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特集 至福の温泉

温泉コラム 北海道の温泉はすばらしい 嵐山光三郎

 
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 北海道にはすばらしい温泉がいっぱいあって、北海道に住んでいる人がうらやましい。ぼくは日本中の温泉を廻っておりますが、北海道の温泉は、湯も宿の人もみんな純情です。湯あがりは全身ピカピカにリニューアルされて、中古品オヤジが新品同様にモデルチェンジされるところがありがたい。
 ぼくが温泉に行くのは休養のためで、歓楽ではありません。豪華な温泉ホテルへ行ってドンチャンさわぎをするのは苦手です。静かな山の湯に身をしずめて、自然の力をいただくのです。湯につかっていると、カラダが湯と一体化して、自分が薄皮一枚みたいになります。これを湯体一致と呼んでおります。

 仕事に追われていると、頭のなかをブンブンと虫が飛んで、いらいらして酒を飲み、ささいなことで言い争いをして吐血してしまったのが30年前のことでした。そんなとき、山の湯に行って1週間ほど過ごしました。するとまた生きる力が湧いてくるのでした。山の湯はぼくの命の恩人です。
 それ以来、温泉依存症になりました。日本の温泉は、自然をうまくとり入れて、周囲の環境となじませるところが特質です。天国と地獄は隣りあわせで、ひとつまちがえば煮えたぎる湯(地獄)になるところを、うまく手なずけて、おりあった工夫をなして、天国に変えてしまう魔法です。

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 北海道の湯は、登別温泉や川湯のような濃縮されてディープな泉質もあれば、カムイワッカみたいな天然パワーもある。セセキ温泉のように海中から湧きだしたり、種類が多いんですね。十勝岳温泉のとろみのある湯、ニセコ一帯の清純な湯、然別峡のおっとりした湯治場、幌加温泉の素朴な味、と、どれもがすばらしい。
 東北地方の山の湯はしんみりとした情感があり、関東の湯はニコニコしておりますが、北海道の湯は、清潔で家庭的で、まっさらな自然と同化しています。だから湯上りが気持いい。ドカーンと元気がでてきます。温泉の力は、湯だけにあるのではなく、それをとりまく環境が重要なのです。
 北海道の温泉は、いままで70湯ぐらいしかつかっておりません。人里離れた山のなかにきっと、秘密の湯がいっぱいあるんだろうなあ。まだ見ぬ温泉を夢想すると、ドキドキしてきて、いますぐにでも行きたくなります。北海道の温泉は、日本の宝なんですね。

 
 

嵐山光三郎(アラシヤマ・コウザブロウ)

1942年生まれ。月刊誌『太陽』編集長を経て独立、作家活動に専念。1988年、『素人庖丁記』により講談社エッセイ賞受賞。食と旅、温泉をテーマとした作品を数多く発表し、著作はロングセラー『決定版快楽温泉201』(講談社)や、温泉と文士の関わりをテーマにした小説『ざぶん 文士温泉放蕩録』(講談社)など多数。北海道では70カ所以上の温泉に入り、各地にひいきの宿がある。

 
 
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