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幸せのあかねリンゴのタルト キャセロール 〜札幌市
幸せのあかねリンゴのタルト

 もうひとつの秘訣は技術と愛情にある。手間をかけ、時間をかけること。
 作業工程を見せてもらって驚いた。
 まずは皮をむいて半分に切ったリンゴの芯の部分を、底が抜けないように注意してくり抜く。次に、リンゴ全体にシナモンとグラニュー糖を混ぜた衣をまぶす。こうして表面を糖分の膜でおおい、加熱したとき果汁が外へ出すぎるのを防ぐ。芯のくぼみには、洋酒漬けのレーズンを数粒つめる。

 ここにあとでしみ出してくる果汁やバターがたまるのだが、レーズンが微妙なかくし味になる。さらにリンゴの中心に、三温糖とバターを練り合わせて冷凍しておいた小さなかたまりを置く。バターを冷凍するのは、オーブンのなかでゆっくり溶けるようにするためで、リンゴに染み込む時間をできるだけ引き伸ばしたいから。すべての作業に理由がある。

 さて、いよいよバットに網を敷いてリンゴを並べ、熱したオーブンに入れる。バットのなかには、うす紅色の美しい液体が入っている。加藤さん曰く、「これはウナギ屋とか焼き鳥屋さんが、ずっとつぎ足しながら使っている秘伝のタレと同じです」。実はこれ、リンゴをオーブンで焼く際に、毎回少しずつしたたり落ちる果汁を集めたもので、試作を始めてからずっとためてきた大切なリンゴの濃縮果汁なのだ。
 この果汁を途中で何度もスプーンですくってかける。すると、まだ焼けきらない果肉に果汁がしみ込んで、いっそう味わいが深くなる。リンゴにリンゴのエッセンスで風味をつける。

 オーブンにつきっきりでリンゴの変化を見ながら、途中5〜6回果汁をすくいかけると、リンゴはどんどん風味を増し、濃く、黄金色に輝いてくる。中心まで焼き上がったら、ラップでぴったり包んで一晩冷蔵庫へ。一晩おくとまた味がなじむ。翌日ショーケースに並べる前に、別に焼き上げたタルトにクリームをしぼり、その上にリンゴを静かにのせ、いちじく、あんず、プラムなどを飾ってやっと完成。
 晴れてお菓子になったあかねリンゴが、ピカピカと幸せそうに見えた。

焼き上がったばかりのリンゴ。いい香りが厨房に満ちる。
▲焼き上がったばかりのリンゴ。いい香りが厨房に満ちる。

リンゴの芯をくり抜く。
▲リンゴの芯をくり抜く。

砂糖とシナモンをまんべんなくつける。
▲砂糖とシナモンをまんべんなくつける。

バターをのせてオーブンへ。
▲バターをのせてオーブンへ。

途中で何度もリンゴのジュースをかける。
▲途中で何度もリンゴのジュースをかける。

キャセロール

[関連情報]

■キャセロール

住所:札幌市中央区北2条西2丁目 STV北2条ビル1階
電話:011-272-5427
営業:午前11時〜午後8時
定休:毎週月曜

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