HOME > 特集「こだわりの旭川散歩」目次 > ページ3 ひとの匠(たくみ)と樹々の息吹を味わい歩く

こだわりの旭川散歩ー文学と自然と匠の街を歩く

北海道人・2006年6月28日特集


その2・ひとの匠(たくみ)と樹々の息吹を味わい歩く―旭橋・常磐公園・北海道立旭川美術館

愛される旭橋

 4つの川が、枝を広げた樹木のような形で市街に横たわる旭川は、750以上もの橋を有する渡橋の街。中でも石狩川に架かり、遠く大雪の山並みを背負う旭橋は、市民にもっとも愛される美しい橋だ。
 木製の簡易な橋が明治37年に道内2番目の鋼製に生まれ変わってから、この橋は、ここで街の変遷を静かに見守ってきた。当時は上を市電が走り、第七師団司令本部が置かれて旭川が北の軍事拠点となると、軍都にふさわしい頑強な橋をと架け替えが決定。美しくも力強いアーチを持ち情緒あるランタンを備え、誠・忠節…などが書かれた旭日章を正面に掲げた2代目旭橋が、昭和7年に完成した。しかし市民の自慢となったこの橋も、その後の戦争による金属供出や市電の撤廃、水銀灯への転化などで高貴な面影を失っていく。

 元に戻せないか。市民の思いが、昭和58年の飾塔・照明灯復元を実現させた。平成16年には北海道遺産に認定。人の去来と時代の変化を見守り続けた旭橋も、ようやく「お疲れさま」と労をねぎらわれた気がしたことだろう。
 中心街と住宅街を結ぶ旭橋を、今日もバスや車、自転車の人々が駆け抜けてゆく。旅人としては、それをフィルムの早回しのように背後に感じながら、しばし違う時間の中で、ゆっくりと橋と語らいたいものだ。この橋には、人の巧みの技があちこちに生きているのだから。


橋の表面に、まるで計算した装飾のようにちりばめられている半球・リベット。

橋の表面に、まるで計算した装飾のようにちりばめられている半球・リベット。全体で約48万本もあるという。この1つ1つを鍛冶職人が熱し、鋼板を接合した。また、旭日章があった正面の橋門溝には北海道で初めて「溶接」技術が用いられた。


鋼板をつなぐ部分に見える可動式のボルト・ロッキングカラム。

鋼板をつなぐ部分に見える可動式のボルト・ロッキングカラム。旭川の激しい寒暖の差で、鋼板が起こす伸縮が橋を傷める原因にならないよう、ゆがむ分を橋自らが動いて調整できるようになっている。


橋の下に降りて見上げると、1枚1枚のパネルの真ん中に小さな穴がある。

橋の下に降りて見上げると、1枚1枚のパネルの真ん中に小さな穴がある。これは橋上に敷かれたコンクリートの湿気を逃がし、橋を長持ちさせる役割をするものだ。


緑あふれる常磐公園

 旭橋から3分もかからないところに、常磐公園が広がる。樹齢を経たニレ、カツラ、ケヤキ、イチイなどの樹々に囲まれた豊かな空間は、日常の喧噪を離れた憩い処だ。天文台側から千鳥ケ池の端を歩くと、板敷きの広い歩道にベンチやあずまやが点在している。樹々の影を映す水面を眺めながら、ひと休み。見れば、ベンチでお弁当やおやつを広げている人たちも多い。静かで、音は鳥の声と噴水の音しか聞こえない…と思ったら、幼稚園の子供たちが先生を先頭に歌いながらやってきた。

 さらに先へ行くと、ボート乗り場に出る。夏の週末には、楽しげな人々の影が水面をにぎわすらしい。売店の彩色がちょっと違和感だが、「6月の護国神社祭には通路という通路に露店が並びますよ」と、園内にある道立旭川美術館の学芸員・中村聖司さんが教えてくれた。その元気なけばけばしさと穏やかな樹々のコントラストもまた、夏の風物詩なのだろう。園内にはプールや図書館もあり、夏休みにラジオ体操の会場になる広場も。人の訪れの残像だろうか、常磐公園には、平日の静けさの中にも、どことなく消えない活気を感じることができる。

緑あふれる常磐公園

緑あふれる常磐公園

水面の涼を感じながら、あずまやでお弁当を広げる人も多い

水面の涼を感じながら、あずまやでお弁当を広げる人も多い。


木のコレクションがそろう、北海道立旭川美術館

 園内の道が美術館に近づくにつれて、辺りは野外彫刻美術館の趣を呈してくる。緑の中に点在する具象・抽象の彫刻作品は、「市に寄贈されたものや、市が主催する中原悌二郎賞の受賞作などです」と中村さん。「彫刻は色合いがシンプルですが、それが芝生や樹々の緑を背景に非常に映えてくる。夏は、鑑賞には最高におすすめの季節です」。
 人のワザと樹々の姿を眺め歩いた散策の最後には、この美術館に至るのがふさわしい。芸術もまた人の巧みのワザであり、道立旭川美術館の収蔵コンセプトは、「木の造形作品」。木彫からクラフト作品まで、木の魅力が生きた作品を数多くコレクションしており、4年前の開館20周年記念展では、所蔵品に使われている木の実物を常磐公園内のどこで見られるか、というカタログを制作したこともある。
 木の造形作品は、現在開催中の「新収蔵品展」でも見ることができる。また2006年7月8日から開催の特別展では、国内における木を素材とした抽象彫刻の草分け・板津邦夫の作品が60余点楽しめる。鉄から木へ、旭橋から美術館へ。この夏は、この散策コースをぜひお試しあれ。

「朝、出勤する時に常磐公園を通ると、季節ごとの鳥の声が聞けるんですよ。これが好きですね」と語る学芸員・中村聖司さん。散策がてら立ち寄る来館者も多いそうで、中には「館前にある彫刻『行列』の上には何人が乗ってるの?と質問するために訪れた方もいました」とのこと。

学芸員・中村聖司さん
公園の彫刻

北海道立旭川美術館
関連情報

■北海道立旭川美術館
住所:旭川市常磐公園内 電話:0166-25-2577
開館:9時30分〜17時(入館は16時30分まで)、月曜休館(祝日の場合は開館)
URL:http://www.dokyoi.pref.hokkaido.jp/hk-asamu
昭和57年オープンの美術館。道北ゆかりの作家や、木の造形作品に焦点を合わせた収蔵を行なっているほか、道内初でコミックをアートとして展示した「鳥山明展」をはじめ、個性的な特別展の数々を開催。


散策のグルメスポット

なつかし味のおまんじゅう

■和菓子処「むらこし」
住所:旭川市常盤通2丁目 電話:0166-26-2676
営業:9時〜19時(日曜は9時30分〜18時)、不定休

和菓子処「むらこし」

酒まんじゅう、味噌まんじゅう、ともに各84円!

酒まんじゅう、味噌まんじゅう、ともに各84円!

 散策の前にここで人気のおまんじゅうを買って、常磐公園のベンチでパクつくのがオススメ。皮もあんもしっとりした、優しい甘さが魅力。おいしさの秘密を尋ねると、「昔ながらの作り方を守っているだけ。余計なものを足したり、むやみに引いたりしていないだけです」。何個でも食べられそうです。


気軽なランチにぴったり!

■パスタ専門「Mura」
住所:旭川市8条通7 電話:0166-22-2355
営業:11時〜21時(ラストオーダー20時30分)、日曜定休

パスタ専門「Mura」

オーナー手作りのデザートたち。「本日の日替わりデザート」は1個150円になる。

オーナー手作りのデザートたち。「本日の日替わりデザート」は1個150円になる。

 「イタリアンというより、パスタだけでもササッと食べられる気軽な店にしたかったんです」と語る木村彩子オーナー。あたたかな色彩に満ちた店内で、散策のひと休みに手作りデザート(各200円)やランチ(680円〜)はいかが? こだわりソースのパスタや生地から作るピザも、もちろん満足の味わい。


このページの先頭へ