HOME > 北海道人特集−「となりの北海道人」 ページ2

北海道人特集−「となりの北海道人」
文・写真/大藤紀美枝

熊も寄せ付けない種雄牛

若くして眼光鋭い雄種牛。雌牛は孕むと雄牛を相手にしなくなるため、秋が深まるにつれ不機嫌になってくるそう

若くして眼光鋭い雄種牛。雌牛は孕むと雄牛を相手にしなくなるため、秋が深まるにつれ不機嫌になってくるそう

 「人工授精は金かかるし技術が必要だし、勉強もしなくちゃならない。ところが、牛に任せておいたら難しいことないし、余計な心配をする必要もない。牛のことは牛に任せておけばいいんだよ。その方が楽だし、雌牛だって雌ばっかりより雄牛がいた方が楽しいだろう」
 牛が牛として自然であることを重視する斎藤牧場では、事故防止のため一般に行われている“除角”も行っていない。牛同士、角突き合わせて力比べをし、角を落とすこともあるが、手当てをするのは“異常なけが”をしたときだけだという。あとは放っておく。ちなみに雌牛はお産をすると角回りに“くぼみ”ができるので、その数を数えれば何回お産したかが分かる。
 「街に近いところで毎年熊が出ているのに、一番山奥にあるうちの牧場は、いままで一度も出たことがない。それは雄牛がいるからだと思う。雄牛の方が熊より大きいし、角もある。熊も本能でもって危ないところにはブレーキがかかるってことなのさ」
 雄牛には群れを守ろうとする本能があり、野犬の襲撃など危険が迫れば啼いて雌牛を集め、自ら敵に向っていくという。
 牛の妊娠期間は約10カ月、斎藤牧場では2月から6月まで出産が続く。放牧期に入ると山で出産することもある。そうした場合でも他の動物に襲われたためしはなく、生まれて間もない子牛が行方不明になった時も数日後に無事発見されたというから、牛の赤ちゃんの生命力も雄牛の存在感も相当なものである。
 雄牛としての種々の役目を考えると貫禄は必要だろうが、斎藤牧場ではさほど大きくならない血統の雄牛を選んで導入している。大きな種雄牛は斎藤牧場の環境に合わないと考えるからだ。乳房が大きく垂れ下がるような雌牛も斎藤牧場の環境に合わないと斎藤さんは考えている。
 「うちの牛は歳取っても若く見える。自由にストレス感じないで遊んでいるから」と斎藤さんは言う。かなうなら私たち人間もそうした人生を送りたいものである。

10月半ばを過ぎても青々とした放牧場。旭川市街を一望する山の上で草を食み横たわる牛たち

このページの先頭へ


特集メニュー

特集・連載バックナンバー

  • ▽北海道人の過去特集はこちらからご覧いただけます
    特集・連載バックナンバーへ