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北海道人特集―「となりの北海道人」
文・写真/杉本真沙彌 写真提供:国境なき医師団
「北海道人」インタビュー 医療法人 札幌道都病院 副院長 矢嶋知己(やじま・ともみ)さん 国境なき医師団の派遣でナイジェリアへ

「北海道人」インタビュー 医療法人 札幌道都病院 副院長 矢嶋知己(やじま・ともみ)さん

 ナイジェリアの南部にあるリバース州の州都ポートハーコートは、人口100万人を超える大都市で、石油資源豊かなニジェールデルタ地域の中心都市です。この街では、石油資源をめぐる争いが武装グループの間にあるのですが、背景には一部の人間に富が独占されていて、国民の約70%が1日1ドル以下で生活しているという問題があると言われています。ですから、争いで負傷した患者の多くは高額な治療費を払うことができません。
 2005年10月から国境なき医師団はこの街のテメ病院で外科治療センターを運営して無料で患者の治療にあたっています。
 今年6月〜7月にかけてテメ病院で治療にあたった矢嶋知己医師にその活動について話をうかがった。

カルテに原因として書かれた “assault(攻撃・暴行)”


テメ病院で手術を行う矢嶋医師

 ―国境なき医師団に応募したきっかけは。

 国境なき医師団を最初に知ったのは医学生のときでした。そして、その活動に憧れを抱きました。外科医になってからもその活動を報道で知ることがあり、憧れはつづいていました。応募したのは、ダイレクトに患者さんと話をしたい、という気持ちからです。日本で病院に勤めていると収益などお金のことが必ずからんできます。国境なき医師団では無料で患者さんを診ることができ、治療に専念できるのです。

 ―現地での任務内容は。

 外科手術と重症患者さんのケアです。軽症患者さんはナショナルドクターという現地の先生方にできる範囲のことをやってもらい、手術が必要な重症の患者さんや専門的な知識が必要で生命に関わるような場合には私が呼ばれました。

 ―病院に運ばれてくるのはどのような方たちですか。

 多かったのは交通事故による怪我でした。ポートハーコートは人口100万人超の大都市で車も多いのですが、道路でいろんなものを売っていたり、車道を平気で人が歩いているのです。信号が作動しなかったりすることも多いので交通事故が多くなるのでしょうね。そのつぎに多かったのが生命に関わるような患者さんでした。銃で撃たれたり、刺されたり、殴られたりした方が多かった。機械での怪我というのもありましたね。


テメ病院で手術を行う矢嶋医師

 ―銃創、刺傷、殴打などの原因は。

 宿舎と病院の間を往復するだけで街には出られませんでしたから、自分の目で何が原因だったのか見てはいません。カルテには原因として、“assault(攻撃・暴行)”と書かれてあることが多かったので、なんらかの争いということは分かりますが、その詳細までは分かりません。ただ、怪我の様子などから、ものすごく治安が悪いのは間違いないと思いました。

 ―日本では銃創の患者さんを見る機会はまずないですよね。

 地方で勤務していたときにライフル誤射で運ばれてきた患者さんを診たことはあります。でも、テメ病院のようにほぼ毎日というのはないですね。それと日本での治療の場合、傷を負っても手術をしたら治るというイメージがあると思うんですが、ナイジェリアではそうではないのです。日本では形成外科の先生が専門的に見てくれたり、足をなくした場合でも、ちゃんとした義足があります。しかし、ナイジェリアではそういうものはあっても高価ですから多くの患者さんは困ってしまいます。

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