HOME > 特集「北海道の[お宝]めぐり」目次 > ページ6 「まちのお宝発掘★展覧会レポート」

北海道のお宝めぐりー美術館に出かけよう!ー 北海道人特集・2006年8月23日公開
イメージ画像

「まちのお宝発掘★展覧会レポート」 北網圏北見文化センター「美術館」(北見市)

実り多く終了!!
地元の“お宝探し”を実行した「OH!蔵出し 新北見のお宝展」。


 地元でその存在を忘れられたり、真価に気づいてもらえないままでいる「埋もれたお宝」を再顕彰しようという画期的な展覧会が、2006年8月20日まで北見市で開催された。その意義、そして成果について、ご紹介しよう。

 その展覧会は、3年前に赴任した学芸員・小野寺歩さんの失望と直感から生まれた。
 「北見に美術館ってないよね」と思っている人の多さ、「北見にはいいモンなんて何もないしょ」と言う人の多さ。父親の転勤でさまざまな街で暮らし、「土地土地には必ず地元の人には気づかない“お宝”がある」と知るようになっていた経験から、「北見にもきっとある」と不思議なほど確信していた。折しも資料整理の中で、1984年に市内の小・中・高と市庁舎など公共施設を対象に行った美術品所在調査の記録が見つかる。同館は、「OH!蔵出し 新北見のお宝展」の開催を決めた。

 2006年3月5日、北見は留辺蘂・端野・常呂と合併し、新しい北見市に。これを機に、同館は全エリアの学校と公共施設に所蔵調査アンケートを実施。年度変わりの多忙な時期にもかかわらず、非常に多くの回答が戻った。「4月末から実際に作品を見て回り、6月には借用作業と図録作り。そして7月15日にオープン。企画展は通常は数年がかりですから、異例のスピードです(笑)」と小野寺さん。

 展示は、そうして集めた36点と、同館の収蔵品の中から初公開のものを中心に27点で構成。作品の背景を調査するうち、いろいろなことが分かってきた。有名画家たちの、若い時代の作品が見つかった。1枚のカンバスの裏表に違う画家が描いている例もあった。ある小学校に収蔵品が多いのは、ギャラリーなどない昔、地域作家の展覧会の会場として使われた縁からだと分かった。
 「実は、よく分からないことが分かったという作品も多く、これも異例ですが『とにかく展示してみよう』となったんです。公開することで、作品や作者についての情報を知っている人が見つかるかもしれない、と」。その狙いは、驚くほどのビッグヒットを呼んだ。

「鳩を持つ少女」中野五一

「鳩を持つ少女」中野五一
幼い頃の長女をモデルに作られたものだが、中野五一が戦時中に北見に疎開していた縁でか、戦後市内に建立された「平和の塔」の頂きを飾った。ところがこれは、元は兵士の慰霊のために建てた「忠魂碑」。形が砲弾に似ていることから「軍国主義賞賛とGHQを刺激するかも」と恐れた時の市長が、少女像をとってつける形でカムフラージュしたのだ。後年、碑は元の姿に戻り、少女像は、はずされたまま長らく存在すら忘れられていた。

今回の展覧会を契機に姪御さんから譲られた、中野五一の写真の1枚。

<< 今回の展覧会を契機に姪御さんから譲られた、中野五一の写真の1枚。制作中の像は、現在も緑ヶ丘霊園に立つモニュメント。

学芸員の小野寺歩さん。

学芸員の小野寺歩さん。彼女の嗅覚が、北見の埋もれたお宝を掘り当てた。


中央小学校に所蔵されていた有名画家・桜庭彦治の「厚岸バサラン崎」(写真左)と居串佳一の「梅林」。

中央小学校に所蔵されていた有名画家・桜庭彦治の「厚岸バサラン崎」(写真左)と居串佳一の「梅林」。

今回の展覧会を契機に姪御さんから譲られた、中野五一の写真の1枚。

北見の絵画界を支え、80歳を越えてなお現役の地元画家・鷲見(すみ)憲治が1984年に描いた「ゴメの舞う浜」(常呂中学校蔵)(写真上)と、同じく活躍中の抽象画家・田丸忠(76歳)の「ハコ1」(88年・北見藤女子高校蔵)。

北見の絵画界を支え、80歳を越えてなお現役の地元画家・鷲見(すみ)憲治が1984年に描いた「ゴメの舞う浜」(常呂中学校蔵)
道内にただ一枚といわれる珍しい二宮金次郎の絵

道内にただ一枚といわれる珍しい二宮金次郎の絵は、かつて何かほかの2アイテムとセットで道徳的な意味合いを象徴するものだったらしいと伝えられている。

 展示品の中に、小樽で育ち、東京で活躍した彫刻家・中野五一の「鳩を持つ少女」像がある。大正から昭和初期、彫刻を建築や公共の場に取り入れようと活動した美術団体「構造社」に参加した作家だ。その姪に当たる市内在住の女性が、ある週末、会場を訪れたのだ。
 「驚きました! ご親戚はみな東京で、関係者はこの界隈にいないとだれもが思っていたんです。しかも彼女は、五一の写真をたくさん持ってきてくださって…」。感激も無理はない。それまで、中野の写真資料は「少ない」が定説。東京の関係者ですら持っていなかった写真が、今回何枚も手に入った。
 「これがお宝展を開催して得た、一番のお宝です」と小野寺さんは笑う。しかし同時に、「今回はまだ前哨戦。さらなる調査を重ね、もっともっと北見のお宝を見つけ出していければ…」と真剣なまなざしで語る。
 地域のお宝発掘調査。これを道内規模で行えたら、北海道がいかに美術的にも豊かな土地かを証明できるかもしれない。いざ、めざせ、トレジャー・アイランド北海道!


表に勝本勝義の「りんご」が描かれ、裏に「N・SAKUADA」の署名とともに静物画が…。

表に勝本勝義の「りんご」が描かれ、裏に「N・SAKUADA」の署名とともに静物画が…。どんないきさつがあるのか、詳細は不明だ。

このページの先頭へ