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取材・文・写真/編集部

はちみつのムース
▲天然のハチミツがいっぱいの「はちみつのムース」

北海道で活躍するパティシェたち 深い甘さがぜいたくな「はちみつのムース」 ドルチェヴィータ 〜札幌市

札幌市の東に位置する清田区。安孫子政之(あびこ・まさゆき)さんのお店「ドルチェヴィータ」があるのは、閑静な住宅街・美しが丘の入り口にあたる。コーヒーを運ぶウサギのマークが目印のお店は、北海道産の果物や卵などを使ったケーキのほか、自家製のパンも充実している。
 ケーキに使う果物は、日本海沿岸の町で、果物栽培がさかんな増毛(ましけ)のものが多い。サクランボやリンゴ、洋ナシなどを、札幌市内のパティシェやレストランのシェフの仲間たちと協力して、農家から直接買っている。この秋はとても味の良い洋ナシがあり、果樹園にあった全部を買い占めた。「増毛にも家を建てたほうがいいかも」と笑うほど、生産者のもとへ足しげく通い、良い食材にいつも目を光らせている。

ショートケーキにも、果物がたっぷり
▲ショートケーキにも、果物がたっぷり

 そんななか出会ったのが、「まつやま養蜂園」のハチミツだった。日本のハチミツの95パーセント以上は輸入品。少ない国産のなかでも、さらに北海道で、自生する木々の花から天然の蜜をとる養蜂家のハチミツとなると、もっと少ない。しかしまろやかで繊細な風味と、透明感のある美しい色合い、そしてなにより、豊かな自然があってこそできるものを新鮮なうちに味わえることに、高い価値が見出されている。
 まつやま養蜂園では、増毛の山に自生するアカシヤなどからハチミツを作っている。とくに夏のシナノキから採れるハチミツは濃厚な味と香りで知られるが、この養蜂園のものはあまり一般に流通していない貴重品だ。
 安孫子さんは、以前からハチミツを使ったお菓子に挑戦したいと考えていた。しかしそれまでどんなハチミツを使っても、きちんとその味が出ず、納得のいくものができなかった。「でも、まつやま養蜂園のシナノキのハチミツは、しっかりとした味と香りがあったので、これならいける!と思いました」。
 こうして誕生した「はちみつのムース」は、全体から濃密な香りがただよってくる一品。ムースのまわりのゼリーにも、シナノキ独得の少しスパイシーな味が活きていて、口いっぱいにぜいたくな甘さが広がる。

小麦粉をていねいにふるいにかける
▲大切な小麦粉をていねいにふるいにかける

安孫子政之さん
▲安孫子政之さん。後ろにあるストーブは江別の実家で使っていたもの。今は店を見守っている。

 2005年の夏に、安孫子さんは道路の向かい側にカフェをオープンさせた。ケーキのほか、パンのさまざまな食べ方を提案していて、道産小麦のふかふかのパンに、同じ養蜂園のアカシヤのハチミツがかかった「はちみつトースト」などが味わえる。
 パンやケーキに使う小麦粉は、北海道産の「ハルユタカ」「ドルチエ」「タイプER」で、すべて江別市の老舗小麦製粉会社「江別製粉」のもの。実は、江別製粉は安孫子さんの実家である。子どものときの記憶には、ハルユタカの生産が衰退していたころの父親の姿がある。パンにしても麺にしても大変味がよい小麦だが、収穫時期の秋の雨に弱く生産性が低かったため、栽培をやめる農家が多かった。父親は、あきらめないよう農家を説得してまわった。品種改良や収穫時期の変更など、農家とともに工夫を重ね、ハルユタカを守り続けた。現在、全国に知られるブランドになった小麦粉を、安孫子さんはなによりも誇りにしている。そして北海道の小麦粉と、北海道の食材の甘い出会いを、今日も作り続けている。

北海道の素材に注目! ハチミツ
ハチミツ
まつやま養蜂園のハチミツ
▲まつやま養蜂園のハチミツは、ドルチェヴィータで販売もしている。アカシヤのハチミツは、すっきりとした味わい。

北海道で養蜂が始まったのは、明治40年代。北海道に自生するアカシヤ、シナノキなど、主に樹木の蜜源(みつげん)が注目され、養蜂家に蜜源の宝庫として知られるようになる。近年、伐採によって蜜源となる木が減りつつあるいっぽう、蜜の採取以外に果樹園や畑でハチによる花粉交配を行う養蜂家も増え、果物や野菜の生産の一翼を担っている。北海道では、ほかにクローバーやラベンダー、ソバの花のハチミツなどが採れる。また食用以外に、タバコの香料などにも使われている。

[関連情報]

■お菓子のドルチェヴィータ

住所:札幌市清田区美しが丘2条2丁目9-10
電話:011-886-5455
営業:10時〜19時30分
定休:水曜、第1火曜(祝日の場合は翌日)

お菓子のドルチェヴィータ

■ドルチェヴィータ ターヴォラ

住所:札幌市清田区美しが丘2条1丁目6-7
電話:011-886-2176
営業:11時〜18時30分(ラストオーダーは18時)
定休:水曜、第1火曜(祝日の場合は翌日)

ドルチェヴィータ ターヴォラ

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