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紫薫るラベンダーの大地−もうひとつの富良野 北海道人・2006年6月特集

上富良野発 ラベンダー事始め我が町にラベンダーを

 ラベンダー観光の名所のひとつ・上富良野町の日の出公園の町営ラベンダー園。その中腹に、「かみふらの・ラベンダー発祥の地」と刻まれ、観光客の絶好のシャッターポイントとなっているモニュメントがある。

 そして、もうひとつ。町内で東中(ひがしなか)と呼ばれる地区の静かな田園地帯にも、同じように刻まれた石碑がひっそりと建っている。上富良野町に始まる「富良野ラベンダー」の歴史。それは、ここ東中で幕を開けた。

 どちらの碑の案内文にも、きっかけを作った農家3名の名が登場する。太田晋太郎氏、岩崎久二男氏、上田美一氏だ。

 

 父・太田晋太郎氏(故人)の代からのラベンダー畑を守り続け、今もラベンダーの育苗を手がける太田信夫さんの家は、東中の石碑の近くにあった。
 「僕は当時者じゃないからね。生き証人を呼んでおいたよ。言い出しっぺはこちらの方なんだ」

 太田さんにそう紹介されたのは、御年87歳の岩崎久二男さんだ。岩崎さんが60年前を振り返る。

 「結核で療養していたときに、世の中が豊かになると香りを楽しむ時代が来るというようなことが書かれた本を読みましてね。新聞で、香料の原料となるラベンダーという花があって北海道が栽培に向いているということを知ったときに、ぴんと来たんです」

上富良野町・日の出公園の町営ラベンダー園

↑上富良野町・日の出公園の町営ラベンダー園。(写真提供:かみふらの十勝岳観光協会)

発祥記念の石碑

↑東中地区の静かな田園地帯にひっそりと建つ、発祥記念の石碑。富良野ラベンダーの歴史はここから始まった。

岩崎久二男さん

↑富良野地方のラベンダー栽培のきっかけを作ったひとり・岩崎久二男さん。今も東中地区に暮らしている。30年以上も生き続けている自宅庭のラベンダーの前で。

むせかえるほどの香りの中で
1952年に蒸留場が設置された上田美一氏宅の敷地

↑1952年に蒸留場が設置された上田美一氏宅の敷地(現在は親族が所有)には、香料会社の詰め所だった建物(後に上田氏がもらい受けた)が今も残っている。蒸留場はこの裏にあった。

 そのころ、香水や化粧品の原料となる天然香料を生産すべく、フランスからラベンダーの種を入手していた香料会社(曽田香料)が、適地を北海道と見定め、札幌や岩内の直営農場でラベンダー栽培を開始していた。岩崎さんが目にしたのは、そんなようすを伝える記事だった。

 「太田さんと上田さんと話して、『香料会社にかけあってみよう』ということになりましてね」

 1947年、上田美一氏(故人)が曽田香料(札幌営業所)を訪問し、契約栽培が決まる。翌年、さっそく苗が届けられ、地区内の農家二十数名が栽培を開始。

 

 3年後には早くも天然香料・ラベンダーオイルの抽出が始まる。オイルはフレッシュな香りが命。刈り取ったらすぐに蒸留、抽出しなければならない。地区内に設けられた蒸留場で、栽培農家自ら蒸留作業にあたった。

 「まずは簡易設備で試した後、上田さん宅の敷地に蒸留場が設けられました。刈り取り時期は、ラベンダーの花枝を馬車で次々と蒸留場に運び込む。花の時期が短いから、夜通しの蒸留作業です。それはもうむせかえるほどの香りでしたよ」

 幸い7月の刈り取り期は、稲作の手が空く時期。「米づくりと兼業できたし、香料会社にオイルを納めるとすぐ現金収入になるのも農家には魅力だった」という。

 

 やがてトラクターの登場で農耕馬の姿が消えていくと、馬の飼料作物を作っていた土地が空いた。飼料作物用に当てられていた傾斜地は、やせ地を好むラベンダーの適地。栽培農家はどんどん増え、地区ごとに耕作組合が組織され、蒸留場も増設される。こうして富良野地方一帯の丘は、ラベンダー畑とかぐわしい香りに包まれていった。

ラベンダー
ラベンダー写真

 シソ科の多年草で、草本(草)ではなく木本(樹木)の一種。学名のlavendula(ラベンデュラ)はラテン語で「洗う」を意味する言葉に由来し、心身が洗われるような清楚な香りを放つ。その香りと薬効からハーブの女王と呼ばれ、古くからヨーロッパで香水、化粧品の原料として使われてきた。香料産業のメッカ、南フランスのプロバンス地方が主産地として知られる。日本の香料会社が入手して北海道に根をおろしたラベンダーの種子も、プロバンスから持ち込まれた。

 1960年代に国の指示により北海道で行われた試験研究で、「おかむらさき」「ようてい」「はなもいわ」の3種の真性ラベンダーが国産優良品種に選定されている。

コラム終了
富良野地区 地産地消のおいしい食案内1豚サガリ
■上富良野ポークと富良野和牛のWサガリに舌鼓
豚サガリの塩、味噌ダレ(各450円)、牛サガリ(1200円)↑なんといっても炭火焼きがうまい。豚サガリの塩、味噌ダレ(各450円)、牛サガリ(1200円)。

 上富良野町といえば豚の横隔膜、『豚サガリ』が名物だ。今は札幌などでも見かけるが、「上富良野産が一番おいしい」と、『焼肉 秀』の店主・谷口明秀さんは胸を張る。「町内にと畜・加工場があって、ほかのと畜場と違い、内臓と分けて処理するから臭みがつかず鮮度もいいんです」。

 炭火焼きでいただく豚サガリ、確かに臭みもくせもない。ほどよいかみごたえは他の肉にはない口あたりだ。店には富良野和牛のサガリも。こちはらとろけるほど柔らかい。肉屋さん直営の焼き肉店だけあって「仕入れルートも切り方も鮮度管理も知り尽くしている」のが強みだ。

 豚サガリは豚1頭から400グラムほどしか取れない。上富良野産はほとんど町内で消費されてしまうため、この町へ行ったらぜひ食したい。

焼肉 秀

→1.焼肉 秀。豚サガリは上富良野町の町おこしアイテムで、町内の焼肉店には豚サガリののれんが上がっている。

→2.上富良野町の老舗の肉屋さん、『谷口精肉店』のオーナーでもある谷口明秀さん。「上富良野の人は焼肉が好きでね、七厘を持っている人も多くて、『ジンギスカンより豚サガリ』なんですよ」。

■焼肉 秀(しゅう)
住所:上富良野町錦町2丁目5-18 電話:0167-45-5006
営業時間:17時〜22時(ラストオーダー)、不定休

■関連リンク

・ふらの観光協会 http://www.furano-kankou.com/top.html

・かみふらの十勝岳観光協会 http://www.kamifurano.jp/home/

・上富良野町 http://www.furano.ne.jp/kamifurano/

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