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アートをめぐる人びと  関わり方・愛し方の意外な在り方3

“デメーテル”が生まれた街、帯広 アートとデザインの拠点をめざす「フローモーション」

アート関連の洋書の販売がメイン。取材時は「犬猫フェア」開催中で、犬や猫の写真集、絵本などがそろっていた。

 帯広には、今も語り継がれる伝説的イベントがある。
 とかち国際現代アート展「デメーテル」。豊饒の女神の名を冠したこの展覧会が行なわれたのは、2002年の7月13日〜9月23日のわずが1カ月半。しかしそれが与え残した影響は大きく、静かでゆるやかな波紋となって、今も着実に広がりを続けている。そんな“申し子”の一人が、帯広でショップ&ギャラリーを運営している。ゆくゆくは…と、大きな目標を描きながら。

 「十勝は、札幌や東京など外から来るアーティストを珍重するけど、地元作家への理解はまだ足りない。埋もれている、いい作家がたくさんいることを知ってほしい」と高坂光尚さんは言う。カフェとギャラリーを併設するアート&デザインのセレクトショップ「フローモーション」を経営し、地元の作家たちに発表の場と販売の場を提供し続けて、3年めを迎えた。
 勤めていた書店を辞め、2002年、帯広市と商工会議所が主宰したチャレンジショップ事業「GATE」でショップを開業。翌年、移転して現在の場所へ。もともと「いつかは自分の店を」と考えていたが、背中を押してくれたのは、「デメーテルだった」と語る。

 とかち国際現代アート展「デメーテル」は、市の開拓120周年・商工会議所の創立80周年を記念して、2002年夏〜秋に開催された帯広競馬場を会場に、国内外の最先端現代アート作家と作品が集結。いつもの物産展かイベントの感覚で訪れた老若男女の、文字通り度肝を抜くことになった。「何じゃこりゃ!という反応で(笑)。早すぎた感はありますね。でも、地元作家には刺激になったし、それ以後、一般の人にも免疫ができて、現代アートを『ああ、デメーテルみたいなやつ』と理解するようになった」。

「フローモーション」代表・高坂光尚さん
▲「フローモーション」代表・高坂光尚さん。「デメーテル」に参加して受けた影響が、店を持つ後押しに。
帯広ほか十勝在住作家や、「デメーテル」関連作家の作品を販売。個性あふれる品ぞろいだが、どれも気軽に買える価格。
▲帯広ほか十勝在住作家や、「デメーテル」関連作家の作品を販売。個性あふれる品ぞろいだが、どれも気軽に買える価格。
デメーテル開催時の帯広競馬場(写真提供:十勝毎日新聞社)

 自身も、ボランティアスタッフとして運営の中核に関わり、「アートは何でもありなんだ」と開眼。作家はじめ、多くの人と交流する楽しさを知ることもできた。幕を閉じた後、「継承しようなんて大それた思いはなかったが、『インターゾーン』がなくなるのは惜しい、そんな場所を市内に残したいとの思いはありました」と語る。「インターゾーン」と呼ばれた六角形の建物は、参加者と来場者が交流し、最新の情報が交差するアートの拠点だった。その再生を望む声は多く、「デメーテル」の精神を継いで進行中のプロジェクト「デメーテル学校」でも、「インターゾーンの再生」が掲げられている。

「デメーテル」で活動の拠点となった『インターゾーン』
▲2002年の「デメーテル」で活動の拠点となった『インターゾーン』。(写真提供:高坂光尚さん)
インターゾーンで開催された『ぐるぐる展』
▲インターゾーンで開催された『ぐるぐる展』。高坂さんによるワークショップも行われた。(写真提供:高坂光尚さん)

 それを見守り呼応しながら、高坂さんは独自の夢も描く。「作家が認められるのはもちろん、売り買いが発生する場を確立したい。ニューヨークではセレブがパーティーを開くたび、そのつど違う新進作家の作品で会場をコーディネートするケースも。そこまで極端でなくても、アートの売り買いが普通になってほしい」。
 「フローモーション」には、常時10作家ほどの作品が販売されている。また、店内のカフェに集う人同士の間で、「名刺やDMを作りたい」「じゃデザイナーを紹介します」など、小さなビジネスもすでに発生している。
 アートの拠点を…。その夢はどこに行き着くのかと問うと、「フローモーションデパートが夢なんですよ。フロアごとに作品、書籍、グッズ…と、すべてアート関連のものを扱うデパート。カフェやレストラン、シアターもほしい。まったく気取った場所じゃなく、ゆる〜いスポットにしたいんです。ふらりと訪れて、カレンダーを買うくらの感覚で絵を買ってもらえるような」。
 「デメーテル」が生まれ、今もその精神が息づいている帯広。「北海道でアートって言えば十勝だよね。デパートもあるしさ」と、そんな未来も、夢ではないかもしれない。

「GURU×GURUアーティスト」である高坂さんの作品
▲自らも、人呼んで「GURU×GURUアーティスト」である高坂さん。考案した無数の「ぐるぐる」模様を使い、インテリア、雑貨などさまざまに作品を展開中。
併設したカフェは、時にアート談義や「ビジネス」の場に…。
「フローモーション」

[関連情報]

■「フローモーション」
住所:帯広市西5条南13-9/電話:0155-21-5506
営業:午前11時〜午後8時/定休:火曜

■デメーテルの公式ホームページ
http://www.demeter.jp/

[デメーテル学校のご案内]

■デメーテル学校とは…

「デメーテル学校を続けよう!みんなの会」が正式名称。2002年の「とかち国際現代アート展・デメーテル」の閉幕を機に組織された市民活動のグループ。文化芸術を通じて心の豊かさを市民一人ひとりのものとするため「アートと出会い、情報を伝えあい、美を語り、自分を磨く」をテーマに、「インターゾーン再生プロジェクト」をはじめ、作品展やワークショップ、パフォーマンスなど、市民自ら芸術イベントや講座、研修会を企画運営している。

※会員組織ですが、イベントにはどなたでもご参加いただけます。

道立近代美術館で行われた「デメーテル学校#051劇場編・伽井丹彌パフォーマンス」
▲道立近代美術館で行われた「デメーテル学校#051劇場編・伽井丹彌パフォーマンス」(写真提供:TAKADA KEIKO)

■デメーテル学校#052見学編
【横浜トリエンナーレ2005を訪ねる旅】参加者募集!

デメーテル学校では、今年最大の現代美術の祭典「横浜トリエンナーレ2005」を訪ねる鑑賞ツアー参加者を募集中。第2回目を迎えた「横浜トリエンナーレ」、今回は山下ふ頭の巨大な倉庫をメイン会場に国内外から80名のアーティストが参加して12月18日までの開催。鑑賞ツアーでは、同展キュレーターの芹沢高志氏(デメーテル学校芸術監督)の特別ガイド・ツアーでトリエンナーレを観覧、さらに桃谷恵理子氏+岩井成昭氏の「ホームステイ・アート・プロジェクト」、トリエンナーレ連動企画の「BankART Life 24時間のホスピタリティー」などを巡り、現代アートのいまを体感する。出品作家やディレクターとの交流会などオプショナル企画も満載。

旅行期日:2005年12月1日(木)〜3日(土)
代金など展覧会ツアーの詳細 URL:http://www.geocities.jp/demeterschool/

ご入会、ツアー参加の申し込み・問い合わせ
デメーテル学校運営会
住所:帯広市西6条南6丁目3ソネビル6階/電話:090-2075-5792(寺嶋)
E-mail:demeterschool@hotmail.com

■横浜トリエンナーレ
URL:http://www.yokohama2005.jp/

横浜トリエンナーレイメージ画像
▲(写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会)

■「SKY TV for HOKKAIDO 2005」――「空の美しさにかなうアートなんてあるのだろうか」オノ・ヨーコ

ニューヨーク在住のアーティスト、オノ・ヨーコさんは、2002年のデメーテルに作品(「Sky TV(2002)」)を出展したことをきっかけに、2005年10月2日、清水町の観光体験施設「十勝千年の森」を訪れ、廃屋の壁などにメッセージを記す作品(「青い部屋のイヴェント」)を制作。
さらに、今回新たに作った15台のテレビモニターに十勝の空のライブ映像を映す「SKY TV for HOKKAIDO 2005」や、「念願の木」、「雲の曲」などの作品とともに一般公開している。

※2005年最後の公開は、10月29日(土曜)30日(日曜)。各日とも午後2時よりレストラン「カフェ・キサラ」前に集合し、同ファームスタッフが案内してくれる。

「十勝千年の森」
URL:http://www.tmf.jp/
住所:清水町羽帯南10線/電話:01566-3-3400

廃屋内で制作するオノさん
▲廃屋内で制作するオノさん(写真提供:十勝毎日新聞社)
「SKY TV for HOKKAIDO 2005」
▲「SKY TV for HOKKAIDO 2005」(写真提供:十勝毎日新聞社)
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