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ぜいたくな時を過ごす場所 2006年7月12日公開・北海道人特集

デザインの中に心遊ぶ、安らぎの異空間 小樽旅亭 藏群(小樽市朝里川温泉)

小樽旅亭 藏群

小樽旅亭 藏群入り口 石塀に囲まれた黒い蔵の中へと人を誘い、重い扉が二つ開(あ)く。通り抜けると、そこは歳月を経た調度とモダンなインテリアが織り成す調和の空間。和と洋、古趣と斬新が混在して創り出す雰囲気は、日常とは明らかに違いながらもどこか懐かしく、違和感なく溶け込める異空間性を持っている。

 建築家・中山眞琴の手によってすみずみまでしつらえられたこの旅館は、「ほかにない宿を」と願ったオーナーの思いを見事なまでに具現化した“作品”。コンセプトは「無垢であること」。木や石など自然の状態に近いものを多用し、鉄材も自然界にある姿をイメージした酸化鉄を使う凝り様だ。建材のユニークさと、多く少なく光を巧みに取り入れたデザインの妙は、まさに一つの美術品を内部から鑑賞しているような楽しさを呼び起こす。何気ない小物の果てまでもが、しっくりと周囲になじむよう選び抜かれている。

 全体の蔵のモチーフは、小樽の港に並ぶ倉庫群から。中山が最初の図面に題として書き込んだ「藏群」が、そのまま宿の名となったという。
 館内は、どこに身を置いても、人が絵になる。教会を兼ねるカフェ、解放感あるバー、書物や懐かしいレコードを自由に鑑賞できる書斎、大きなガラス窓から中庭を眺める茶室。明るく白い廊下には、札幌在住の芸術家・阿部典英の平面作品が並び、そこを過ぎると、一転して夕闇の小路を思わせる暗く落ち着いた廊下が始まる。片側に整然と客室のドア。全部で19室。すべて内部のしつらえが違い、小樽ゆかりの俳人や美術家の名が付けられている。

美術書から気軽な読み物までそろうライブラリー「坤滴湖(こんてきこ)」。
教会にもなるカフェ。到着した客は、ここで一服のもてなしを受ける。

←美術書から気軽な読み物までそろうライブラリー「坤滴湖(こんてきこ)」。レコードも多数あり、自由に視聴できる。

↓飲み物はすべてフリー。バーでも好きなだけカクテルやドリンクを楽しめる。

飲み物はすべてフリー。バーでも好きなだけカクテルやドリンクを楽しめる。
中庭の風景を間近に望む露天風呂。手前には黒を基調としたシックな内湯もあり。

↑中庭の風景を間近に望む露天風呂。手前には黒を基調としたシックな内湯もあり。

←教会にもなるカフェ。到着した客は、ここで一服のもてなしを受ける。

 この日の部屋は、「友ニ(ともじ)」。さりげなく配置された調度の、シンプルながら趣ある風情が好ましい。障子を開け放ってみると、中庭の木々の緑がまだ高い陽を受けてあざやかに輝き、薄暗い部屋の中に四角く切り取られた絵のように浮かび上がった。聞けば、冬には白一色の“絵”になるという。
 卓に頬づえして真正面に座し、しばし無心で見入る。一方は石塀で、他方はこうして中庭の木々で周囲の日常風景を遮断した、計算された隔絶。静かだ。遠く鳥の声と、小川のせせらぎだけが聞こえてくる。

「友二」。2層式の客室の上階にある。どの部屋にも一見テレビと電話がない。

←「友二」。2層式の客室の上階にある。どの部屋にも一見テレビと電話がない。日常を代表するものたちは、キャビネットの中にしまわれ、テレビは必要に応じて室内にセットしてもらえる。

↓メゾネット式で人気の客室「多喜二」。

メゾネット式で人気の客室「多喜二」。

↓浴衣の代わりは作務衣。奄美大島で3カ月ほどかけて作る泥染の風合いが目に優しい。丁字染めの足袋と合わせ、お客はこの姿で館内で過ごす。

浴衣の代わりは作務衣。
夕食と朝食はスタッフの迎えに応じて食事専用棟へ。
お客が自分のペースで過ごせるよう、スタッフの動きも配慮されている。

↑夕食と朝食はスタッフの迎えに応じて食事専用棟へ。イスとテーブル、座卓、彫りごたつがある。食事室の数は、客室数と同じ。食事の集中する時間帯でも混雑を心配せずにすむ。部屋に食べ物の匂いが残ることも、スタッフが部屋に出入りするせわしなさを感じることもない。

←お客が自分のペースで過ごせるよう、スタッフの動きも配慮されている。普段はなるべく目に付かず、何か望まれたときにのみ対応する欧米のホテル式のもてなしが信条。

「旅館は年月を経て醸成されて行く味わいを持つべき。 イメージ画像

←「旅館は年月を経て醸成されて行く味わいを持つべき。一時代の流行のデザインや素材で作り上げ、時代が変わると古くなってしまうものにはしたくなかった」と眞田俊之オーナーは語る。

→食前酒、先付の「小樽産海水雲丹」から始まり、一点一点提供される会席料理。美しい盛りつけに、まずはひとしきり見入ってから箸を付ける…の繰り返し。この日は「ズワイ蟹 野菜 生春巻」「仔羊のロースト ターメリック風味」「時鮭タタキ」「宗八カレイ 田舎煮」ほか、目も舌もたっぷり楽しめる“作品”の数々が登場した。

食前酒、先付の「小樽産海水雲丹」から始まり、一点一点提供される会席料理。

小樽旅亭 藏群(くらむれ)小樽旅亭 藏群(くらむれ)

住所:小樽市朝里川温泉2丁目685
電話:0134-51-5151
http://www.kuramure.com/
チェックイン:15時から
チェックアウト:11時まで
宿泊費例:2名1室・1人3万6750円
アクセス:■車/新千歳空港から60分、札幌から40分 ■JR/新千歳空港駅から小樽築港駅まで65分、札幌駅から小樽築港駅まで30分 ■バス/小樽築港駅から20分


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