北海道人・特集バックナンバー HOME バックナンバー一覧

北海道の大きな馬たち

絵本『赤べえ』の世界

姿を消していった大きな馬たち

 十勝で農業を営む勇作の家では、農耕馬の赤べえが脚を痛め、あまり収穫が上がらない。ついに一家は馬を売ってトラクターを買うことを決め、勇作と赤べえとの別れの日が訪れる。2004年に全道の小学校に配本された絵本『赤べえ』には、そんな物語が描かれている。
 これは、60〜70年代にかけて、日本中で実際に繰り広げられた光景でもある。このころ、農業機械と車の普及にともない、農耕に荷役にといたるところで活躍していた大きな馬は、みるみる間に姿を消していった。

 『赤べえ』の作者、エッセイストの旋丸巴(つむじまる・ともえ)さん(芽室町在住)は、「子どもの時に始めた乗馬で、最初に乗ったのが大型馬だった」という。
 「でもすぐに大型馬はいなくなり、サラブレッドだけになってしまった。大きくておとなしかったあの馬はどこへ行ったんだろうと、ずっと忘れられませんでした」
 作品のラストには、原作(演劇脚本『斑馬の嘶き』)にはない、ばんえい競馬のシーンを加えた。
 「いなくなってしまった、では悲しいから。ばんえい競馬で農耕馬の子孫にあたる大きな馬たちががんばっていることを、もっと知ってもらえたらと」

絵本『赤べえ』の挿し絵より

▲『赤べえ』の挿し絵より

旋丸 巴さん。十勝の山村で馬を飼って暮らす。

▲旋丸 巴さん。十勝の山村で馬を飼って暮らす。

大きな馬の最後の仕事場

谷 歩さん。ばんえい競馬界初の女性調教師として注目されている。

▲谷 歩さん。ばんえい競馬界初の女性調教師として注目されている。

▼ばん馬を調教する谷さん。

ばん馬を調教する谷さん

 挿し絵を担当したのは、「子どものころから馬の絵を描き続けてきた」という谷歩(たに・あゆみ)さん(帯広市在住)だ。以前はサラブレッドの世話をしていたが、後にばんえい競馬の厩(きゅう)務員に転身。05年に、調教師試験に合格を果たした。
 「農耕馬として働いてきた大きな馬を知ってはいたけど、実際に荷を曳く姿は見たことがなかった。初めてばんえい競馬を観たときは感動して、この貴重なレースを支える仕事をしたいと思いました」

 レースで成績が上がらず、馬肉に下ろされていく馬も見てきた。
 「愛情を注げば注いだだけ愛情で返してくれて、どんな運命も黙って受け入れる。彼らはそんな存在。食用だけの馬になってしまわないためにも、彼らの最後の仕事場となったばんえい競馬を守り続けたい」
 そんな思いを胸に秘め、06年の春、ばんえい競馬界初の女性調教師として厩舎を開業する。

 かつては100万頭はいたといわれる大型馬。今や年間生産頭数3000頭ほどとなったが、ばんえい競馬での活躍を目標に、この北海道で生産が続けられている。

絵本『赤べえ』

絵本『赤べえ』

企画・発行/十勝馬事振興会、十勝農業協同組合連合会、北海道輓用馬振興対策協議会
原案/米永道裕、作/旋丸 巴、絵/谷 歩

『赤べえ』は2004年に全道の小学校の図書室向けに配本されました。非売品ですが、こちらから全編をダウンロードをして読むことができます。
http://www.nokyoren.or.jp/(十勝農業協同組合連合会の公式サイト)

ばんばインフォメーション

ばんえい競馬は、帯広、旭川、岩見沢、北見の4都市を季節ごとに転戦し、土〜月曜日を基本に年間を通じて開催されています(2006年度現在)。開催日程や会場はばんえい競馬のホームページでご確認ください。過去のレースを動画で見ることもできます。

・ばんえい競馬(北海道市営競馬組合)公式サイト http://www.banei-keiba.or.jp/

ばんえい競馬ファンサービス企画

毎週日曜日と祝日に、レースの舞台裏を見学できる競馬場ミニツアーを実施。毎月第2・第3日曜日には、女性(同伴の男性も可)を対象に、競馬予想新聞の見方や馬券の買い方などをアドバイスするレディースデー企画も。当日、会場のインフォメーションで午前10時より受け付けています。

ばんばの世界がスクリーンに登場 第18回東京国際映画祭グランプリ・監督賞・最優秀男優賞・観客賞 受賞

映画『雪に願うこと』、2006年4月より公開!
帯広市在住の作家・鳴海章さんの小説『輓馬(ばんば)』を原作に、ばんえい競馬を題材として帯広競馬場でロケされた映画『雪に願うこと』が、2005年の東京国際映画祭でグランプリ含め4冠を受賞。全国公開に先がけ、2006年4月8日より北海道で先行公開されます。劇場は下記サイトで確認できます。
映画『雪に願うこと』公式サイト
(c)「雪に願うこと」フィルムパートナーズ  監督:根岸吉太郎 原作:鳴海章「輓馬」 出演:伊勢谷友介、佐藤浩市、小泉今日子、吹石一恵ほか

【関連サイト・参考文献】