北海道人・特集バックナンバー HOME バックナンバー一覧

取材・文/編集部 写真/酒井広司
北海道で活躍するパティシェたち 幸せのあかねリンゴのタルト キャセロール 〜札幌市

幸せのあかねリンゴのタルト

▲リンゴのタルト

 札幌市中央区にある洋菓子店「キャセロール」。オーナーパティシェの加藤邦彦さんが、朝から夜までひとりでシャカシャカとお菓子を作っている。ショーケースは季節の果物でキラキラとかがやくばかり。とくに果物のタルトは、イチゴやブルーベリー、グレープフルーツ、ブドウなど、どれもみずみずしく美しい。

 この秋、新しくリンゴのタルトが登場した。豪快に半分に切ったリンゴに、シナモンやバターの風味がほどよく絡みながら、甘酸っぱいリンゴの味がギューッと凝縮されている。オーブンで40分以上も焼くというリンゴは、しっかり火が通っているのにフレッシュな果汁がしたたる。

 美味しさの秘訣のひとつは、素材選びにある。
 使いたいものが市場にないと、生産地を訪ねて気に入った素材を探してあるく。今回は北海道の果物産地のひとつ、仁木町を訪ねた。いくつもリンゴ農家を回って話を聞いたり、試食をしたり、畑の様子を見たりして、慎重に決める。手に持った感触や外見も大事にする。
 「魚も野菜もいい素材は『いい顔』をしています。じっと見ると分かるんですよ」。外見のピカピカしたキレイさではなく、奥からにじみ出る『顔』である。

 選んだリンゴは「あかね」という品種。香りがすばらしく、果肉がかたく緻密なので、時間をかけて焼くお菓子に向く。ただし、さいきん主流の「ふじ」など、大粒で甘味の強い品種に比べ、小粒で酸味が強く、そのまま食べるリンゴとしてはあまり人気がない。市場に流通する量も少なめで、リンゴが出始めのころは見かけるが、スーパーからはすぐ姿を消してしまう。
 何度か、このあかねを使ったタルトを試作して、十二分の手ごたえを感じた。分厚く切って焼いたときのトロリとした食感が、他にはない仕上がりになった。仕入れをすることに決めたリンゴ農家に頼んで、あかねを倉庫に保管してもらうことにした。これでしばらくは安心だ。

加藤邦彦さん
加藤邦彦さん
▲加藤邦彦さん
北海道の素材に注目! あかね Primrouge(仏)、Prime Red,Tokyo Rose(英)

1939年に盛岡で「紅玉」と「ウースター・ペアメン」を交雑して育成された品種。収穫は他の品種よりやや早く、9月下旬ころ。果実は小さめで、皮は鮮やかな紅色、果肉は白くかたい。シャキシャキとした歯ごたえがあり、酸味が強く、果汁が多いのが特徴。ジュースや菓子、料理に向く。病気に対する抵抗力があるため、低農薬での栽培が可能。

北海道は、全国でみるとリンゴの生産量はそれほど多くないが(2004年度で都道府県別第7位)、とにかく生産品種が多いのが特徴。リンゴの国内生産5割以上をしめる青森県では、生産の約半分が「ふじ」なのに対し、北海道は「あかね」をはじめ、「つがる」「ハックナイン」「ふじ」「デリシャス」「王林」「陸奥」「ノースクィーン」「北斗」など多くの品種を栽培している。

前のページへ 北の洋菓子職人物語目次へ戻る 次のページへ
北海道人トップページへ 北の洋菓子職人(パティシェ)物語