2回だけでした。私の場合は少なかったと思います。

 ―気分転換はどのようにしていましたか。

 私は緊張のためか、DVDやTVを観たりラジオを聴いたりする気にはならなかったですね。フランス、ベルギー、オーストラリアなどいろんな国からいろんな人たちが来ていて、医療の話だけじゃなくいろんな話をする。まあ合宿みたいな生活でした。スタッフの入れ替え時期にあたっていたので、週末にはスタッフを送るパーティもありました。音楽を流してみんなで踊ったりするのはすごくいい気分転換になりました。

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