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桜の国の北海道

北海道人・2006年4月特集

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どこもかしこも薄紅の桜に覆われる松前の城下。木々には種類を記した木札がかけられ、見比べ楽しむことができる。「桜見本園」には、130種400本の桜あり。

△どこもかしこも薄紅の桜に覆われる松前の城下。木々には種類を記した木札がかけられ、見比べ楽しむことができる。「桜見本園」には、130種400本の桜あり。

 血脈とは、人が極楽へ渡る際のいわば通行手形。仏から、その教えを伝える代々の僧を通り、法統の流れが確かにあなたにまで連なっています、と記す証明書である。
 死に瀕した人がそれを乞うのだが、18代住職の時、本堂の改修に桜を切り倒すことになったある夜、「わたくしの命は間もなく消え失せます」と血脈を乞う美しい女性が訪れた。不思議に思いつつ授け、朝を迎えると、桜の高い枝に白い封書が揺れている。血脈だ。さては桜の精だったかと住職は胸を打たれ、切り倒すのをやめ、今に至る。

仁王門、鐘楼門、本堂と続く参道の両側に咲き誇る南殿桜が美しい光善寺。

△仁王門、鐘楼門、本堂と続く参道の両側に咲き誇る南殿桜が美しい光善寺。

第31代住職の松浦拓雄さん。血脈桜のおかげでたくさんの人に出会えることが「ありがたい」と語る。毎年春先には「今年もしっかり咲いてね」と木に声をかけるそうだ。

←第31代住職の松浦拓雄さん。血脈桜のおかげでたくさんの人に出会えることが「ありがたい」と語る。毎年春先には「今年もしっかり咲いてね」と木に声をかけるそうだ。

 「南殿で数百年もの時を重ねた例はほとんどないそうです」と31代住職の松浦拓雄さんが語る通り、この木が持つ生命力には目を見張るものがある。扇型に開いた2本の幹は、朽ちた古幹の中を、新たに生まれた根がからみ合い、這い下り、永遠の再生力と力強い脈動とを感じさせる。
 事実、明治36年に本堂と庫裡を全焼させた火災からも復活。火をかぶり、誰もが助からないと思った状態からよみがえったのだ。「そんなこともあるせいか、木というより、神秘的な…人格のようなものすら感じます」と住職。「血脈を欲しいという話も、死ぬなら、極楽に行って永遠の命に連なりたい、という人間臭い願望ですしね」。

 花の盛りには、早朝から夜中まで人が訪れ、中には一日中たたずみ眺めていく人も。「むかし来て見た時は何とも思わなかったが、退職したら急にこの桜が見たくなって」と感慨深げに語る人もいれば、「この木からパワーがもらえた!」と喜ぶ若者や、何をしてあげたわけでもないが「ありがとうございました」と、住職に丁寧に礼を述べていく人も多いそうだ。

桜写真

 咲き始めは白っぽく、日を追うにつれ、血が通うかのように花びらに赤みがさす。花芯の赤さは、紅をたらしたようだ。ボリュームある八重咲きが枝を覆うと、グラマラスな花扇が出現するが、実は一番いいのは、「満開から2、3日後」と住職。「花がより大きくふくらみ、葉も少し現れ、何ともいい風情になる」という。

■光善寺(こうぜんじ)
桜の見ごろ:例年4月の後半くらいからだが、「桜に聞いてみませんとね」(住職)。
住所:松前町字松城303
電話:0139-42-2680
交通:JR木古内駅から松前ターミナル行きバスで約1時間40分、「松城」下車。函館から車で国道228号線を約2時間〜2時間30分。※桜の季節は「函館ー松前」間の直通バスあり、約3時間。

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