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こだわりの旭川散歩ー文学と自然と匠の街を歩く

北海道人・2006年6月28日特集


インスピレーションを生む林、ひと巡りの旅

林イメージ 文学館は、緑濃い林の入り口に、穏やかにたたずんでいる。外国樹種見本林という名の15ヘクタールに及ぶこの林は、約1万2000本の樹木が息づく、林野庁管理下にある国有林だ。木々は背が高く、枝葉繁く、合間に透かし模様のように青空が覗く。足下には、ウッドチップを敷き詰めた小道が奥へ奥へと人をいざなうかのように続き、踏み締めると適度なクッションが足に快い。どこまでも歩いていけそうな気分になる。ここは、「氷点」の重要な舞台として世に知られるようになった場所だ。

 三浦綾子は、少女時代からここを何度も訪れ、強い印象を覚えていたという。日本の純粋な風景とは違う林が持つ独特の雰囲気に、どこか異界めいた神秘と魅力を感じ、インスピレーションを得ていたのかもしれない。「この場所なしに、『氷点』は生まれなかったかもしれません」と斉藤副館長も語るが、確かにここには、心を開放して深い思索を促す、穏やかさと静けさがある。


白樺イメージ 木の香りがする。すーっと、胸まで一気に通る香りだ。鳥の声に耳を澄まし、下草の中に咲く野花を眺めながら歩き続ける。と、短い石の階段の上に、今度は周囲が開けたコンクリートの長い道が現れる。犬を連れて散歩中の人がいる。ウォーキングに励む人とすれ違う。お気に入りのコースですか?と問うと、森林浴もできるから一石二鳥でしょ?との笑顔が返る。
 林の一角を囲むように巡るこの道をしばらく歩くと、途中に下り階段があり、文学館のすぐ横に戻ることができる。ゆっくりひと巡り、40分弱。「氷点」の世界を知らずとも、日常を忘れて心リフレッシュしたい時には、このひと巡りはオススメだ。
 心が硬い氷になる前に、三浦綾子の世界と、この林の中を、“旅”してみてはいかがだろう。


散策のグルメスポット

「氷点」の舞台になった喫茶店

■「珈琲亭ちろる」
住所:旭川市3条8丁目 電話:0166-23-8546
営業:9時30分〜21時、日曜定休

珈琲亭ちろる

人気のパンプキンパイとコーヒー 旭川の繁華街の一角に70年近い時を刻む喫茶店。現オーナー・下村朔郎さんの父で、詩人&版画家の保太郎さんが開いた「ちろる」は、当時の文化人が集う拠点的な存在だった。「サロン・ド・オンクリ」という名で集った仲間が、陶芸や版画などで展覧会を開催したり、グループ旅行に出かけたり。いつしか三浦綾子さんの姿もあり、彼女はこの店を「氷点」の一舞台とした。大ブーム当時は、「氷点」ファンのお客さんが「けっこう訪れたらしいですよ」と、当時、大学生で実家を離れていた朔郎さんが語る。
 朔郎さんの代になってメニューも増え、中でも自家製のケーキ4種(コーヒーか紅茶セットで740円)が人気。特にパンプキンパイ(写真)は、シナモンほかスパイスの効いた穏やかな甘さが好ましい。5種の豆を使いブレンドにこだわった、香り深いミックスコーヒー460円、男性にも人気のココア560円。散策の前に、後に、ぜひ。


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